「ああー暇だな」
居間に大の男が6人もゴロゴロしているといういつもの風景。その中に今日は妹の松莉も混じっていた。
暇だ暇だと言いながら、長兄が妹の隣に移動してきて、腕を伸ばすと肩を抱き寄せる。兄妹だとしても少々馴れ馴れしい。
「なー松莉、セックスしようよー」
その場の空気が、凍った。
一瞬の間を置いた後、他の兄弟が何か言う前に松莉が動いた。赤いTシャツを思い切り突き飛ばしたのだ。
「バカッ!」
「いてて…」
言葉ほどにダメージはないようで、へらへらしながら起き上がる。
「えー松莉、俺たちの性奴隷じゃーん」
「だっ誰が性奴隷よ!」
「だってこの間、あんなに気持ちよさそうにしてたし」
あっけらかんとしすぎていて、松莉の方が赤くなる。
そう、先日、四男の一松に襲われているところを兄弟たち全員に見られてしまい、その後は悪夢の乱交パーティー。
一番ノリよく最初に状況を受け入れたのがこの長男で、ぽんと生まれたての姿になるや否や、弟の体液まみれの秘所に構わず自身を突き入れてきたのだった。
その後も三人の童貞を一方的に捧げられてしまった。
大事な部分はヒリヒリするし、体中痛いしで、数日間大変な思いをしたのだ。
これでいつでもヤれるとでも思っているのか、それにしても真っ昼間からみんなの前で…。奇跡的なバカとしか言いようがないこの男が、残念ながら松野家の長男なのである。
「ぼくも松莉ちゃんとえっちなことしたいなー。ねーねー今度はちんちんペロペロしてよ。ぼくもお返しに、松莉ちゃんのおまんこいっぱい舐めてあげるからさ!」
五男まで大声で卑猥なことを言いながらまとわりついてきた。
全部お前のせいだとばかりにおそ松をにらみつけてやる。
「十四松兄さん、そんなこと人前で言っちゃダメだよ」
トド松が引き剥がしてくれたので少しホッとする。
「松莉が困ってるじゃないか…」
「うっせークソ松このクソ童貞!」
かなりキレ気味にかぶせられて、カラ松は言葉を失い、どこか哀しそうな情けない顔になってしまった。
弟たちも、そんな次男を見てニヤニヤ笑っている。見下し優越感に浸るかのように。
カラ松だけはあの時、童貞を捨てられなかったのだ。
そもそも、松莉の悲鳴(実は喘ぎ声)を聞いてすわ一大事と部屋に最初に駆け込んだのがカラ松で、そこに繰り広げられていた弟と妹の痴態に仰天するも、これは誰にも見せてはいけないと瞬時に判断し、ふすま戸を閉めた。そう、カラ松は状況の把握と判断が非常に素早い男なのである。
だが後から来た兄弟たちを追いやれるようなうまい口上は見つからず、おまけに中からは松莉の色っぽい声が洩れくるわで、身をていして止めようにも十四松にプロレス技をかけられチョロ松に廊下の端まで突き飛ばされ、止めきれなかった。
そうこうしているうち、中から下半身を露出した男…一松が出てきて、あっという間に両手を縛られ、訳が分からないうちに部屋の中に蹴とばされて、カラ松はただ見せつけられたのだ。兄弟たちが次々と、松莉の体に覆い被さって、思いを遂げてゆくのを。
ただ救いは、松莉が本当に感じていて気持ちよさそうだったことだ。カラ松は自分だけ松莉に触れられないのが悔しいと思う間もなく、官能的な松莉の姿と声に興奮していた。デニムの中が、窮屈で痛いほどだった。
「また気持ちいいことしようよー、俺と。今から、二階でさ…」
まだ懲りずに誘っている。
「おそ松兄さん、やめなって」
チョロ松もため息混じりだ。
「えっなにお前ら、童貞捨てたからもうそれでいいの? まだまだしたい…」
バン!
ちゃぶ台に両手を叩きつけ、松莉は精神年齢子供のままの長兄を黙らせた。
「いい加減にしてよ! 何でそんな勝手なのよー!」
「ハイでは約束事! まずはこれ!」
ホワイトボードに貼られたマグネットには、『父さんや母さんに知られないこと』と書いてある。
6つ子は正座して、見上げていた。先生の言うことを大人しく聞く生徒のように。
「それからこれ!」
『みんなの前で変な話をしたり、触ってきたりしないこと』
「ねーねー変な話って? セックスとか言うのはダメ?」
「ダメ! 守れなかったら私、家を出るからね!」
後は自分で考えて欲しい。『ちぇーっ、兄弟なのになー』と口を尖らす長兄を、呆れ顔で見やっていた。
その夜、自室をノックされて、松莉は小さく「どうぞ」といらえる。
「まだ起きてた? 飲まない?」
いたずらっ子のような笑顔を覗かせたのは、一番上の兄だった。手には二本のビール缶とポテチの袋を抱えている。
「…うん」
ふっと笑って、招じ入れる。魂胆は分かりやすすぎるけど、言ったことは分かってくれたようだから、許そう。
「いいだろ? 松莉…」
案の定、半分も飲まないうちに抱きついてきた。
「もう…」
仕方ないといったていで、キスを受ける。長兄のキスはぎこちなくて、子供みたいだった。
「おそ松兄さん…」
可愛いと思ってしまう。兄なのに。
今度はこっちからキスを仕掛けた。舌を割り入れ、絡める。
「ん、ふう…」
必死に応えてくれるのが愛しくて、ぎゅっと抱きしめた。
「しよう。松莉」
ベッドに寝かされる。パジャマのズボンとパンツを脱がされたと思うと、もう脚を持ち上げられ、おそ松が入ってこようとしている…。
「えっもう⁉︎」
「お時間は取らせませんよー」
おどけて、先っぽを当てがう。
「もうちょっと、前戯とか…」
「いいから…」
無理に進み入ろうとしてくる。十分には湿っていないそこは、それでも拒まず、少しずつ迎え入れる。
苦しさが快楽にすり替わるのにさほど時間はいらなかった。
「ああ…おそ松兄さん…」
みるみる濡れて、簡単に呑み込んだ。
「やっぱり松莉はエッチな子…」
ちゅ、とキスを一つ落とす。
「いや…」
「本当はセックス大好きなくせに…兄妹なんだから遠慮しなくていいんだよ」
ゆっくりと動き出す。
「おそ松兄さん、自分勝手…」
「でも、イイでしょ…?」
少しずつ速度を増して、奥まで…。
「ん…いいっ…」
とうとう素直になって、一番上の兄にしがみついた。
前戯すっ飛ばすなんて、面倒だからに決まっている。本当はそんなの許せない。もっと大事にされたいのに。
だけど…。
「気持ち…いいっ…おそ松兄さん…」
ギシギシ、ベッドがきしむ。
「あーもうイクよ、松莉ー!」
心から気持ちよさそうな顔をして。
最後まで自分のペースで、おそ松は欲望を吐き出した。
次の日の夜、
『松莉、今夜もしようよー』
味をしめた長男がまたやってきたけど、寝たふりをして開けてあげない。
『松莉ってばー』
『あー、おそ松兄さん、抜け駆け!』
『松莉もう寝てるよ。僕たちも寝るよ』
さすがに弟たちに気付かれて、引きずられて行ったようだ。
改めてベッドに潜り込み、丸まって松莉はひとり微笑む。
兄たちの誰にも、主導権は握らせない。思うままにできるなんて勘違いはしないで欲しい。
(私の気が向いたときだけ応えるんだから…)
目を閉じて、ふと気にかかるのは、次兄のこと。
あの痛いけど底抜けに優しい兄だけが、未だ童貞なのだった。
「カラ松兄さん…」
名を呟いたら、なぜかドキドキした。
END