心を破壊するというファントムが現れた時、俺は心ではなく魔力の根源を破壊された。
ドラゴンが破壊された瞬間、俺はその意識ごとすべてが闇に包まれた。
俺の使命
俺の存在意義
俺のできること
何もかもが破壊され何もかもを失った。
それでも俺は動かなければならなかった。あのファントムを探さなければ、あいつは無差別に人を襲う。
その焦燥感だけで動いていた。
やらなければうごかなければ
おれはほんとうにからっぽになる
あいつをさがしてたたかってたおさなければおれがやらないと
おれがきぼうに
そんな俺を仁藤が阻んだ。
「魔法の使えないおまえじゃファントムは倒せねぇ。だから今はおとなしくしてろ。頼む」
自分のせいだと謝罪する仁藤から同時に否定される
俺は虚ろな頭でそれを聞き………
何かが落ちた気がした。
俺の中に最後に残っていた何かが仁藤の言葉で砕かれた。
これは俺の矜持か?
なあ仁藤、戦えない俺に何の価値がある?
ないよな
もう…………
魔法が使えなければ誰も救えない
誰も笑顔にできない
もうむりだなにも聞こえない
なにも響かない
…おれはもうなにもない
コヨミを救うこともできない
それでもコヨミは俺を責めない
コヨミは他の誰とも違う
俺の魔力がなければ死んでしまうのに
皆のように止めることも否定することもしない
「晴人の心にみんなが救われてきた。魔法なんかなくったって、みんなの希望になれる。だから魔法をなくしたことも、私が消えることも、悲しまないで」
魔法がなくても希望になれる?
そんなもの……
いや、だが
俺は諦めないとあの時に決めた
コヨミを……生きることを諦めないと
きっとそれは絶望だったんだろう。
俺の中のドラゴンが死んだことで絶望した
だがドラゴンがいないから俺は絶望しても何も産み出さなかった
当然だな。
かつてゲートだった俺の中にいたファントムはドラゴンなんだから
インフィニティ………終わりはないという意味だ。
だから俺はコヨミを終わらせない。
心を壊すというファントムを倒した後、それでも心配らしい仁藤に問いかけられた。
「なあ大丈夫か?」
「なにが?」
「魔力が戻ったのはわかるけどよ。無理してないかってことだ」
仁藤は誰にでも過保護だったが、俺にも過保護だったか?
そう思いながら俺は肩をすくめて前方に目を向けた。
面影堂への帰り道、コヨミは瞬平と凛子ちゃんに連れられ歩いている。元気そうに少し困惑した様子で、それでもコヨミは歩いている。
「俺は大丈夫。コヨミも救えたし」
「ホントにか?」
「……そこまで心配させるほどだったか?」
どこまでも心配を向ける仁藤に問いかけると、こくこくとうなずかれる。
「死にそうな顔してたからな」
「死にそうだったからな。絶望に押し潰されて」
「はっ!?」
悪戯めいた笑顔で俺が言い放つと仁藤はあわてふためいた様子を見せた。
やっぱり俺がファントムを倒せていればと大声で呟きながら右往左往している。
その様子を見るだけで戻れて良かったと思えた。