ドロシーとギンタが南下しながら目指す温泉街跡地から西に存在する荒れ地。
普段は獄鬼のみが生息する無人の地に、数人の男が野営している。
皆黒衣に身を包んでいる。
数日前にオスカーと名乗る男と手を組み、ARMを人々に普及させる手伝いをしている集団だ。
彼らはオスカーとは別行動で、ARMの普及活動および獄鬼の討伐を行っていた。
本日はこの地で、ギロムという名の男と合流して追加のARMを分けてもらう手はずとなっている。
「遅い…」
そう呟くリーダー格の男の名は、マルキスという。
もじゃもじゃした脂っこい黒髪を気だるげに掻き上げ、溜息をつく。
道中で通った温泉街跡地で偶然出会った蛞蝓型獄鬼の討伐を行ったので待ち合わせ時間に少し遅れてしまったと焦っていたが、向こうのほうが大遅刻しているようである。
温泉街跡地で救った桃色の髪の女性のことが気にかかる。
あの地にいた蛞蝓の獄鬼は1匹残らず駆除したが、最寄りの町までたどり着くまでに別の獄鬼に襲われる可能性は充分にある。
あの時、彼女を保護しようと思っていたのに、あっという間に消えてしまった。
裸でいたのだから我々の前に姿を見せるのが恥ずかしかったのかもしれない。
あの時何故裸だったのか、穢らわしい魔法使いに何をされていたのか想像するだけで身の毛がよだつ。
大方、獄鬼から守ってやる代わりに身体を要求されていた、といったところだろう。
魔法使いや魔女はいつもそうだ。
特にエスメラルダの魔法使い連中は自分らを神に選ばれた人間だと本気で思っている。
もし神が選ぶというのなら、あの毒の魔法使いのような下賎が選ばれ、自分のように心から人々を護りたいと思っている人間が選ばれない道理がない。
生まれ持って備わるあの呪われた力など、決して神の力などではない。
神の力とは、神導器のことだ。
400年前、当代のオズ大王のもとに現れた天使が遣わしたとされる14の聖具。
その1つである操鉄杖ドリンを、手に取り、マルキスは痛いほど握りしめる。
魔法使いでなくても行使できる大いなる力…
そう。力とは心からそれを求めたものに与えられるべきなのだ。
しかし世界にたった14個しかない神導器では全ての民を獄鬼から護ることはできない。
だから神は魔法使いや魔女として生まれる人間が一定確率で発生するように世界の理を作り変えた…というのが魔法使い連中の言い分だ。
だがそんなことは認めない。神が人々に力を与えるとすれば、相応しいものの手に力が渡るようなやり方にする筈なのだ。
その考えを、世間に説き続けて10数年。魔法使いをありがたがる連中は自分を気狂いの類と決めつけた。気を悪くした魔法使い達にリンチにあったこともあった。
しかし遂に、答えの1つにたどり着いた。
褐色の肌の筋肉質な男が率いる4人組。
彼らが渡してくれたARMというものは、まさに神導器であった。
使うのに訓練がいる、上級なものを使うにはある程度の適性が必要、などの欠点はあるが、
驚くべきことに量産可能だという。
これが普及すれば魔女や魔法使いは必要ない。人々は自分の力で家族や大切な存在を獄鬼から護ることができるのだ。
世界が変わる。カペルという男にARMを見せられたとき、マルキスはそう確信した。
その革命的な事象の渦の中で、自分という存在が役割を持てるという僥倖。
魔法使い共よ、魔女共よ、神に選ばれるとはこういうことだ。
マルキスはほくそ笑む。
それにしても、あの温泉街跡地にいた彼女はとても美しい女性だった。無事でいるだろうか。
彼女のようなか弱い人々を護るべく、獄鬼に、魔女や魔法使い共に、神の鉄槌を下さねばならぬ。
そう決意するマルキスの耳に、若い男性の焦ったような声が響く。
「マルキス殿…」
目に入ったのは自分と志を同じくする仲間の姿。
ギロムと一緒にARM普及活動を行うことになっている者だ。
「おお、遅かったな。ギロム殿はどこへ?」
「それが…突然喚き散らして何処かへ行ってしまい… 止めたのですが力およばず…」
男性は怪我した肩を押さえてマルキスに伝える。
「…お前は怪我の手当てをしろ。オスカー殿に問いただしてみる。」
そう言ってマルキスは通信用のARMを取り出す。
「オスカー殿、聞こえますか。」
『ああ、マルキスさん、ギロムには会えたかい?』
陽気でありながら、低く落ち着いた声が虚空から響く。
「それが…ギロム殿と行動を共にしていた者と離れて何処かへ行ってしまい…」
「ギンタがいるとかどうとか仰っていました。」
肩を怪我した男性が補足する。
『…ハァ、すまんなマルキスさん。あいつ、ちょっとおかしくてな。…こっちから別の人間を送ろう。』
―エスメラルダとギリキン間の緩衝地域内、とある林内―
「ギロムは?」
長身の男がオスカーに問いかける。
「行方不明だと。恋い焦がれるあまり遂にギンタの幻が見えちまったらしいぜ。
身体を“オズ仕様”にチューニングする過程でちょっとおかしくなっちまったんだな。」
やれやれといった調子でオスカーは手を上げる。
「…申し訳ありません。私の技術不足で…」
長身の男、カペル・マイスターはオスカーに頭を下げる。
「いい、いい。元々あいつは頭が良くなかったからな。最初から鉄砲玉として使うつもりだった。
弱っちい鉄砲玉を“キレちまってる”が破壊力のある鉄砲玉にしてくれただけでも感謝してるぜ。カペル。」
「勿体なきお言葉…」
カペルは深々と礼をする。
「気狂い仲間の長鼻人形のほうは意外と真面目にやってくれてるのになあ…
ま、そういうことだ。カペル、悪いがギロムの代わりにマルキスのとこに行ってARMを補充してやってくれ。」
「御意。」
そう短く言うと、カペルは背から黒い翼を生やして夕空に消えていった。
ドロシーとギンタは、ときどきモンビ城の方向を振り返って追っ手が来ないか確かめながら草原を歩いていた。
もう半日も歩けば温泉街につく。そこの空き家をお借りして身体を休めよう。
モンビからの追っ手が来ているかどうかは逐一ウォッチングバードで監視していればいい。
ドロシーがそのようなことを考えていると、ギンタが自分たちの向かっている方向を見て、不安げに自分を呼ぶ。
「おねえちゃん、あれ…」
この草原には草以外にも低木がまばらに茂っている。
2人から少し離れた茂みの裏に、異形の姿が数体…
そう、北の魔女モンビや東の魔女ネッサローズ、オスカー達の追っ手に注意するだけでは足りないのだ。
この世界には、獄鬼という化物がそこら中にいて人間を狙っている。
「あっちも私達に気付いてる…戦いは避けられない、か…」
ドロシーはゼピュロスブルームを出現させ、戦闘態勢に移る。
「いくよ、ギンタ。」
「うん!おねえちゃん!」
敵は獏のように鼻が長い4足歩行の獄鬼と、蝶のような獄鬼、大量の茨の中央に巨大な薔薇がついているような植物の獄鬼の3体だ。
「!あいつは…」
ドロシーとギンタは薔薇の獄鬼を知っている。
マンチキンを脱出する時に彼らを襲い、ドロシーの魔力を吸い取ってピンチに陥れた獄鬼だ。
あの時コッローディという魔女が通りかからなければ、ドロシーは子鬼の集団の慰み者になっていただろう。
「あイつか?美味イ魔力の女トいウのハ…」
蝶の獄鬼は薔薇の獄鬼に問いかける。薔薇の獄鬼は返事代わりに花弁を収縮させて肯定の意思を表す。
驚いたことにあの時のと同じ個体の薔薇獄鬼のようだ。
「うわ…私を追って追ってきたの?お仲間と連れ立ってご苦労なことね…」
ドロシーが薔薇獄鬼に襲われたのはマンチキンとギリキンの国境付近であり、エスメラルダとの緩衝地域でもある場所だった。
ドロシー達はそこから少し西に逸れつつ南下して地底湖の街に行き、
そこから北上してギリキンに入ったのがこの場所である。
なので薔薇の獄鬼はそこまで長距離を移動したわけではなかった。
寧ろ数日前に出会った極上の餌が、まだ付近にいた事に驚き、悦びを隠せないでいるようだ。
「もう魔力を吸われるのはまっぴら!喰らえっ!ゼピュロスブルーム!」
充分休息をとり、魔力が回復したドロシーの一撃が薔薇の獄鬼の身体を裂く。
中央の巨大な薔薇部分の1/3がちぎれかかり、分厚い花弁の皮一枚で繋がっている。
「魔力切れが一番怖いからね。あんたを先に始末させてもらうよ。」
とはいえ最初の一撃でほぼ致命傷だ。長くは保つまい。
確実にとどめを刺そうとするドロシーに、蝶の獄鬼と獏の獄鬼が立ちふさがる。
虫型、植物型、獣型同士で連携しての狩り…
「仲良しね…どの魔王様に仕えるだのなんだの争ってるのは上級の獄鬼だけってわけか…」
下級の獄鬼は難しいことは考えず、食事と生殖で精一杯日々を生きているようだ。
「ギンタ!薔薇をお願い!」
「わかったよおねえちゃん!」
息も絶え絶えの薔薇獄鬼を倒すのにガーゴイルは必要ない。
ギンタはそこらの木枝を人型にして操り、薔薇獄鬼に攻撃しようとする。
ドロシーは獏と蝶の獄鬼を同時に相手にする。
風を発生させて盾にも矛にも利用する戦い方で立ち回り、生まれた隙をついてダガーARMを蝶の獄鬼の胸に命中させる。
が、ドロシーの注意が蝶の獄鬼に逸れた一瞬を獏の獄鬼もまた突いた。
巨躯を利用した突進でドロシーを突き飛ばし、ギンタと薔薇の獄鬼に向かっていく。
「っぐ…!ギンタ!危ない!ガーゴイルを!」
獏の獄鬼は木偶人形では対応できない。今こそガーゴイルを出現させようとするギンタだが…
「…あれ… えいっ!えいっ!…」
ギンタは焦りながらイメージを集中させようとする。
木片や石などは充分な体積が散らばっている。ガーゴイルは形成出来るはず…
「…出ない…どうして…うわあっ!」
獏の獄鬼がギンタに突進する。
木偶人形がクッションになったが、ギンタの小さな身体は弾き飛ばされてしまう。
飛ばされた先は薔薇の獄鬼の花弁の中…
「ギンタ!」
すぐに姿勢を立て直し、獏の獄鬼のほうへ向かっていく。
ガーゴイルが出なかったのは予想外だったが、薔薇の獄鬼は瀕死。
獏の獄鬼を自分が相手すれば終わりだ。
獏の獄鬼と対峙するドロシー。
その獏の背後から、鋭い一撃が放たれる。
「きゃあっ!?」
どうして…獏の獄鬼は飛び道具なんて持っていないはず…
ドロシーの襲ったのは、茨の鞭だった。
「薔薇の獄鬼…もう戦えないはずじゃあ…」
そのドロシーの疑問は、ギンタの姿を見て氷解した。
あの時と同じように、薔薇の触手がギンタの下半身に吸い付いている。
ギンタの精液を摂取したのだ。
魔力回復の効果は獄鬼に対しても有効…獄鬼に関しては体力も回復するようだ。
その効果を、薔薇の獄鬼は憶えていたのだ。
「く…」
ガーゴイルが出なかったこと、ギンタの精液の効果を利用されたことが重なった予想外の逆境に陥った。
だが残りの魔力をゼピュロスブルームに注ぎ込めば、獏の獄鬼と一緒に倒すことができる…
「あれ、ゼピュロス…」
ドロシーの手元にはゼピュロスブルームはない。蔦に弾き飛ばされたときに落としたのだ。
幸いゼピュロスブルームはすぐに見つかった。薔薇の獄鬼の根本だ。
箒を取りに行こうと駆け寄るドロシーの背中に重い衝撃が走り、またもや弾き飛ばされる。
「う…ぐぁ…」
「貴様ノ相手ハ儂ダ。」
獏の獄鬼が頭突きを食らわせたのだ。
地面に身を投げ出して痛みに身を捩るドロシーを獏の獄鬼が組み敷く。
「良ク膨らンダ乳房ダ。さゾ良イ母胎にナルだろウ。」
「…!く…」
薔薇の獄鬼の蔦がドロシーの服を縦に引き裂き、豊満な胸の谷間や臍を覗かせている。
ドロシーは恥ずかしそうに片手で胸を隠す。
「さア、儂の子ヲ為スのダ。」
地面に背をつけたまま足もとを見ると、獏の獄鬼の股間から不気味な、薄桃色の長い肉が伸び、その太さを増していく。
誰が見ても、それは獏の獄鬼の生殖器だった。
「そんなの…御免だよ…!」
獏獄鬼の巨体はドロシーに覆いかぶさってはいるが、身体を掴まれているわけでもない。
身を捩って脱出しようとするドロシーの手足に、赤黒い触手のようなものが伸びる。
「これは…!」
触手は、獏の口から伸びていた。獏の獄鬼の舌が何本にも枝分かれして、ドロシーの身体を拘束している。
身動きのとれなくなったドロシーの胸や股間にも、枝分かれした舌は伸びていく。
服の破れ目から内側に侵入し、直接ドロシーの胸を縛り上げ、乳首や陰核を絞っていく。
「やっ…あっ…んあっ…」
唾液に濡れた舌が敏感な箇所を刺激し、思いとは裏腹に声が出てしまう。
「やっ…はっ…はひぃ…あんっ…」
「良ウく濡らシておクが良イ。儂のモノハ人にハ巨大過ぎルでナ。」
獏の獄鬼のペニスがドロシーの秘裂に押し当てられる。
そのペニスは当然ながら人間のそれとは大きく違っていた。
色は薄い桃色、長さ太さはギンタの腕くらいありそうだ。股間から肩にかけて伸びていて、体躯の半分の長さを誇っている。
亀頭の形状は人間とは全く違う。大きく張ったカリから斜めに円柱状の亀頭が伸びているような形だ。
(嘘…こんなの入れられたら…壊れちゃう……それに…)
この世界の魔物―獄鬼は人間と交尾ができるのだ。
ドロシーの秘裂に迫る巨大な生殖器。それは種族の差など超えて相手を妊娠させることができると確信させる迫力を持っていた。
「い…嫌ぁっ!」
人間ですら耐え難い苦痛だったのに、人ですらない化物と性行為をするなんて、身の毛がよだつ。
ドロシーは自由な左手を伸ばし、秘所を狙って伸びていくペニスの侵入を抑える。
獄鬼は構わず腰を突き出し、結果ドロシーの手はペニスと秘所を隔てるようにして挟まれる。
掌から伝わる獄鬼の亀頭の感触。ブヨブヨとしていながら人の体温より僅かに熱く、見るに耐えないほど不気味だ。
途端、掌にビクンと振動が伝わる。そして次の瞬間…
ブピュ…ブピュ…ピュ…
掌に熱い塊が叩きつけられる。
亀頭の先がすべすべしたドロシーの手で刺激されたのか、挿入前に射精を迎えてしまったのだ。
粥のようにドロドロと濃厚な精液が溢れ、ドロシーの手袋に染みていく。
「や…やぁ…」
人間とは違う存在の精液。その熱を直に感じてしまい、気分が悪くなる。
(ドロドロして熱い… これが私の膣内に入ったら…獏の子供を妊娠しちゃうの…?)
泣きたくなるほど悍ましいその想像は、今彼女の目の前で現実になろうとしている。
挿入前に射精した程度で諦める筈もなく、獏の獄鬼のペニスが早くも硬さを取り戻していた。
舌の1本がドロシーの左手に絡みつき、今度こそ本当に彼女の抵抗手段を奪う。
「うう…ギンタ…助けて…」
想い人であるギンタに言ったのか、その複製であるギンタに言ったのか、自分でも判断がつかない。
そして数瞬遅れて、そんな自分を恥じた。
ギンタンは、彼の故郷で平穏に暮らしている。
今一緒にいるギンタは、まだ子供だ。彼の助けを期待するのではない。本来自分が全面的に彼を護るべきなのだ。
まだ自分にできることはあるはずだ。
いつものように自爆覚悟でブリキンを落とすか?
無理だ。もうブリキンを一瞬だって出せるような魔力は残っていない。あの薔薇の獄鬼に吸われてしまった。
残りの魔力で奴らを倒すにはゼピュロスブルームが必要…それなら…
「リングアーマー!」
ドロシーの指輪が光り、小さな鎧騎士が出現する。
獏の獄鬼はその小さな体躯を笑い、頭突きでいなそうとする。
しかしリングアーマーは獏の獄鬼の予想に反し、彼に背を向けて薔薇獄鬼のほうへ走っていく。
リングアーマーは根本に落ちていたゼピュロスブルームを拾うと、ドロシーに向かってそれを投げつける。
「ありがと、リングアーマー。」
瞬時にリングアーマーを戻し、手首を拘束されながらも限界まで手のひらを開いてゼピュロスブルームを掴みとる。
愛用のARMの、確かな感触に安心する。
ドロシーは大きく息を吸い、叫ぶ。
「ゼピュロス…ブルーーーームッ!!」
突風がドロシーを中心に巻き起こり、獏の獄鬼を巻き上げ、薔薇の獄鬼の蔦を引きちぎっていく。
拘束から逃れたギンタは、尻もちをついた痛みを感じながら、ドロシーの姿を見る。
つい、その姿を美しいと思って見とれてしまった。
初めて彼女と会って、旅をしたときも、あの強さに惹かれていた。
そして、ようやく彼女を護れると思ったのに足を引っ張ってしまったことを思い出し、胸がズキンと痛んだ。
―その夜―
「ん…ん…あっ…んっ!」
快楽を押し殺そうとくぐもった声が、夜の森に響く。
桃色の髪の少女は、身につけた黒衣の上から形の良い大きな胸を片手で揉み、もう片手でスリットスカートを捲り上げて股間を弄っていた。
隣からはギンタの寝息が聞こえてくる。
獄鬼との戦闘が終わった頃には日が落ちていた。
2人は近くの茂みの傍で野宿することにしたのだ。
(寝てる…よね… 隣にこの子がいるのに… 疼きだすともう…)
彼女が自慰をする頻度は最近になって格段に増えていた。
思えば門番ピエロを通ってオズの世界に来てからの戦いは茨の道の連続であった。
メルヘヴンとは魔力の質が違うようで、上級なARMを少し使っただけで魔力が空っぽになるほど燃費が悪くなってしまった中での不利な戦い。
あげく敵の魔女の見世物として、ドロシーは出会ったばかりの少年と無理矢理交わらされ、純潔を失ってしまった。
メルヘヴンでは最弱の魔法使いだったオスカーとはオズの世界では立場が逆転し、敗北ののち一晩中辱められてしまった。
それ以外にも、メルヘヴンでの彼女であれば決して遅れをとらないような相手にも身体を弄ばれかけた。
ドロシーはクリトリスを弄りながら、そのすぐ下にある秘裂を太いモノで蹂躙したオスカーとの行為を、土人形との行為を思い出す。
自分の意思に反する、乱暴で悍ましい行為。心の底から辛く、苦しい時間だった。
だが数日前に処女を失ったばかりの未経験の身体は、充分すぎるほどに性徴した少女の身体は、無理矢理刻みつけられた快楽の記憶に戸惑っていた。
ここ数日、時折身体が疼き、火照ってしまう。それを治めるために、どうしても自分の身体に手を伸ばしてしまう。
「ん…あああっ…!駄目…」
眉間にしわを寄せて辛く目を閉ざしたドロシーの瞼の裏には、四つん這いになって金髪の少年に愛される自身の姿があった。
「ギン…タン…ぁあっ!」
つい彼の名前を呼んでしまいながら、指で肉芽を潰すようにして刺激する。
ギンタと肌を重ねる想像は、この1年間、ドロシーの自慰行為でのお決まりの妄想だった。
だが…
不意に、遠視額装で見せられた光景が浮かぶ。
ギンタンは、幼なじみである小雪という少女と結ばれている。
本来なら知り得ないその事実を突きつけられてしまったのだ。
自分を愛し、抱いてくれるなど、妄想でしかない。決して叶わないことであると。
いつしか瞼の裏に思い描いていたギンタの姿は、変化していく。
裸の自分を犯す少年の体格は逞しくなっていき、金髪は銀色に、薄橙色の肌は褐色に変化していく。
「…ぁ…ううぅぅぅっ!」
悔しいが妄想でしかないギンタとの行為よりも、あの日実際に経験したオスカーとの行為を思い返すほうが、強くドロシーの身体に快楽の記憶を思い起こさせた。
身体がビクっと跳ね、秘所からはサラサラとした液体が溢れてくる。
辛い記憶にドロシーの目尻からは涙が伝うが、身体があの経験を追体験したがっているのか彼女の指は秘裂に押し込まれる。
「う…やぁ…駄目…」
瞼の裏で、オスカーはドロシーの膣に太く黒い肉棒を押し込んでいる。
ドロシーは乳房が変形するほどに胸を激しく揉みしだき、秘所には2本の指を挿入して中をかき回していた。
あの日恐怖を感じたほどの逞しいペニス。瞼の裏で自分はそれを大切なところでくわえ込んで涙を流して犯されている。
子宮の奥がキュンとうずくと同時に、何かが駆け上がってくる感覚に襲われる。
「あっ、あっ、ああっ! イクッ…っ!ああっ、あああああああっ!」
全身を強張らせ、数度腰を突き出すように震わせた後で、脱力する。
快楽の余韻もすぐに醒め、ドロシーの心臓は不安げな鼓動を刻んでいた。
強姦される記憶で自慰行為をしてしまった。その事実は頭を殴られるような衝撃と共に、ドロシーの頭のなかを自己嫌悪で満たしていった。
自分の中に被虐の欲望が少なからずあることは、ぼんやりと自覚していた。
ウォーゲームでの戦いで、何度か身体を縛られることがあった。激しい痛みに耐え切れず喉から絞り出される自分の声は、まるで快楽を抑えるかのような悩ましい声だった。
それでも…
ゆっくりと身体を起こす。ギンタは隣で寝息を立てている。
快楽によるものか悲しみによるものか、ドロシーの顔は涙にグシャグシャになっていた。
(やだよ…こんなの…)
被虐の妄想は妄想だけに留めておくものだ。
実際に陵辱されるなどあってはならない最悪なことだ。
ましてその記憶で自慰にふけるなど…
(私は…好きな人と…ギンタンと…)
またしても、小雪と交わるギンタの姿がフラッシュバックする。
心臓がズキンと痛む。
(小雪ちゃん…ズルいよ… 私もギンタンに……されたい…)
醜く、身勝手な嫉妬であることは充分に自覚しながら、心のなかでそう呟く。
異世界からの少年、ギンタと会って以降、彼の存在は確かにドロシーの支えとなっていた。
彼がいたから、ディアナを倒すという辛い使命も乗り越えることができたと思っている。
それは、ウォーゲーム後彼が去ってからもそうだったのかもしれない。
心の何処かで、いつかギンタとまた出会えることを希望としていたからこそ残りのARM回収も頑張ることができた。オスカーを追って門番ピエロに飛び込む勇気も湧いた。
しかし、その希望は予想もしていなかった方法で粉々に砕かれた。
オズの国のマジックアイテムの1つ、遠視額装ミラーシュの力でギンタンと小雪ちゃんが愛し合っている場面を2度も見せつけられた。
ドロシーの心の拠り所は、泡のように消えてしまった。
私はこんなに弱い人間になってしまったのか。愛する人の存在を心の拠り所にしなければいけないほど。
否、きっとギンタンと出会う前から変わっていない。彼と会う前だって、ディアナに認められたい気持ち。彼女に追いつきたい気持ちで一心不乱に魔法の訓練をしていた。ディアナが罪人となってからはカルデアの掟に従う使命感で心の隙間を必死に埋めていた。
冷徹で飄々とした魔女など、世間を戦う為の仮面に過ぎない。
今も昔も、ドロシーは愛を求め続ける、繊細な少女に過ぎなかった。
ふと横を見る。
目の前にはかつての想い人の複製と言える少年。
(この"ギンタ"は…私だけのもの…)
暗く、熱く、歪んだ欲望が彼女の頭をよぎる。
「ママ…ううっ…」
突然、寝ているギンタが淋しげな声をあげる。
夢を見ているのか、ギンタの目から涙が伝う。
ドロシーはハッと我に返る。
彼は、オリジナルのギンタンが5歳のときに複製として創られ、
5年間モンビによって心と頭を空白にする処理を受けた。
更に5年間、モンビからギンタを奪ったグリンダという魔女によって封印されていた。
そう、このギンタはまだ子供なのだ。
まだまだ両親からの愛が必要な時期に、異世界に連れていかれて、心細いに決まっている。
ドロシーは、少年の隣に横になり、彼の顔を自分の胸に寄せるようにして優しく抱きしめる。
(こんな小さな子供相手に…私は何を考えていたんだろう… 好きだった人の代わりにしようとなんて…)
「おかあさん……」
少年は、寝ぼけながらドロシーの胸に吸い付く。
母に抱かれている気分なのだろうか、服越しにも関わらず、切なそうに懸命に吸おうとしている。
(おっぱい…吸いたいのかな…)
ドロシーは何か決意したような表情をすると自分の魔女服の襟を解いて下にずらし、綺麗で形の良い、大きな乳房を露わにする。
(私には…これくらいしか…)
桜色の綺麗な乳首を寝ているギンタの唇に当てると、条件反射的に吸い付かれる。
「んっ…」
母性か、それとも女性が刺激されたのかもわからないが、ゾクゾクとした興奮がドロシーの背筋を伝う。
無意識に、ギンタの腕がドロシーを抱きしめる。
見れば少し安心したような顔でドロシーの乳房を吸っている。母の温もりを思い出して安心している様子だ。
ディアナを倒した直後、キングに致命傷を負わされた時を思い出す。
息も絶え絶えの私を抱きしめて、ギンタンが言ってくれた言葉…
『お前と喧嘩してると…母ちゃんと喧嘩してるみたいだったからよ…』
ドロシーといると母と接しているような雰囲気だったからこれまで異性としては意識していなかった…という旨を伝えたかったのであろうあの時のギンタンの言葉、今なら納得できる。
ギンタンの母親はディアナと魂が繋がっている。そしてその妹である私に少しだけ母の面影を感じたのは無理も無いことだ。
(安心した顔しちゃって…いいよ、こんなことで代わりになってあげられるなら何度でも…)
それから暫く、ギンタは夢うつつの中で乳房を吸い続けた。
「あっ…んん…っ」
母親代わりのつもりとはいえ、こうも長く吸われるとどうにも変な気分になってくる。
乳首に甘い刺激を与えられ続けると胸の中心がじんじんして、熱を持ち始める。
いけない、と思い、ドロシーはギンタの口から乳房を離した。
ギンタは眠りながら少し寂しそうな表情をしたが、すぐに落ち着いてすうすうと寝息を立て始めた。
本当は純粋で無垢な、年齢相応の子供なんだな とドロシーは思う。
ネッサローズの所為で、あまりに早すぎる精通を迎えてしまったこと。
モンビに埋め込まれた神導器の所為で、定期的に抜いてあげなきゃいけないこと。
そういった邪悪な魔女たちの悪意さえなければ、普通の男の子なのだ。
(早く、神導器の核を取り出す方法を見つけてあげないとね…)
ドロシーは自分の胸を吸うギンタの心臓のあたりに手を添える。
ガーゴイルは、獄鬼を倒した後に試してみてもついに出すことは出来なかった。
きっとモンビの城での出来事は、感情の昂りによる偶然のものだったのだろう。
それに彼の精液には獄鬼の体力を回復させる効果があることもわかった。
彼を戦闘に参加させることは敵を強化してしまうリスクを持っていると言える。
(この子は…ギンタンとは違うんだ。)
モンビの城で彼がガーゴイルを操っている姿を思い出すと、どうしても彼の中に“ギンタン”を見てしまう自分がいた。
自分と背中を合わせて戦うことのできる“ギンタン”のような気がして、今日の獄鬼との戦いで背中を預けるような戦い方をしてしまった。
(そうだよ…まだほんの子供なのに…)
夢のなかで母の愛を求めるような子供にギンタンの面影を見て、戦闘に参加させたり欲情したりした自分が恥ずかしくなる。
このギンタには戦わせない。私が護ってみせる。
そして、精液を排出する行為が必要だとしても、決してギンタンと同一視して変な気を起こさないようにしよう。
ドロシーは改めてそう自戒する。
“ギンタン”が心の支えでなくなってしまった今、ドロシーの中では目の前にいる少年、“ギンタ”を支えになりつつあった。
それはあくまで性愛の対象としてではなく、「“ギンタ”にこの世界で居場所ができるまで、自分が護り続ける」という使命感である。
彼の中にある神導器の核を取り出す方法を探すためにも、オスカーの野望を止めるためにも、そして私がメルヘヴンに帰る方法を探すためにも…オズの国の中心部、エスメラルダ行ってみよう。
そしてそれまでの間、ギンタを守り続けよう。
決して、危ない目には合わせたりしない。
ドロシーは少年の寝顔を見ながらそう誓う。
―ドロシー達のいる場所からそう遠く離れていない森中―
そこには大量の獄鬼の死体と、1人の青年の姿があった。
血塗れで息も絶え絶えの豹型の獄鬼の上に、その小柄な青年は馬乗りになっている。
獄鬼と見紛うくらい、彼の容姿は人間離れしている。
蒼白い肌、白目が真っ黒な眼球。
頭には角まで生えている。
彼は両手に纏った巨大な氷の爪を、彼の下で横たわる獄鬼の横腹に突き刺している。
「オラ、言えよ。ギンタはどこにいるんだって?」
氷の爪を深々と挿入し、内蔵を掻き回しながら青年は問う。
「知ラなイ…」
気が狂いそうな痛みに、豹の獄鬼はのたうち回りたくなるが、彼の四肢は既に折られてそれぞれがあらぬ方向を向いている。
「嘘つけ。確かに聴いたぞ。お前らがギンタの話をしているのを。」
「獄鬼の間デ…噂ニなッテいる…桃色ノ髪の魔女ト金髪ノ子供ガ旅ヲしテイる… でモ居場所ハ知らナイ…本とウ…」
豹の獄鬼は涙を流して話す。
数刻前、仲間と他愛のない話をしていたらこの人間が突っかかってきたのだ。
見れば14,15程度の人間の子供。皆で食ってやろうと襲いかかったら自分以外皆殺しにされてしまった。
「…女のほウはドろシー。程よク発育しテイて母胎ニ最適…そノ上、変わッた味の魔力ヲ持ツのデ、孕マせれバ強い獄鬼ガ生まレテくると噂ニなッてイル。」
少年がドロシーという言葉にぴくっと反応するが、そのまま続きを促す。
「子供ノ名はギンた。精液ニ濃イ魔力ガ含まレていル。キッと喰エば強クなレルと噂さレてイる…特ニ女型の獄鬼ガ狙っテイル…」
もう吐ける情報がないと悟った少年は、豹型獄鬼の首を切断する。
彼がオスカーという男に言い含められてこの世界にやって来て数日が経つ。
ギンタの世界に攻め込むというから協力し、異世界でARMを使えるように身体を改造する手術も受けたというのに、やって来たのはメルヘヴンのような魔法の世界。話に聞いていたギンタの世界とは全く違う。
激高しつつもいつの間にかナイト級にまで強くなっていたオスカーには逆らえずに彼の野望に協力していたところに野生の獄鬼の会話が聴こえてきたのだ。確かにギンタと言っていた。
先ほどの拷問で得た情報。ドロシーと共に行動する金髪の少年。間違いない。
姉の敵。自分の宿敵。
「クハハ…本当にいたのかよ…ギンタァ…」
獄鬼の死体を弄びながら、少年は夜空に向かって吠えた。