「銀………愛人になってくれないか?」
土方に、そう言われてからもう何ヵ月経っただろう?
俺は、今ホテルに来てる。土方と来ていたラブホじゃなくて、ちゃんとした普通のホテル。土方に結婚式に呼ばれた。愛人を普通呼ぶか?って思うけど、俺も何気に来ちゃってるんだよね。まぁ、神楽や新八たちも呼ばれてるし、俺だけ行かないって言うのも変じゃん。
土方は、白のタキシードを着ていて黄色の百合をポケットに挿してる。いつもよりイケメンになってるけど、言ってやんない。
式に出るの俺は、耐えられるのだろうか?綺麗な人だとは思うけど、吐き気が半端ない。
式が始まる前に、トイレに駆け込んだ。
何も食べてないから、吐くものなんて無いけど……。
俺ってば、こんなにも土方のこと好きなんだ。
足取り重く待ち合い室に戻ると、式が始まるらしく皆、移動を始めていた。
「銀ちゃん、大丈夫アルか?」
「あぁ、行こう。」
神楽が心配するも、無理に笑顔を作って会場に向かった。終始、気分が悪く特に二人が誓いのkissをするときがヤバかった。披露宴になっても出てくる食事に手を出すこともできなかった。
「銀さん、具合悪かったら家にいた方が良かったんじゃないんですか?」
式場からの帰り道、吐き気は治まることなく新八からも心配され、一人で寝ときたい気分。
「う~ん、そうだね。悪りぃけど、今日神楽を泊めてやってくんねぇ?」
「今日だけじゃなくても、銀さんの体調が良くなるまで良いですよ。」
「ゆっくり休むヨ。」
「そうね。頼むわ。」
神楽たちと別れて、家に着くとすぐに風呂場へと向かった。
相手の女の匂いが付いていそうで、一刻も早く洗い流したかった。お湯なんて蛇口からでないし、溜めて沸かすまで待てなくて水のまま入った。
気分が悪い俺には、この冷たさが丁度良かった。
「銀、居ないのか?」
アレから何時間経ったのだろう?誰かの呼び掛けで我に帰った。
蛇口からは、止まることなく水が流れていて浴槽から溢れて排水溝に流れていた。
「銀!!何やってるんだよ。」
声の方を向くと、土方が立っていた。なんで、此処に居るんだろう?
「なんで、居んの?」
「式での様子がおかしかったから………ごめん。お前を呼ぶ予定じゃなかったんだけど。」
そう言って風呂場に入ってきた土方が、蛇口を閉めて水を止めるとお姫様だっこして浴槽から出してくれた。
「濡れるよ?」
「乾かせばいいだろ?」
「奥さんのとこ帰んなくて良いのかよ?」
「酔い潰れて、寝たから。」
脱衣所で身体を拭かれながら、外が暗くなっていてだいぶん時間が経ったのだとわかった。
土方は、タキシードからいつもの着流しを着ていた。
「こんなに冷たくなって………本当にゴメン。近藤さんが………気づいた時には、招待状出しちゃっていて……ゴメン。」
土方は謝ることしかしなくて、気づくと俺は服を着ていた。
「いいよ。俺も出席に丸付けちゃったし………けど、やっぱり嫌だった。」
「本当、ゴメン。」
その晩、土方は朝方まで一緒に居てくれた。
さすがに、出勤近くまでは無理でAM4:00頃には帰ちゃったけど……。
土方の結婚式から1週間、風邪を引いた俺が治ると同時に土方は新婚旅行へと出掛けた。
式から立ち直ったと思ったら、また立ち直れそうにない。
「ハァ~」
愛人って楽じゃねぇな。このところ夜、月を見てると自然と涙が出てくるようになってしまった。
この2泊3日俺、耐えられるかなぁ?
一応、お土産くれるみたいだけど………。
土方が旅行に行ってから、5日後愛人になってから買って貰ったケータイにメールが届いた。
[今夜、いつもの居酒屋で……]
[了解]
いつも、短い文面。万が一文面を見られても女とも、愛人とも思われないようなそんな文面。
土方は、3つのケータイを使い分けてるからいつもすごいと思う。そういうところは、やっぱり真撰組の頭脳なだけあるなぁと思う。俺なんて、あんまり感情を出さないように短くするのが精一杯なのに……。
ガラガラと引き戸を開けるとオヤジのダミ声が聞こえた。
「いらっしゃい。銀さん今日も土方さんと呑むのかい?」
「まぁ、そんなとこかなぁ。オヤジいつもの。」
いつもの席、柱の横の席に座る。
この柱に凭れ掛かってお酒を呑むのが好きなんだよね。
枝豆をちびちび食べながら、ビールを呑んでいるとガラガラと戸が開いた。
「悪りぃ……遅くなった。」
土方が謝りながらも、隣に座る。
このところずっと土方は、謝っているような気がする。
「オヤジ、いつも……「はい、これ奢りな。」
「ん?」
土方が首をかしげていると『結婚したんだろ?それの祝いだ。』とオヤジが揚げ出し豆腐とビールを土方に渡す。
「オヤジ、俺には?」
「銀さんは、何も祝られることないだろ?」
「うーぅ………」
「それにどうせ土方さんの奢りだろ?結婚したてで、お金いるんだからあんまりたかっちゃダメだよ。」
「いいんだよ。コイツ逆玉の輿なんだから…」
「そうなのかい?」
「オヤジ、焼き鳥くれるか。」
それから、一時間ぐらい呑んで俺たちは店を出た。
「行くの?」
「あぁ……先に行ってる。」
「いつものとこ?」
「決まってるだろ……」
結婚したばかりなのに、もう愛人と逢ってるってどういうことだよ。まぁ、あまりノリ気ではないけど、逢えたのは嬉しい訳で……。
少し時間をおいて土方のあとを追った。
いつものホテルの前。
ここ受付には人がいないから来やすいんだよな。部屋番は、決まって10号室。この部屋だけは空けて貰ってるらしい。
ドアを開けるとベッドの上で待っている土方がいた。
「早く来いよ。」
少し前までは、ホテルに来てもシャワーをお互い浴びていたが、愛人になってからは、家で入ってくることが多くなっていた。
少しでも、俺と一緒に居たいらしい。
そう思ってくれるのは、嬉しいんだけどな。
ベッドに上がると頭を掴まれ、kissされた。
舌を絡めながら服を脱がされそのまま押し倒された。このときばかりは、少し奥さんへの罪悪感があるんだけどね。
「なに考えてる?」
土方が無愛想に睨み付けながら言った。
「なんか悪いなぁって……」
「アイツにか?」
土方は決まって俺と居るときは、奥さんの名前を呼ばなかった。だから、俺は奥さんの名前を知らなかった。
「あんまり気にすんな。」
髪を撫でられ、耳を舐めてきた。
「くすぐったいってば、耳やだ。」
身を
「ちょっと、やだってば……」
涙目になるとようやく止めてくれた。
「耳はやだってばいつも言ってるだろ?」
「やだってことはさぁ……感じてるってことじゃないのか?」
「………うーん?悪寒なら感じるけど?」
「なんだよ。それ。」
首を舐められ、痕を付けながら下へと土方が頭を動かしていく。
クチュクチュと水音がし、体温が自然と上がっていく。
「もう、良いって……」
亀頭を舐めようとする土方の頭を押さえ止める。あまり、舐められるのは好きじゃなかった。土方は舐めると必ず飲むから……。
「飲ましてくんねぇの?」
「やだかんな。」
「飲みたい。」
俺の腰を持ってお腹に頭を置いて横たわった。
「やだよ。なんで、あんな不味いもの飲みたいんだよ。」
「なんか、飲むと俺のもんだって感じしねぇ?」
「しない。」
即答で答えると諦めたように、身体を起こした。
「ちょっと、淡白すぎねぇ?」
「そんなこと言われてもなぁ。」
もう、昔みたいにはなれないよ。土方のこと好きなのは変わんないけど、それでもそれは
どれだけ忙しくても1週間に1日は逢っていた俺たちが、土方からの連絡が途切れ何事もなかったかのように日々が過ぎていった。俺からは、連絡しない。というよりは出来ないに近い。もし、連絡したときに奥さんが傍に居たらと思うと怖くて出来なかった。土方はいつでもしてきて良いって言うけど……。
そんな時、約二ヶ月ぶりに土方から連絡があった。いつも居酒屋でだったのに、万事屋へ行くと……。直感でナニかがあった。と思った。良くないこと……ついに別れ話かなぁと……。
「悪いな、急に……。」
着流し姿で来た、土方の横には結婚式以降逢うことのなかった土方の奥さんが立っていた。
「なんで……?」
急な吐き気に襲われ、次の言葉がでない。
「お前に話があって連れてきた。」
話?土方だけじゃダメなの?
「ごめんなさい。私が無理を言って連れてきて貰ったの。どうしても直接謝りたくて……」