ねてもさめても、あのえがお 作: 池田
学校の片隅の女子トイレ。
その個室の中で、私は一人。
鍵もかけずに、ただひたすらに息を潜め、待つ。
私はソーニャ。殺し屋だ。
この学校で昼は女子高生として過ごし。
夜は仕事に赴く。
そんな二重生活を送っている。
今のところ、私が殺し屋だと知っているのは二人だけ。
一人は折部やすな。
もう一人は呉織あぎり。
それ以外の人間にとって、私はただの女子高生。
だけどもう一つ。
やすなも知り得ないような、大きな秘密がもう一つ。
それは、あぎりだけが知っている。
「ソーニャ?待ちましたか~?」
「……いや、私も今来たところだ」
「私だなんて……今はそんな風にしなくても良いんですよ?私しか居ないんですから」
「今更『僕』とか『俺』なんて言うのも変だろ」
「それもそれで良い気がしますけどねぇ、ソーニャ君?」
「……その呼び方やめてくれないか」
私が、男だということ。
ある日組織の連中が一体何を思ったのか、男である私に『女子高生』として日常を過ごせなどという頓珍漢なことを言ってきた時は耳を疑った。
こいつら人を殺しすぎておかしくなったのかと一瞬思ったが、話を聞くと彼らは大真面目にそれを検討していたという。
曰く、性別すら詐称することで私の正体を霞ませるのが目的だとか。
確かに最前線で動く役割である以上、正体は霞めば霞むほど私の身の安全は保証される。
しかしそれを追い求めた結果、思いついたのが女装して学校に潜り込むと言う、三流小説家もどきが考えたような方法だと言うのは果たして如何なものだろうか。しかもまともな頭で考えた結果がこれであるというから救いようがない。
しかも、恨めしいことに組織が用意した女子向けの制服がバッチリ似合ってしまうと言う悲劇が起こってしまったのだからもう目も当てられない。あれよあれよと言う間に編入手続きは進んでしまい、私はめでたく女子高生としてこの高校に入学したという訳だ。馬鹿か。
「はぁ……」
「どうしたんです?いきなりため息なんかついて」
「ふと今の生活があとどれくらい続くか考えてた」
「まぁ、少なくともあと二年位はあるでしょうねぇ~」
「勘弁してほしいな……」
「私は割りと気に入ってますけどねぇ」
呑気な口調でそう言いながら、彼女は私のスカートを捲り上げた。
呉織あぎり。
組織の知り合いで、私と同じようにこの学校に身を隠している忍者。
先程も述べた通り、彼女はこの学校で私の体の秘密を知っている唯一の人間だ。
彼女の役割は、主に諜報、偵察、連絡係。
そして、私の性欲の処理。
これまた漫画のような話だが、これまた大真面目であって。
制服や髪型、そして下着に至るまでをすべて完璧に着こなしたところで、やはり私は男なのだ。
性欲が昂ぶり余計なボロを出すことが無いように、と組織の連中はご丁寧にも彼女を用意してくれた。
つまりどういう事かと言うと、ヤりたくなったら彼女を使えと言うことである。
「こんなに大きくして……」
「昼過ぎくらいから、何故かおさまらなくなって……」
しゃがみこんだ彼女の眼前にあるのは、私のいわゆるアレである。
完全に勃起したそれは、パンツを膨らませスカートを持ち上げるほどに膨れ上がっている。
彼女が呼吸する度に、吐息がかかってさらにもどかしい。
「お昼すぎから、ですかぁ」
「これじゃ授業にならない、早く……」
「仕方ないですねぇ」
パンツが降ろされる。
抑えこまれていたモノが、解放された。
そしてすぐに、彼女の手がそれを握ってくる。
「うあっ……!」
「ふふふ、がちがちですよ」
「あっ、ああっ!」
そのまま彼女は、なれた手つきで私のモノをしごき始める。
スカートの裾がその動きに合わせて、ひらひらと舞った。
「えい、えいっ」
「はぁっ、あっ!あうっ!」
きめ細やかな肌、細い指。
触手のように絡みついて、それでいてさらさらしている。
あまりの気持ちよさに、私は早くも絶頂を迎えようとしていた。
「あ、あぎりっ……!もう……!」
「……もう、イキそうですか?」
「ああっ……もう……!」
「だぁめ」
「なっ、おい……!」
突然、彼女が手を止める。
生殺し状態となった私は彼女に抗議の目を向けるが、あぎりはそんなのお構いなしといった風だ。
「このまま出したら、汚れちゃうじゃないですかぁ」
「じゃあどうしろっていうんだよ!」
「せっかちさんですね、ソーニャは……」
せっかちもクソもあるか、と言いかけたその時。
先ほどとは比較にならないほどの気持ちよさが全身を駆け巡った。
「はむっ」
「う、あああっ!?」
「ん……んむっ、んっ、んんっ」
先ほどの手の代わりに、彼女の口がそれを咥え込んで頭を前後させている。
舌が全体をまんべんなく、激しく強く扱いてくる。
こんなの、耐えられる人間なんかいるんだろうか。
「ぷぁっ、はむ、んちゅっ、んっ」
「あぁっ、あぎりぃっ!」
「ひもひいいれふか~?」
「咥えたまま、喋るなぁっ……!」
「あむ、はぐ」
「んぐぅうっ……!」
頬の裏、舌、歯。
そのどれかに触れる度に、全身を貫くような刺激が走る。
「んふふ、つらそうれふね~?」
「ダメだ、気持ち良すぎてぇ……っ!」
「んんっ!」
気が付くと私は、あぎりの頭を抑えこんでいて。
より深く、自らのモノを彼女の奥へと突っ込もうとしていた。
彼女が少し苦しそうな声をこぼす。
だけど、もう止まらない。
気持ち良いことしか、考えられなくなっていた。
出したい。
このまま、彼女の口に。
思い切りぶちまけたい。
そんな私の心を察したのか、彼女の舌は更に激しく動き出す。
「あぎりっ!あぎりぃっ……!」
「んっ、はぁっ、ソーニャ、んぷっ」
肌と肌がぶつかり合う音がはっきりと聞こえるほど、激しく突っ込みながら。
ややあって、私はやっと絶頂を迎えた。
「で、出るぅっ!うあ、あああああああっ!」
「んんっ、ん~っ!」
彼女の口内に、私の精液がぶちまけられる。
不規則な拍動と、快感を伴いながら尿道を駆け抜けた粘液。
まさに、天にも登るような。
今この瞬間だけは、絶対的な幸福に包まれているような。
そんな錯覚さえ起こさせるあぎりの舌使い。
こんなの、病みつきになってしまうじゃないか。
「ああっ、はああっ……」
「んぐ、んぐっ……」
あぎりが喉を鳴らしながら、吐き出されたものを一気に飲み下す。
ついでに、私のソレも舐めて綺麗にしてくれた。
「はぁ……これで、汚れずに済みましたね」
まるで何事も無かったかのようにそう言いながら、彼女がにっこりと余裕の笑みを浮かべる。
対して私はと言うと、抜けそうな腰をなんとか騙しながら立っているのが精一杯。
「……大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫……」
「には見えませんが……」
しかし口でされて、腰が抜けたなんてなんとも情けない……。
全く、自分で自分に呆れそうだ。
「しょうがないですねぇ……流石にここにずっといるわけにもいきませんし……」
「大丈夫だって……」
「無茶はしないほうが良いですよ、とりあえず空き教室まで行きましょうか~」
彼女が私の体を持ち上げる。
結局この後、抵抗むなしくよりにもよってお姫様抱っこなんかで空き教室に運び込まれるという醜態を晒したのであった。
逆だろう、普通。
「落ち着きましたか~?」
うなだれる私に向かって、いつもの調子で彼女が話しかけてくる。
さっきまでしていたことが、まるで夢だったみたいだ。
「……あぁ、なんとか」
「まさか、腰が抜けちゃうなんて思いませんでした~」
「誰のせいだと……」
「……気持ちよかったですか?」
悪態の一つでもついてやろうと思ったけど、あぎりが上目遣いでいきなりそんなことを聞いてくるものだから。
私はすっかり毒気を抜かれた気分になってしまって。
「……あぁ」
などとぶっきらぼうに答えるしかなかったのだった。
すると彼女は少し嬉しそうにしながら、人差し指を唇に当てて。
「……したくなったら、またいつでも言ってくださいね」
なんて、やはりいつもの緩んだ顔でそんなことを言った。
その後はそれぞれ教室に戻って、私は何食わぬ顔で午後の授業を受けていた。
だけど、さっきの彼女の表情が何故か頭から離れなくて。
授業の内容なんか、これっぽっちも入ってこないのだった。
つづく。