今回は健全だな!
彼女の家は時代劇とかでいう、“この界隈を仕切る一家”で、
超常黎明期、『個性』を好き勝手に使う者たちが世に溢れ、法が意味をなさなかった暗黒の時代に、いち早く力を集め、束ね、
ヒーローが公的に確立された現代でも、異形型の人員のみで構成され、その威を隠さぬグレーな武闘派集団。その名も竜爪会。
彼女は、そこの親分さんの一人娘だったりする。
ヒーロー飽和社会でなお一目置かれる人物の娘さんなのに、瑠蒼さんにはまるで傲る様子は無く、学業に真面目に励み成績は優秀。体育の授業でも見事な身体能力を見せ、母親譲りの黄金の髪と青い瞳を備えた美少女。
『個性』
いやいや、彼女の『個性』も有名です。“竜”。
こちらは父親譲り。鹿っぽい短い角と、真珠色に輝く鋭い爪がその証。
ぶっちゃけ、同じクラスですが憧れの対象かな、もはや。
そんな瑠蒼さんなのだけれど、登校時に私の乗る電車の車両に先に乗っていて、連れだって登校することが多いのである。
物静かな人なので、いっしょにいても私が一方的に喋っていることが多いけど、そこは私の『個性』
で、なぜか、昼休みに新設棟の空き教室から石動さんと出てくると、その完璧美少女と廊下にてエンカウンター状態。
あ、瑠蒼さんのびっくり顔ってレアかも。
お目目パチクリが可愛い。
さて、どうしようか?
いえ、別にうしろめたい事は…してたけど、してたけど!
不可抗力だから!
えーと…。
会釈をして、それ以上の会話はせずに華麗にスルーってどうかな?
いやいや、それは憧れの瑠蒼さんに失礼というもの。
…ここは我が『個性』
その『個性』が今一信頼出来なくなってる状況なんだけどね!
元からコントロールなんて出来てない『個性』だけど、わざわざアピールして瑠蒼さんが私に“支配”されちゃってもマジ困るし。
などと数瞬の間に高速で悩んでいると、瑠蒼さんの方から話しかけてきてくれた。
なるほど、この新設棟で
そういえば今朝も駅で寄り道されてましたっけ
お腹の具合が悪いのかな?
それとも、
心配して訊ねると、さほどの事は無いと答えてくれました。よかったよかった。
私達の事は、石動さんが私に相談事があると言ってきたくだりを知っていたようで、他人の目の無いところで相談を続けていたと思った、と。
その上で、立ち入った事を訊ねるつもりは無いとも言ってくれました。
落ち着いた物腰、穏やかな優しい声音。
さすがはわが校随一の完璧美少女…。
石動さんと私は、瑠蒼さんの言葉に乗るように返答します。
ちょっとおどけた感じになっちゃいましたけど、クラスの愛玩系アイドルとしては許容範囲でしょう、たぶん。
会釈して教室に戻ると思われる瑠蒼さんを見送る私。
歩く後ろ姿もキレイだなー。
思わずそう呟くと石動さんが
『瑠蒼さんは確かに美人だけどさ、あたしから見て可愛いいのは、姫ちゃんだよ。』
あー、嬉しいなぁ、もう。
私達は手を繋いで、仲良くゆっくりと教室に戻りました。
そんな私達を見て咲夜ちゃんが、
『あーっ!ズルい!姫ちゃんと手ぇ繋いでる!あたしも繋ぐ!んでもってバージンロード一緒に歩こ!』
と騒ぎ立て、石動さんが脳天にチョップをかましてました。
『うきゅー。やっぱり地味に痛いー。』
これも愛かなー。
さて、午後の授業がんばりますかー。
放課後、瑠蒼さんから進路について話したいとのお誘いを受ける。
おお、そういえば瑠蒼さんも私と同じく雄英の普通科志望です。
土日の予定を確認して、改めて御返事することに。
今日は石動さんは部活が有るので、帰る方向がいっしょの咲夜ちゃん達と、お茶してから帰ることにしました。
…終わって家に帰りつくまで、その内の誰かが『目覚めて』カミングアウトしてこないか不安だったけど。
帰宅後、さくさく着替えて自室で復習・宿題・予習を済ませ、帰ってきた母と夕食。
大手の商事会社に勤める母は、忙しい仕事の時間をやりくりして、なるべく私と一緒に食事を摂るようにしてくれている。
『ひーちゃんとご飯食べる方が楽しいしねぇ。』
おっとりとした口調で嬉しそうに笑う母。
父を亡くしてから、仕事と私に時間のほとんどを費やしてくれている。
それでも若々しく、スタイルもいいのは凄いと思う。
私は母に似ているので、身長とか胸とか、将来に希望を残している。…残っているんだから!
夕食後の後片付けをして、自分の部屋に入ったタイミングでスマホにメッセージが。
あ、睡さんだー。…何だろ?
“打ち合わせ”のお誘いでした。私の『個性』と、周囲への対応についてゆっくり話しましょ。って事で。
うーみゅ。
…打ち合わせは
現時点で、一番頼れる人と一番ヤバイ人が同一人物ってのが、もうね…。
ただ、この先どうなるかワカンナイ以上、睡さんの協力は不可欠な訳で…。
あ、石動さんと睡さんの顔合わせも考えないといけないし、早めに詰めておくべきですか、これわ。
結論。土曜の午前中から瑠蒼さんと進路の相互相談。
夕方から、睡さんと打ち合わせ。
これでいこう。
…睡さんの指定してる場所が彼女のマンションじゃなくて、俗にいうウィークリーマンションなのがちょっと気になるけど。
と、いうわけで土曜日です。
母は、朝から出勤なので瑠蒼さんが来ると二人っきり。
…大丈夫かな? 大丈夫だよね?
もし、瑠蒼さんが迫ってきたら、石動さんや睡さんとは別の意味でヤバイかも。
抑え、きかないかも。って、いやいや、そんな事考えていたら瑠蒼さんに失礼というもの。
マジメにいきましょう、マジメに。
約束の時刻10分前に、瑠蒼さん到着。マジメだ。
出迎えた玄関に立つ姿は。
おお、黒のチャイナ風ワンピ…だと?!
なんという破壊力!
ブロンドと碧眼にこれはヤバイ!
落ち着けわたし!
『綺麗ぇーっ!瑠蒼さん、ふだんからマジ美人さんだけど、今日は神ってない?! 竜神さま?女神入ってる?!』
…落ち着けませんでした。
ま、まぁ瑠蒼さんが頬を赤らめて照れる超レアのリアクションが見れたからいーのです。
勝ちです。
お土産に“いいとこのどら焼”をいただきました。
やっぱり『個性』
さて、互いの資料を持ち寄って、雄英(一般科)への入試対策です。
過去問、卒業生たるプロヒーローが出している対策本をはじめ、互いの得意分野と苦手分野も明かして、今後の勉強会の約束も交わして…。
途中の雑談では、私が睡さん…ミッドナイトと知り合いというところに瑠蒼さんが意外なほど食いついてきたり、瑠蒼さんのお父さんがあの、オールマイトと個人的に面識が有るという話を教えてもらって、わたしのテンションがちょっと上がってしまったりと、こちらも有意義な時間を過ごせました。
っていうか、スッゴク仲良くなれた気がするね!
次回は瑠蒼さんの家で勉強会をすることになったし。
お母さんと、お父さんの愛人さん(しかも二人!)が仲良く暮らしているとか。
…ある意味、参考にな…いやいや、ナニを言ってるか、わたし。
ちなみに、お昼ご飯は近くのお蕎麦屋さんから出前をとりました。(お母さんからお金を預かってました。)
人様の
完璧だわー。
さて、瑠蒼さんがお帰りになったので、覚悟の外出です。
睡さん…ミッドナイトがわたしにナニをされたがっているのか、不安で胸がドキドキします。
…不安で、だからね!期待なんかちょっとしかしてないんだから!
バスと電車を乗り継いで、繁華街の外れへ。
えーと、ここかぁ。思ってたよりシッカリというか立派な建物だぞ?
セキュリティのレベル高そー。
エントランスに立ってるのガードロボットだし。
入口の端末で、教えてもらったルーム№をコール。
『妃美呼ちゃん、いらっしゃい♪今開けるわねー。』
よかった。女王様呼ばわりはされなかったし、あえぎ声でも、くぐもったうめき声でも無くて、本当によかった。
ロックの解除されたドアを抜けエレベーターホールへ。
さて、どんな睡さんが待つのかなー。
家具付きのワンルーム。その玄関で出迎えてくれた睡さんは…く、黒のチャイナ、だ…と?!
何このシンクロニシティ。
似合ってるし、色っぽいし。
何だろー?何かに負けた気がするよー?
『睡さんったらセクシー♪女子中学生相手に気合い入りすぎじゃない?』
睡さんは艶然って感じで微笑んで
『あら?可愛らしい女王様をお迎えするんですのよ?それなりに気を使いますわぁ。』
あーもー、素敵だなーこのお姉様。
さて、では『ミーティング』ですね。睡さん。
睡さんは、過去に同じ様な『個性』が発露した例が無いか、プロヒーローとして、雄英教師として情報の集積を開始したと教えてくれた。
また、『個性』の成長・変質についても最新の研究の成果をチェックしているとの事。
…頼りになるなぁ、ホントに。
私は今のところ睡さんと石動さん以外にはカミングアウトされてはいないこと、自分で自覚できている範囲では特に『個性』の変化は感じないと話し、一応の近況として、瑠蒼冴子さんと雄英の受験対策を始めた事を…
『瑠蒼…?
睡さんの眼差しが鋭くなる。あー、確か瑠蒼さんの家の異名がドラゴン・タスクだっけ?
『瑠蒼は数少ない半公式の
むむ、意味深。でもここは突っ込まないでおきましょう。
その他、睡さんは雄英内の施設や、行事とかの資料を見せてくれた。
…お金もかかった学校だなー、ホントに。
ま、ヒーロー科に入る訳じゃないから、このふざけた規模の訓練施設は無縁だろうけど。
さて、話が一段落したっぽいタイミングで睡さんが
『女王様ぁ、ところでぇ…。こちら見ていただいても?』
…来たーっ。部屋の隅に並ぶ幾つもの大きなスーツケース。睡さんはその一つをテーブルの上で開ける。
革製品、ラバー製品、金属製品。あー、拘束具ってヤツかな?
鎖の付いた手枷、足枷。鈴の付いた首輪?革製の…マスクみたいな物。マンガとかアニメの猫の手っぽい手袋?あ、猫耳や犬耳カチューシャだ。
尻尾まであるよ?
その他、男の人のアレに似せた大人のオモチャとか、わたしには用途が解らない物も入っていた。
『私と同じ様な“気分”になった子が女王様の側に増えていくようでしたら、その子達へのご褒美の為にも使い方を覚えていただいた方がよろしいかと?』
おお、モノは言い様だなー。でも、しょうがないか。
『睡さんが
ちょっと混ぜッ返すと、睡さんはお澄まし顔で
『もちろん、そうでしてよ?でも、だからこそ、この狂おしいまでの気持ちに“後輩”達が苦しまずに済むように…と考えていますわ。』
うわー、今の言葉だけ拾うとカッコいいね。不思議!
『で、今日は何を教えてくれるの?私のミッドナイト。』
あ、頬が赤くなった。
『そうですわねー…今晩の夕食になる物の買い出しも兼ねて…』
え?何?兼ねるって、何を?
『ミッドナイト拘束野外調教。お散歩兼ねて近所のスーパーとコンビニでお買い物。って感じでいかが?』
…帰っちゃダメかな、今から。
私の呟きは無視されたようです。
睡さん…いえ、ミッドナイトは準備を始めました。
近所のコンビニやスーパーの所在のプリントアウト。
この部屋の鍵。
小さいスイッチボックス…?
『これは?』
何となーく、想像はつきますが。
『私の“中に”可愛い小さなオモチャが入っていますの。そのスイッチで、ブルブルと震えてくれるンですわ。』
やっぱりねーッ!
ミッドナイトは続いて、ハンカチと黒いガムテープを取り出します。
いやいや、ソレをして外を歩くのは無茶でしょ?
と、私が思っていると、テキパキとミッドナイトは自分の口をハンカチを詰め、テープを貼って封じてしまいました。
えーと…ん、それは…?
続いて手にしたのはレザー製の黒いマスク。
ヘビメタとかパンクスな人が着ける系?
それを装着して、ふさがれた口を隠してしまいました。
あー、なるほど。
それでも目立つけどね!
黒のチャイナに黒のレザーマスクを着けた美人さんだからね!
ミッドナイトは鏡の前でチェツクをしながら
『んっ!うぅぅん…むぐッ!う、う、うんッ♪』
可愛く呻いてます。口をふさがれるの好きっぽいのね、マジで。
満足したのか、こちらを向くと、ミッドナイトは手にしたスマホを素早く操作して画面を見せてきます。
《では買い物&お散歩に行きましょう 女王さま スイッチはお好きなように入れたり切ったりしてください。 それから わたしはしゃべれないので だからたくさん話かけてください》
えっと?
《返事できないのに 話かけられると 困って恥ずかしくてドキドキします から》
困るのも、恥ずかしいのも、ドキドキするのも…。
私がそーだっつーの!
あー、もう覚悟しなさいミッドナイト!
たくさん恥ずかしい目にあわせてあげるンだからねっ!
次回は瑠蒼さん視点での勉強会の予定。