チャイムが鳴り、教師が出ていく。
平松はすぐ様席を立ち教室を出ていった。別に今聞けばいいのに。周りの奴らに聞かれんの嫌なのか。
「しお、ご飯たーべよ」
するっと目の前に腕が回ってくる。
教科書を机の中にしまいながら、おー、と返事を返す。
「朝田ぁ、いちゃいちゃしてんじゃねーよ」
「うるさいよ森、来んな」
「来んなだって!笠原聞いた?」
俺の前の席に座るのは友人の森俊(もりしゅん)。俺を後ろから抱きしめている真宏とも仲がいいので昼食はだいたいこの3人で食べるのが常だ。
「俊、お前今日もパンかよ」
「おーまぁね。母ちゃんが寝坊してよーていうかさぁ、笠原」
後ろの真宏を引き剥がして隣に座らせる。
暑苦しいったらないからな。
「なんだよ」
「授業中のあれ、なによ」
「あれ?」
にやにやしてる俊に首をかしげる。
真宏は気にせず福岡さん特製のお弁当を開く。
「平松とのやり取り。平松めっちゃ顔赤かったしぃ?笠原との距離も近かったしぃ?」
「は?なにそれ」
真宏が何故か一番に反応する。
俺は自分のお弁当を広げながら別にと返す。
「ただ放課後話したいことあるってだけ。どうせまた真宏絡みだろ」
「いやお前あの平松の態度からしてそれは」
「しお、今日帰り待ってて」
俊の話を遮ってまでいうことか真宏。
真剣に俺を見つめる蒼に向き合う。
「やだ。今日は終わるの遅い日だろ。帰る」
「お願い。7時までには絶対終わるから」
「……見返りは?」
「泡風呂!と俺の愛!」
「お前の愛はいらねぇ」
ひどいっ!と笑ったいつもの表情に戻った真宏にほっとする。ほんとに俺は真宏の゛お願い゛に弱い。
「……お前らってさぁ」
「なに」
俊の呆れた表情に首をかしげる。
「……いや、なんでもない」
歯切れの悪い返事なのに真宏は気にせずぱくぱくと弁当を食べるのだった。
「さっき何言おうとしたんだよ」
「さっき?」
「ほら、昼休みに」
5限は体育。2人組に分かれての準備体操中俊に聞く。
ぐっぐっと俊の背中を押す。現役サッカー部なだけあって柔らかい体。
「…気ぃ悪くすんなよ?」
「ん。内容によるけど。なに」
今度は俊が俺の背中を押す。俊ほどではないが俺も柔らかい方だと思う。
「お前と朝田ってさ、仲いいじゃん」
「まぁ幼馴染みだしな」
小さい、それこそ赤ん坊のころから一緒にいるのだ。家が近かくて親同士が仲が良くて、二人兄弟のように育てられた。
「な、んかさ。お前と朝田の距離ってそれよりも近いきがするんだよ」
立ち上がって2人で肩入れをする。
ぐっぐっと力をいる度に靴が砂を踏みしめる音が聞こえる。
「俺お前と高1から仲いいけど、朝田のあのベタつき方っておかしいと思う」
「おかしい……」
「あ、おかしいっていうかなんていうか…こう、へん」
変、なのか。
俺と真宏の距離感は。
「…怒った?」
喋らない俺を俊が勘違いしてのぞき込んでくる。その頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜてやる。
「怒ってねぇよ。考えてるだけ」
俺は真宏とのこの距離は変じゃないと思ってた。
でも考えてみろ。
毎日一緒に帰って毎日一緒にいる。
今はいいかもしれない。
高校生だから。
あれ?
でも
これから先は?
2年後は?
高校を卒業したら?
これから先俺は真宏とずっと一緒にいるのか?
いる訳ないだろと頭のどこかが答える。
平凡な俺と頭が良くて顔もかっこいい真宏と俺がこの先同じ道を歩く事はないだろ、と。