※この作品はR-18です。

五月菊   作:田島春

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「簡易検査」

 ゆっくりと色褪せた真鍮色のドアノブが回る。恐る恐る、ゆっくりと。

 音を立てないように、慎重に執務室の扉を押していく。そろり、そろり。

 この日の為に、事前に蝶番に油を差した。そもそも多少音を立てても中にも外にも誰も居ないのは確認済、それでも癖というか罪悪感からか、こそ泥のように開けてしまう。

 

 扉から顔を覗かせたのは、ボサついた薄紫の髪を束ねた重巡青葉。

 

(失礼しまーす)

 

 心の中で挨拶をしながら、するりと体を扉の内側に滑り込ませ、開けた時と同じようにゆっくりと閉じていく。

 

 青葉が執務室に忍び込んだのはもちろん、スキャンダルの収集に、だ。

 最近、司令官が執務室に閉じこもる時間が増え、怪しげな物を入手しているという情報を掴んだ。そこで執務室にカメラを仕掛け、司令官の動きを監視することにしたのだ。

 当然、盗撮盗聴は犯罪で、機密を扱う執務室となれば厳重処罰対象となる。しかし、青葉は好奇心を抑えられなかった。

 

(さ~て、どんなのが撮れてますかねー)

 

 唇を舌で湿らせながら仕掛けたカメラを回収する。

 数はいくつか仕込んでおり、バレ辛いように非遠隔タイプ。盗聴器も同じく。それらを手早く回収していく。

 

(よしよし!司令官に見つかってはいないようですね!)

 

 全ての機材が触られてないことを確認し、執務机を開き、"手土産"を探る。

 

(時間には余裕を持ってますからね~)

 

 ゴソゴソ。

 特に目ぼしいものは見つからない。

 日報、月報、年報、報告書。あとミント味の飴。

 

(ちぇっ!つまらないものしか無さそうです……)

 

 出来れば司令官の購入した怪しい物品があれば最高だったのだが……。

 と、そこで違和感に気づく。

 

 月報が少しおかしい。

 

(ん~、なんで五月のが二つも……?)

 

 五月月報として綴じられたものが、二冊。

 二冊とも手に取る。重さが、違う。

 

(どっこいせ、と)

 

 鎮守府内で最も豪華な椅子に腰掛け、二冊を並べる。

 片方は分厚い、と言っても他の月報と同程度の厚さ。

 残る片方は、それと比べて薄く――

 

(んー……なんでこちらだけ菊の文様があしらわれてるんでしょうね……)

 

 月報は数回触る機会があったが、このような文様は無かったはずだ。

 机を覗き、他の月のを見てもあしらわれていない。

 

(それになんていうかこう……温かみというか……)

 

 既に九月なのに。

 まるで、最近まで使われていたかのような……。

 

(まぁ考え込んでても埒が空きません!)

 

 腕時計をチラリと見るが、時間はあまり気にしなくてもいい。

 この部屋の主は今日は帰ってこない、秘書艦も同行している。

 

 時間はたっぷりある。

 

「では!御開帳~~~」

 

   *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 

 

 

 

 

 

  睦月型駆逐艦皐月の臀部に対する重点的身体検査記録

 

 

 

 

 

   *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 

 

 ドキリ、とした。

 最初はプライバシーの侵害――ある意味それ以上のことをしているのだが――特に身体検査に関してだと相当に気まずい、と思った。

 

(五月……菊……うっわぁ……)

 

 なぜこれがこのような装丁をしているのか、その意味が理解できた。

 これは、もしスキャンダルならば大当たりだ。

 スキャンダルで無くとも、大当たりだ。

 どちらの大当たりも、望んだものではない。

 

 深入りするのは怖い。

 

(これはやばいですよ!やばいかもですよ!)

 

 見たら、引き返せない。

 

(でも!でも……!)

 

 確認せずにはいられない、ページを捲る手は止まらない。

 空いた片方の手で回収した盗撮機材を取り出し、持ち込んだ小型の再生機材に繋ぐ。

 ここまでしまうのは、もっとまずい。それはわかっている。

 

 それでも青葉は再生を始め、ページを捲った。

 

   *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 

 

 

   初回記録

 

    簡易検査

 

 

 

   *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 

 

 レポートの日付を元に、動画の再生を早送りをする。

 画面に金色が揺れる。

 早送りを止め、通常再生に戻す。

 

「ただいま到着しました、司令官!」

 

 執務室の分厚い扉の前で、元気一杯に敬礼する金髪の少女。

 その少女の二つ結びの髪は、まだ揺れている。

 

「よく来てくれたね、皐月」

 

 白い背広の背中が映る。

 皐月をこの執務室へ呼んだ本人。この執務室と、この鎮守府全体の主。

 提督。

 

「ボクに用事がある、って聞いたんだけど?なになに!お菓子?」

 

 可愛らしい見た目とは裏腹な一人称も、溢れ出る元気の為か不思議と似合う。

 

「いや、今回は身体検査についてだよ」

「身体検査?それならこの前やったけど……特に異常は無かったよ!」

「あぁ、大きな異常は見つかっていない。ただ少々気になることがあってね……」

 

 一旦言葉を区切る。

 

「機密に関わることなので、細かくは言えないが……今回の身体検査は"一般的”なものだっただろう?」

 

 言わんとするところは、わかる。

 艦娘はその所属と性質上、少々扱いが厄介だ。

 今回の身体検査もいたって普通の身体検査、外部から医療関係者を呼んで行ったもので、身長やら体重やら視力やらの一般的なものだ。

 今言っているのは、そういう部分"以外"のことについてだ。

 

「知っているとは思うが、艦娘についての幾つかの事柄は、機密の関係で工作艦明石にすら任せられない部分がある。そのような部分についての検査だ」

 

 青葉は困惑した。

 これは本当に、"ただの"機密なのではないだろうか。

 読んだ時に想像した、いやらしい意図無く……ただ、機密の為にレポートの題目をこなしたのでは無いだろうか?

 

 何にせよ答えは、動画とレポートの中にある。

 

「あー、そういう事なんだ!それならしょうがないね!」

 

 朗らかな、眩しい笑顔で答える、金髪の少女。

 

「それで、その検査はボクは何すればいいの?」

「ふむ……頼みづらい事ではあるのだが――

 

 帽子を目深に被る。

 

――そこの布団に、四つん這いになってくれないか」

 

 ドクン、と青葉の心臓が跳ねる。

 分かっていても、驚いてしまう。

 

「うん!」

 

 皐月は大きく、元気よく頷いた。

 

 

 

   *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 

 

 

「んしょ、と……これでいいかな、司令官?」

 

 皐月は、執務室の隅に敷かれた布団に四つん這いになる。

 

「これからどうするの?お馬さんごっこ?」

 

 小さな尻を振り、司令官に無邪気に聞いている。

 ごくり、と生唾を飲む音が聞こえたのは幻聴か、ノイズか。

 

「いや、そのまま楽にしていてくれればそれで良い」

「んー……了解!」

 

 釈然としないながらも、いつも通りに答えている。

 そう言えば、司令官は駆逐からの評判が良かった覚えがある。

 信頼、されていると言えばいいのだろうか。

 しかし、その信頼を築くのが、今回のような……

 

 ぶるぶる、と青葉は頭を振る。

 確認、確認が第一。

 

 画面の中で、司令官の手が皐月のまだ小ぶりな尻へと伸びていく。

 

「ひゃぁ!ちょ、ちょっと!どこ触ってるの司令官!?」

 

 ふにゅりふにゅり、とお尻をスカート越しに揉まれ、二つ結びが振られる。

 

「驚かせてすまない。どうしても、ここを検査する必要があるんだ」

 

 尻の持ち主が振り向き、ジッと顔を見ている。

 カメラからは司令官の顔は見えないが、皐月の様子からして真剣な表情で言っていることが窺える。

 

「分かった……でも次はその……ちゃんと、声掛けてから……ね?」

 

 顔を逸らしながら了承する。

 信頼の効果は絶大なようだ。

 これがもっと警戒心の強い、あるいは羞恥心の強い艦娘だったらこうはいかないだろう。

 

「あと……優しく……してね?」

「あぁ……分かったよ」

 

 自分が言った言葉が、ある意味とても危険だというのに気付いているのだろうか?

 いや、気付いてないだろう。気付けるくらいならもっと反抗しているはずだ。

 

 離れていた手が、またゆっくりと近付く。

 

「じゃあ皐月、触れるよ」

「ん……いいよ、司令官……」

 

 画質の荒いカメラでも、耳まで真っ赤になっているのがはっきりと分かる。

 手がスカート越しに触れる、先ほどはいきなり揉んでいたが、今度は撫でるように優しく。

 

「んぅ…!くすぐったいよ、司令官!」

「我慢してくれ」

 

 さわさわ、と撫でていく。

 尻の膨らみの頂点を中心に、全体のフォルムを確認するだけ、という体を装うように。

 あるいは、スカートの質感を楽しむように。

 ただ、撫でる。

 

「司令官……検査って……これだけ?」

「いや……次は、もっと頼みにくいことをしてもらう」

「えっと、じゃあ今言ってくれる?心の準備が必要だから……」

 

 撫でる手を止めず、告げられる。

 

「次は、スカートを上げてもらう」

「えぇっ!?それじゃパンツ見えちゃうよ!」

 

 手の中で二つの山、と言うほども発達していない膨らみが暴れる。

 

「今でも……すっごい恥ずかしいのに……パンツまで……?」

「必要なことなんだ」

「うぅ……えっと、それで…終わり?」

 

 手が押し付けるように動き、尻がさすられる。

 皐月は気付いているのだろうか?

 

「いや、スカートを上げてもらったあと揉んで確認する必要がある。それと――」

 

 

 

「――下着を下ろし、中も確認。それで終わりだ」

 

 

 

 告げられた言葉に、伏せながら震える金髪の、幼い少女。

 

「パンツの中まで……見るの?」

「見る、必要がある」

 

 必要だと、はっきりと告げられる。

 

「何故見る必要があるのかは、言えないんだ……すまない、皐月」

 

 俯き、伏せ、悩む。

 

 彼女との付き合いは薄いが、知っている。

 彼女はとても、優しい。

 自分の羞恥心の為だけに、人の頼みを、必要だと言われていることを無碍には出来ない。

 絶対に、出来ないくらいには優しい。

 

「うん、分かった!」

 

 顔を上げ、振り向き、にっこりと微笑む。

 

「でも……恥ずかしいから……出来るだけ早く、ね?」

 

 

 

   *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 

 

 

「んぅっ!少し寒い、かな!」

 

 下着が下ろされ、露わになる。

 まだ何者も受け入れたことの無い秘部。

 ぴっちりと閉じられ、つるつるとしている。

 それを挟むように存在する、キメ細やかな肌の膨らみ。

 撫でられ、さすられ、揉まれ、じんわりと赤く温まっている。

 

「あの……司令官?」

 

 尻を突き上げるような卑猥な姿勢。

 その奥からの声。

 

「これで、確認終わり?」

 

 引き受けたものの、恥ずかしいのは変わりない。

 検査で必要だとは言え、やっぱり男の人に見られるのは、恥ずかしい。

 

「いや、"中"を確認する必要がある」

 

 カギのように手を伸ばす。

 

「えっ?中ってパンツの中じゃ……ひゃぁっ!!」

 

 むんず、と尻が掴まれ、親指で薄い肉が寄せられる。

 すぼまりが晒される。

 

「ちょ、ちょっと!そこ!?中って!……んぅ!」

 

 荒い鼻息がすぼまりに掛かり身悶える。

 偶然か、わざとか。分からない。

 

「ダメ!そんなとこ!見ちゃ……やぁっ……」

 

 荒げた声が弱まる。

 肉を寄せた親指が動き、すぼまりの形を変えていく。

 残った指も尻肉に食い込み、揉みしだく。

 

「すまない…!皐月……!どうしても、ここを見る必要があったんだ……!」

 

 謝罪の言葉と、行動が一致しない。

 まだ未熟な尻を揉み、手で蹂躙していく。

 

 そして青葉は見てしまった、司令官のズボンの前面。

 そこがはちきれんばかりに膨れ上がっていることに。

 

「んぅっ!どのくらい……!見るの……!?」

 

 揉まれている皐月は、気付いていない。

 気付いたとしても、その意味が理解できるかも不明だ。

 

「もう少しだからな…!もう少しだけ……」

 

 開いたり、閉じたり。

 周囲を揉み、押す。

 

 あくまでも、すぼまりには触れないように。

 

「あんっ、んんっ!」

 

 軽い嬌声。

 激しく振られる、金色の帯。

 腰が揺れ、手から逃げようとする。

 それを止まらせる、約束。

 

 

 手がピタリと止まる。

 

「終わりだ、皐月」

 

 何を基準に、終了したのかは分からない。

 何を見ていたのかも、分からない。

 

「あっ……うぅ……」

 

 ぐてり、と腰が布団に着地する。

 その上、小さな背中が大きく上下し荒い息を処理している。

 手を突き、上体を起こしていく。

 湿り気のある、小さな鼻息。

 

「これで……もう、無い?」

 

 真っ赤に腫らした目をこすり、聞く。

 ぐす、ぐす、と音が聞こえる。

 下着は、下がったままで、気に留められてない。

  

「皐月、すまないが……」

 

 そんな状態の彼女に掛けられるのは、

 

「明日、もう一度行う。今度は精密なやつを、だ」

 

 要精密検査。

 

 レポートは、まだ始まったばかりだ。

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