「ハッスルハッスルー」
「マッスルマッスルーあははっ」
兄の口癖を引き取って笑いながら、ボールを投げ返す。
松莉の優しいボールを素手でキャッチすると、十四松は上を見上げた。帽子のつばを少し押し上げて、空を眺める。ぐるりと目を巡らすと、大きく西に傾いた太陽が見えた。
「そろそろキャッチボールやめようかー、松莉ちゃん」
「うん。いい運動になったわ十四松兄さん。じゃあ帰る?」
兄から借りたグローブを外す。今日は学校もバイトも休みの日で、5番目の兄に誘われ川原に来ていた。野球が大好きな五男の素振りを数えたり、一緒に走ったりするのは楽しかった。急に泳ぎだしたのにはさすがについていけなかったけど。
「松莉ちゃん」
いつの間にか接近していた兄に正面から抱きつかれ、驚く。とても熱くて、埃と汗のにおいがした。
「十四松兄さん?」
「えっちなことしたい…」
押し倒して来そうな勢いに焦るが、ぽんぽん、と背中を叩いて落ち着かせようと試みる。
「ダメだよ、こんなとこで変なことしたら、二人で警察に捕まっちゃうよ」
「えーそれは困る」
言葉通りの困り顔で見下ろしてくるのが愛しい。兄なのに子供に対するような気持ちになってしまう、いつも。
「じゃあえっちできないの? みんなの前で言っちゃダメって松莉言ってたし…」
前に言ったことを一生懸命守ろうとする従順さにもキュンとくる。
「うーん…じゃあ、夜にみんなが寝てから、こっそり私の部屋に来ていいよ」
「ホント⁉︎」
「でも、こっそりだよ、出来る?」
「うん、うん、出来るよぼく! やったー!」
飛び跳ね全身で喜ぶ十四松は本当に素直で可愛いが、こんな調子でちゃんと忍んで来れるか不安を覚えずにいられない。
「…あ」
見ると、兄の下半身はもう既にタッティしている。
「あ…」
前を押さえながら十四松は駆け出し、川に飛び込んだ。水で冷やして鎮めようというつもりらしい。
「松莉ちゃん、夜必ず行くよー!」
川の中から満面の笑みで手を振ってくる兄に、赤面して辺りを見回してしまう松莉だった。
時間になったら6人揃って銭湯に行く。6つ子の日課である。
みんなで背中を流し合いっこした後、やけに浮かれて股ばかり洗っている五男を、隣の四男は不審そうに盗み見ていた。なぜかビンビンになっているソコを石鹸の泡で包み込んで、丁寧に洗っている。
そーっと体を前に倒して、五男の向こうを覗き見ると、末の弟も明らかに気付いているようだが、見て見ぬ振りを決めていた。
(……)
分かりやすい行動だ。松莉に夜這いでもかけるつもりか、それとも…合意を得たのか。
一松はひっそりとため息をついた。
(俺だけのものにしておければ良かった…)
だが6つ子だ、早晩こうなっていたのは避けられない。
何と言っても、最初に松莉を抱いたのは自分だ、そこだけは覆しようがないのだから…。
そう自分を納得させる一松の隣で、まだ十四松は大事なところを洗っている。
気が付けば他の兄弟たちはもう湯船に浸かっていて、もはや身体中泡だらけで股間だけをこすっている五男と、それを見ながらなにやら深刻そうな顔をしている四男を遠巻きにして見守っていた。
「松莉ちゃん、来たよっ」
「あ、いらっしゃい…」
首尾よく来れたことに少し驚きつつ、鍵をかけるよう兄に促した。松莉の部屋にだけは内鍵がついているのだ。
もどかしげな手つきで鍵をかけると、さっそく抱きついてくる。さっきとは違ってお風呂上がりのいい匂いだった。そして、またまたタッティしていて松莉のお腹に当たった。
「みんな寝てた?」
「うん!」
すりすり頬ずりをして、心底嬉しそう。
「ねっねっチュウしていい?」
「十四松兄さん…」
そっと人差し指を兄の唇に当てる。
「こんな時は、静かに話さなきゃ…」
そうして、松莉の方からキスをあげた。
「ねっちんちん舐めて」
二人ですっぽんぽんになって、ベッドでひとしきりじゃれ合うと、兄はそう言った。ボリュームをかなり抑えた囁き声で。
「いいよ…」
大の字になった十四松の足元に跪いて、そっと握る。大きくて硬かった。
思えば兄たちと何回か交わっていて、触ったり舐めたりしたことがない。間近で見るのも初めてだ。
男のものはグロテスクだけど、期待でこんなに大きくなっている十四松のは、愛しかった。
手で包み込むようにして少しこする。先っぽにちゅっとキスをすると、先走った液体が唇に糸を引いた。
「松莉…」
はぁっと息が漏れる。いつもの兄からは聞けない声音だ。
根元を握ったままペロペロと舐める。実はあまり舐めたことがないので上手くもないだろうが、十四松は体をビクンとさせ、息を荒くし喘ぎ始めた。
「あっ松莉、気持ち…いいっ…」
手を伸ばしそっと頭を撫でてくれながら、よがっている。
もっと聞きたくなって、ぱくっと咥えた。舌を使ったり、口の中に出し入れしたりしていると、女の子のように声を上げていたが、
「あっあっ出ちゃう…」
びくびく、と、震えたと思うと、松莉の口の中に熱い液体が注ぎ込まれた。
驚いて離れ、思わず吐き出してしまう。十四松のお腹に垂れ、ベッドは汚さず済んだ。
「あっ…」
慌ててティッシュを当てがう。十四松に始末は任せ、松莉は自分の口の周りを拭いた。苦さと生臭さに我慢できなくて、テーブルにあったペットボトルのジュースに手を伸ばす。流し込むと、喉がひりひりした。
「松莉ちゃん、ごめん…」
小さな声を守って、兄は少し悲しそうだった。
「ぼく…あんまり気持ちよくて、すぐ出ちゃった…」
松莉はペットボトルを置くと、にっこり笑ってみせる。
「大丈夫だよ十四松兄さん」
「ほんと!?」
沈んでいた表情が、パアッと明るくなる。
「嫌われたらどうしようかと思ったー」
「まさか…気持ちよかったなら、私も嬉しいよ」
再びベッドに上がると、キスで迎えてくれて、そっと横にしてくれる。
「今度はぼくがしてあげる」
膝を立てて脚を開かせ、十四松はたくさん舐めてくれた。
「松莉ちゃん、ありがとう」
松莉がもうダメと言うまで舐め続け、蕩けた女の子の中にとっくに復活していたちんちんを入れると、十四松はまたもあっという間に放出してしまった。
腕を伸ばしてぎゅっと妹を抱きしめ、頬にチュウをする。
「ぼくはこんなだから、結婚もできないし、ほんとは一生えっちもできないと思ってた。ありがと。ずっと仲良く暮らそうね。好きだよ」
唇と言わず頬と言わず、キスの雨を降らされて、松莉は今囁かれたことをうっかり流しそうになった。
(え、彼女できそうだったよね)
むしろ兄弟の中では一番女の子とお近付きになっていたと思うが。プラトニック過ぎてそういう対象ではなかったのだろうか。
それにずっとって? ずっと暮らして…って。
「えっと十四松兄さん」
まだまだ続きそうなチュウを優しく止めて、松莉は十四松を見た。
十四松も見つめ返してくる。きらきらした純粋な目をして。
「ずっと暮らす…は、無理かなあ。兄さんたちもいずれは自立しなきゃだし。それぞれ結婚もするでしょ」
「えーっ自立は無理っぽい」
諦めないで欲しい。
「ぼく松莉と結婚するよ。兄さんたちもトド松も、みんな松莉と結婚すればいいし、松莉がぼくたちの赤ちゃん産んでくれれば、父さんや母さんに孫の顔も見せられて全部丸く収まるよ」
いや全然丸くない。それ以前にその案には問題がありすぎる。
一つ一つ説明するのも面倒で、松莉はよしよしと兄の頭を撫でてあげた。
「松莉だってぼくたちのこと好きだから、えっちするんでしょ…?」
ぐっと身を起こすと、上に跨ってきて、十四松は松莉の胸をもみもみする。
「好きだからというか…」
成り行きというか、性欲強めのせいでというか。
ちゅうちゅうとおっぱいを吸われて、身をよじらせる。乳首を舌で転がされると弱くて、腰が勝手に動いてしまう。
「まだもっと、してもいい…?」
下の方に手を伸ばしながら聞いてくる。頷きで応える松莉の一番感じる部分を少し強めに弄った。
「松莉はクリトリスがいいんだよねー」
無邪気なのが逆に卑猥すぎる。
「また舐めてあげるね…あっそうだ、舐め合いっこしよう」
あっという間に逆向きに跨って、松莉の顔にまだまだビンビンのものを押し付ける。同時にじゅるじゅると音を立てて松莉のジュースを啜り始めた。
「あっ…はぁん…」
「松莉もペロペロしてよ…」
言われて手を添え、舌を這わす。
シックスナインは初めての経験で、お互い刺激し合うのは恥ずかしいけど興奮した。
十四松は普段鍛えているせいかタフで、ずっとギンギンのまま何度も何度も松莉を抱いた。
満足したのか今は寝息を立てている。鼻ちょうちんなんか作って、本当に子供のような寝顔だった。
疲れ切って、でも眠れない松莉は、そのあどけない表情を見守り、少し哀しい気持ちになる。
「ずっと一緒には…いられないよ、十四松兄さん…」
いつまでもこんなことをしていられない。松莉だっていつかは素敵な人とちゃんと恋をして、新たな家庭を作りたいという夢もある。
…あの兄たちがいる限り、難しいか…。
今までも彼氏ができると普段にはない団結を見せ、6人がかりで邪魔をしてきたのだ。
まずは兄たちが全員自立してくれないと、恋もできやしない。
それは何年先になるのだろう。松莉は絶望のため息を吐いた。
「ん…松莉ちゃん…」
一瞬目が覚めたか、もぞもぞと抱きついてきて、またすーすーと寝息を立てる。
抱きしめ返し、ふっと笑みをこぼす。
十四松兄さんがさっき言ったような人生を送れたら…それも、いいのかも知れない。
急激に眠くなり、松莉はそのまま、夢の狭間に落ち込んでいった。
何だか騒がしい。ベッドから身を起こし、全裸であることを思い出して毛布を引き寄せる。
ドアは開いていて、そこに同じく全裸の十四松がお尻を向ける位置で立っている。
その向こうでは、兄たちが何やら怒りの声を発しているようだった。
「あらら…」
外からノックされて、そのまま十四松が開けてしまったのだろう。
今更と言われるかも知れないが恥ずかしくて、松莉は毛布に潜り込んだ。
「ちょっと来い、十四松」
全裸のまま兄は連れ去られ、ドアもバタンと閉められた。
これから何が行われるのか…。何であれ、兄弟のじゃれ合いの域だけど。
松莉ももぞもぞと起き出した。体が痛い。足がガクガクして、ベッドに座りこんでしまう。
本当に、5番目の兄はタフだ。
END