ゆっくりと色褪せた真鍮色のドアノブが回る。恐る恐る、ゆっくりと。
音を立てないように、慎重に執務室の扉を押していく。そろり、そろり。
この日の為に、事前に蝶番に油を差した。そもそも多少音を立てても中にも外にも誰も居ないのは確認済、それでも癖というか罪悪感からか、こそ泥のように開けてしまう。
扉から顔を覗かせたのは、ボサついた薄紫の髪を束ねた重巡青葉。
(失礼しまーす)
心の中で挨拶をしながら、するりと体を扉の内側に滑り込ませ、開けた時と同じようにゆっくりと閉じていく。
青葉が執務室に忍び込んだのはもちろん、スキャンダルの収集に、だ。
最近、司令官が執務室に閉じこもる時間が増え、怪しげな物を入手しているという情報を掴んだ。そこで執務室にカメラを仕掛け、司令官の動きを監視することにしたのだ。
当然、盗撮盗聴は犯罪で、機密を扱う執務室となれば厳重処罰対象となる。しかし、青葉は好奇心を抑えられなかった。
(さ~て、どんなのが撮れてますかねー)
唇を舌で湿らせながら仕掛けたカメラを回収する。
数はいくつか仕込んでおり、バレ辛いように非遠隔タイプ。盗聴器も同じく。それらを手早く回収していく。
(よしよし!司令官に見つかってはいないようですね!)
全ての機材が触られてないことを確認し、執務机を開き、"手土産"を探る。
(時間には余裕を持ってますからね~)
ゴソゴソ。
特に目ぼしいものは見つからない。
日報、月報、年報、報告書。あとミント味の飴。
(ちぇっ!つまらないものしか無さそうです……)
出来れば司令官の購入した怪しい物品があれば最高だったのだが……。
と、そこで違和感に気づく。
月報が少しおかしい。
(ん~、なんで五月のが二つも……?)
五月月報として綴じられたものが、二冊。
二冊とも手に取る。重さが、違う。
(どっこいせ、と)
鎮守府内で最も豪華な椅子に腰掛け、二冊を並べる。
片方は分厚い、と言っても他の月報と同程度の厚さ。
残る片方は、それと比べて薄く――
(んー……なんでこちらだけ菊の文様があしらわれてるんでしょうね……)
月報は数回触る機会があったが、このような文様は無かったはずだ。
机を覗き、他の月のを見てもあしらわれていない。
(それになんていうかこう……温かみというか……)
既に九月なのに。
まるで、最近まで使われていたかのような……。
(まぁ考え込んでても埒が空きません!)
腕時計をチラリと見るが、時間はあまり気にしなくてもいい。
この部屋の主は今日は帰ってこない、秘書艦も同行している。
時間はたっぷりある。
「では!御開帳~~~」
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睦月型駆逐艦皐月の臀部に対する重点的身体検査記録
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ドキリ、とした。
最初はプライバシーの侵害――ある意味それ以上のことをしているのだが――特に身体検査に関してだと相当に気まずい、と思った。
(五月……菊……うっわぁ……)
なぜこれがこのような装丁をしているのか、その意味が理解できた。
これは、もしスキャンダルならば大当たりだ。
スキャンダルで無くとも、大当たりだ。
どちらの大当たりも、望んだものではない。
深入りするのは怖い。
(これはやばいですよ!やばいかもですよ!)
見たら、引き返せない。
(でも!でも……!)
確認せずにはいられない、ページを捲る手は止まらない。
空いた片方の手で回収した盗撮機材を取り出し、持ち込んだ小型の再生機材に繋ぐ。
ここまでしまうのは、もっとまずい。それはわかっている。
それでも青葉は再生を始め、ページを捲った。
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初回記録
簡易検査
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レポートの日付を元に、動画の再生を早送りをする。
画面に金色が揺れる。
早送りを止め、通常再生に戻す。
「ただいま到着しました、司令官!」
執務室の分厚い扉の前で、元気一杯に敬礼する金髪の少女。
その少女の二つ結びの髪は、まだ揺れている。
「よく来てくれたね、皐月」
白い背広の背中が映る。
皐月をこの執務室へ呼んだ本人。この執務室と、この鎮守府全体の主。
提督。
「ボクに用事がある、って聞いたんだけど?なになに!お菓子?」
可愛らしい見た目とは裏腹な一人称も、溢れ出る元気の為か不思議と似合う。
「いや、今回は身体検査についてだよ」
「身体検査?それならこの前やったけど……特に異常は無かったよ!」
「あぁ、大きな異常は見つかっていない。ただ少々気になることがあってね……」
一旦言葉を区切る。
「機密に関わることなので、細かくは言えないが……今回の身体検査は"一般的”なものだっただろう?」
言わんとするところは、わかる。
艦娘はその所属と性質上、少々扱いが厄介だ。
今回の身体検査もいたって普通の身体検査、外部から医療関係者を呼んで行ったもので、身長やら体重やら視力やらの一般的なものだ。
今言っているのは、そういう部分"以外"のことについてだ。
「知っているとは思うが、艦娘についての幾つかの事柄は、機密の関係で工作艦明石にすら任せられない部分がある。そのような部分についての検査だ」
青葉は困惑した。
これは本当に、"ただの"機密なのではないだろうか。
読んだ時に想像した、いやらしい意図無く……ただ、機密の為にレポートの題目をこなしたのでは無いだろうか?
何にせよ答えは、動画とレポートの中にある。
「あー、そういう事なんだ!それならしょうがないね!」
朗らかな、眩しい笑顔で答える、金髪の少女。
「それで、その検査はボクは何すればいいの?」
「ふむ……頼みづらい事ではあるのだが――
帽子を目深に被る。
――そこの布団に、四つん這いになってくれないか」
ドクン、と青葉の心臓が跳ねる。
分かっていても、驚いてしまう。
「うん!」
皐月は大きく、元気よく頷いた。
* * * * * * * * * * * * *
「んしょ、と……これでいいかな、司令官?」
皐月は、執務室の隅に敷かれた布団に四つん這いになる。
「これからどうするの?お馬さんごっこ?」
小さな尻を振り、司令官に無邪気に聞いている。
ごくり、と生唾を飲む音が聞こえたのは幻聴か、ノイズか。
「いや、そのまま楽にしていてくれればそれで良い」
「んー……了解!」
釈然としないながらも、いつも通りに答えている。
そう言えば、司令官は駆逐からの評判が良かった覚えがある。
信頼、されていると言えばいいのだろうか。
しかし、その信頼を築くのが、今回のような……
ぶるぶる、と青葉は頭を振る。
確認、確認が第一。
画面の中で、司令官の手が皐月のまだ小ぶりな尻へと伸びていく。
「ひゃぁ!ちょ、ちょっと!どこ触ってるの司令官!?」
ふにゅりふにゅり、とお尻をスカート越しに揉まれ、二つ結びが振られる。
「驚かせてすまない。どうしても、ここを検査する必要があるんだ」
尻の持ち主が振り向き、ジッと顔を見ている。
カメラからは司令官の顔は見えないが、皐月の様子からして真剣な表情で言っていることが窺える。
「分かった……でも次はその……ちゃんと、声掛けてから……ね?」
顔を逸らしながら了承する。
信頼の効果は絶大なようだ。
これがもっと警戒心の強い、あるいは羞恥心の強い艦娘だったらこうはいかないだろう。
「あと……優しく……してね?」
「あぁ……分かったよ」
自分が言った言葉が、ある意味とても危険だというのに気付いているのだろうか?
いや、気付いてないだろう。気付けるくらいならもっと反抗しているはずだ。
離れていた手が、またゆっくりと近付く。
「じゃあ皐月、触れるよ」
「ん……いいよ、司令官……」
画質の荒いカメラでも、耳まで真っ赤になっているのがはっきりと分かる。
手がスカート越しに触れる、先ほどはいきなり揉んでいたが、今度は撫でるように優しく。
「んぅ…!くすぐったいよ、司令官!」
「我慢してくれ」
さわさわ、と撫でていく。
尻の膨らみの頂点を中心に、全体のフォルムを確認するだけ、という体を装うように。
あるいは、スカートの質感を楽しむように。
ただ、撫でる。
「司令官……検査って……これだけ?」
「いや……次は、もっと頼みにくいことをしてもらう」
「えっと、じゃあ今言ってくれる?心の準備が必要だから……」
撫でる手を止めず、告げられる。
「次は、スカートを上げてもらう」
「えぇっ!?それじゃパンツ見えちゃうよ!」
手の中で二つの山、と言うほども発達していない膨らみが暴れる。
「今でも……すっごい恥ずかしいのに……パンツまで……?」
「必要なことなんだ」
「うぅ……えっと、それで…終わり?」
手が押し付けるように動き、尻がさすられる。
皐月は気付いているのだろうか?
「いや、スカートを上げてもらったあと揉んで確認する必要がある。それと――」
「――下着を下ろし、中も確認。それで終わりだ」
告げられた言葉に、伏せながら震える金髪の、幼い少女。
「パンツの中まで……見るの?」
「見る、必要がある」
必要だと、はっきりと告げられる。
「何故見る必要があるのかは、言えないんだ……すまない、皐月」
俯き、伏せ、悩む。
彼女との付き合いは薄いが、知っている。
彼女はとても、優しい。
自分の羞恥心の為だけに、人の頼みを、必要だと言われていることを無碍には出来ない。
絶対に、出来ないくらいには優しい。
「うん、分かった!」
顔を上げ、振り向き、にっこりと微笑む。
「でも……恥ずかしいから……出来るだけ早く、ね?」
* * * * * * * * * * * * *
「んぅっ!少し寒い、かな!」
下着が下ろされ、露わになる。
まだ何者も受け入れたことの無い秘部。
ぴっちりと閉じられ、つるつるとしている。
それを挟むように存在する、キメ細やかな肌の膨らみ。
撫でられ、さすられ、揉まれ、じんわりと赤く温まっている。
「あの……司令官?」
尻を突き上げるような卑猥な姿勢。
その奥からの声。
「これで、確認終わり?」
引き受けたものの、恥ずかしいのは変わりない。
検査で必要だとは言え、やっぱり男の人に見られるのは、恥ずかしい。
「いや、"中"を確認する必要がある」
カギのように手を伸ばす。
「えっ?中ってパンツの中じゃ……ひゃぁっ!!」
むんず、と尻が掴まれ、親指で薄い肉が寄せられる。
すぼまりが晒される。
「ちょ、ちょっと!そこ!?中って!……んぅ!」
荒い鼻息がすぼまりに掛かり身悶える。
偶然か、わざとか。分からない。
「ダメ!そんなとこ!見ちゃ……やぁっ……」
荒げた声が弱まる。
肉を寄せた親指が動き、すぼまりの形を変えていく。
残った指も尻肉に食い込み、揉みしだく。
「すまない…!皐月……!どうしても、ここを見る必要があったんだ……!」
謝罪の言葉と、行動が一致しない。
まだ未熟な尻を揉み、手で蹂躙していく。
そして青葉は見てしまった、司令官のズボンの前面。
そこがはちきれんばかりに膨れ上がっていることに。
「んぅっ!どのくらい……!見るの……!?」
揉まれている皐月は、気付いていない。
気付いたとしても、その意味が理解できるかも不明だ。
「もう少しだからな…!もう少しだけ……」
開いたり、閉じたり。
周囲を揉み、押す。
あくまでも、すぼまりには触れないように。
「あんっ、んんっ!」
軽い嬌声。
激しく振られる、金色の帯。
腰が揺れ、手から逃げようとする。
それを止まらせる、約束。
手がピタリと止まる。
「終わりだ、皐月」
何を基準に、終了したのかは分からない。
何を見ていたのかも、分からない。
「あっ……うぅ……」
ぐてり、と腰が布団に着地する。
その上、小さな背中が大きく上下し荒い息を処理している。
手を突き、上体を起こしていく。
湿り気のある、小さな鼻息。
「これで……もう、無い?」
真っ赤に腫らした目をこすり、聞く。
ぐす、ぐす、と音が聞こえる。
下着は、下がったままで、気に留められてない。
「皐月、すまないが……」
そんな状態の彼女に掛けられるのは、
「明日、もう一度行う。今度は精密なやつを、だ」
要精密検査。
レポートは、まだ始まったばかりだ。