「いや、実際のところ空々くんってさ、どうなんだろうね。あっちの方については」
灯籠木四子は穏やかそうでいてけっこうピーキーなところがある。それを重々承知している好藤覧からすると、あまり良い予感のしない話の振り出しだった。だからといってそれを避ける彼女ではないのだけれど。
「なんじゃ、惚れでもしたんかい」
「んー、そうじゃないんだけどさ、なんていうか私からするとあの子って、けっこう普通なんじゃないかって思えるんだよ」
「そうかの」
灯籠木は四国ゲーム最中、ほとんど空々と直接の関わりを持っていない。ある意味では最も関係の薄い隊員が、灯籠木四子ということになる。
それはつまり空々の異常さを肌で感じる機会がほとんどなかったということだ。そして彼の異常さ、異端さというものは、直接肌で感じる以外に理解のしようのないものであるというのもまた事実だった。
ならば。
ま、そう思うのも無理はないかもしれんの。
好藤は肯定も否定もなく、ぞんざいに先を促す。
「こっちから強引に迫ってみれば案外簡単に落ちるんじゃないかって」
「無理じゃろ」
「いやいや、わかんないよー? だって考えてみてもごらんよ。感情がない、周りを見て、空気を読んで感情を演出するというのは、雰囲気に流されやすいという裏返しでもあるわけだよ。そこに明確な損得や判断基準がなければ、どっちでもいいというのが彼のスタンスとして根底にあるわけ」
「まあ、そうじゃろうな。ただその場合、あいつにはすでに処女性を堅持しなければならないという大義名分が立ってしまっているわけじゃから、そこを切り崩すのはほぼ不可能じゃろ」
「彼にとって、世界平和というのは、そこまで重要な大義名分なのかな?」
「ふん?」
「思うんだけどさ、彼って基本的にはうぶなんだよ。性欲ってものがどれほど抗いがたいものなのかを知らないんだ」
「そりゃあんたの性欲が強すぎるだけじゃろ」
「んー、ま、あえて否定はしないけども。つまりさ、処女性ということに関していえば、キスやペッティングまでならOKなわけじゃない。そこに関しては空々くんもさほど抵抗しないと思うのよ。線引きにシビアであるからこそ、線の内側である以上それがどれほどギリギリであっても当たり前に許容してしまうっていうのかな」
「ふうむ?」
「わからないことに対して謙虚、と言い換えてもいい。疑いつつも鵜呑みにしてしまう。鵜呑みにしながら疑っている。その場で理性を押し切ってしまえば、こっちのもの。でしょ?」
「理屈はわかるが、そううまくいくかの?」
「ふふん」と四子は得意げに笑う。「私を誰だと思ってんの? まあ見てなって」
☆
空々空が空挺部隊の詰所へ入ったとき、そこにいたのは灯籠木四子ひとりだけだった。
これは決して珍しいことではない。そもそもこの部隊にデスクワークなんてものはほとんど存在しないし、数少ないそういった作業はすべて氷上竝生によって切り回されている。だから部屋にいるのは待機中、つまり目下やることのないものだけで、誰もいないことすら珍しくはない。
「おはよう」と空々は声をかける。返事はない。いつも通りだ。
だから空々はいつも通り、隊長席に腰を掛ける。机の上には氷上に依頼しておいた資料が積まれている。今日中に目を通しておかなければいけない資料だ。普通ならうんざりとする量だが、空々は特になんの感情も浮かべず、一番上の資料を手に取った。
その時だった。
灯籠木四子がおもむろに席を立ち、空々の方へと歩いてきた。ステッキこそ持ってはいないものの(出現させていないというだけで、所持していないわけではないのだが)黒い魔法少女のコスチュームに身を包んだ彼女に不用意に近づかれると、つい警戒心が芽生えてしまう。
牽制の意味も込めて、空々は声を掛ける。
「なにか用?」
灯籠木はそれには答えず、薄笑いを浮かべただけで、空々の目の前に立った。文字通り。目の前だった。
彼女は机の前に来ると、そこでは立ち止まらず、そのまま机の上に足を掛け、そこに仁王立ちに立ったのだった。
自然、空々からすれば見上げるような格好になる。
空々はうろたえた。
珍しくも、うろたえた。
魔法少女のコスチュームはそもそもスカートの丈が短く、しかも膨らんでいるので下着が露見しやすい。だからパンツが見えてしまうことは決して珍しくない。珍しくないのだけれど、肝心のそのパンツがないのだからこれは戸惑ってしまうのも無理はなかった。
灯籠木四子の生の股間が、そこにあった。
うっすらと生えた陰毛が隠しきれていない丘のふくらみと、ぴったりと閉じた一筋の秘部。
とっさに目を逸らし、
「ええと、そこに立たれるとちょっと困るんだけれど」
「あ、そうだね。そうだよねー。ごめんごめん。座った方がいいよね」
そう言うと四子はその場でしゃがみ込む。
おかげで一層股間を目前に突き付けられるような格好になり、空々はのけぞる。
「うふふ、どうしたのさ。ハトが豆鉄砲食らったような顔しちゃって。私のお豆さんはそんなに刺激的だったかな?」
しゃがんだことで、ぴったりと閉じられていた四子の秘部は微かにひらき、ピンク色の果肉をのぞかせていた。知識に乏しい空々には「お豆さん」がなにを指しているのかわからなかったが、それは確かに、細い割れ目からひょっこりと顔をのぞかせている。
「ねえ、空々くん」
「はい。なんでしょう」
目を逸らしたまま答える彼を、満足げに見つめながら四子はそっと彼の頬を両手で挟む。そしてまっすぐ自分の方へと向けさせる。
想像通り、空々はあえて拒むような素振りはみせなかった。相変わらず視線は逸らしていたが、正面に向けられた顔を逸らそうとはしない。
四子はむずむずと、股間がうずくのを感じた。
子宮の奥にきゅんとした締め付けが走る。とろりと、愛液がこぼれだす。心拍数が上がり、顔が紅潮してきたのがわかる。
両手で挟んだままの空々の顔を、そのままそっと引き寄せる。股間で挟み込むように、空々の顔を迎え入れようとした……、
しかしまさにその瞬間だった。
ガラリ、と。
ドアが開いた。
はっと我に返った空々が身を引きはがすようにのけぞる。
「あっ!」と、声を上げたのは同時だった。
一人は灯籠木。
そしてもう一人は。
まさに今、ドアを開けて部屋に入ってきた、ストロークこと手袋鵬喜だった。
☆
灯籠木四子は手袋の姿を認めると、あっさり机の上から降り、すれ違うようにして部屋から出ていってしまった。その引き際の華麗さに空々も、手袋も、なすすべなく彼女を送り出すことしかできなかった。
結果、事態の収拾はすべて空々ひとりに任せられてしまったわけだった。
「な、なにをしていたんですか、あなたたち……」
手袋は明らかに動揺していた。
出入り口は隊長席に対してほぼ真横。つまり彼女は空々の顔がまさに四子の股間にうずめられようという瞬間を、ばっちり目撃してしまったことになる。
下手な言い訳は逆効果だろう、と空々は冷静に考える。
そもそも僕自身、ぜんぜん状況を理解できていなかったわけだし、まあこの場合はありのままを伝えるのがいいだろう、と。
「まあ、見たまんまだよ」
「ひっ!」
「いや、なんていうか、別になにをしていたわけでもないんだよ。灯籠木さんがこっちに来てさ、机の上に立ったんだ、いきなり。それで、立たれると困るっていったらその場でしゃがんじゃって。そう、それだけ」
「そ、それだけ……」
「そうだよ。だからそんな怯えないで」
「……」
手袋の沈黙がなにをあらわしているのか、空々には図りかねた。言うほど動揺しているようには見えない。むしろ冷静に、なにかを推し量っているようにさえ見える。
おそらく空々は、この時点でさっさと席をはずして逃げてしまうべきだったのだろう。
それが正しい選択だったのだろう。
しかし彼にはそれができなかった。そうしなかった。このことで彼を責めるわけにはいかない。だってまさか手袋がそんな行動に打って出るなんて、誰が想像できたろう。
「わかりました」と手袋は言って、つかつかと歩み寄る。
そして。
乗った。
机の上に。先ほど灯籠木四子の乗っていたその机の上に。膝立ちで乗ったのだった。
元魔法少女だったとはいえ、現役魔法少女であるところの灯籠木と違い、手袋は魔法少女のコスチュームに身を包んではいない。シンプルなジーンズにTシャツという格好だから、机に乗られたからと言って股間が露見するようなことはない。
しかし。
「さあ」と、Tシャツの裾を軽く持ち上げ、へそをあらわにした手袋は言った。「ぬ、脱がせてください」
「は?」
「は?じゃないです。ジ、ジーンズを下げてください。脱がせてくださいって、い、言ってるんですよ」
「えっと、どうして、かな」
「いいから早くして!」
普段はおどおどと気弱な手袋の、意を決したような気迫に呑まれ、空々は反射的に彼女のジーンズに手を掛けた。
ぐっと、力を込めて引く。
「ちょっと、痛いです! せ、せめてボタンをはずしてください、チャックをおろして緩めてください、な、なに考えてるんですか……」
「あ、ごめん」
改めて、空々は眼前の机の上で膝立ちになった手袋鵬喜のズボンを脱がしにかかる。ボタンを外し、チャックを降ろすと薄水色の下着がのぞく。ほんのりと、洗剤の香りがした。
「は、はずかしいんですから早くしてください……」
「ああ、ごめん」
ズボンを膝まで降ろすと、鵬喜の生白い太ももが、ふるんとふるえてあらわになった。ほとんど反射的に、まるで引き寄せられるように、空々はその太ももの内側にくちびるをあててしまった。ほんのりと汗の味がして、酸いような、甘いような香りが鼻孔を満たした。
ぴくりと、鵬喜の体が震えた。
しまった、と空々はとっさに自らの行いを悔いた。
おとなしいとはいえ、キレるとなにをしでかすかわからない手袋鵬喜である。
「こ、これでいいですか」と、しかし鵬喜は怒るでもなく腰を下ろし、右足だけズボンから完全に抜いてしまうと、さきほど四子がそうしていたように、机の上でしゃがむ姿勢をとった。
水色の下着に包まれた股間が、ぷっくりと前に突き出される。
「いや」と空々は言う。「これも、つけてなかった」
空々はそっと、その股間のふくらみを撫でる。
「ん……」と、鵬喜は吐息を漏らす。「これって?」
「こんな下着。灯籠木さんは、つけていなかった」
「……うそ」
「ほんとうだよ」
鵬喜は少しためらうような素振りをみせた後、顔を逸らし、ぼそりとつぶやくように言った。「じゃあ、こ、これも脱がせて……」
空々は身を乗り出すような格好で、腰のゴムに手を掛ける。まるみのある鵬喜のお尻をなぞるように、下着をおろしていく。秘部を覆う最後の布に、少しためらったのか一度そこで空々は手を止めたが、ごくりと唾を飲み、動きを再開する。布が完全に取り払われた瞬間、匂い立つような湿気が、もわりと白い太ももの間の空間に立ち込めた。吸い込まれるように、空々は膝までずらした下着の下をくぐるように顔をすべりこませ、鵬喜の柔らかな秘部にしゃぶりついた。
「あっ! あっ……あは!」
筋に沿うように舌を這わせ、隙間を探る。まだ恥毛のないなだらかな丘をなぶるように咥え込み、舐めまわす。
そのぴったりと閉じた秘部が、次第にほぐれはじめた。ねっとりとした汁が、舌先に絡みはじめる。粘液に導かれるようにして、空々の舌は隙間をこじ開けていった。
「やっ…ああ……な、なんか入ってきて……んんっ」
鵬喜の顎が上がり、顔がより一層紅潮してゆく。両手を後ろに突き机から反り出さんばかりに身をよじらせる。それでもそのふくよかな太ももは、空々の顔をがっちりと挟んで離さない。
「すごい……あ、すごい、いい……!」
やがて鵬喜の体がはげしく痙攣した。がくがくと腰をふるわせ、ぐったりと、脱力したように机の上でしなだれた。
「はあ……はあ……」
空々は動揺していた。動揺するはずのない男が、動揺していた。心拍数が激しく揺れていた。股間に熱いものを感じ、たまらなかった。彼は立ち上がり、履いていたズボンを、一気に下着ごと脱ぎ去った。勢い、着ていたシャツも脱いでしまう。全裸だった。
毎日の欠かさぬトレーニングで鍛え上げられた肉体は、到底十四歳のものではない。その肉体に、鵬喜の視線が吸い寄せられる。
空々は、引き剥がすように鵬喜の膝にまとわりついていたジーンズと下着を引き抜いた。Tシャツ一枚になった鵬喜は、机の上で半身を起こす。そのシャツも、汗でべっとりと濡れていて、形のいい乳房が透けている。
ほとんど夢見心地のような表情で、鵬喜は自らそのシャツを脱いだ。ブラジャーを外し、床の上に放った。生まれたままの姿で机の上に半身を横たえる手袋鵬喜はなまめかしく、その匂い立つような幼い色気は、空々の理性を粉砕するに十分だった。
荒々しく抱かれ、全身にキスを浴びながら、鵬喜は恍惚としていた。世の中に、こんなに素晴らしい体験があるなどと、彼女は思いもしていなかった。もう一生、このまま空々に抱かれていたいと思った。恨みなどもうどうでもよかった。なにもかもがどうでもよかった。むさぼるように、彼女もまた激しく空々の肉体に絡みつき、吸い付いた。彼の股間のイチモツを小さな手の平で包み込み、やさしく愛撫した。
鵬喜は机の上から抱き上げられるようにして降りると、空々の体をそっと押して椅子に座らせ、その前にしゃがみ込んだ。愛おしげに股間を愛撫し、その固くなったモノを口に含む。裏筋をなぞるように舐めると、空々の腰が浮いた。まるでそんな反応を楽しむかのように、鵬喜は様々な角度からモノを咥え、舐め、しゃぶった。じゅぽじゅぽと音を立ててストロークを繰り返すと、空々は荒い呼吸の合間に狂おしげなうめきを漏らしはじめた。鵬喜はさらにペースを上げた。こぼれた唾液を吸い上げようとひと際強く吸引した瞬間、空々はスペルマをほとばしらせた。口内にとめどなく注ぎ込まれるそれを、鵬喜はこぼさなかった。ペニスを舐め上げ、最後の一滴まで絞りつくすようにしゃぶり、呑み込んだ。
「ん……んはっ! はあ……はあ……」
呼吸が整うのも待たず、空々は彼女を抱き寄せた。そしてその胸を吸った。けっして巨乳ではないが、それでも十分にたおやかな胸。空々は乳房にむしゃぶりついたまま、彼女を床に押し倒した。早くも再びふくらみはじめたペニスの先が、鵬喜のうぶな割れ目をこつこつと叩く。
汗で引きつり合う肌の摩擦が、激しさを増す。
くちびるをくちびるでつまみ、舌で歯の裏側を舐め合う。唾液がまざりあい、互いの匂いがまざりあう。床の上をもだえ、転がりながら、二人は肌をこすり合わせた。
空々は、激しく勃起していた。
そしてそれを拒むものは、もうなにもなかった。
鵬喜は自らみちびくように、脚を広げ空々のイチモツを迎え入れる。手を添えるまでもなかった。かちかちに固まった空々のペニスは割れ目に誘われるように沿い進み、そのまま膣へと滑り込んだ。
「ああっ……! ああんっ!」
ねっとりと汁にまみれた手袋鵬喜の膣の内壁が、うねるように空々のペニスを咥え込む。火が着いたように熱く、鵬喜は空々の体をぎゅっと抱きしめた。
「もっと……う、動いて」
鵬喜の訴えに応えるように、空々はゆっくりとペニスをストロークさせはじめる。はじめはゆっくりと、直線的に、だんだん激しく、時には弧を描くように。
「あ……あ……あふん、はっ……ああっんっ! いくっ、イクッ、……ああ、……だめえっ!……ああああんっ」
むさぼるように空々は鵬喜の中を突いた。突いて、突いた。鵬喜は両足でがっちりと空々の腰を押さえていた。彼の体をどうかせんばかりに激しく抱きしめ、喘いでいた。やがて空々が絶頂を迎えたとき、鵬喜は彼を体の中で受け止めた。快感と、喜びに、激しく打ち震えた。
☆
床の上で汗だくで抱き合ったままおとなしくなった二人を、灯籠木四子はこっそりとドアの隙間から観察していた。右手はしっとりと愛液にまみれ、エクスタシーと共にあふれだした体液は太ももをつたって足元へ至り、小さな水たまりを作っていた。
「ふう」と彼女は満足げに、隣でやはり室内をのぞいていた好藤覧をにやりと見遣る。「ま、計画とはちょっと違っちゃったけれど、結果オーライ、だね。私の正しさはちゃんと証明できたわけだし」
「まあのう」と好藤は濡れた手をハンカチで拭きながら答える。「ええもんみせてもらったわ。とはいえこれであいつの処女性は失われよったき。酸ヶ湯課長んとこに報告せないかんのう」
「それはついで、だろ?」
「ま、そうじゃな」
二人は興奮冷めやらぬ若い体を慰めるべく、大人の男を求めて研究室へと急いだ。