※この作品はR-18です。

オズの国のドロシー   作:LFぼーむ

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ACT.14 人さらい

朝、小鳥の囀りと共にドロシーの目が覚める。

「う…ん…」

下半身の涼しさを感じ、微睡みながら目線を落とすと、自分の胸から下が完全に外気に晒されていることをに気づく。

だんだん意識がはっきりし、昨日の記憶が思い起こされる。

(そうだ…私、オ…オナニーして…そのまま寝ちゃったんだ…)

タンクトップは捲れて両胸が完全に露出しており、下半身には何も身につけていない。

よく見るとシーツの一部が染みになっており、昨夜どれだけドロシーが愛液を垂れ流したかを物語っている。

(何考えてるんだろう私…あんなことされた直後だったってのに…)

その少し前に自分の身に起きたことを思い出し、恥辱に頬を紅潮させる。

チップはまだ寝ているようだ。こんな乱れた姿を見せるのは恥ずかしい。ドロシーは急いで普段の魔女服に着替える。

 

「ふぁ…おはようお姉ちゃ…っ…!」

丁度目覚めたチップはドロシーの姿を見て朝の挨拶をするが、昨晩の光景を思い出して語尾を濁してしまう。

「ど、どうしたのチップ?」

昨晩抜けだしての戦闘、帰宅後の自慰など色々と後ろ暗いことのあったドロシーは、少年の奇妙な反応に少し慌てる。

「う、ううん、なんでもない…」

チップ自身も昨晩の光景が夢か判断がつかず、そう答える。どうやら杞憂だったと考えたドロシーは改めて少年に朝の挨拶をする。

「おはようチップ。よく眠れた?」

「うん!お姉ちゃん!」

少年らしい、無邪気な顔で答えるチップ。

 

「よろしいよろしい。それじゃあ出発しようか、チップ♪」

昨日のことがあったが、ドロシーはやはりオズの国の中央都市、エスメラルダを目指し続けることにした。あれからオスカーが何処へ行ったのかは気になるが、見当がつかないものは仕方がない。

優先すべきことは他にもある。自分のせいで封印が解かれてしまった目の前の少年、チップのことだ。

エスメラルダはコッローディのような良い魔法使いが大勢いて魔物の脅威も抑えられているときく。そこの魔法使い達にチップの体質をなんとかしてもらえるかもしれないし、そこでチップを保護してもらうこともできるかもしれない。都市部にいればオスカーの情報も集まってくる可能性も高いので、ドロシー個人にとっても都合が良かった。

 

 

 

ドロシー達はカウンターのある1階に降り、昨日人混みでスった金を出して会計を済ませた。エスメラルダへの道を確認しようと、ドロシーは宿屋のおかみさんに話しかける。

「ねえおばさん、私たちエスメラルダに行こうと思ってるの。」

「あらあらあんな大都会に?長い旅になるけど、女の子2人で大丈夫なのかい?」

おかみさんは心底心配そうにドロシーに尋ねる。こんな荒れた街にも良い人はいるものだ。

 

「大丈夫♪。私たち両方とも、魔法が使えるからさ、獄鬼はへっちゃらよ」

チップが男であることは特に説明せず、ドロシーは明るく答える。

 

「それなら心強いねえ。でもね、道中には獄鬼だけじゃなく人間にも用心したほうがいいよ」

声をひそめておかみさんはドロシーに囁く。

「人さらい、ここ数年多いんだよ。」

「人さらい?」

「そうともさ。この街だけでもひと月に5,6人くらいがとなり町に出かけたっきり帰って来なくなっちまうんだ」

「獄鬼に食われた…とかじゃないの?」

「そういう場合だってあるだろうけどね、人さらいがいるのも事実さ。覆面を被った集団に連れ去られかけたって人が何人もいるんだよ。特に…」

おかみさんはチップを指さす。

「最近は子供の被害が特に多いんだ。このあいだも肉屋のトンプソンさんとこの息子さんが連れ去られてしまってねえ。親父さんと馬車で移動中のところを襲われたんだとさ」

こんなかわいいお嬢ちゃんなんだから、人さらいもほっとかないと思うよ、とおかみさんはふざけていかめしい表情をしてみせてチップを驚かす。しかしすぐに心配そうな表情でドロシーのほうを向く。

「全く、獄鬼だけじゃなく同じ人間にも気をつけなきゃいけないなんてねえ。嫌な世の中だよ… だからね、お嬢ちゃんたち、道中で変な奴らがいたら声なんてかけないで見つかる前に離れることだよ」

 

「わかった、気をつけるよ。色々親切にしてくれてありがとうね、おばちゃん」

エスメラルダへの道へ続く門の場所をおかみさんから確認し、ドロシー達は宿屋を後にする。

 

 

――――――――――――――――――――――――

街の南側の門を出ると。道の向こうには巨大な森が見えた。

「まーた森かぁ…」

マンチキンを抜ける際はネッサローズの手下である翼猿の目を欺くために森は都合が良かったが、そういう状況でもなければ平野のほうが望ましいのだ。

鬱蒼と茂る森は獄鬼が身を隠し獲物を狙うのに最適である。それは人さらいにとっても同じことだろう。

「かなりでかい森だ…迂回もできない…か…」

よし、と覚悟を決めるドロシー。

「仕方ない。突っ切るよ、チップ!」

「わかった!頑張るよお姉ちゃん!」

チップは素直にドロシーに続く。

 

 

それから数時間、陽はもう西に傾きかけている。ここまでの間に弱めの獄鬼何匹かに遭遇したが、ドロシーは軽くいなしていた。

妙にトカゲやカエル型の獄鬼が多いのが気になったが、場所によって獄鬼の種類も変わるのだろう。マンチキンの森よりもジメジメしていて、なるほどそういった生き物には適した環境ではあった。

 

もう少ししたら野宿の場所を決めなくてはとドロシーが思っていたその時、荷馬車の音がわめき声と共に聞こえてくる。

「…!チップ…」

チップに静かにするよう促し、ドロシーは身を低くし周囲を探る。

低木の茂みの向こうに、ドロシー達が歩いている道とは別の道があった。ドロシーが出発した街の方向から荷馬車がやってきていた。

いや、それは荷馬車ではなかった。馬の代わりにフードを深く被ったひょろ長い男が2人、荷車を引いている。結構な大きさの車なのにその2人は小走りのスピードを維持して、足並みを乱すことなく進行していく。

わめき声は荷車の中から聞こえてくる。白い天幕に覆われていて様子は視えないが、中年男の罵声と子どもたちの鳴き声だった。

 

荷車が茂み越しのドロシー達を通り過ぎようという時、14、5歳程の男の子が荷車から飛び出してくる。

手を後ろ手に縛られているので上手く着地できずに顎から地面に激突してしまうが、すぐに立ち上がり死に物狂いで走りだす。

「あっ…こら糞ガキィ!!」

怒声とともに同じくフードを被った中肉中背の男が飛び出してくるが、着地の際に転んでしまい、男の子とはどんどん距離を離されていく。

 

突如、荷車が停止し、それを曳いていたひょろ長い男の1人が男の子を追いかける。

妙にかくかくした動きなのにそのスピードは速く、男の子はあっけなく捕らえられてしまう。

ひょろ長い男は中背の男に逃げ出そうとした男の子を渡すと、そそくさと荷車の牽引に戻る。

 

「離せぇ!俺の街に帰るんだ!離せ!」

フードの男は大暴れする男の子の脚を縛りなおし、猿轡を噛ませ、荷車に放り込む。天幕の中からは複数の呻き声が聞こえ、まだ何人か子どもたちが捕らわれているようだ。

 

 

(あいつら…間違いない…おかみさんが言ってた人さらいだ…)

ドロシーはチップの口を塞ぐ手を緩めないまま、茂み越しにその様子を観察していた、

(どうにかして助けなきゃ…相手は3人…ただの人間なら楽勝だけど魔法使いだったら…)

チップの安全を確保することも考えながらドロシーは作戦を立てようとする。

 

「ガキが手を焼かせやがって…どうせクィベリオン様の生け贄になるならぶっ殺してから運ぶほうが楽なのに…めんどくせえ…」

中背の男が頭をボリボリ掻きながらぼやく。

すると、荷車を引いていた長身の2人が中背の男のほうを向き、男とも女ともつかない無機質な声を揃えて中背の男に抗議する。

「ギンタ…ギンタサガス…」

 

 

(!!!)

予想だにしなかった名前が出てきてドロシーは自分の心臓が一瞬止まってしまう感覚を覚えた。

(ギンタ…?どうしてギンタンの名前が…)

 

「あーハイハイわかってるよ。ギンタとやらを探す必要があるからガキの生け贄は生きたまま持っていく、な。この森抜ければ俺らの根城だ。さっさと進もうぜ」

うんざりした調子で答える中背の男。驚きの声をなんとか抑えたドロシーは彼らの会話を一言一句漏らさぬよう聞き耳を立てるが…

 

 

「おお~っとぉ。覗き見はいけねえぜお嬢さんたちぃ」

ドロシーの背後から声が響き渡る。

 

中背の男がドロシー達に気づくが、彼女らには目もくれずに虚空に、恐らく先ほどの声の主に向かって話しかける。

「バ、バラム様、いらしたのですか?」

「おう、チスよ。こいつらのようなネズミが入ることもあるからな。たまに抜き打ちで同行せよとクィベロン様のご命令だ」

 

「あ、ありがてえこってす…へへ…」

姿も見えぬ声の主に向かって、ヘコヘコと揉み手をする中背の男。チスという名らしい。

「こいつらもすぐ捕まえて生け贄の足しにしますんで…」

「いや、この女だが、見たとこ魔女らしい。遊んでみたいからお前らはそのちっこい金髪のガキを捕まえて先に向かってろ。」

 

「言わせておけば…!」

姿の見えない相手だが、ある程度の予想はつく。流暢な人語を喋っている点から、相手は人間だろう。

ドロシーが今まで会った獄鬼は人の言葉を喋らないか、喋れたとしても片言だった。

 

それならば、とドロシーは道の中央、森の中でも比較的開けた場所に陣取る。

相手が地に足のついている人間ならば、必ず地面を蹴って接近してくる。

その音に素早く反応することなど、戦闘経験を積んだドロシーであれば他愛無い芸当だった。しかし…

 

ドロシーの服に突如斬撃が走り、彼女の左胸がぷるんと揺れながら外気に晒される。

「っ…!!」

続いて右腰の布がはじけ飛び、Vラインはおろか、陰部まで見えてしまいそうになる。

そして左肩部分も消し飛んで、ノースリーブとなる。

更にスリット部分から背中にかけて亀裂が走り、ドロシーのお尻が丸出しになってしまう。

 

「そんな…地面を蹴っていない…?地上にいない…? …きゃあっ!?」

ドロシーの身体が見えない何かに捕らえられ、引き上げられる。

 

「っ?真上から!?」

 

透明な敵はドロシーの真上にいた。空中から彼女を攻撃していたのだ。

 

ではどうやって空中で動いていた?

見えない敵に捕まり空中に引き上げられながら考えるドロシー。

彼女の頭上に張り出した樹の枝がギシギシと揺れる。

敵はあれに掴まっていた?しかし高さ4m程の枝に掴まれるということは身体の長さも相当な筈…

 

【挿絵表示】

 

「まさか…っあん!」

ドロシーの露出した胸が突然形を変える。白く、大きな胸はつねられ、こねられ、形を自在に変えられている。

見えない手に揉まれているのだ。

 

ドロシーの脚が別の見えない手に掴まれ、股を強制的に開かされる。これでは地上にいる人間たちに大事な箇所が丸見えである。掴んでいる手が見えないので、あたかもドロシーが自分から足を開いているようで、ドロシーの顔は恥ずかしさで真っ赤になる。

 

彼女を捕らえ、弄んでいる指は明らかに5本より短く、硬い爪を有し、その体温は低かった。

 

「きゃ!」

突然、何か暖かくてヌルヌルした触手状のものがドロシーの顔を舐め、端正な顔にネトネトした液体が付着する。

更に、剥き出しのお尻に妙な熱気を持つブニブニしたものが2本、押し当てられ、そのまま内ももへ滑り込んでくる。

どちらも、人間の持っている器官ではない。

 

「人間じゃない…獄鬼…?」

 

 

「そのとーーーーり!」

“それ”はドロシーの予想を確信に変えるかのように、自らの姿を現した。

 

【挿絵表示】

 

トカゲのような獄鬼だった。鱗に覆われた緑色の肌、平たい身体、しかしその顔は蛙のようで、目は巨大な円錐形をしている。口からは長い長い舌が伸びている。それが先ほどドロシーの顔を舐めたのだ。自分を捕らえている生物の不気味さに、ドロシーは嫌悪の表情を向ける。

長い尾の先は張り出した枝に巻き付いており、それ自身とドロシーの重さを完全に支えていた。

 

「あんた…獄鬼の癖にずいぶん言葉が上手なのね。」

「お嬢さん、ちゃんと喋れる獄鬼は初めてかい?獄鬼にもランクって奴があるのさ。言葉を喋れない奴、片言の奴は動物と一緒よ。自分より強い存在に従うだけの、動物。

我々のように知能も魔力も上級な獄鬼こそが、地獄における霊長なのさ。」

自分が今まで戦ってきた獄鬼よりも更に上のランクの獄鬼が存在することに戦慄するが、ドロシーは強気で返す。

「地獄っていうところがあるんなら、そっちに帰んなさいよ。何の目的があって人間の世界にいるのさ?」

「目的かぁ…そんなの決まってるだろう。増える。繁栄する。侵攻する。生き物なら当然のことだぜ?みんな一緒だ。

ただ1つ、そこらの野山で本能のまま人を食ったり孕ませたりしている下等獄鬼と違うところがあるとすれば…」

獄鬼は地上からこちらを見上げるチスを指さす。

「一部の人間を心酔させ、利用して、餌や母胎を集めさせるのよ」

獄鬼は愉快そうに笑う。

 

人さらい事件の元凶はこいつらだったのだ。

コッローディは言っていた。人間の中には獄鬼を信仰する者達もいると。

そういった人間を煽動し、各地から自分たちの餌や母胎となる人間を攫わせ、生け贄として献上させる。

「効率的に捕食し、繁殖する。これが知能を持った獄鬼のやり方よ」

「最っ低よ…あんたら…」

 

「“母胎”がいっちょまえに文句つけるんじゃないよ」

ふとドロシーは視線を自らの下半身に移す。獄鬼が姿を現している今ならわかる。先ほどから下半身に押し付けられていたものの正体…

「トカゲ型獄鬼のちんこは2又に分かれてるんだぜぇ?2本で膣を代わる代わる突いてもいいし、片っ方を尻の穴に入れてやってもいい。さあ、どうしてほしい?」

おぞましいほど真っ赤な紅緋色のペニスが2本、獄鬼の股から生えており、それぞれドロシーの秘裂や菊穴をこじ開けようと擦り付けられている。

 

「そんなの死んでもごめんだよ!クレイジーキルト!」

ドロシーの指輪が光り、キルトでできた小さな人形が出現する。

「あー外にでるの久っさびさ!おやまあドロシー、あのゴーストARM使いと戦ってる時と同じようなかっこしてどうしちゃったのさ。気持ち悪いガーディアンに捕まってる分、今のほうが余計エロティカルだよ!」

出てくるやいなや脳天気にマシンガントークを始める人形に、獄鬼もチップ達も口をぽかんと開けてその様子を見てしまう。

「相変わらず五月蝿いわね…こいつはガーディアンじゃなくて獄鬼っていうのよ。どうでもいいから歌いなさい!」

トトの時と同じ、魔力がどんどん吸われていく感覚に危機感を覚えたドロシーはクレイジーキルトを急かす。

「やれやれ、人使いの荒いお嬢さんだこと…」

人形はすうっと息を吸い込む動作をすると、次の瞬間耳をつんざく不快音波が撒き散らされる。

不快音波は地上にも届いているようで、チップやチスたちも耳を抑えている。

(チップ、ゴメン!)

頭の中をぐしゃぐしゃにされるような感覚に、獄鬼もたまらずドロシーを離し、自身を支える尻尾も樹の枝から離してしまう。

 

獄鬼と共に地面に叩きつけられたドロシーは腰を抑えながらも立ち上がり、クレイジーキルトの召喚を止める。

「やっぱそこそこのクラスのガーディアン喚ぶのは魔力がキツいね…」

 

不快音波を聴き、のびてしまった獄鬼の首にダガーナイフを押し当て、掻き切って止めをさす。

「これで一番強いのはやっつけたようね。」

 

 

 

 

「そんな…バラム様を…ち…畜生…」

チスも覚悟を決めたのか、短刀を取り出してドロシーを威嚇する。

 

(まずいな…やる気か…)

チスたちは知る由もないが、ドロシーは魔力切れ状態にあった。クレイジーキルトの召喚が思った以上に魔力を使った。もうゼピュロスブルームで小さな風を起こすくらいしかできまい。

それを悟られまいとドロシーはチスに対して強気に出る。

「見逃してやるから子どもたちを置いてさっさと行きな。」

 

さあ、逃げてしまえ、そう心のなかで願うドロシーだったが…

「ギンタ…ギンタ探す…」

2人のひょろ長い男が不気味な声で喚く。

「そういうことだ。こいつらはこいつらで譲る気はないようだし、俺だってクィベロン様への生け贄を渡すわけにはいかねえ。」

 

「っ…やめときな、どうせあんたじゃ勝てっこないよ…」

ドロシーの顔に焦りの色が見えてくる。チスは逸早くそれに気づいてにんまりする。

「まさか…もう魔法が使えないんじゃないか?」

頭の悪そうな男の癖に感が鋭いのが腹立たしい。

「そのようだな…」

ジリジリと迫り来るチス。魔法が使えない以上、腕力の勝負では男性3人相手では負けてしまうだろう。

 

ドロシーはゼピュロスブルームを起動させ、風を地面に打ち込む。

「ぐおおっ!?」

砂塵が舞い、視界を覆う。ドロシーはチップを抱え、全力で走り出す。

 

しかし、目眩ましの砂塵はものの数秒で落ち着いてしまう。

「小賢しいことしやがって!それが最後の魔法かぁ?この程度の時間稼ぎじゃあそう離れてはいねえよなあ?」

 

その通りだった。砂塵を起こした直後、チップを抱えたドロシーはとっさに茂みの中に隠れこんでいた。チス達との距離は目と鼻の先。

 

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チス達の動きを耳で感じることに集中しながらも、ドロシーはチップの安否を確認する。

ドロシーは正座のままうつ伏せになったようなポーズをとっていた。

彼女の視界に映るのは地面と、チップの下半身。脚が上になっているので…

ドロシーはチップの頭を尻に敷いているということになる。しかもチップは仰向けになっているので、後頭部でなく顔がドロシーの下半身と接触している。

「チ、チップ、大丈夫?」

小声でチップに話しかける。

「ん…んむ…」

苦しいだろうが、なんとか息はできるようだ。

しかし、チップがしゃべろうと唇を動かそうとしてドロシー自身も初めて気付いたが、チップの唇はドロシーの陰唇と接触していた。

スリットスカートが破れている上に、隠れる際に乱れてしまったことも重なったのだろう。布越しでなく、チップの唇とドロシーの秘裂は直接触れ合っていた。

 

陰部への刺激に思わす出そうになった声を抑えて前を見ると、目の前にはスカートを押し上げてこんもりと膨らむチップの股間があった。それを見てドロシーはこの状況を脱するための突破口を思いつく。

チップからの魔力の供給だ。

 

いたずらに喋ったら見つかってしまう。ドロシーはチップには何も言わず、彼のスカートを捲る。目の前に飛び出してきた可愛らしいそれを、ドロシーは思い切って咥え込む。

「んむっ…」

チップの表情の動きが自分の陰部にも伝わり、またしても出そうになる声を抑える。

 

「ん…ちゅ…」

なるべく吸引音がたたないよう、ゆっくりと、ねっとりと、少年のペニスを吸い上げる。

このような方法に頼らないといけない自分の、この世界での弱さを恥じるドロシー。

しかし魔力切れ状態で成人男性3人と戦うにはあまりにも分が悪い。これしか方法はなかった。

 

チップも必死に声を殺しているが、ドロシーの与える快楽に抗えずに唇をモニョモニョと動かしてしまう。唾液に濡れたチップの柔らかい唇がクリトリスを愛撫し、ドロシー自身も声が出そうになるのを我慢する。

 

昨晩から気になっていた、自分を守ってくれるお姉さんの大事な部分。それが目の前にある。ヌルヌルした液体が奥から分泌されていてそれが自分の唇から出てくる唾液と混ざり合い潤滑油と化す。敵に見つかどうかという状況下であったとしても、こんな厭らしいものを見せつけられながらのフェラチオに、少年は堪らず絶頂へと到達してしまう。

 

ビクビクとはねるペニスから自らの口の中に溢れ出てくる少年のドロっとした精液を、ドロシーはごくりと飲み下す。

瞬間、自らの身体に魔の力が満ちていくのを感じる。反撃開始だ。

ドロシーはさっと茂みの中から立ち上がり、こちらに背を向けている3人に向けてネイチャーARM、ゼピュロスブルームを構える。

「こっちよ!ゼピュロスブルーム!!」

 

無数の風の刃がチス達を襲う。

「ぐぅあ!」

風が彼らのフードを切り裂き、3人の素顔が現れる。

 

チスの素顔は、頭がハリネズミのようにツンツンしているだけの普通の中年男だった。彼はそのまま木に身体を叩きつけられ、痛みに呻いている。暫くは立ち上がれないだろう。

 

しかしあのひょろ長い、人間味のない男2人は全身を切り裂かれても全く苦しみの声をあげず、吹き飛ばされもしない。

フードが破れて現れた顔は、声と同じくとても中性的で、無個性であった。男とも女とも判断できない顔つき。頭には髪の毛一本生えていない。

「何よこいつ…」

 

切り裂かれたのは全身の服であり、もう彼らの身体を覆う布はない。

その股間には、何もついていなかった。

男を示すものも、女を示すものも。

「性別が…ない…?」

 

あまりのことに、ドロシーはつい攻撃を中断してしまう。

その隙をつき、男達、いや、“それら”のうちの1体がドロシーを突き飛ばす。

 

「いったぁ…」

ドロシーは身体を起こそうとするが、向こうの追撃が来ないことに不審を覚える。

 

 

 

 

2体の視線はドロシーに釘付けになり、動きを停止していた。

突き飛ばされて尻もちをついた彼女は股をM字に大きく開き、目の前の2体に女性器を惜しげも無く晒している。

 

「…ちょっと、何見てんのよ、エッチ。」

足を閉じて抗議するが、そうしてもなお今の格好はまじまじと見られたいものではない。

ドレスの左肩は破れ、胸が露出している。腰も、尻も、大きく破けている。美しい顔には粘液が付着し、淫靡さを引き立てている。

「…まあ男でも女でもないなら関係ないか… …え…」

 

ムクムクと、2体の股間から立派な肉棒が生えてくる。腕も、脚も、筋肉量が大きくなっていき、肩幅も広くなる。

 

「あれ?生えちゃった?」

それらは一斉にドロシーに覆いかぶさり、ドロシーの手足を押さえつける。

 

「な、何よいきなり!」

「オンナ…オンナ…」

うわ言のようにつぶやきながら、いきり立った肉棒をドロシーに押し付けようとする。

 

「お姉ちゃんから離れろ!」

ドロシーを襲おうとする2体の人間にしがみつき、どうにか引き剥がそうとするチップ。念動力で動かせる手頃な岩や木片が近くに転がっていないため、身1つで彼らを止めようとする。

しかし先ほど以上に筋肉量を増した彼らの動きを制するには、彼の華奢な肉体は全く役に立たなかった。

 

「うわあああっ!」

羽虫でも振り払うかのようにチップは投げ飛ばされてしまう。

 

「っく!ブリキン!」

魔力供給のおかげでガーディアンを出す余裕ができた。もみ合っているドロシー達の頭上に巨大な土の兵士が現れ、彼女に纏わり付こうとする2体を踏みつぶす。

巨体を強引に召喚した当然の結果として、ドロシー自身もダメージを受けてしまう、自爆覚悟の戦術だった。チップが投げ飛ばされて離れてくれたからこそ、この方法を選択できた。

 

ブリキンを腕輪に戻し、彼らの死体を確認したドロシーは驚きの声をあげる。

巨体に踏み潰され、片方は左半身が、もう片方は腰から上が完全に潰されている。

しかし、彼らの死体がぶちまけているのは、血や臓物ではなく、土だった。

「何よこいつら…」

傷ついていない部分も徐々に色あせていき、彼らの死体はグズグズの土の塊に変貌していく。

 

 

 

 

「こいつらは土人形だよ。モンビって魔女のババアが使役している作り物の兵隊さ。」

腰を強打してまだ立ちあがれないでいるチスがドロシーに教える。

「そいつがギンタってガキを探したいからってんで、俺たち崇鬼教と手を組んでるのよ。あっちは土人形を兵力として提供する、こっちは生け贄用に攫ってきた子供の中にギンタってガキがいるかどうか確認するのを許可する、って条件でな」

 

「そ、そのモンビって魔女の居場所は!?」

 

「それは知らん。生け贄の儀式の場に現れて、集まってきた子供をギンタかどうか確認してるだけだからな。あいつの根城については俺ら下っ端は全く把握してねえよ。」

 

「ならあんた達が儀式する場所を教えなさいよ!」

チスの肩を掴み、ドロシーが怒鳴る。

 

「勘違いすんなよ嬢ちゃん。」

「俺はあのババアが気に入らねえからそいつの情報はホイホイ喋るが、崇鬼教側の不利になることは絶対に言わねえよ。俺らに敵対してくる魔女に根城の場所を教えるものかよ。」

「力ずくでも吐かせるといったら?」

声を低くして凄むドロシーを諦めたように見つめたのち、チスは先ほどドロシーを威嚇するのに用いた短刀を自らの首に突き立てる。

「詰めが甘えな嬢ちゃん… クィゲロウク様… これで御身の元に…」

晴れやかな顔で息を引き取るチス。予想外すぎて自害を止める為の反応が遅れてしまった。

 

小物のようでいて、戦闘能力がない割に芯の通った男だった。

魔法の才を持たないが故自棄になるトンワンのような人間がいる一方で、

己の弱さを補ってもらおうという一心から獄鬼なんかに心酔して身も心も捧げてしまう人間もいるのだろう。

 

しかしドロシーはチスが土人形としていた会話を憶えていた。

『この森抜ければ俺らの根城だ。さっさと進もうぜ。』

森を抜けた先に、獄鬼を崇拝する集団、畏鬼教の根城がある。

そこにギンタなる少年を探そうとする魔女、モンビがいる。

 

ギンタ… もしかしたら名前が同じだけで別の人物かもしれない。

しかし、もし彼のことだったら。

もし、メルヘヴンを救い、自分の初恋の相手であるあの少年のことだったら。

彼が自分と同じようにこの世界に召喚された可能性だって考えられる。

 

「…ギンタン…」

そう呟きながら、ドロシーはゆっくり立ち上がる。

身1つでオスカーを止めるために迷い込んだこの世界。辛い経験だってした。

しかしこの世界にギンタがいるかもしれない。

この可能性が、不安だらけのこの世界でドロシーに勇気を与えてくれた。

 

探そう。

この森を抜けて、モンビという魔女と接触する。

きっとギンタンの手がかりを掴んでみせる。

 

荷車の中で囚われていた子どもたちの縄を解き、森の入り口まで送り届けたのち、ドロシーとチップは再び森の中に入っていった。

 

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