――――ドロシー達が昏睡芥子畑で眠りにおちる数刻前―――――――
暗い洞穴の奥地、蝋燭に照らされた空間に、手足を縛られた30代の男性が横たわっている。
彼の下には血で作られた円陣。
円陣の外には、手をあわせて何か懸命に祈っている1人の男性と、それを見守る1匹の獄鬼。
円陣周囲の空間が歪み、赤の混じった乳白色の触手の塊が飛び出す。
触手は縛られた男性の四肢をあっという間にばらし、蛇が獲物を飲み込むようにそれを体内に収めていく。
今まで様子を見ていた獄鬼が飛び出し、獲物を消化している触手を数本掴む。
2足歩行の蜥蜴の姿をしたその獄鬼は、掴んだ触手を思い切り洞窟の石壁に向けて投げつける。
触手の塊は1本1本が繋がり合った群体の形をとっている為、触手塊全体が岩肌に叩きつけられて周囲が血に染まった。
「蛭児だ。」
痙攣している触手塊を指して、蜥蜴の獄鬼は祈りを捧げていた男性に言う。
獄鬼は人語を流暢に操るほど知能の高い上級獄鬼と、動物に使い下級獄鬼に分類される。
蛭児は下級獄鬼の更に下。知能が低いどころか脳そのものが存在しない。
まるで自動で動く消化器と生殖器のような存在である。
「君たちが崇めるのはクィゲロウク様。奉仕の対象はその眷属、両性爬虫類型獄鬼のみだよ。その他が召喚されたら処分だ。」
祈りを捧げていた男はフードを深くかぶり直し、同意とも落胆ともとれる頷き方をする。
「そう気を落とすなよ。今回は予行演習。贄だって底質なものを使ったんだ。呼び掛けに応じてくれないのも仕方ないさ。」
蜥蜴の獄鬼は黄色い眼球を縦に走る瞳を細め、男を慰める。
男は畏鬼教の司祭であり、地獄から地上へやってくる獄鬼を迎えるのが彼の仕事の1つである。
「本番は次の開獄日-サバト-さ。その日に我らがクィゲロウク様の眷属の顕現を手伝えればいいんだ。」
「開獄日…地上と地獄の隔たりが“薄く”なる日…その日に顕現の儀を行えば、上位の獄鬼様を地上にお迎えできるのですね。」
畏鬼教司祭が蜥蜴の獄鬼に問う。
「そう。普通の日では“隔たり”を越えてやって来れるのは下級な獄鬼達のみ。だから今は気楽にやんな。」
「おや…」
血に染まった岩壁を見ると、蛭児が再生を始めている。先ほどの一撃で殺しきれなかったようだ。
「身体の構造が単純な奴は再生力だけはいっちょまえなんだよなあ。さあこいつらどうしようかね…生意気なことに怒ってるよ。女の贄を出せってな。」
食べるにしてもあまり美味いものではないし…蜥蜴の獄鬼がそう考えていると、洞窟の入り口側がやけに騒がしいことに気づく。
「ビル様!司祭様!侵入者です!魔女が1人!」
「“贄”を攫ってきた村の担当退魔師と思われます!」
「なんだよ…集会所の隠し方は完璧って僕に自慢してたくせに、見つかっちゃったのか。」
蜥蜴の獄鬼が面倒くさそうにぼやく。
「そうだ、蛭児をけしかけてみよう。」
「ですがビル様、魔女相手に蛭児では…」
「普通は一瞬で殺られちゃうだろうね。まあ見てなよ。面白いものを見せてやるから。」
シズキの拳が畏鬼教徒のみぞおちにめり込む。同時に、背後から斧を振り下ろそうとする畏鬼教徒の肋骨を彼女の肘鉄が砕く。
「…ふう、このあたりはあらかた気絶させました。」
シズキは頬についた帰り血を拭う。
今のところ、シズキは無傷で畏鬼教徒17人およびヤモリの獄鬼3体を制圧していた。
人・獣型獄鬼+魔女魔法使いで構成された魔女集会―ヘルファイア・クラブ―とは違い、
両生・爬虫類獄鬼+人間の信徒で構成された畏鬼教―ウィッカ―との戦闘において、魔女であるシズキが警戒すべきは獄鬼のみである。
一般人を取り込んでいる為ウィッカのほうが数も多く潜伏範囲も広いが、場所さえ見つければシズキにとって制圧は比較的容易だ。
(獄鬼があまりいない…小さめの集会所なのかな…)
自分の姉貴分である王立討鬼師、コッローディがこのあいだ次の任務の話をしていたっけ…
マンチキン周辺の調査を終えたらザフィーロという街の地底湖に潜むウィッカの集会所の殲滅任務があると。あちらは1月で30人が消えていたそうだ。
一方、このあたりで行方不明者が出始めたのは2ヶ月前からで数は20人ほど。集会所の規模はかなり小さめで、集会所もできたばかりと考えられる。上級獄鬼がいたとして1匹だろう。
規模が大きくなる前に潰せたなら好都合だ。
シズキが奥を進もうとすると足元にぶにゅりと柔らかい肉の感触がし、驚いてとびずさる。
「…なんだ蛭児ですか…」
討鬼師の間では「獄鬼の中で一番弱い」とも言われる触手生物、蛭児。何しろ食欲と性欲以外に脳のリソースを割いていないような存在なため、簡単に倒すことができる。
力は弱くはなく、うっかり触手に掴まれれば脅威だが肉体強化の魔法を使うシズキの敵ではない。
腕に絡みついてきた触手をその金剛力で振り回せば、簡単に引きちぎれる。
「珍しいですね…ウィッカの集会所に蛭児なんて…」
「同胞を地獄から喚び出すのに失敗してね。可愛らしい魔女さんがやってきたようだからお出迎えさせてみたんだ。」
シズキのひとりごとに返事をする声が洞窟の暗闇から響く。
「!!」
フランクに喋るその獄鬼は、2足歩行で歩いてくる。蜥蜴の獄鬼だ。
「出ましたね!貴方がここの集会所を仕切る上級獄鬼!」
戦闘態勢をとるシズキに、手をひらひらさせて首を振る蜥蜴の獄鬼。
「まずは蛭児の相手をしてやれよ。ほらこんなに仲良くしたがってるぜ。」
シズキが“雌”であることを感知した蛭児は、先端が亀頭のようになっている触手を出現させてシズキのお尻や胸に先端を擦りつける。
「あまり軽く見ないでください。蛭児なんてこの通り…」
足首に絡みついた触手を蹴りの動作で引きちぎろうとするが、足が動かない。
蛭児の力が増している…?
もう片方の足で地面を踏みつけ、地面を陥没させて怯ませようと考えたシズキが足元に踵を叩きつけるが、ジャリ…と乾いた音と砂煙があがっただけ…
「どうして…魔法が使えない…」
蛭児の触手はあっというまにシズキを拘束し、シズキは為す術もなく囚えられていた。
「う…どうして…蛭児なんかに…」
蛭児が獄鬼の中で一番弱い、という一般認識はおおむね正しい。
脳がなく、食と性を満たす為の器官しかない肉塊なので戦闘手段のある相手にはめっぽう弱い。一方的にやられてしまうのだ。
しかし、それでも一度捕られられてしまえば魔法を持たない一般人がぬけ出すのは至難である。何しろ大蛇程の太さの筋肉の塊なのだから。
それでも、“怪力”の魔法を持つシズキなら簡単に拘束から逃れることができるはずなのだ。
だが彼女の四肢は触手にがっちりと固定されている。
蜥蜴の獄鬼は愉快そうにこちらを見ている。
そうだ、あの蜥蜴の獄鬼が現れてからだ。あいつがやって来てから魔法が使えなくなった。14歳の少女に相応しい腕力しか振るえなくなった…
蜥蜴の獄鬼の左手には何か、布で覆われた、果物大のものが握られている。もしかしてあれが魔法を封じているのだろうか…
思案を巡らせているシズキの尻に、何か生暖かいものが触れる。
蛭児の触手、その先端だ。勿論、亀頭の形をしている。
「や…やだ…私…初めて…」
言葉をしゃべらない、そもそも知能のない蛭児が応えるはずもなく、性欲という本能に忠実に、触手の先端は少女の子宮を嗅ぎつけその入口に口をつける。
「いっ…痛いっ!」
14歳、処女の秘裂には大きすぎる亀頭が、淡々と侵入を試みる。
ぴったり閉じられたそこに、先走り汁を潤滑剤とした亀頭が埋もれていく。
少女の膣内に何か肉でできた網のようなものが膜を張っているが、触手は構わず進み続け…
「いやあああああっ!!!」
刺すような痛み。少女の結合部から赤い筋が流れる。
それは“知能を持たない畜生に女にされた”という無残な事実を証明していた。
討鬼師…獄鬼を討伐し、人々を護る仕事。それは魔法を持って生まれた自分の使命であり、その他の選択肢は許されなかった。
性欲の旺盛な獄鬼と戦うということは“こういうこと”も常に覚悟しておくということ…
事実、自分の姉も前回の開獄日に獄鬼に敗れ、陵辱の限りを尽くされて殺されてしまった。
それでも、こんな形での処女喪失は避けたかった。
こんなことなら、自分に好意を寄せてくれていた村の若者のアプローチを受け入れればよかった。突然のことにびっくりして、自分にはまだ早いと思って断ってしまったのだ。
やがて、絶望に涙する少女の身体に変化が訪れた。
身を裂かれる痛みのほかに何か重たい、熱い感覚。
触手の張り出した亀頭が自分の膣内のザラザラした部分を擦る度に、何かズシンとした痺れが自分の中に走る。
その頻度はピストン運動の度に増していき…
「あ…あああっ!?」
少女の身体が痙攣し、力なく弛緩する。
(イっちゃった…こんな…蛭児なんかに犯されて…)
絶頂に達したのはシズキだけではなかった。彼女の膣内の触手が太さを増し、ビクビクと暴れる。少し遅れて、自分の奥に熱いものが放たれたのを感じる。
「やああっ!出さないでええええっ!!」
蛭児の精液は少女の子宮をいっぱいにすると、結合部から逆流してくる。シズキはそれを見て、もう後戻りできないほどに穢されてしまったことを知る。
でもこれで終わった…そう思ったシズキの目の前に触手が1本、2本と現れる。
シズキの周囲では無数の触手が順番待ちをするように亀頭を揺らめかせている。
「そんな…」
「むぐっ!?」
待ちきれなくなった触手の1本が、少女の口腔に飛び込み、そのままピストン運動をする。
口にようやく入りきる程の太さの触手が暴れ回り、呼吸が苦しい。
やがて“空席”になった自分の膣内に、2本目の触手が入り込むのを感じた。
「ん…んむーっ…!」
“全部”の相手をするまで終わらない…
少女の瞳は絶望に染まり、光をなくしていった。
―――――――――――――――――
「ゼピュロスブルーム!!」
下級の獄鬼がドロシーの放つ風の刃に切り裂かれる。
ギンタがシズキの悲鳴を聞いた後、2人は洞窟へ入っていった。
ギンタもドロシーも、彼女を見捨てられなかったのだ。この世界で悪人ばかりと出会ったきたからか、シズキのような存在が少し眩しく感じられた。
「ふう…こんなところかな。」
数匹の獄鬼を倒したドロシーは、箒を地面につき立てて辺りを見回す。
どうやら畏鬼教、ウィッカの集会所のようだ。
地底湖にあった集会所と比べるとかなり小規模のようだ。大方はシズキが既に気絶させていた為、あまり派手な戦闘にはならなかった。
ギンタは、眠っていた。入り口近くに張ってあった罠が作動し、乾燥させた芥子の花がばら撒かれた途端、もろにそれを受けたギンタはすとんと眠ってしまった。
間一髪でドロシーは芥子の睡眠毒を吸わずに済んだため、ギンタを安全そうな場所に横たえて探索していたのだ。
(あの花って地上に生えてたやつよね。昼間私達が寝ちゃったのってあれのせいだったのか…)
シズキに殴り倒された教徒の男性2人の身体を跨ぎながらドロシーは考える。
まさか眠っている際に足元でのびている男性達に膣内射精されたことなどは知る由もなかった。
洞窟の奥へと進むと、何やらグチョグチョと音が聞こえる。
「シ…シズキ…!!」
その様子を見たドロシーが目にしたのは、触手が少女の膣を激しく出入りしている光景だった。
豊かに成長した胸以外は14歳の年齢にふさわしい、成熟途中の少女の身体。その繊細な身体を汚らわしい肉棒が好き放題に蹂躙する様は、見るに堪えない光景だった。
「待ってな…すぐ助けてやるから…」
そう言って、ドロシーはシズキと触手の傍らでこちらを見ている司祭風の男性と、蜥蜴の獄鬼に武器を構える。
「まだ1人いたのか。…こっちは僕が相手するかな。」
流暢な人語…知能の高い上位の獄鬼ということだ。
蜥蜴の獄鬼は左手に持っていた布にくるまれた何かを、司祭に渡す。
「それ、持ってな。あの黒髪の魔女のほうに向けるんだ。…手首を動かすなよ。じっとしているだけでいい。」
そうしたやり取りの後、蜥蜴の獄鬼はゆらりとドロシーのほうを向く。
(来る…!)
ここに来るまでに何体かの獄鬼と闘った。
炎を吐くヤモリの獄鬼4体に、人間の信徒3人。
大したことのない相手だったが、オズの世界に来て魔法の燃費が悪くなったドロシーにとって敵の数、即ち使用を強いられる魔法の数は大きく彼女の戦闘能力を削ぐ。
残りの魔力で撃てるのはウィンダールヴのようなネイチャーARMなら3,4発。フライングレオのようなガーディアンなら10秒顕現させる…といったところか。
どうやらこの集会所にいる畏鬼教の構成員はこの1人と1匹で最後のようだ。
具合のいいことに彼らは洞窟内の袋小路になっている狭い穴からシズキの様子を観察していた。今のドロシーの立ち位置なら直線的な必殺の一撃を与えれば、同時に仕留められる。
「ガーディアンARM、磔のスケアクロウ!!」
巨大な案山子が、ドリル状になっている帽子を回転させながら蜥蜴の獄鬼と司祭に向けて放たれる。
“磔”の名のとおり、このARMは相手の動きを止める効果も持っていたが今回はそれを使わなかった。磔の能力を使ってから攻撃に移るまでにタイムラグがあるからだ。
それにドリルと化して回転するスケアクロウの巨体は彼らのいる袋小路を埋め尽くす程で、
彼らに逃れる術はない。まとめてこのARMの直撃を受ける筈だ。
そう思っていたのに、蜥蜴の獄鬼はスケアクロウとドロシーの間にいた。彼女に向けて鋭い爪を立てようと迫っている。
「…ッ速い!」
ガーディアンを使っている間はドロシーは動くことができない。スケアクロウをしまい、近距離用ARMに切り替える。
魔力の供給を絶たれたスケアクロウは袋小路の奥にいる司祭の身体に接触する前に消滅してしまう。
蜥蜴の獄鬼の鋭い爪はドロシーのドレスのスカート部分を引っ掛け、どうにか身体への直撃は避けられる。
初撃をかわされた蜥蜴の獄鬼は、追撃を加えようとドロシーへ迫る。
(もう魔力がない…最後の1発!)
「エアハンマー!」
凝固した空気が蜥蜴の頭部を直撃する。今度こそ当たった…
「…いい魔法だ。なかなか効いた。」
当たった。が、ノックアウトすることはできなかった。これが上位の獄鬼の体力…
蜥蜴の鱗まみれの手がドロシーの胸ぐらを掴み、そのままシズキが犯されている触手塊に向けて投げつける。
ブチブチブチと繊維の裂ける音と共に掴まれている胸元の布が裂け、ドロシーの身体は触手塊に向けて弧を描くようにして投げ飛ばされる。
「痛…」
触手塊がクッションとなり、洞窟の壁に叩きつけられるよりはダメージは少なかった。
しかし、触手はドロシーという“雌”の存在に敏感に反応し、その身体に絡みついていく。
「何よコレ…気持ち悪…」
人の腸のような、肉色をした触手が素早くドロシーの四肢に絡みつき、吊るしあげる。
手、足、胴を触手に掴まれ、空中にぶら下がっている。脚はM字に開脚された状態で、先ほどの戦いで破れたスカートは彼女の秘裂を全く隠していない。
豊かな白い胸も丸出しになっており、胸のすぐ下で胴を支えている触手が寄せ上げるようにして胸の大きさを強調する。
さっきから布に包まれたものをシズキに向けながらこちらを見ている男性の視線が痛い。
目の前で喋っている蜥蜴獄鬼にしても、人間でないとはいえ人並みの知能を持つ生き物にこの痴態を見られるのはたまらなく恥ずかしい。
「…何見てんのよ…この気持ち悪いの外しなさいよ。」
「おや、蛭児も知らないのか?魔女なら常識だと思っていたが…」
蜥蜴の獄鬼は意外そうな反応をする。
「こいつはね、俺たち獄鬼の間では“出来損ない”って呼ばれてるんだ。」
「地獄にひしめき地上に散らばっている数多の獄鬼はね、400年前、5体の獄鬼から始まったのさ。
蛙の形をした獄鬼、クィゲロウク。人の形をした獄鬼、ロークワット。蠅の形をした獄鬼、ガゥフ・ブラグ。花の形をした獄鬼、ポゥタルゥ。形を持たずに精神だけの獄鬼、ウヌムス。」
「彼らそれぞれが“王”を名乗り、自分の複製―劣化コピーしか創れなかったが―を生み出した。それが獄鬼達さ。
我ら爬虫類獄鬼の祖先であり“王”はクィゲロウク様というわけだ。」
「さて、複製を作る上ではどうしても“出来損ない”ってのはできるもんでね。それを総称して蛭児と呼んでいるんだ。獄鬼の中でも最底辺の扱いなんだが、考えることすらできないので奴隷にもできない。」
「食欲と性欲…“王”達の本質そのものだけの存在だから、ある意味純粋なコピーと言えるかもしれないけどね。」
クックック…と蜥蜴の獄鬼は喉を鳴らして笑う。
「長話になったな。さて、そんな蛭児を人間にけしかけて犯されるのを見るのは一興かなと思ってね。…ほら、人間でも趣味の悪い奴なんかは女を犬と交尾させるのを見物して愉しむ手合がいるだろ?あれだよ。」
「そんな変態知らないわよ…!」
強がってみせるが、ドロシーは完全に身動きがとれない状況だ。両手、両足に太い触手が絡みついている。
触手は表面が柔らかく、ゼピュロスブルームやウィンダールヴの斬撃でなら拘束を突破できそうだ。しかしさっきの戦闘で魔力が空っぽになってしまった。あと1~2時間はゼピュロスブルームでかまいたち1つ起こせないだろう。
「うぐっ!?」
ドロシーの口に、触手が入り込む。
生臭い臭いに吐き戻しそうになるが、触手はそれを許すどころか更に奥へ進み、食道まで到達したところでドプリと何かを吐き出した。
「!?」
熱を持った塊がドロシーの喉を通り、胃へと落ちていく。
何かを流し込まれている。こんなものを口に入れられるだけでも気持ち悪いのに…
“何か”を出しきった触手は、ドロシーの口から白い粘液の糸を引きながら抜けていく。
「ぅげほっげほっ…何…これ…」
「ああ、精液。」
こともなげに蜥蜴の獄鬼が言う。
「!!…じゃあこれは…」
ドロシーは今しがた自分の口に入った触手の先端を見る。
蛇の頭。一瞬そう見えた。
まさに蛇が鎌首をもたげているかのようにドロシーのほうを向き、スリット状の口から白い粘液を垂らしている。
この白い液体は精液。ならば、この蛇の頭のようなものは、亀頭。これは紛うことなく、蛭児という獄鬼の生殖器であった。
よく見るとドロシーを拘束しているものも含め、ほとんどの触手の先端がそうなっている。
人間のペニスの亀頭のように先端が膨らんでいて、亀頭の縁に襟巻きのようにイボが並んでいる。
「このウネウネしてるの…まさか全部…」
「生殖器だよ。こいつの身体は食と性に特化しているんだ。特化している分床上手だぜ?今君が飲んだ精液だって…」
「…ぅ…」
突如、ドロシーの身体に熱と痺れが走る。特に、乳首や股間…その中から、痒みにも熱さにも似た刺激が湧き上がってくる。
「効いてきたようだね。精液に催淫作用があるんだ。排卵、妊娠の効率を上げる為の工夫らしい。」
触手が2本、ドロシーの前に現れる。先端が十字に割れ、粘液を滴らせながらドロシーの両胸の桜色の突起に吸い付く。
「やっ…ひんっ…んあんっ!!」
乳首を吸われて軽くイったドロシーの様子を見て、蛭児は“生殖準備完了”と判断した。
触手の1本がドロシーの下腹部へ近寄る。さっきの蛇が鎌首をもたげているかのような動作でドロシーの秘裂に狙いを定めている。
「こ…来ないで……」
先ほどの催淫精液と愛撫でヌルヌルになっているドロシーの秘裂に亀頭が接触し、ヌチョ…と音がする。
人肌よりもほんの少し熱い異形の生殖器の熱に当てられ、ドロシーの大事なところもジンジンと熱くなってくる。
「ダメ…そこはもう…ギンタンだけの…」
もうギンタンのおちんちんしか受け入れない。そう誓ったのにまた無様に犯されてしまう…
…実は既に畏鬼教の男性2人にたっぷり膣内射精されていることは知らず、ドロシーは最愛の少年以外の生殖器を拒絶する。
必死に暴れるが、大蛇程もある太さの筋肉の塊のような触手は人間の力ではびくともしない。
彼女の抵抗虚しく、触手はドロシーの肉穴にぴたりと亀頭をあわせて、ミリミリと押し広げていく。
やがて、触手は一気に肉を押し開いて奥まで貫いた。
「いやあああああああっ!」
ギンタとのペニスとも、オスカーのペニスとも、ギロムのペニスとも違う、初めての異形の性器。
モンビの土人形ですら、ヒトのペニスの形をしていたのだ。
紫がかった亀頭、イボの生えたカリ、腸のような形の陰茎。
ヒトである自分が、ヒト以外の生殖器を受け入れている事実を、ドロシーは自分の下腹部全体で感じていた。
ギチギチに広がった膣の中で亀頭周囲のイボが肉壁を強く擦りあげている。
「入り口が狭い割に随分すんなり咥え込むじゃないか。」
「やだ…こんなの…抜いてぇ…」
「これからが本番なんだから。」
その言葉を合図にしたかのように、触手による激しいピストンが始まった。
「いやああっ!!だめぇ!…あああああん!」
ジュプジュプと粘音を立てながら、ドロシーの膣内はかき回されていく。
イボイボが敏感なところを擦り、ドロシーを快感に浸らせる。
やがて、膣内で触手が膨らむ。
「ひいっ!?」
ドロシーの悲鳴と同時に亀頭が彼女の子宮口を突き上げ、ぴったりと押し付けるように精液を吐き出す。
「あああああああああっ♥」
熱い濁流が子宮口に叩きつけられた衝撃でドロシーは絶頂に達した。
精液を吐き終えた触手が膣内から力なく抜け落ちた。大量に吐き出された精液が重力に従って垂れ流されていく。
「や…こんな化物の精液…」
子宮の奥の奥まで注がれてしまった。
それも、人間でない者の精液でありながら人間と子を成すことのできる悪夢のような液体…
人間として、女として一線を越えてしまった感覚に背筋が冷たくなる。
子作りだ。化け物と膣内射精―子作りの行為―をしてしまった…
絶望の中、妊娠だけは避けたいとドロシーの脳が考えを巡らさせる。
避妊のARM、メンフェゴーラは果たして獄鬼の精液も無効化できるのだろうか。
そもそもこのまま犯されたままであれば、ARMを使うことができるのだろうか。
「うぎっ!?」
考えている途中に突然膣奥を突き上げられ、息が漏れる。2本目の触手がドロシーの膣内に入り込んだのだ。
それだけではない。見回しただけで100本を超える触手がドロシーを犯そうとしている。
最低限の“拘束役”がいるだけで、1本1本の触手が互いのことを考えずに我先にと目の前の雌の子宮に精液を注ごうと迫り来る。
その勢いに揉みくちゃにされ、気づけばドロシーはシズキの近くまで運ばれていた。
触手側からすれば雌穴はひとまとめにしたほうが犯すのに都合がいいのだろう。
シズキはドロシーがやってくるよりも前から触手陵辱を受けていたようで、もはや精神はすり減り、目の前のドロシーも認識できていないようだ。
次々に自分の口と膣を犯す触手からの快楽に喘ぎ声をあげるだけの人形のようになっていた。
何十本の触手の射精を受けたのだろう。シズキの股からは滝のように白濁液が垂れ、現在進行形で新しい精液が注がれている。
彼女の内ももを流れる白濁に混じって走る赤い筋は、彼女が蛭児に犯されるまでは処女であったことを示していた。
「こんな…ひどい…シズキ!シズキ!…ンぶっ!」
シズキに声をかけようとしたドロシーの口を、蛭児の触手が犯す。
口だけではない。もはやノーガードとなっているドロシーの割れ目は数多の触手に好き放題に使われている。今7本目の触手がドロシーに性を放った。
快楽の悲鳴と嫌悪の声は口の中で暴れる触手にかき消される。
もう何度イかされただろうか。いずれ、自分もシズキのように抵抗することなく子種を受け入れる人形と化すのだろうか。
誰か助けて…そう思ったドロシーの耳に、聞き慣れた少年の叫びが響く。
「お…おねえちゃんを離せえっ!」
「ギンタン!」
催眠毒の効果が切れたギンタはドロシーを探し、ここへたどり着いたのだ。
ギンタが構えているのは、1本の剣。
ギリキン―緩衝地域間の検問を抜けた際に持ってきた刺突剣を振り回して触手を切ろうとする。
しかし、小さな身体では剣の重みに逆に引っ張られ、バランスを崩してよろめいてしまう。
モンビ譲りの“無機物に命を吹き込む力”を使おうにも、ギンタが現状命を吹き込んで動かせる木片や瓦礫は洞窟内にはなかったのだ。
あっけなく、ギンタは触手の殴打を受け、拘束される。
「おやおや、今日は若い魔女がいっぱい来る日だなあ。」
蜥蜴の獄鬼が愉快そうに笑う。
蛭児の気まぐれか蜥蜴獄鬼がそう命じたのか、縛りあげられたギンタはドロシーの目と鼻の先に連れて行かれる。その眼前には彼から見て逆さまになったドロシーの膣が、そしてそこを狂ったように掘る触手があった。
ドロシーの顔を見ると、その口にも触手が出入りしている。
その光景にあっけに取られているうちに、ドロシーを蹂躙する2本の触手から同時に大量の白濁液が注ぎ込まれる。
「うっ…ぇえええっ!」
満足した触手がドロシーの口から出て行った瞬間、ドロシーは口を満たす白濁を咽こみながら吐き出す。
コップ1杯の牛乳を吐いたかのような量の白濁は、ドロシーの膣からも逆流し、飛沫が少しギンタにもかかった。
「お…おねえちゃん…」
「ギンタン…お願い…目つぶってて…んぶっ!!」
ドロシーの口が開いたのを見逃さず、触手がドロシーの口腔へ飛び込む。
「くそおっ!おねえちゃんを離せえ!」
ギンタがもがくが、子供の筋力では到底蛭児の拘束は破れない。
ドロシーと同じくM字に固定されているギンタの脚に纏わりついている彼のスカートは、ギンタが暴れる度に捲れていき、やがて彼の股間が晒される。
(あ…ギンタン…)
大好きなドロシーおねえちゃんが自分ではない存在、しかも異形に犯されていることがたまらなく悔しく、泣きながら犯されているドロシーおねえちゃんを救いたかった気持ちに嘘はなかった。
それでも、少年のペニスはドロシーおねえちゃんの痴態に反応し、硬く勃起していた。
「おねえちゃん…ごめんなさい…」
ドロシーの視線に気付いたギンタは、自らの身体の反応に涙を溜めて謝罪する。
「いいんだよ…ギンタン…」
幾度も愛し、自分の中に招き入れた少年のペニスが眼前で勃起している。その何倍も太く凶悪なモノを膣で咥え込みながら、快感で真っ赤になった顔に笑顔を作り、少年をなだめる。
(そうだ…!)
ギンタンの精液…彼の体内に埋まっている神導器核のエネルギーが溶け込み、直に飲めば魔力が回復する精液…
ドロシーは今口に突っ込まれている触手の亀頭に舌を這わせ、射精を促す。
「う…ぶぅっ…!」
すぐに大量の精液が口を満たし、満足した触手はドロシーの口を離れていく。
触手が口から出て行くや否や歯を食いしばるように口を閉じる。一刻も早く蛭児の精液を吐き出したかったが、口を開くわけにはいかない。開いたらまた次の触手が突っ込まれる。今も、ドロシーの唇を割って4本の触手が我先にと入り込もうとしている。
仕方なく、口いっぱいの精液をごくりと飲み干す。
催淫作用のある精液はドロシーの胃、腸から全身へとめぐり、身体が更に熱くなってくる。
こんな状態で犯されていると声を出さずにはいられない…が、歯を食いしばって快楽に耐える。
(ギンタン…気付いて…)
目と鼻の先で勃起しているギンタンのおちんちん、それを咥え込んで射精に導ければ、ARMが使える…
ほんの少しの距離。だが、四肢を触手に固定されているドロシーにはその程度の移動も許されない。
(腕1本でも動かさればギンタンの腰を引き寄せて咥えることができるのに…)
憎々しげに自分の左手を固定する触手を見る。手首に2重に巻き付いた触手はドロシーの左膝で1回転するように巻き付いて、その先端―亀頭―は、ドロシーの膣の隣で“順番待ち”をしていた。
と同時に、ドロシーの膣を犯している触手が精液を注ぎ終わり、逆流する精液で溢れた膣穴に順番待ちをしていた数本の触手が我先にと入り込もうとする。
ドロシーは腰を動かし、自分の左手を拘束している触手の先端に秘裂を擦りつけるようにしておねだりをする。
(おねがい…)
ドロシーの誘惑が通じたのか、その触手は他の触手を押しのけてあっという間にドロシーの子宮まで潜り込んだ。
「ん…ん…んーーっ!」
催淫効果のある精液をどれほど注ぎ込まれたろう。もう、口を空けないでいるのが辛い。滅茶滅茶に叫んでこの快楽に飲まれたい。
ドロシーの“ご指名”が嬉しかったのか、触手は張り切ってドロシーの気持ちいいところを擦り上げる。
やがて、その触手もドロシーの子宮口に鈴口を密着させながら子種を注ぎ込む。
満足した触手は全身を弛緩させて射精後の余韻に浸っている。
(今だ!)
左手の拘束が弱まった機を逃さず、ドロシーはギンタの細い腰を引き寄せ、自分の顔に彼の股間を押し付けるようにする。
「おねえちゃん!?」
「ん…ふぅ…ごめんねギンタン…こっち…ッんん!♥……使われちゃってるから…ぁ…♥」
今この瞬間も、新たな肉槍がドロシーの膣を激しく蹂躙している。
触手の精液まみれの口を開いて、ドロシーはギンタのペニスを咥え込む。引き剥がされないように、ギンタの腰を左手でぎゅっと抱きながら。
「…何をしている?」
蜥蜴の獄鬼は訝しげにドロシーの行動を観察する。あの女装の少年は桃色髪の魔女とは“良い仲”で、激しい陵辱に錯乱し性行為を始めた…?いや、あの魔女の目に宿る光は狂人のものではない。何かを成そうともがく者の目。しかし、蜥蜴の獄鬼にはドロシーの目的を想像することはできなかった。
「ん…ちゅ…」
触手による強制口奉仕直後のドロシーの唇に、ギンタのペニスが包み込まれる。
ドロシーの口中に撒き散らされた催淫精液は、ドロシーの舌によってギンタのペニスに擦り込まれることになり、図らずもギンタにも催淫効果が及んだ。
「おねえちゃん…」
ペニスを中心に身体が火照ってくるのを感じるギンタ。
こんな状態で、ドロシーおねえちゃんの柔らかい舌でおちんちんを舐められていてはすぐに射精に至ってしまうだろう。
だが、ギンタに芽生えたある感情が射精を拒んでいた。
ギンタの体質が判明してから、何度も射精させてもらったドロシーおねえちゃんの口。
口だけじゃない。おねえちゃんのアソコだって、一昨日から何度も自分の欲望を受け止めてくれた。
幼い少年の心に微かに芽生えた独占欲。だが今この瞬間、ドロシーおねえちゃんのアソコは自分以外の化物の欲望のはけ口として使用されている。自分のよりも何倍も太いモノで突き上げられる度におねえちゃんの喉から悩ましい声が響く…
ドロシーおねえちゃんに膣内射精する度、多幸感の中にほんの少しだけ征服感があった。性知識に乏しいギンタであったが、“この雌に自分の遺伝子を注いでやった”という感覚を本能的に知ったのだろう。だが、今まで自分が注いだ精子を塗りつぶすかのような膨大な量の精子がドロシーおねえちゃんの中に注がれている…
こんな状況で勃起してしまう自分が悔しかったし、射精するなど以ての外と思ってしまう。
だが、この状況を終わらせる為には、自分の魔力を含んだ精液をドロシーおねえちゃんの口に注ぐことが必要なのはわかっていた…
「おねえちゃん…出る…っ!!」
「ん…ごくっ…ごく…」
ドロシーは少年の陰茎から注がれる精液を舌で受け止め、嚥下する。
途端に、ドロシーの身体が熱くなる。
蛭児の精液を飲んだときの体中の血管がいやらしく火照る感覚とは違う、全身に魔力が巡っている感覚…
いける。
――――――――――――
ドロシーは右手に力を込める。すると銀色の棒が、ドロシーの右手を縛っている触手を貫通して出現する。棒の先端には筆状に藁が束ねられている。箒だ。ドロシーの愛用ARM、西風の箒、ゼピュロスブルームである。
ドロシーの周囲に空気が渦巻き、空気が密な部分と真空とに分かれ、骨を絶ち肉を裂く風の刃と化す。
「ひいっ!」
次々に触手が切り裂かれる様を見て、彼女らに“布に包まれた何か”を向けていた司祭が怯える。
「おいしっかり持ってろよ…あ…」
蜥蜴の獄鬼が司祭に注意しようとした瞬間、司祭の胴に亀裂が走り、血を吹きながら倒れる。
慌てて司祭の死体から“布に包まれた何か”をひったくり、ドロシーに向けてみせる。
「ん…おかしいな…“これ”効果はあるはずなんだが…いててっ!」
手に持っている、布に包まれたものをあちこちに向けてみる蜥蜴の獄鬼。
しかしドロシーの放つかまいたちは止まる気配がない。
「仕方ないか…」
「逃げる気?待ちなさい!」
そう怒鳴るドロシーに背を向け、彼女の放つかまいたちを尻尾で軽くいなして蜥蜴の獄鬼は応える。
「僕は予想外のことが起きたら退散することにしてるんだ。1つしかない命を賭けには使いたくないんでね。」
そう言うと、蜥蜴の獄鬼は素早く天井の亀裂に入り込み、姿をくらました。
「くっそ…でもこっちも蛭児の相手で精一杯かな…」
何しろ数が多い。この部屋を埋め尽くす程の量の触手が犇めいている。
(シズキは?)
ギンタの頭上では、未だシズキが犯されていた。仲間を殺戮するドロシーに注意する素振りもない。
なるほど、蛭児の脳みそには警戒も防御もない。ただ食と性に繋がる行動のみを行う…
ドロシーは蛭児が“最弱の獄鬼”とされる意味を理解した。
「ギンタン!あの娘を!」
「うん!」
ギンタは手にしたレイピアを振り回し、シズキを吊るしあげている触手を滅茶苦茶に斬りつける。
防御力はさほどでもない蛭児の身体は簡単にちぎれていく。
支えを失くしたシズキの身体は落下し、どうにかギンタが受け止める。
「もう大丈夫だよ…」
「う…あ…」
触手の激しい責めに気力も体力も擦り切れていたシズキは上手く応えることができず、それでもギンタの頬に手を当て、久々に感じた人の肌の感触に安心したような顔をする。
「これで…最後!!」
風の刃が5本の触手をまとめて切り刻む。人を襲える程度に機能している触手は、これでゼロになった。
しかし安心してもいられなかった。早くも再生を始めている触手がいる。
ドロシーはギンタと一緒にシズキの肩を支えながら、洞窟の出口へと進んでいった。
―――――――――――――
洞窟の狭い亀裂を、蜥蜴の獄鬼が這いまわり出口へと急いでいた。
軟体化、彼の所有する魔法だ。シンプルだがお陰で先ほどもあの桃色髪の魔女が放った巨大案山子の突撃を回避することができたのだ。
「あの桃色の髪の魔女…“これ”で魔法を封じることができなかった…おかしいな…魔女の魔法は“これ”で発揮できなくなる筈なんだが…」
狭い空間に合わせて身体をねじりながら、今起きた想定外の事態を考察する。
「女装した少年の精液を含んだら魔法を使えるようになったように見えたが…そういう魔法なのか?いやいや…魔女の魔法であるかぎり“これ”は無効化できる筈なんだ…」
―“魔女の魔法”ではない― その考えが蜥蜴の脳をかすめた。
そういえば彼女が魔法を使うとき何か銀色のアクセサリーを手にしていた。
神導器か?否、彼はオズの国に存在する神導器12種類全ての能力を把握していた。風を操る神導器などない。巨大な案山子を出現させる神導器もない。
200年前から生を受け、彼にとっての“王”のため、オズの国を東奔西走した彼の知識である。
魔女ではない。神導器でない。ならば…
ふと、蜥蜴の獄鬼はあることを思い出す。
一定以上の知能に恵まれた獄鬼共通の悲願である、 “王”の地上への顕現。
その為には地獄と地上を繋ぐ門を広げる必要がある。その為に、獄鬼達はエスメラルダを、オズ大王を狙うのだ。彼がその秘密を握っているから…
しかしもう1つ、獄鬼の間で実しやかに囁かれている“王の顕現”の方法がある。
数年前、予知の魔法を使う魔女が、こう予言したという。
『400年前オズ大王に神導器をもたらした者と同じ国から、今再び1人の女性がオズの国に現れる』と…
それは人間が獄鬼の脅威から永久に開放される鍵にもなり、
獄鬼の王が地上に現れ地上に混沌をもたらす鍵にもなる、と…
「ドロシーとか言ったな…」
なんとか地上に出られた蜥蜴の獄鬼は、堅さを取り戻した身体の関節をぽきぽきと鳴らす。
「とりあえず、様子見だ。もうすぐ次の開獄日だから、クィゲロウク様に報告できるかもしれない。」
そう独り言を呟くと、2足歩行の蜥蜴は闇に消えた。