「もしも苦労人がカルデアのマスターだったら」 作:HK416
うーん、ダ・ヴィンチちゃんか。
ぶっちゃけ、キャスター勢は単体は三蔵ちゃん、全体は年末からのガチャ地獄で早々に宝具MAXになった賢王様がいるからなぁ……バレンタインイベも近いし、我慢だ! 鎮まれ、オレの右腕……!
しっかし、水着イベのキャラは礼装も含めてエロ網羅するつもりだったが、キャラが多くて話が進まねぇ! まあいいか! エロは重要だからね! 苦手だけどね!(白目
今回は惨劇とちょいエロ。まあ、導入部ですわ。では、どぞー。
『惨劇! ビーチバレー!』
「どうしてこんなことになってしまったんだ……!」
「さあ、沖田さんには分かりかねますぅ……」
常夏の島に降り注ぐ燦々とした太陽の光を浴びながら、虎太郎と沖田は辟易と呟いていた。
事の始まりは、モードレッドの浮かれっぷりであった。
本日は休暇三日目。
本来であれば、今日で休暇は終わりであったのだが、虎太郎の計らいによって三日から一週間に期間が伸びた。
これには流石のサーヴァント達も驚天動地の発言であったのだが、元より虎太郎のための休暇だ。
目の前の虎太郎が偽物だという疑惑、とうとう仕事のし過ぎで壊れてしまったという諦念は兎も角として、概ね同意していた。
誰よりも喜んだのは、モードレッドであった。
虎太郎も休める、自分も遊べる。そういう理由で、彼女はバカンスを提案したのだから、当然かもしれない。
喜びの余り、水着姿で虎太郎に抱き着いてしまい、赤面して慌てて離れる可愛らしい姿も見せていた。
モードレッドは先の失敗もあってか、紅いセパレートの水着の上から
虎太郎の隣に立っている沖田も、普段の空色の陣羽織から桜色のセパレートの水着を纏っている。
『なーなー、マスター! 一緒にビーチバレーで遊ぼうぜ!』
『しょーがねえなぁ! モーさんの頼みとあっちゃしかたがねぇ!』
そんな軽いノリで承諾した虎太郎。
幸い、本日は体調の良かった沖田も巻き込まれる形で三人組が結成されたのだが――――
――光り輝くモーさんの笑顔とは裏腹に、虎太郎と沖田の表情は、どこまでも暗い。
二人の視線は、砂浜に設置されたネットの向こう側にいる対戦相手に注がれていた。
「全く、どうして私が……」
(出来ておる。出来ておる喃、カーミラは。あの水着姿で目一杯イジめたろ)
モードレッドや沖田と同じくセパレートの血色に黒で縁取りされたカラーリングの水着を着たカーミラ。
黒いパレオで覆われた大胆なTバックが透けて見えている。アクセントの上と下を繋ぐ黒い革紐も堪らなく魅力的だ。
ナイフのような長い爪は綺麗に切り揃えられて通常サイズに。長い髪は纏められてポニーテールに。
常世の女主人には似合わぬサマースタイル。されど、彼女の別の魅力を引き立てているのは間違いない。
「じゃあ、行きますわよ? ……そぉれっ!」
(いい。実にいいぞぉ。むちむちぷりんぷりんじゃねぇか。休暇中にパイズリしてもらおう)
(ふふ。どうぞ、ご随意に)
(コイツ、直接脳内に……!)
黒いセパレートの水着の上から、ショートのデニムを履いたのはアン・ボニー。相方のメアリーは昨晩、ドレイクの晩酌に付き合ってぶっ潰れている。
彼女の水着姿は、正に肉と脂による視覚への暴力。揺れる揺れる、とにかく揺れる。何処が、とは言わないが。
一歩動けばたゆん。サーブをしようものならぷるん。上ばかりではない。下もまた素晴らしい。
彼女は恥じているかもしれないが、太腿は細すぎず、太過ぎない。デニムからはみ出た尻肉は、舐め上げたくなるほど官能的である。
だが、問題はその二人ではない。虎太郎と沖田が視線を向けていたのは――
「しゃっ! やってやるわ!」
――やけに気合の入った
マルタもまた紺色のセパレート。
少し前までつば広のサマーハットとパレオを纏っていたのだが、今は違う。
背中にタラスクの刺繍が入ったジャージを羽織っており、その様はどう見てもレディースです。本当にありがとうございました。
だが、勘違いしてはいけない。
彼女の心は聖女のままだ。例え、全ての物事を拳で解決しようとも、その精神は途轍もなく深い深い慈悲で満ちている。
問題は、慈悲を示すよりも先に鉄拳が飛び出て、なおかつその拳を受けた大半の存在は無残に飛び散ることではあるが。
(アカン。これアカンやつや。死んでまうやつや)
(マスター、頑張ってください! 沖田さんも霊基が壊れてしまわないように頑張りますので!)
「ハハっ、へなちょこサーブなんて訳ねぇぜ! 沖田、パース!」
「あ、あぁ、はい! ええっと、と、トース!」
「ほいキタ、任せな」
「させるもんですか!」
モードレッドのレシーブから、沖田のトス。そして、虎太郎のアタックへの繋ぎ。
バレーなどロクにしたことのない素人集団ではあるが、中々に息の合ったコンビネーションではなかろうか。
大きく飛び上がったバレーボールを追いかけて、虎太郎が砂浜を蹴る。
立ち塞がったのはマルタである。気合十分。最早、裂帛に達しそうな勢いであった。
「はいはい、どうもどうも」
「――――――え?」
「届く、かしら……!」
筋肉の強張りから、かつてない全力のアタックを見せるかに思われた虎太郎であったが、その直前で脱力。
ボールには優しく触れるだけで、大きく上げたマルタの両手を擦り抜ける軌道で、ネットを越える。
図抜けた反射神経で砂浜に飛び込んだアンであったが、奮戦虚しくボールはポスンと砂浜に落ちた。
「ナーイス、マスター! イェーイ!」
「イェーイ。やったぜ、モーさん」
「ちょ、ちょっと、今の所はバシーンてアンタがアタックして、ズバーンと私がブロックするところでしょう?!」
「オレがまともにやるわきゃねぇだろ。大体、ブロックされるの分かってんのに、そのまま続行なんてするわけないだろ」
「ブロックを突き破ればいいだけでしょ!!」
「いや、そのバスターゴリラ的な発想は当店では扱っておりませんので……」
ブロックされる? なら、力任せにブチ破ればいいじゃない!
今回、クラスが
ヘラクレスや金時といったバーサーカー勢、円卓のバスターゴリラことガウェインに勝るとも劣らない。いや、聖人なんだから劣っていてくれ。
その後も、仲良し三人組は次々と得点を重ねていった。
カーミラも日差しに慣れてきたらしく動いてはいたものの、運動は苦手なのか、中々思うように決まらないが、それなりに楽しんではいる。
アンは反射神経もよく、運動が苦手なわけではなかったが、一つのボールを追いかけるのに、彼女の二つのボールが積極的に邪魔をしていた。
勿論、マルタは面白くない。
何せ、自分はそれなりに上手くやっているのに、他の二人が足を引っ張る。
挙句、虎太郎と来たら、まともに戦わず、のらりくらりと裏を斯いて、自身の上を行く。彼女のイライラは募るばかり。
そして、あっという間にマッチポイントであった。
虎太郎と沖田のモードレッドの機嫌を損ねずに、このビーチバレーをお開きにしたいという気持ちが伝わってくるかのような頑張りである。
そして、運命の時は訪れる。
「わ、たたっ……!」
「おいおい、何やってんだよ、沖田~」
「あ、はは、流石にちょっとくらいのミスは許してほしいですけど……」
「全員、構えろぉぉぉおぉっっ!!」
「「――――え?」」
沖田がトスをミスし、相手側のコートへとふんわりボールが舞っていった。
その隙を見逃す虎太郎ではなく、チャンスを見逃すマルタではなかった。
「――――ふんんっっっ!!!」
マルタ、全力全壊のアタックであったそうな。
彼女の筋力ランクはB+。バレーボールがその力に耐えられたのはスキルである“水辺の聖女”による奇跡だろう。
奇跡を何だと思っているのか。この世界における聖職者や聖者は碌な奴がいない。外道麻婆然り、カレー代行者然り、魔性菩薩然り、天草な四郎然り…………本当に碌でもないぞこれぇ!!
(狙いは、オレか! こうなれば、オレが、オレが…………やっぱ、これ無理ぃっ!!)
レーザービームが如き勢いで己に迫るボールに、虎太郎は明確な死のイメージを抱いた。
もし、このままレシーブなどしようものならば、五体四散は必定。しかして、回避に移行するには全てが遅すぎる。
そのまま虎太郎の身体にボールが吸い込まれ、
「うぉぉぉおっ! こんなアホな死に方できるかいっっ!!」
すんでのところで忍法・霞狭霧を発動させて難を逃れた。
虎太郎の身体をすり抜けたボールの勢いは止まることなく、砂浜を凄まじい勢いで駆けていく。
途中、何人かのサーヴァントが慌てて躱した。躱してしまった。
この速度である。誰かが犠牲になるのは目に見えている。そして、選ばれた犠牲者は――
(――――え? ワシ? 姐さぁぁぁあぁああぁぁあぁんんんんんんんっっっ!!!)
――誰あろう、砂浜で甲羅干しに洒落込んでいたタラスクであった。
ボールが着弾した瞬間、タラスクの巨体が大きく宙を舞う。AC-130に搭載された105mm榴弾砲の如き威力である。
宙を舞うタラスクは涙を流しながら、島の反対側へと飛んでいき、星となった。
『愛を知らぬ悲しき竜……ここに。星のように!』
宝具のタラスクを突撃させる時に、そんなことを言ってはいるが、本当に星にしてどうする。
「――――フッ、どんなもんよ!」
「「………………うわぁ」」
「少しは
「はっ! 舐めないで欲しいわね。タラスクがあんな程度で死ぬわけないじゃない!」
「うわぁ、スッゲェ……本当に星になったぜ。やったな、タラスク」
「モーさんも目をキラキラさせないでぇ! 此処に来てから頭のネジ緩みっぱなしだよぉ!?」
自らの領地に住まう農民の娘、果ては貴族の娘まで殺し、その血を浴びて若さを保とうとしたエリザベート・バートリー――その成れの果て、カーミラ。
女でありながらキャリコ・ジャックの海賊船に乗り込んで、悪逆と残虐を尽くしたアン・ボニー。
どちらも悪党として名を馳せた女傑である。
そんな二人にドン引きされる、水辺の聖女様。聖女、聖女とは一体……。
「じょ、冗談じゃねぇ! オレはこんな殺人バレーを続けられるか! 部屋に帰るぞ!」
「え? ……そ、そうか、そうだよな。な、なんかゴメンな。怪我をしちゃ、休暇の意味ないよな。ほんと、ゴメン」
「も、モードレッドさんが悪いわけではないですよ。悪いのは、マ――――」
「――――あぁん?」
「いえ、何でもありません。いくらスポーツと言ってもマスターとサーヴァントが勝負をすること自体が間違いだったんですよぉ」
「そうだよな。や、やっぱ、何も考えずに誘ったオレがさ、悪か―――――」
「んんんんんんやってやるっ! やってやるよぉぉおお!!」
涙目になりかけたモードレッドの顔を見て、苦渋の決断とばかりに虎太郎は砂浜で地団駄を踏む。
自分の目をかけた相手には、このダダ甘判定である。
その言葉に、モードレッドの顔はパっと輝き、沖田の顔には大丈夫、これ本当に大丈夫な奴ですか、と困惑が張り付いていた。
「ふんっ! 逃げずに立ち向かってくるのは褒めてあげるわ!」
「はっ! ほざけよ、ステゴロ聖女! こっちはマッチポイントだぜ! 負けるはずあるか!」
「誰がステゴロ聖女だ、ゴラァっ!!」
「ひ、ひぇっ…………ま、マスタぁー」
「モーさん! 普段は強気なのに、こういう時ばっかオレを見るの止めてぇ!!」
「あぁ! 狙ってる! 挑発したのはモードレッドさんなのに! アレはマスターを狙ってる目ですよぉ!!」
「あの凄女! こういう時は慈愛もへったくれもなく容赦なく弱いとこ狙ってきやがる!」
「さぁ、サーブだけで沈めてあげるわ!」
「テニヌとかアストロ球団的な感じになってるぅ! 鎮まれ! 鎮まりたまえ! さぞかし名のある聖女と見受けたが、なぜそのように荒ぶるのか!?」
「問答無用! 鉄球聖裁!」
見事なまでのジャンプサーブ。
1カメ、2カメ、3カメ、あらゆる視点から眺めたい、惚れ惚れするような美しさである。
マルタの手から離れたボールは次の瞬間、凄まじい音と白いリング状の水蒸気を生み出した。
ボールの速度が音速を超えた、ないし音速に限りなく近づいた証左であった。
「うぉぉおおおぉ、金遁・金剛体法……!!」
本日二度目の死の予感に、虎太郎は叫び声を上げながら忍法を発動させる。
彼の両腕は鉄の如く黒に染まり、硬度も金属のそれへと変わった。
金遁としてはポピュラーな部類の忍法だ。身体の一部分、或いは全身を金属へと変える。
この状態であれば、榴弾砲の直撃にも耐えうる。しかし、これを放ったのは、あのマルタである。
「ぐっ……、オレは、こんな、なぜ………おぉおおおぉおぉっっ!!!」
レシーブの体勢で受け止めた虎太郎の身体は、ボールの勢いに押され、後方へと下がっていく。
ボールの回転は止まらず、摩擦によって不快な高音と煙を生み出す。
その都度、虎太郎の金属と化した両腕に罅が走り、激痛が走る。
「成し遂げた、ぜ……! 後は、任せたぁああぁあぁっっ!!!」
遂に、マルタのサーブに勝った虎太郎は、ボールの軌道を変えることに成功する。
当人はそのまま後方に吹き飛び、砂煙の中へと消え、ボールは天高くへと舞い上がった。
「マスター、お前の犠牲は無駄にしないぜ……!」
「させない……!」
((もう、マルタ一人でいいんじゃないかしら))
モードレッドとマルタが地を蹴って、ボールへと追いつく。
既にマルタはブロックの体勢に移っている。如何にモードレッドと言えど、天性の肉体を持つ彼女の
モードレッドの直感も、これが防がれることを伝えてきている――それで諦めるほど、モードレッドは良い性格をしていない。
マルタと近距離で目を合わせ、彼女はにんまりと笑い――――
「そら! 沖田、パース!」
「――――んなぁ!?」
「クイックならお任せを! それぇ!!」
――俗に言うAクイックで、見事にポイントをもぎ取ってみせた。
「そ、そんなぁ……」
「よく、やった……、モーさん、沖田、お前等が、アタックNo.1、だ…………ガクっ」
「はぁ~、全く静謐の毒をどうにかして海で泳げるようにしろ、なんて無茶な注文を――――――(絶句」←砂浜に出来たクレーターの中心で血塗れで気絶している虎太郎の姿を見て
「メディア様、余り無理をなさらず――――――ひぇっ」←メディアと同じものを見て
「何やってんのよ、アンタはぁぁぁああぁぁぁああぁぁぁああぁぁぁぁぁあああああぁあっっっっ――――――!!!!」
たまたま砂浜を通りがかったメディアと静謐。
静謐からは小さな悲鳴が漏れ、メディアからは
―――――
――――
―――
――
―
『聖女様の憂鬱』
「はぁぁぁぁああぁ~~~~~っ」
重苦しい溜め息と共にマルタは、虎太郎のコテージへと続く桟橋の上を歩いていた。
ビーチバレーでの惨劇後。
虎太郎はメディアから治療を受け、参加者はジャンヌとマシュからお説教を受けることとなった。
沖田は最初から平謝り、モードレッドは不貞腐れながらも反省を見せ、アンとカーミラは自分達も止めなかったのは悪かったと猛省した。
――だが、マルタだけはみっともなく反抗してしまったのである。
元々、ヤン――もとい町娘的な性格である彼女のこと、押さえつけられれば反発するのは当然のこと。
どっかの下乳上のように、余は悪くないもん! とばかりに駄々をこね始める始末。
『こ、こんなの事故よ! 誤チェストみたいなものでしょう!?』
『誤チェストぉ?! キリスト教の聖人が言うに事欠いて、何を仰るのですか?!』
『完全に狂犬の台詞ですよマルタさん! 獣とは今のマルタさんの如きを言います!』
『もう! いい加減にして下さい、マルタ様! そんなことだから、虎太郎からステゴロ聖女と揶揄われるのですよ!』
『そうです! いくら事実とは言え、です! いつもの聖女然とした慈愛と慈悲に満ちたマルタさんは、何処に行ってしまわれたのですか! ステゴロ聖女がいくら事実とは言え!』
(お二人さぁぁん! どうか、どうかその辺りで! 姐さんが! 姐さんの霊基が!)
二人のお説教によって、さぁぁ、と赤い砂とマナプリズムになりかけたマルタを見かね、くるくる回転して戻ってきたタラスクの執り成しもあって、お開きとなった。
今回の虎太郎の被害。
両腕、肩先から指先にかけて数十の裂傷、及び圧迫、捻転、屈曲、開放骨折。
両脚、股関節から指先にかけて数十の筋断裂、及びアキレス腱断裂。
胴体、肋骨3番、5番、6番に亀裂。右肺、胃、直腸に衝撃で穴が開く。
頭部、両鼓膜破損、眼底部毛細血管の破裂、頸部のむちうち、重度の脳震盪。
推測されうる、とある医師からの言葉。『交通事故にでもあったのかい?(震え声』
…………どういうことだ。敵からの攻撃よりも、味方からの攻撃の方が、被害が大きいぞ!
「やっちゃったぁ……どうしてこう、熱くなっちゃうかなぁ……普段よりも――――いえ、虎太郎と出会ってから、抑えが利かなくなっちゃってるし……」
とは言え、マルタも反省はしている。
上から押さえつけるから本能的に、反射的に反発するだけであって、彼女自身に道徳や社会通念がないわけではないのだ。
彼女の場合は、他人からとやかく言われるよりも、冷静になった後、一人で自らの行いを振り返らせた方が効果が高い。
その反省の結果としてマルタが選んだのは、まずはケジ――――もとい、虎太郎への謝罪である。
もっとも彼に謝罪など必要ではないが。
重傷を負った虎太郎は、メディアからの治療が終わると説教を受けている参加者を尻目にさっさと他の仲間と遊びに行ってしまっていた。
これにはメディアと静謐はドン引き、ジャンヌとマシュは開いた口が塞がらない状態であったそうな。
あれだけの重傷を負えば、どんな人間であれ、すぐに遊ぶなど在り得ない。肉体への傷は、精神への傷にもなるのだから。
虎太郎的には、傷とは気構えに負うもの、という前提があるからか、そんな理屈は一切通用しない。
その後、ゴールデンと子供組と一緒に砂浜で、無駄に精巧な日本の砂の城を作っていた。
また、砂浜で日光浴をしていたマタ・ハリの身体にサンオイルを塗って甘い声を上げさせたり、コアトルの尻を撫で回してニヤける姿も目撃されている。完全にやりたい放題である。
「取り敢えず、謝って……その後は、夕飯を作って、お休みまできっちり面倒を見て、で、はい、おしまい!」
「…………で、済む訳ないわよね。怪我させたのを理由に、む、無理矢理迫られたりして…………ゴクっ」
「ま、まー、しょうがないわね! 身から出た錆だし? 献身は美徳でもあるし? そういう雰囲気になっても拒否権もないし? シャーナシ! ノーカン!」
一体、誰に対する言葉であるのか。色々な言い訳を一人口にするマルタ。
彼女を知る原罪を背負って死んだロン毛のおっさんは何を思うのか。
………………少なくとも、彼女にも、虎太郎にも、何らかの罰が下っていない辺り、許容の範囲内ではあるのか。愛があればLOVE is OKなのか。
両腕が重傷だったし、あーんとかしてあげるのもアリね、やら。
もしかしたら、罰とか称して縄で縛られちゃうかも、とか。
乙女なんだか、むっつりなんだか、よく分からない思考をしている内に、彼女はコテージの扉の前まで辿り着いた。
「あー、開いてるよー」
他の来訪者と同様にノックよりも早く、コテージの主から入室の許可が下りた。
ドアノブに手を掛ける前に一度だけ大きく深呼吸し、意を決してコテージの中へと脚を踏み入れる。
「し、失礼す――――」
若干、上擦った声で頬を染めていたマルタであったが、視界に飛び込んできた光景に、一瞬だけ目を丸くした。
次の瞬間には真顔になり、このままではマズいと感じたのか、慌てて背後の扉を閉める。
マルタが見たのは、ソファで寛ぐ虎太郎と――
「ん~~~~~っ♡ んぶっ、んん~~~~~っ♡」
その対面のソファに縛りつけられたカーミラ。
カーミラの姿は凄惨ですらあった。
両脚を荒縄で強制的にM字に開脚させられたまま固定され、両手は頭の上で手錠に繋がれて更には首輪に鎖が伸びている。これでは手を降ろすこともできない。
視覚と聴覚は大型のアイマスクで封じられており、彼女の高慢な物言いを封じるためにか口にはボールギャグまで咥えさせられていた。
水着の上からでもはっきりと分かるほど隆起した乳首はクリップが噛みついており、その下にはローターがぶら下がって絶え間なく振動で甘い痛みと快感を与えている。
それらを感じる度に、砂浜に打ち上げられた魚のようにビクリビクリと身体を反らす。
股座を覆う筈の布は既に剥ぎ取られており、蜜壺には極太のバイブが、菊門にはピンポン玉が連結されたようなアナルパールが、硬く屹立したクリトリスには乳首と同じくローター付きのクリップが取り付けられていた。
バイブは淫液のぬめりと振動によって抜け落ちそうになるが、膣内の動きによって時折、奥へ奥へと勝手に飲み込まれていく。
同様に半ばまで顔を現したパールが大きく菊門を押し広げるが、ぬぷりと音を立てて腸内へと戻っていく。
固定具もないままにこの有り様。間違いなく、カーミラの意志によるものだ。恐らくは、抜けさせるな、とでも命じられているのだろう。
(…………ひ、酷いわね)
マルタが弄ばれるカーミラを見て抱いた感想は、そんな当然で率直な感想――――ではない。ほんの少しばかり、ズレがある。
彼女が酷いと感じたのは、カーミラが置かれた状況そのものではなく、器具責めの今一つさだった。
アレでは、
虎太郎の愛撫によって高められたのであろうが、それにしたところで器具による単調な責めでは達することはできないだろう。
何せ、虎太郎の性技は完全に常軌を逸している。単純な技術だけであるにも拘らず、その効果は魔界の媚薬や身体改造ですら凌駕しているのだから。
それを身を以て体験している故に、あんな程度の責めでは情欲の炎は消えず、燻り続けるばかりと理解できた。
(――――ってぇ、そこじゃないでしょ、私ぃ!)
非難すべきは女を弄ぶ行為であって、その行為の強弱ではない。
自身のズレた考えに、マルタはぶんぶんと頭を振った。
もっとも、マルタの預かり知らぬところではあるが、カーミラが受けているのはあくまでも両者合意の上での行為である。
『ちょっと、貴方に付き合ったら、日焼けしてしまったのだけれど。責任、取ってくれるかしら……?』
『………………えぇ~?』
今から2時間ほど前に、突然コテージを訪れたカーミラは不躾にそんなことを宣った。
無論、それは虎太郎を都合よくコキ使うため、などではなく、単純に心配だったからだ。
昼間のビーチバレーで重傷を負った虎太郎の様子を己の目で確認するための方便である。
そもそも彼女は生涯、自らの美の追求と維持に少女の生き血まで使った常世の女主人。染みや肌荒れの対策など万全。日焼けなどしていない。
素直に貴方の事が心配だったから、と言えないのは、カーミラという英霊の捻じ曲がった性根の所為というよりも、かつての自身の在り方にしがみついているからだろう。
……お笑い種と言えばお笑い種だ。
虎太郎のみならず、カルデアの仲間達ですら知っている。
彼女がかつての残虐性を発揮することも、美貌を維持するためだけに生き血を啜ることも出来ないことを。
だが、虎太郎はその全てが分かった上で、にやにやと笑いながら、悪戯を開始した。
恨み言を言うつもりなど皆無ではあるが、お前がマルタを止めていればオレがあんな目に合うことはなかった、と考えてはいたのだ。
カーミラに渡された化粧水と乳液を全身に満遍なく塗っていく過程で、ついでとばかりにマッサージまで行った。
勿論、ただのマッサージなどではなく、性感マッサージである。絶技、と言っても差し支えない性技を用いた。
そんなことを露知らぬカーミラは、虎太郎の快方振りに内心ではホッと息をつきつつも、役得と受け入れた。
徐々に、次第に火照っていく身体に違和感を覚えつつも身を任せていた彼女であったが、虎太郎がきわどい部分に手を伸ばし始めた頃には、既に手遅れの状態。
尻肉に手が掠めただけで甘い声を上げ、露骨に水着の中へと手を差し込まれても抵抗すらできないほどに蕩け切っていた。
『はい、おしまい。もう、十分だろ?』
『えっ? あ、あの、……っ』
『ん? 何だ、どうかしたか?』
『…………………………も、もう、触らないの?』
病的に白い肌を紅潮させ、涙目になりながらの破壊力は如何程か。
ましてや、あの高慢極まるカーミラからの紛れもない懇願であれば、計り知れない威力である。
くつくつと笑う虎太郎に、カーミラは不安と不満から更に涙を滲ませていたが、口の端は垂れ下がり、情けない女の笑みが張り付いていた。
「さて、と……」
淫らなカーミラの姿を酒の肴にしていた虎太郎は、未だ自分と戦っているマルタをそのままにしておき、ソファから立ち上がってカーミラへと近づく。
達したくとも達せられないもどかしさと切なさで身を捩っていたカーミラであったが、虎太郎の気配には気付いたらしく、呼吸を荒くした。
「ふーっ、ふーっ♡ うぅん、んむぅ、おぉ……♡」
(お、お願い、虎太郎……、もう、もう、許してぇ……♡)
アイマスクからは涙の筋が漏れ、鼻を啜り、ボールギャクを噛まされた口からは犬のように涎が垂れている。
そんな不様すぎる自分の姿にすら、既に頓着はないようで、カチャカチャと手錠を鳴らし、念話まで使ってカーミラは懇願した。
「まだダメだ。怪我して治ったばっかのオレをこき使う女は、もっとお仕置きしないとなぁ」
「うぅ、む……ふぅん、んむ……んんーっ」
(そ、それは……違うのぉ……いやぁ……もう、いやよぉ……)
「まあまあ、今は此処にストレスを溜めておけ」
「ひゅ、ぐぅん……♡」
虎太郎が言葉と共に、腹の上から子宮を押すと、懇願すら忘れて蕩けた鼻息を漏らす。
それだけで愛液をびゅぐと膣口から溢れ出し、ソファどころか床にまで広がった愛液溜まりを更に広げる。
「我慢、できるな……?」
「んんっ、んんーーーーーっ♡」
(できる、できるからぁ……♡)
「よしよし。後で、たっぷりと可愛がってやるからな」
「ふぐぐっ、ぐむっ、おぉ、んぉおおぉ……♡」
虎太郎が頭を撫でながら耳元で囁き頬にキスをすると、快楽で緩んでいた尿道からピュルと黄金水が漏れた。
一度決壊すれば、勢いは止まらない。綺麗な放物線を描きながら、小便を撒き散らす姿は、明らかな嬉ションであろう。
カーミラの放尿姿に満足げに頷き、虎太郎は次いでマルタを見る。
その視線に、ビクリとマルタは身体を震わせる。僅かな恐怖と不安と期待、そして怒りと軽蔑によって。
「悪いな、待たせた」
「別に待ってないわ。じゃあ、邪魔したわね」
「えぇー? もうでござるか~?」
「そのござる口調止めなさいよ! 何でか分からないけど腹立つ!」
説教の一つもなく、冷たい視線だけくれて、そそくさと部屋を去ろうとしたマルタであったが、虎太郎のふざけた態度に、反射的に凄まじい眼光で睨みつけた。だが、その程度で虎太郎が怯むはずもない。
何せ、必要とあれば、あの英雄王にすら真っ向から口答えをし、影の国の女王の殺意であっても怯まない男である。
つい先程、己に瀕死の重傷を与えた聖女の視線でも、怯む筈もない。
全く平時と変わらない冷たい黒瞳。その中で燃える黒い欲情の炎に、マルタの方が逆に怯むほどである。
マルタは一歩後ろに下がるが、当然ながら其処はドア。
逃げ場などない彼女を良い事に、虎太郎は前腕をドアに押し付け、上からマルタを見下ろすように顔を寄せる。
これも壁ドンの一種であろうか。どっかの月の女神が見た日には、ダーリン、アレやってアレー! と喚くこと請け合いである。
「で? どうした?」
「昼間の一件を謝罪に来ただけよ。それじゃあ、あとはカーミラとよろしくやってちょうだい」
「別に、謝罪なんていらないんだけどな。ああなるのは、ある程度予想はしていた」
「アンタねぇ、人の事を何だと……」
「いや、聖女様だけど? 熱くなると、周りが見えなくなって割と暴走しがちな」
「…………ぐっ」
虎太郎の言葉に、マルタの表情が歪む。
彼の言葉は、彼女が常々反省しなければ、と思いながらもなかなか改善には至らない自身の性質であった。
「はぁ……いいわよ、もう。私は戻るわ。アンタが問題なく平常運転してるの確認したし」
「え? 本当に戻るの?」
「この状況で、他にどうしろってのよ、アンタはぁ……!」
「どうしろって、そりゃぁ……」
握り拳を震わせるマルタ。
彼女は、堪えるのよマルタ、鎮まりなさい私の拳、と必死で言い聞かせているが、虎太郎は何処吹く風。
それどころか、自分の股間に視線を落とす。マルタもそれに釣られた。
二人が目にしたものは同じだが、反応はそれぞれ。
虎太郎は困ったように笑い、マルタは片手で顔を覆って溜め息を吐く。
「あー、死にかけたから、色々と抑えがなー。困ったなー。このままじゃ、カーミラ壊れちゃうかもなー」
「アンタって、本当に最低よね……!」
「そりゃなぁ。オレはマトモなつもりもないし、最高なつもりないですし。でもまあ、今、マルタを抱きたいのは本気も本気だぞ?」
「……………………ぅ」
「責任、とってくれるかなぁ?」
「いいともー……な、訳ないけどね! ええ、いいわよ! やってやるわよ! 責任、取ってやろうじゃない!」
「――――シャっ!」
「こういう時ばっかり、本気で喜んで……はぁ」
マルタの胸中に浮かんでくるのは呆ればかり。
本当に馬鹿だ馬鹿だと思っているが、そういう馬鹿な所が可愛いと感じてしまう自分に一番呆れていた。
「じゃあ、まずは風呂に入ろうか」
「ちょ、ちょっと! カーミラはどうするつもりよ!」
「いや、暫らくは放置。アイツ、ああされるのも好きみたいだから」
虎太郎はマルタの腰に手を回し、ぐいぐいとシャワールームに連れて行こうとする。
マルタは放置されたカーミラを思い、僅かに抵抗を見せるものの、先程重傷を負わせた身として本気で抵抗することは躊躇われた。
(ごめん、カーミラ! この馬鹿には、後でキチンと責任取らせるから!)
虎太郎に連れられて行くマルタは、心の中でカーミラに両手を合わせて謝ることしか出来なかった。
ほい、というわけで、マルタさんハジけて御館様物理的にハジける&カーミラさん拘束器具放置プレイ&流されちゃうマルタさん、でした。
因みに、マルタとカーミラは仲が悪そうに思われますが、御館様のカルデアでは別。
理由としては、カーミラが自分は救われないと理解した上で、少しづつ償おうとしているから。
マルタはタラスクの件を見ると、彼の教えと信仰だけを重要視しているわけではなく、その場その場、その時々で教えやルールを破る必要性もあることを理解してる感じがありますしね。
なので、エロにも流されやすくなってるんやで(にっこり