※この作品はR-18です。

オズの国のドロシー   作:LFぼーむ

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ACT.40 シキ

「よっこいせ…と」

裸の少女を抱きかかえた青年は、足で木戸を蹴り開けて 自室へと入る。

貧民街付近の、地価の安い借家だ。ここランゼスは街の地下全体に獄鬼避けの鉱脈が張り巡らされている分、こんな場所でも宿代は馬鹿にならなかった。

 

高沸する土地代に耐えかねたが街の外に出るわけにもいかない人々、ほぼギャングと化しており行政側も無理に追い出せず手を焼いている人々が住むエリアが、貧民街。

そんな貧民街で発見したのが、今青年が抱えている少女だった。

 

幼いころからかわいがってくれた兄貴分の魔法使いから“ARMという不思議な道具を貧民街のギャングに売っている者がいる”との話を聞いた矢先、まさにそのARMを使う少女を発見。拘束したが加減を間違えて気絶させてしまい、とりあえず自分の部屋まで運んできたというわけだ。

 

「なんで裸なんだよ…」

出会った時点で、手袋と足袋、帽子程度しか身に着けていなかった少女。

青年、シキは色事の経験がなく、彼女の裸体から可能な限り目を反らしながら、自室のベッドへと横たえた。

 

「とりあえず連れて帰っちまったが…」

青年は困ったように、くすんだ黄色味を帯びた茶髪を掻き上げる仕草をする。

とりあえず少女の裸身が見えないよう、ブランケットを引っ張り出して彼女の露出した裸を隠してやる。

 

裸の女性であるということに面食らったものの、現在ランゼスの倒鬼師の間で問題になっているというARMを彼女が持っていたのは事実だ。悪人である可能性は十二分にある。

王族の倒鬼師に就職したいが上手くいかない彼としては、ARMの謎を暴いて手柄を上げて自分の実力を認めてもらうという下心もあった。

「確かこの指輪が一瞬で箒になったんだよな…」

眠り続けている少女の指から銀色の指輪を引き抜く。

自分の指に嵌めて何度も念を込めてみるが、指輪は変化しない。

「ヨハンさんは簡単に変えてたのに…ARMの才能ないのかな俺…」

諦めたシキは、指輪を少女の指に戻してやる。

 

(こいつ、足が…)

少女の足の裏は、血だらけだった。靴が融けたようになっており、ほぼ裸足で街を歩いていたのだろう。

敵か味方かもわからなかったが、怪我している女性を放っておく気にはなれなかった。

傷口から石片などを取り除いてやり、沸かした湯で洗浄する。

 

包帯巻くとき、ついシキは少女の身体をまじまじと見てしまう。

自分と同い年か、少し年上だろうか。全体的に細身で、すらりとした体型だ。

やはり目を引いてしまうのは、彼女の胸だった。タオルケットで隠していても、胸の部分で布が大きく張り詰め、そのボリュームが想像できる。

少女が呼吸する度に胸が上下し、柔らかな双丘はゆさゆさと揺れる。

彼の幼馴染であるキサラという少女も胸は大きいほうだと思っていたが、今目の前に横たわっている少女は更に規格外だった。

腰周りも大きく、所謂“出る所が出ている”体型だ。

それでいて肩幅は狭く、ウェストも締まっており、脚のラインもすらりとしている。

無理もないことだが、自分の息子に血が集まっていくのを感じるシキ。

 

ARMの情報を聞き出したかったが、少女が目覚めないことにはどうもできない。

敵かも知れない少女。目覚めた途端襲い掛かってくることもあるだろう。

ベッドに横たわっている少女が目覚めるまで、シキは部屋の隅で見張っていることにした。

 

 

―――――同刻 ランゼス 下水管理所付近の路―――――――

 

キサラと名乗る魔女との地下水路での攻防の結果…

シズキとギンタ、そして彼の操るカボチャ人形のジャックは捕縛され、何処かに移送されていた。

 

ギンタ達3人はの足元は氷漬けにされている。

地下水路で足首まで浸かっていた水を、キサラの魔法によって凍らされてしまったのだ。

3人仲良く氷漬けにされているところを荷車に乗せられ、キサラの部下達がそれを牽いている。

 

「く…抜けない…!シズキさん!シズキさん!起きて!」

懸命に氷から足を引き抜こうとするも、ギンタの力ではどうにもならない。

ジャックに無理をさせると、彼の素体である木材が折れてしまいそうだ。

シズキの怪力の魔法ならなんとかなるだろうが、彼女は地下水路内の戦いでキサラに気絶させられている。

 

何の抵抗もできぬまま、3人は質素な石造りの建物に入れられる。

建物内の地下は牢屋になっていた。

足元の氷は時間が経つと溶ける。男たちは縄を用いて、再度ギンタ達を縛り直す。

「んむーっ!んー!」

ギンタ達は腕を後ろ手に縛りあげられ、猿轡を噛まされる。

石造りの暗い地下牢の中、ギンタの声にならない声が虚しく響き渡る。

シズキも昏睡から目覚め、自分たちが拘束されていることに戸惑っている。

 

「うむ、うむ、きちんと猿轡も噛ませていますネ。何しろここ、拘置所として作った施設ではないのデ、騒がれたら迷惑なのでス」

肌の白い中年男がコツコツと足音を立て、牢屋の中のギンタ達を見に来る。

丸メガネに大きな鷲鼻、しゃくれた顎にシルクハットと奇抜な容姿をしている。

「この地下牢が久々に役に立つ時が来ましたネ」

「ええ、ヴァーミリオン様…まさか地下空間への侵入者が出るとは…」

隣にいるのは、キサラだ。どうやらこの男はキサラの上司にあたる人物のようだ。

「外壁の採水口。あそこの鉄格子が“溶かされて”いましタ。毎晩複数回行う定期巡回の合間に、あの頑丈な格子が…」

「やはりこの子達、魔女…」

 

「ンむむーっ!!」

シズキが“怪力”の魔法を発揮し、自分を縛る縄を引きちぎろうとする。

キサラがすかさず、牢の鉄格子越しに冷凍光線を放つ。

背中で後ろ手に縛られた部分に分厚い氷ができ、キサラの拘束を補強する。

同じく魔女の魔法で造られた氷は、キサラの怪力の魔法で突破することはできなかった。

「安心してください。凍傷にならないよう調整している魔法の氷です。…溶けることも期待しないように。魔法の氷ですので」

キサラとヴァーミリオンは地下牢から出ていく。重い鉄の扉が閉まり、地上と完全に遮断される音が聞こえた。

 

 

「それで…どうしましょう。あの子達の処遇は」

(まただ…)

地下牢への重い扉を挟んだ向こうから、キサラ達が話している声がギンタの耳へ聞こえてくる。

どうしてか、ギンタは時折とても耳が良く聴こえるときがある。それで獄鬼の襲撃を逸早くドロシーに知らせたこともあった。

「あの地下道に侵入したのでしょウ?ならばやることは1つでは?」

ヴァーミリオンの声だ。

「支給されていた“忘れ水”を…」

「あれはオズ大王より授かる希少な霊薬です。小鼠に易易と使うものではありません」

「ヴァーミリオン様……そのぅ…開獄日の直前ですし、彼らは黄瓦の恩恵を得る為に街へ侵入しただけかと…だから何も気付いていないかも…」

キサラが言う。

「何の保証もない憶測を…キサラさん、貴女、相手が子供だから情けをかけようとでモ?」

そこからの会話は途絶える。ギンタの“時折耳がとても良くなる”時間が終わったのだ。

 

自分たちはあの地下水路で、何か重大な秘密を知ったと思われている。

だから普通の拘置所には入れられなかったのだ。彼らの施設の地下牢に閉じ込めておく必要があったのだ。情報を漏らすことなく彼らが内々に処分する為に…

 

 

「それに…ヴァーミリオン様…あの小さいほうの子…魔法を使っていました。一緒に縛ってあるカボチャ人形。あれを操って…私交戦したんです。あの地下道の中で…」

キサラが続ける。

「…ホウ…」

ヴァーミリオンが足を止める。

「…それならば少し、調べる必要がありまスね。しかし貴女が言ったとおり、開獄日の直前。我々王属の倒鬼師には最も忙しい時期でス」

ヴァーミリオンは指で丸眼鏡の位置を調整する。

「彼らの処分方法は、ひとまず保留としましょウ。ただし、特に価値がなければ殺処分でス」

「は、はい!」

少し安心した声で、キサラが答える。

 

 

 

(ドロシーおねえちゃん…)

地下牢の中、ギンタは思う。

自分たちもこのまま処分されるかも知れないが、ドロシーのことも心配だった。

地下水路で別行動を取ってから、彼女とは合流していない。

無事に地上へ、ランゼスの街へたどり着いただろうか…

 

――――ランゼス市街地内 シキの住居――――

 

木窓から漏れる朝日が青年の瞼を照らし、青年の意識はゆっくりと覚醒していく。

頭が目覚めていくと共に、シキは昨晩のことを思い出す。

貧民街で見つけた、“ARM”使いの女。誤って気絶させてしまったから自分の部屋まで連れてきて看護していたのだ。

(あれから寝ちまったのか…)

 

じゅぷっ くちゅっ…

 

何やら粘ついた音が聞こえてくると同時に、自分の腰周りから走るムズムズした感覚に気づく。

シキが被って寝ていたブランケット。彼の下半身のあたりが不自然に盛り上がっている。

クチュクチュという音もそこから聞こえる。

 

 

【挿絵表示】

 

シキがブランケットを捲くると、自分が連れてきた少女がシキのペニスを口に含んでいる光景が目に飛び込んできた。

ズボンはいつの間にか股下まで下ろされ、股の間に陣取った少女がシキのペニスに口奉仕を施している。

既に朝立ちしていたシキのペニスは、少女の温かな愛撫に包まれて更に硬さを増していた。

 

「な、何してんだよ!?」

「あ、起きちゃっは?」

動揺するシキの問いかけに、ペニスを咥えたまま上目遣いで答える少女。

少女の柔らかい舌が言葉を紡ぐ度に、口に含んたままの亀頭に快感が走る。

 

 

「おい…なんでこんなこと…」

 

 

「ん?お礼だよ♥」

言葉の合間合間に、亀頭をちゅぷちゅぷと唇で舐りながら少女はそう答える。

「裸で街の中で気絶してた私をここまで運んで、手当してくれたんでしょ♥貴方がそうしてくれなかったら私、貧民街の浮浪者達に何度もレイプされちゃってたかも」

そう言うと少女はシキのペニスを喉奥まで咥え込み、彼の反応を楽しんで話を続ける。

「ああ、でも元はと言えば君が縛ってきたから気絶したんだっけ…おっぱいやお尻にいっぱいキツいの食い込ませてくれちゃって…エッチ♥」

 

「わ、わざとなわけあるか!あの時は暗くてよく見えなくて…裸の女とは思わなかった…すまん…」

「そう思うんだったらぁ…お詫びにお姉さんの相手してぇ?」

少女はペニスからちゅぽっと口を放すと、ブランケットから顔を出してシキに覆いかぶさる。

 

 

「な…相手ってなんだよ…」

シキの眼前には、少女の巨乳がプルプルと揺れている。

「起きてから私、身体が熱くて…わかるでしょ?君の硬くておっきいの…欲しいな♥」

「そ…そういうことは簡単にするもんじゃねえ…俺には心に決めた人が…」

目の前で柔らかそうに形を変える乳肉から目を逸らしながら、シキはしどろもどろに答える。

 

「真面目さんだねえ~ こっちは元気いっぱいみたいだけど♥」

少女のフェラチオを受けて勃起したシキのペニスは、彼女の股下でカチカチになっている。

少女は腰をグラインドさせて、自分の尻にそれを擦りつける。

 

 

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「ふふ♥こんなに硬くしちゃって♥」

シキに覆いかぶさっている少女は上体を起こし、少し後方に…シキの股間の上に腰を移動させる。

少女の細い指はシキのペニスにあてがわれ、少女の股間へと誘導されていく。

 

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「どこに入りたがってるのかな~?」

少女が股下でシキの竿を弄ぶ度に、ヌルヌルとした感触が彼の亀頭に走る。

 

「お、おい…やめ…」

「あ、もしかして君、エッチしたことないの?」

少女の問いかけに、シキは紅くした顔を背ける。

図星だと理解した少女は、優しく、かつ淫靡に微笑む。

 

「お姉さんが君の初めて貰ってあ・げ・る♥」

シキが制止する間もなく、シキの亀頭が、竿が、順番に熱いものに包まれていく。

「ううっ!」

「ああ♥君の、大きくって硬いよ♥」

 

未知の快楽に翻弄されるシキの上で、少女は腰を振り始める。

「あん♥やん♥君のおちんちん、私のにぴったりだよぉ♥」

少女が腰を振る度に、シキのすぐ目の前で大きな乳房がゆさゆさと揺れる。

「やめ…もう…」

こみ上げてくる射精感に、シキが呻く。

「出そうなの?」

「そうだよ!だから離せ!」

「なんで?まだこれからじゃない?」

少女は腰の勢いを落とすことなくシキに問いかける。

「わかるだろ?このまましたら…子供が…」

 

優しく微笑んだ少女はシキに顔を近づけ、熱のこもった声を彼の耳元で漏らす。

「いいんだよ?気にしないで、私の膣内に君の熱いのいっぱい欲しいな♥」

もう限界だった。シキは思いきり少女の豊満な肉体にむしゃぶりつき、熱い精液をトロトロの膣内へ放出していく…

 

――――――――――

 

「…夢か…」

窓から漏れる朝日と小鳥の鳴き声は、シキを夢の世界からすっかり連れ出していた。

 

夢の中での目覚めと違い、シキはベッドではなく、床で寝ていた。

そうだ。昨晩連れてきた女の子はベッドに寝かせ、自分は床で彼女を監視するつもりで…寝てしまったのだ。

当の少女は、まだベッドの上で寝息を立てている。

 

いい歳して、もう少しで夢精するところだった。

どうにか射精は留まったものの、ビンビンに勃起した息子は自分の下着を押し上げているし、ドクドクと溢れていた我慢汁が下着を濡らしている。

(これはいかん…)

どうにか自分で“処理”しようと考えたシキは、便所へ行こうと思い床から起き上がった。

立ち上がると目に入るのは、ベッドに寝かされている桃色の髪の少女。

 

 

 

 

胴体に巻かれたタオルケットは少女の豊かな胸を隠し切るには心もとなく、今にもぷるんと零れ落ちそうだ。

そもそも半裸の女性を間近で見た経験がないシキだったが、それを差し引いても、こんなに肉付きの良い女体を見るのは初めてだった。

(こいつのせいだ…あんな夢見たのも…)

少女がシキの“影”の魔法で縛られたときの、喘ぎ声に近い悲鳴を思い出す。

彼女の豊満な肉体も、被虐的な嬌声も、女性経験に乏しいシキには目に毒であり耳に毒だった。

 

タオルケットの丈も胸元から股下をようやく隠せる程度の長さ。

シキが少し覗き込むようにすれば、大事なところが見えてしまう。

シキが見たこともない、女性の性器… 

そういえば、先程の夢でも少女の秘部はブランケットの影に隠れてよく見えなかった。夢を見ていたシキ当人が見たことがないのだから、仕方ないことだ。

 

 

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「もう…やだよ…ギンタン……おねえちゃん…」

突如少女の口からか細い声が漏れる。

シキはビクっとしたが、少女の目は閉じたまま。

寝言のようだ。

シキが安堵すると共に、閉じた少女の目から涙が一筋零れ落ちる。

 

「…」

この少女が何故、貧民街の路地裏で裸でいたのかわからない。

『ARMを貧民街のチンピラに売りつけて抗争を煽っている者がいる』というヨハンの情報があり、まさにその“ARM”を少女が操っていたのは確かだ。

しかし、シキにはこの少女が悪人とは思えなかった。

同時に、男好きする身体をしているというだけで厭らしい妄想に耽ってしまった自分が少し恥ずかしく思えた。

思わず、シキは少女の頭を撫でてやる。

前髪は特殊な跳ね方をしているがその髪質は柔らかく、桃色の毛がシキの指の間を撫でてすり抜けていく。

 

 

不意に、少女の目が見開かれる。

紅玉のように赤い虹彩がシキと視線を交わす。

絞られた瞳孔はじわじわと大きさを増し、少女の目は“驚き”から“警戒”へと変化していく。

 

「あんた…」

思わず上体を起こし、いつでも攻撃できるように右手を挙げる少女。

「ま、待て待て!俺はその怪しい者じゃない…つい頭を触っちまったけど…」

シキは慌てて弁解すると共に、自分に殴りかかって来そうな少女を抑えようと覆いかぶさる。

暴れる少女と揉み合ううちに2人はバランスを崩し、ベッドへと倒れ込む。

 

 

 

「ったた…」

思わず少女を押し倒してしまった。

 

少女はベッドとシキとの間に挟まれ、顔を真っ赤にして口をわなわなさせて自らの胸元を見ている。

掌に柔らかい感触を感じながらシキも少女の視線の先を見る。

 

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シキの掌は、少女の胸を思いきり鷲づかみしていた。

17歳の青年相応に大きめの掌ですら収まりきらないほどの少女の巨乳は、シキの指の間で形を変えてその柔らかさを表現していた。

シキが感じたことのない温かく柔らかい感触がシキの指中に広がる一方、手の平の中心に少し硬い感触がある。手を少しずらすと桜色の乳首がピンと勃起していた。

 

極めつけに、先程の夢のお陰で元気になっていたシキの股間は、彼の下着を押し上げテントを張り、我慢汁を吸って黒く濡れた先端を少女の臍に押し付けていた。

 

「あ…これは…」

「い…いつまで触ってんのよおおおっ!!」

 

少女の平手がシキの頬をぴしゃりと打つ。

 

 

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「…それで、貴方は私をここまで運んできて、介抱してくれたってこと…」

「ああそうだ。…何も変なことはしていない!」

(変なこと、か…)

今、ドロシーの膣内の至る所に、白く粘ついた液体がこびりついている。

この青年は気付いていないだろうが、それは今もドロシーの秘裂から少しづつ垂れてきている。

マイラと、名も知らぬ貧民街の乞食の精液だ。

この中に青年の精液が混じっていたところで、眠っていたドロシーには知る由もない。

だが、あの初心な反応では、本当に何もしていないのだろう。

それに先程からの彼の態度からして、悪い奴ではなさそうだ。

 

「…ありがとうね」

ドロシーが小さな声でそう言うと同時に、ぐうぅ…と音が聞こえてくる。

 

ドロシーは顔を紅くして俯く。

バキュアがドロシーの腸内を“掃除”したとき、彼女の消化器官の内容物は綺麗に溶かされていた。その状態で夜の街を裸で走り回っていたのだ。

腹が鳴るのは当然の反応だった。

 

「はは…腹減ったよな。な、何か食べ物買ってくるよ!」

気まずい空気に耐えかね、シキは部屋を出ていく。

 

 

やっと1人になれた。

ベッドの隣の床にはくしゃくしゃのブランケットが放り出されていた。

あの青年はドロシーをベッドに寝かせた後、自分自身は床の上に寝ていたのだろう。

足はマイラに火傷させられた上に裸足で街中を走ったのでかなりの怪我になっている筈だが、包帯が巻かれている。彼が手当してくれたのか。

「…温かい」

ドロシーは青年がかけてくれたタオルケットを纏い、ぎゅっと自分の肩を抱くようにする。

 

やがてあの男の子は帰ってくるだろう。それまでに服を着ようとドロシーは思った。

(さて…どうしようかなこの服…)

ドロシーの身につけている服は、ボロボロになった手袋とブーツのみ。

首もとの布とブローチは取れてしまったが、彼が持ってきてくれたのだろう。ベッドの隣の棚の上に置かれていた。

 

破れたドレスは裁縫のARMで修復することができる。どれだけ原型をとどめていなくても、修復はできる。

しかし今回は少し難しい。

今回はあまりにも多くの布を失いすぎた。裁縫のARMは失った布を補修することもできる優れものだが、修理にはかなりの時間がかかるだろう。

破かれたのでもなく、裂かれたのでもなく、溶かされたというのも一因だ。切断面の繊維が融けてグチャグチャになっている。

少なくとも今日1日は、別の服に着替えるほかない。

 

 

 

ドロシーはディメンションARMジッパーを起動させ、代わりの服を探す。

(あった。これにしよう)

ドロシーが取り出したのは、普段のドレスと似たデザインの服だった。

少し大人っぽい作りで、もう少し年を取ったら着ようと思っていた服だ。

 

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胸の谷間が強調されている上、乳房を覆う布だけが他の生地より少し薄い。

前のドレスでは左側に深く入っていたスリットが、このドレスでは両側に入っている。

 

戦闘に特化すべく、肩から手先までがぶ厚めの生地で覆われており、小手には甲冑のような形になっており、より強固に手首周りを守っている。

その一方で、彼女の小さな肩は大きく露出しており、華奢な印象が強調される。

 

 

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「うん、サイズはぴったり」

1年前よりも少し大きくなった乳房を、胸部分の水色の生地にしまい込む。

谷間を大きく出すデザインをしているので、胸のサイズが合わないとぶかぶかになり、乳首が見えたりと大分残念な見た目になってしまうのだ。

 

 

 

 

ドアをノックする音が聞こえてくる。

青年が食べ物を買って帰ってきたのだ。

 

【挿絵表示】

 

ドロシーの返事を受けて部屋の中に入った青年はぎょっとした顔でドロシーを見る。

「ああ、着替えたのか。悪かったな。寝てる間に着替えさせようにも、こういう時ってどうしていいか解らなくてさ」

大きく開かれた胸元にどうしても視線が吸い寄せられてしまうので、顔を背けるようにしてドロシーに言う。

 

「フフ、良かったんだよ。脱がして着せてくれたって」

「な、何を言い出すんだよ急に!」

青年は顔を真っ赤にして答える。やっぱり悪いやつではない。ドロシーは思った。

 

「足の手当してくれたんだよね。ありがとう」

ドロシーは青年に手を差し伸べる。

「私はドロシー。宜しくね」

「俺は、シキだ」

シキはドロシーの手をとり、握手した。

 

「ねえ、ここはランゼス?」「お前、なんであんな格好で?」

2人は同時に質問し、お互い苦笑いする。

 

「ドロシーはお前もしかして不法侵入したのか?地下から?」

シキは昨夜の爆発事故を思い出す。黄瓦層を挟んで広がる地下水路とランゼス地上との間に大穴が空いた話だ。

「お前やるなあ。外からどうやって侵入したんだ?」

「外壁の採水口。穴が空いてたのよ」

マイラがバキュアを使って融かしたのだ。その直後に、ドロシー達も入ることができた。

「ドロシーは運が良かったぜ。地下水路への侵入口は本当に厳重に管理されてるんだ」

シキはドロシーに買ってきた食べ物を一緒に食べながらそう言う。

「街の外からは勿論、街の中からだって普通は入れないんだぜ?ランゼスに数カ所ある水道管理所にしか地下水路への入り口はない。成る程なあ、中で爆発を起こして穴を開ければ地上には出られるわけだ」

爆発はジンの副産物のようなもので、意図したことではなかったが結果的に怪我の功名だったようだ。

 

(じゃあギンタン達は…)

そう。ということは地下水路で分かれたギンタとシズキも、外に出る手段は“爆発で穴を開ける”くらいしかない筈…

「…私以外には、誰か穴から出てきたりしなかった、かな…」

「ドロシーが開けた穴は、すぐに塞がれちまったぜ。引くくらい早く。すぐに魔法使い達が駆けつけてきてよ」

シキは、昨晩ドロシーと出逢う前、ドロシーが開けた大穴のそばを通ったときのことを語る。

「まさか、仲間がいるのか?」

項垂れたドロシーを見て、シキが言う。

「どうしよう…ギンタン達このままあの地下道から出られなくなってるかも…」

「あんな穴が空くなんざ俺が知る限り初めてのことだ。街を管理する倒鬼師達もすぐに調査を始めるだろうな…見つかったらどうなるんだろう…拘置所か…」

 

ドロシーは腰掛けていたベッドから飛び起き、立ち上がる瞬間足の裏の痛みに呻く。

「おい、焦って無理すんな。…なんなら俺も仲間探し手伝ってやるから」

 

「…こんな怪しい不法侵入者に手を貸すなんてお人好しね…ランゼスに来た理由も訊かないし」

ドロシーは足の裏を抑えながらそう言う。

「ここに不法侵入する理由なんざ、獄鬼の襲撃を避ける為ぐらいのもんだろ?もうすぐ開獄日だしな。 …それともARMってやつに関連してんのか?」

 

「…ARMの事、知ってるの?」

「ああ、貧民街の暴力団に売りつけてる奴がいるんだと」

オスカーだ。オスカー一味の仕業だ。

「私がARM売りの仲間かも知れないよ?」

そこまで知っていて、ドロシーがARMを使うのを見ていて、彼女を疑わないなんて不自然だ。

「目を見てわかった。お前は悪い奴じゃない。裸で倒れてる奴が武器商人なんてやるタマかよ」

「あっあんた、言ってくれるじゃないの!」

ドロシーが顔を赤くして怒る。

シキに掴みかかろうとしながら、ドロシーは自分の緊張の糸が緩んだのがわかる。

なんだか心が温まる感じ。

 

この異世界に来て、様々な悪意を身に受けたドロシーにとって、ギンタやシズキのような仲間以外は、心を許す相手にはならなかった。

裸の自分に悪戯せず、介抱までしてくれる。

会ったばかりで不法侵入者な上、ランゼスで問題になっているARMを持つ私を疑いもしない。

悪意ばかりのこのオズの国で、珍しい人間だ。

 

―――――――――――――

 

「そうと決まれば、お前の仲間を探すぞ!」

「待って、ARM商人探しも並行してやりましょう」

ドロシーが言う。

「ARMを売ってる人間、私も追ってるの。下手すれば私の仲間と接触しちゃうかも」

「知り合い、なのか…?」

「私と同じ国から、ARMの技術を広める為にこのあたりの地域に来たの。悪人よ」

異世界と言っても理解は得にくいだろうから、国、ということにしておく。

実際カルデアという国レベルで、オスカーとは同郷だ。

 

「お前の国ね…すげえ技術だな。神導器みたいなもんじゃねえか」

「そっちと違って、練習しないと使えないし連続で無限に使えるもんでもないけどね」

ドロシーは答える。

 

(オスカー…あんたの思い通りになんかさせないよ…)

ドロシーの表情が引き締まる。

シキとドロシーは、情報を集める為街へと繰り出していった。

 

 

「ねえ、シキはこの街の倒鬼師なの?」

オズの国の魔女・魔法使いの中でも、生まれた時に授かった魔法を獄鬼退治に捧げることを職業とした人々、それが倒鬼師だ。

 

「倒鬼師だよ。…フリーのな…」

シズキやアーテンボローと一緒だ。獄鬼を倒していいれば、名乗るだけで倒鬼師にはなれる。

しかし、倒鬼師の中でも正式に認可の必要な役職がある。

「オズの国の中心、エスメラルダ王国の王、オズ大王に認められた倒鬼師、それが王属倒鬼師なんだ」

ドロシーが知る王属倒鬼師は、コッローディ。尤も、彼女は蜘蛛の獄鬼によって“堕獄”させられてしまっているが…

シキはその“王属”になり、エスメラルダの組織で倒鬼師として働きたいらしい。

 

「憧れてる人がいるんだ…」

シキが呟く。

「それって、女の子?」

ドロシーはニヤニヤして質問する。

シキは少し顔を染めた後、鼻っ柱を掻きながら、頷いた。

「…すげえ奴なんだぜ…ほんのちょっとだけ“時間”を操れる魔女でよ。王属試験に合格してエスメラルダに行ったっきりだけど…あいつの後を追いかけたいんだ」

「大丈夫よ!シキならなれるって!まだ若いんだし!」

「お前無責任に…それに1つか2つしか変わらなねえだろお前も!」

 

そう言い合っていると、たどり着いた貧民街の広場で喧騒が目に入った。

7人程の男達が、3人の男達―敵対するギャングだろう―をリンチしている。

やられている男達はもう長くはないだろう。ガタイの大きさからかなりの腕利きのようだが、数が多いチンピラ達が持つ不思議な武器に手も足も出なかったようだ。

 

チンピラの1人が、指輪を光らせて火炎放射で敵の男達の息の根を止めている。

ARMだ。

「ギンタンの前に、ARM使いのほうを先に見つけちまったね…」

 

「あんた達、そのARMを売った奴のことを教えな!」

7人の男に向かって、ドロシーが啖呵を切る。

「お、おいドロシー…」

彼女の大胆な行動にびっくりし、抑えようとするシキだが、向こうも喧嘩を勝ったようだ。

 

「なんだ姉ちゃん、あんたも欲しいのか?ARM」

「1晩で1個やるぜぇ」

「1度に俺ら全員相手してくれたら人数分やるよ」

「…言いたいことはそれだけ?」

 

【挿絵表示】

 

下卑た挑発を無視したドロシーの指輪が光ると、銀色の箒が出現する。昨晩シキが見た箒だ。

 

「へえ、嬢ちゃん、持ってんじゃねえかよARM」

「“長鼻の旦那”のお仲間じゃねえのか?」「あの言い方だと敵ってとこだろ」

7人のチンピラ達は口々に相談し合うが、ドロシーが粛々と戦闘準備に入るのを見て、自身もARMを出し始める。

槍、長剣、斧、星球型の鎚…特殊能力もない単純なウェポンARMばかりだ。

1人は指からチョロチョロと炎を出して見せている。初級のネイチャーARMも持っているようだ。

 

 

 

7人の男達が一斉に飛びかかるが、ドロシーは涼しい顔で箒を前へ突き出す。

 

【挿絵表示】

 

「ゼピュロスブルーム!」

ドロシーが箒を振るうと、立っていられない程の突風が発生する。

男たちはたまらず腰を崩し、身長の低いものはそのまま吹き飛び、広場の床に頭を打ち付けてしまう。

 

「っへ!ただの風だぁ!怯むな!」

男たちが再び斬りかかってくる。ドロシーは突風で彼らの動きを牽制し、“あえて1人だけ”吹き当てる風の威力を弱める。

わざと風を弱めていることにも気づかず、意気揚々と斧をドロシーの突き立てようとする男の鳩尾に、ゼピュロスブルームの柄がめり込む。

 

近づいてくる複数の敵を風で牽制し、あえて作った“隙”に飛び込む敵に集中して各個撃破を狙う。

単純だが、思い思いに動く7人の敵を相手取りながらそれを実行するのは並のことではなかった。

ドロシーはまるで後ろにも目が付いているかのような鮮やかさで、自身を狙う複数の武器の目を縫って敵を撃破していく。

 

 

「貰ったァ!」

鎚を持った男をドロシーが倒した直後、もう1人のチンピラが手槍を持ってドロシーに襲いかかる。味方を囮にしたのだ。

ゼピュロスブルームの柄はまだ鎚を持った男の喉元を突いたまま。攻撃対象を切り替える間に手槍が届いてしまう。

かに見えた。

 

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「エア・ハンマー!」

ゼピュロスブルームを持っていないほうの手のブレスレットが光ると同時に、打ち出された凝固した空気の塊が顔面にぶち当たり、手槍を持った男が昏倒する。

 

 

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風で防御し、箒を使った杖術・必要に応じてエアハンマーで迎撃。

まるで輪舞するかのように複数人の男の武器を躱し、痛恨の一撃を叩き込んでいく。

 

(強えじゃねえかよこいつ…)

昨晩シキの拘束魔法にあっさりやられたのは彼女が相当疲弊した状態だったからなのだと知る。実際ドロシーは強制排泄やレイプ等、シキが想像する以上に消耗していた。

体力も回復して本調子のドロシーは、例えオズの国において弱体化していたとしてもそこらのチンピラなど敵ではなかった。

何しろ彼女は、故郷の世界・メルヘヴンの戦争において、一度も敗北せずにウォー・ゲームを終えた最強の魔女なのだから。

 

 

 

 

「ハッ…やるなあ嬢ちゃん…そんならこいつはどうだ!?」

斧のARMを使っていた男がドロシーにやられた傷を抑えながら、棘状の首輪を模した銀細工を掲げる。

「やっちまえ!ブルル!!」

銀細工が光を放つと、虚空から巨大な犬が出現する。

巨大な頭としわしわの顔が特徴的なその犬は、顔だけで人間の背丈程ある巨体を誇っている。

ドロシーはその犬に見覚えがある。ウォーゲーム5thバトルでアランが闘った相手、シャトンが使っていた中級のガーディアンARMだ。

 

「こいつら…ガーディアンARMまで…」

ガーディアンARM・ブルルは狂ったように吠えながらシキへ咬みかかる。

「シキ!危ない!」

 

「おいおい…ARMって奴は武器だけじゃなく獄鬼みてえな化け物にもなるのか?」

犬のガーディアンはシキの頭を噛み砕こうとする姿勢から、微動だにしない。

「昼間でもよ…こんだけゴチャゴチャした街ん中なら!“影”は作り放題だ!」

家屋、人、…陽光を遮る物が作り出すありとあらゆる“影”が地を這うように延び、ブルルの身体へと絡みつきその動きを縛っていた。

 

ドロシーは昨晩シキが自分を縛って気絶させたことを思い出す。

(影を操る力を持った魔法使い…)

 

「ふん…魔法使いが…ご自慢の魔法はそれだけか!?こっちはARMの数だけ魔法が使えるんだ!もうてめえらなんて怖くねえんだよ!」

もう一人のチンピラが火のARMを使ってシキを焼こうとする。

 

「俺の武器は…魔法だけじゃねえ!」

ブルルを縛る影の力は緩めることなく、シキは腰に差した剣を抜く。

鞘から放たれた神速の剣先は一瞬でブルルの喉笛を通過する。

数瞬遅れてブルルの首から鮮血が吹き出る頃には、影の縛りは火のARM使いの腕に絡みつき炎の機動を変える。

火炎放射を間一髪で避けたシキは剣を振るい、火のARMを持つ腕を跳ね飛ばす。

 

 

 

 

 

「へえ…やるじゃない…」

ドロシーがシキの活躍につい見とれている間に、彼女の背後から赤く長い触手が延びる。

「きゃ!!」

 

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それは彼女のドレスのスリットから服と肌の間へ侵入し、胸元から飛び出る。

粘液を纏ったそれは更にドロシーの手首に絡みつき、彼女の動きを封じる。

その触手のようなものは、ドロシーの背後に出現した異形から延びていた。

その姿は赤い蛙。成人男性の2,3倍はある背丈のそれは、正拳や手刀を空に放ってこちらを威嚇していた。ドロシーに絡みついているのはこの蛙が伸ばした舌だ。

 

「クンフーフロッグ!」

「よく名前を知ってるな。こいつは“あの方”に頂いたARMの中でも特上よ!」

知らない筈もない。同じくウォーゲームの6thバトルでアルヴィスと闘ったナイト・コウガが使ったガーディアンARMだ。

ウォーゲーム後に壊れたバッボを治す為にカルデアへ向かったドロシー達を妨害してきたのもこのARMだった。

 

しかし、それ以外にもドロシーはクンフーフロッグと出会っていた。

昨晩、彼女が裸で徘徊していた際に出会った化け物。

今ならわかる。あの巨体や輪郭はクンフーフロッグのものだった。

「こいつは強力な分まだ俺には制御が難しくてよ。昨日の夜も練習がてら街に放って暴れさせてたのさ」

「ああ知ってるよ…私も昨晩襲われたからね!」

 

 

「威勢が良いじゃねえか姉ちゃん、でもそんなカッコじゃあ格好つかねえぜ?」

「くっ…」

チンピラに指摘されてやっと気づく。クンフーフロッグの舌が胸元から飛び出した勢いで、ドロシーの乳房がドレスから放り出されてしまっている。

シキも思わずドロシーの胸を凝視してしまう。

「こらっ!シキも見るんじゃないよ!残りの奴らを片付けな!」

「わ、わかったよ…!でもお前それじゃ動けねえだろ?加勢するぜ…」

 

「加勢なんて…必要ないよ」

ドロシーの声色が低く変化する。

「リングダガー!」

虚空から出現した短刀を、クンフーフロッグの舌に正確に突き立てる。蛙はぎょっとし、一瞬だけ舌の拘束が緩む。

一瞬の隙に、蛇のように長舌の拘束をから脱出する。

放り出された胸をドレスに仕舞いながらドロシーはクンフーフロッグと距離をとる。

 

(さて、どう反撃しようか…)

ドロシーの持つガーディアンARM・トトであればタイマンでクンフーフロッグに勝つことが出来るだろうが、今回はトトは使わない。

メルヘヴンと違いここオズの国ではドロシーの魔力消費量が格段に多い。

“ガーディアンにガーディアンをぶつける”という戦法はなるべく避けたかった。

 

舌を刺されたクンフーフロッグは激怒し、目にも留まらぬ勢いで突きを繰り出す。蛙の長い指が予想よりも長いリーチを作り出す。

正拳突き、足払い、回し突き、旋風脚…巨大蛙の手足から放たれる打撃の数々。

ドロシーはそれらの全てを、軽業師のような身のこなしで避ける。

 

やがて、ドロシーは廃屋の壁に追い詰められる。

「チェックメイトだな、嬢ちゃん!」

ガーディアン使いはクンフーフロッグの遥か後方で、ドロシーを煽る。

「…チェックメイトね」

ドロシーは自分の足元に突風を起こす。

クンフーフロッグは砂埃に少し驚いた程度だが、それより遥かに体重の軽いドロシーは宙へと吹き飛ぶ。

あえて自分を吹き飛ばしたドロシーはクンフーフロッグの後方へと着地し、ガーディアン使いを狙う。クンフーフロッグは砂埃が目に入った上、背後に移動したドロシーに即座に対応できない。

 

ガーディアン使いは即ドロシーと距離を取ろうとするが、動かない。否、動けない。

ドロシーはリングダガーを起動し、短剣の先をガーディアン使いの喉元につける。

「あんた…クンフーフロッグを使う練習してたって言ってたけど、離れた安全な場所から操作して人を襲わせるだけだったろう」

「な、何言ってやがる…」

 

ガーディアンARMを発動している間は、術者はその場から動くことができない。

即ち術者本人は無防備。そこを襲われたらまともな抵抗もできずに、そこで詰みになる。

“顔をあわせて”ガーディアンARMを使って対人戦をするなら、常にそれを意識して間合い取りをしなくてはならない。

 

「も…戻って来いクンフーフロッグ!」

焦って指示を送るが、クンフーフロッグは身体5つ分離れた距離にいる。

「ガーディアンARMの基本だよ…敵から隠れないで戦ってるなら、ガーディアンと自分の距離を離しちゃ駄目だ」

ドロシーはガーディアン使いの指から、銀色の指輪を引き抜く。

本体が術者と離れ、魔力供給が途絶えたクンフーフロッグの姿が消滅する。

ドロシーは奪った指輪をエアハンマーで粉砕する。

 

「す…すげえ…」

シキは、鮮やかに拘束から脱出し、反撃に転じたドロシーに驚愕の視線を送る。

 

「そんな…クンフーフロッグ…“長鼻の旦那”の戦友が使っていたARMだから大事にしろって云われていたのに…」

チンピラは膝を崩してへたりこむ。

 

 

「心配ナイヨ。アア言ッタケド、ソレハおずノ国ノ魔力用に作ッタ量産品ダカラネ」

木の軋む音、歯車の噛み合う音と共に、それはやってきた。

それは、子供に見えた。

赤い髪を逆立てて、緑色の衣服を着た子供。

しかしその歯はギザギザと鮫のようで、肌は木の質感。鼻は竿のように長い。

人間ではなく、人形だった。

 

「な…長鼻の旦那…」

チンピラのすがるような声に反応し、石畳に横たわる彼らの頭を撫でてやる。

 

「あんたは…」

ドロシーは驚愕の目でその人形を見る。彼女はその人形をよく知っていた。

「アヒャヒャ!どろしーオネエサン!久シブリダネエ!」

木彫りの人形がおどけて手を叩くと、木が打ち合う乾いた音がする。

「ピノキオン…待てッ!」

木彫り人形は、ドロシーと目をあわせるとすぐに身を翻し、反対方向へ逃げていく。

「アヒャ!追イカケッコ!ヒャヒャ!」

 

「長鼻の旦那は追わせねえ!」

人形は頭を撫でると同時に“癒しの天使”でチンピラのダメージを回復させていた。元気になったチンピラ達が再びドロシーを阻もうとする。

舌打ちしてゼピュロスブルームを振るおうとするドロシーを制して、シキが立ちはだかる。

「ここは俺に任せて、あいつを追え!」

「…ありがとう、シキ!!」

剣を鞘から引き抜く背中に、感謝の言葉を送ってピノキオンの後を追う。

 

(そうだ、仲間ってこんな感じだったな…)

ドロシーはアルヴィスやナナシ達のことを思い出す。

ギンタのように恋愛対象ではないが、安心して信頼して背中を預けられる相手。

心強い気分がドロシーの胸を満たしていく。

 

「待て!ピノキオン!」

ドロシーは道化師のような動きで疾走する木彫り人形の背中を追って、大地を蹴った。

 

 

 

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