インフィニティとなったその日の夜、瞬平と凛子ちゃんが帰っても仁藤は帰らなかった。
疲れたからと先に部屋へ戻った俺のもとにやってきて手を差し出す。
「なに?」
「新しい指輪見せてくれよ」
妙に明るい調子で言う仁藤に俺は上着を脱ぎながら逡巡する。
「見せても良いけど……」
「みなまで言うな! 隠したい気持ちはわからなくもない。かなりすごい指輪みたいだからな!」
また俺の言葉を遮って、勝手の話を進めていく。
「そうじゃなくて」
「みなまで言うな。おまえの気持ちはよーくわかる!」
いやわかってないって。そう言いたいところをぐっと飲み込んで俺は仁藤をベッドに突き飛ばした。
すっかり油断していた仁藤はあっけなくベッドに倒れ込む。
「何するんだよ。そこまで指輪を見せたくないのかよ」
「見せたくないなんて言ってない」
「へっ?」
相手が話を聞かないなら強引に事を進めても良いよな。
そう思いながら俺は仁藤の上に覆い被さった。とたんに仁藤は慌てた様子で部屋の扉を見る。
「コヨミちゃんが来たらどうするんだよ……」
「おまえが大きな声をあげなければ気付かれない」
「…………っ!!」
俺の言葉に仁藤は顔を真っ赤に染め上げた。口をパクパクとさせながら挙動不審に周囲をキョロキョロと見やる。
そんな仁藤だが首元に吸い付くと一瞬で動きを止めた。手のひらを仁藤の服の中へ入り込ませながら首筋にそって吸い付いていく。
すると仁藤は緊張したように身体を固まらせた。そういう反応が可愛いんだけど、まあいいか。
後ろから強く突き上げてやると仁藤の身体はビクビクと震える。けど本気で声を出したくないらしくさっき脱ぎ捨てた自分の服を必死に噛んでいた。
そんな仁藤が可愛く思えて、背中やうなじにいくつも痕を残してやる。
こうして仁藤と重なっていると、元に戻れた事を実感できた。
ドラゴンが死んだことで魔力を失い絶望した俺だけど、でも俺は諦めなかった。
その褒美のように仁藤の甘い声が耳をくすぐる。
「なあ、仁藤……」
動きを止めて名前を呼べば、仁藤は服をくわえたまま涙目でこちらを振り向く。
「……おまえがいてくれて良かった」
俺の精一杯の告白に仁藤は目を大きく見開いた。あんぐりと開けた口から服が落ちる。
「……はっ?」
「いつもありがとう」
少しの間、仁藤は目を丸めたまま固まっていた。だがそれを理解した瞬間に言葉通り全身を真っ赤にさせる。
やっべー、やっぱ可愛いんだけど
翌日の夕方、面影堂に帰った俺をコヨミが出迎えてくれた。だがいつもより真面目なその顔に俺は何かあったのかと緊張する。
「まさかファントムですか!?」
そばで瞬平が騒ぐとコヨミは無言で首を振った。そしてまっすぐに俺を見据える。
「晴人、ちょっと来て……」
そっと俺の腕をつかんで店の奥へ進む。そうして瞬平と離れたところでコヨミが口を開いた。
「ガルちゃんたちのいないところでやって欲しいの」
「……へ?」
「だから……っ」
何の話なのかと問いかける俺の目の前でコヨミは顔を真っ赤にさせる。
「仁藤さんと夜の……っ!」
「まさか……」
「だからガルちゃんのいないところで!」
「どうもすみませんでした!!」
もうこれは反射的なものだ。
気づけば俺は身体を90度に折り曲げて謝罪していた。