「もしも苦労人がカルデアのマスターだったら」 作:HK416
どうする、どうすればいい!
この後に控えたCCCコラボガチャでは、BBちゃんが配布である以上、エロ尼やアルターエゴが現れる可能性が極めて高い!
行くも勇気、引くも勇気……! くっ、お財布と相談だ!
では、今回はモーさん回です。どぞー。
『今のモーさんは英雄などではない、ただの家出娘だ……!!』
「おい、モーさん。いくらアルトリアと顔合わせ辛いからって、オレの部屋に入り浸るの止めてくんねー? 三四銀で王手な」
「ちちち、違ぇーし。か、顔合わせ辛いわけじゃないし。マスターの部屋がオレの部屋より豪華で居心地いいのが悪いだけだし。今日からここ、オレの部屋な」
「む。むむ…………これ、詰んでる。詰んでますね。あちゃー、投了です。参りました」
「はい、ご苦労さん」
「無視すんなよぉッ……!」
「「だってぇ、ねぇ?」」
騎士王、ベディヴィエールとの出会いと再会、トゥルッフ・トゥルウィス討伐を経た翌日。
モードレッド、沖田、虎太郎。相変わらず水着姿、アロハシャツ姿の三名は、虎太郎のコテージで駄弁っていた。
すっかり情事の臭いの消え去ったベッドの上では、モードレッドが俯せで枕を抱えて足をパタパタさせている。
どう見ても拗ねてしまった年頃少女、或いは親に酷いことを言って気まずさから逃げ出した家出娘にしか見えない。
そんなモードレッドを尻目に、沖田と虎太郎は将棋に興じていた。
初めの内は普通に打っていたのだが、実力が違い過ぎて、二枚落ち、四枚落ち、六枚落ちと進めても沖田が全く勝てず、虎太郎は今や目隠しをして打っている状態である。
元より、沖田はこの手の盤上遊戯は苦手なのだろう。この結果もむべなるかな。彼女は棋士ではなく剣士なのだから。
ともあれ、モードレッドは出来過ぎな偶然によって島にやってきた父親と顔も合わせずにこの調子。
二人としても放っておく訳にもいかず、かと言って、無理に首を突っ込むつもりもない。
根本的に、これはアルトリアとモードレッドの問題であって、余人が手を出せる問題ではないのだ。
沖田が虎太郎に視線を向ける。どうしましょうとでも言いたげな視線であったが、虎太郎は肩を竦めるだけだった。
その時、コンコンとコテージのドアがノックされる。
モードレッドは寝そべったままの状態のまま、猫のように跳ね上がり、ふしゃー! と扉に向かって視線を向けた。大した警戒のし様である。
沖田はモードレッドに対して更なる溜め息を吐き、虎太郎は首を振りながら扉へと向かっていった。
「はいよ、どうかした?」
「失礼します、マスター。昼食の準―――――」
虎太郎が扉を開けると、立っていたのは渦中の人であるアルトリアであった。
「――――何の音ですか?! 敵襲ッ!?」
「あ、あぁ、いえ、何でもないですよぅ、アルトリアさん! グラスを落としてしまっただけで!」
「その割には、些か音が大きい気がしましたが……」
「特大グラスだったので! ええ、それはもう大きくて!」
「は、はぁ、そうですか……?」
ガシャーン、とガラスが派手に砕け散る音に真面目なアルトリアは敵の存在を警戒して聖槍を呼び出すが、何が起きたか把握していた沖田の言葉に矛を納めた。
無論、グラスを落とした訳がない。巧く言い包められたが、いくら何でも音が大き過ぎる。
事実は、アルトリアの存在を確認したモードレッドが、窓ガラスを突き破って逃げた音である。
大した逃げっぷりだ。脱兎にすら勝っている。正に虎太郎の如き逃げ足であった。
思っていた以上の拗らせっぷりに、虎太郎は何とか内心でだけで溜め息を吐く。
何にせよ、このままではマズい。今の状態でカルデアに戻ろうものなら、モードレッドが巧く機能しなくなるのは目に見えていた。決戦を前にして、この事態は喜ばしくないのは確かだ。
「では、改めて。昼食の準備が出来たそうなので、支度を」
「ああ、そうか。しかし、わざわざ小間使いのような真似、アンタがしなくてもいいんじゃないか?」
「……? いえ、マスターを呼びに行くのは新入りの仕事だ、とキャスターとライダー――――アマデウスと黒髭が、そのように」
「そうかそうか。(真面目な奴はそんな馬鹿共に良い様に使われて)エライ(大変だ)なー」
「そのようなことは。マスターには恩があります。この程度であれば、いくらでも」
虎太郎は、何も知らないアルトリアを良い様に扱き使うアマデウスと黒髭に頭を痛めながら。沖田は盛大な溜め息を吐きながら。アルトリアはあくまでも生真面目に。三者三様の反応を見せていた。
彼女の言葉からも分かるように、虎太郎はアルトリアとベディヴィエールと契約を結び、正式なサーヴァントとしてカルデアに迎え入れた。
アルトリアは恩――トゥルッフ・トゥルウィスの討伐の大部分をカルデアに任せてしまったという理由で。そして、ベディヴィエールは――――
『の、残ります。残りますとも。お、王を、我が王を、虎太郎の下へ一人で残していくことは出来ませんから(震え声』
――己が味わう心労と王への心配を天秤にかけ、苦渋の決断を下した。
円卓一の常識人である彼には、とても辛い職場である。
胃壁は削れ、同時にSAN値もガリガリと削れていく職場だ。
何が辛いと言って、仕事が辛いのではなく、虎太郎のド外道戦法や行動が辛い。そして、ガウェインの自由っぷりも胃が痛くなってくる。これは酷い。
(ふむ……しかし、アレですね。こう、アルトリアさんの水着姿は何と言いましょうか。もう、マスターとしては、ムッハァッー! という感じなのでは?)
(え? 何が……?)
(えぇ!? 他の女性陣の水着姿はニヤニヤ眺めていたのにぃ?! あ、いえ、特定の人だけでしたね)
沖田の台詞に、お前は何を言っているんだ状態の虎太郎。
虎太郎は女好きであるが、好きな女も興奮を覚える女も、自分の手を出した相手だけであって、それ以外は性の対象、女として見ていない。
異様なほどキッチリとした線の引きようであるが、全てはハニートラップを警戒してのことであった。
そして、沖田の言うようにアルトリアの水着姿は酷く煽情的だ。
アン、ドレイクに勝るとも劣らない男好きする肉体を絞るかのような、ハイカットタイプの競泳用水着。更にはマントを羽織っていた。
兎に角、喰い込みがキツい。成熟した女としての自分を戒めているような印象すら受ける。翻るマントの下から覗くはみ出た尻肉は男ならば生唾を飲み込みたくなるだろう。
その上、時折、マントの中に手を入れ、モゾモゾと動かすのである。明らかに尻に喰い込んだ水着を直していた。チラリズムの権化である。
この姿も、スカサハが鎧姿は暑苦しいと霊基を弄った結果なのだが、大変素晴らしい仕事ぶりである。何が、何処が素晴らしいとは言わないが。
「ところで、他の連中とも顔合わせは終わったか?」
「ええ、既に大半は。何と言えば良いのか……接し易く……それでいて、えっと、自由で……と、兎に角、こ、個性的な面子で」
「無理してオブラートに包まなくてもええんやで?」
「む、無理などしては……」
「ガウェインについては?」
「……………………大変、仲睦まじいかと(震え声」
(ああ! アルトリアさんの表情筋がどんどん死んで……!)
虎太郎の指摘に、アルトリアはすっと目を逸らした。その表情は何処までも死んでいる。
それはそうである。あの真面目なガウェインのこと、アルトリアの前では騎士として在り続けた。本来の自分、素の自分というものは全く見せてこなかっただろう。
いや、それも違うか。騎士としてのガウェインも間違いなく素である。何らかの
ただ、虎太郎と出会ってから、今まで誰にも見せてこなかった面が表に出てきただけ。
それについてはアルトリアも喜ばしい。誰よりも忠義を貫き、私事など顧みず、騎士として仕えてくれた彼が、第二の人生で新たな生き方を見つけられたというのならば、彼女も祝福するまでの事。
しかし、あんなにも残念な一面であるなどと、アルトリアとしても思っていなかったようだ。
『おぉ! お久り振りです、我が王よ!』
『お久し振りですね、ガウェイン卿。とは言え、私の知る彼とは同一人物にして別人なのでしょうが。しかし、先日は一体何処に……?』
『はっはっは。ラグネルとイチャコラしていました。その後はもう、しっぽりと!』
『そ、そうですか。ラグネルも…………ラグネルも?! 彼女は英霊の座へと至ったのですか?!』
『いえ、そこはそれ。私への褒賞として、アルフレッドと他、魔術師の皆さんが気合と根性で召喚してくれました』
『……な、成程、色々と規格外だとはベディヴィエールに聞き及んでいましたが、そこまでとは』
『いや、王の命でラグネルと婚姻することになった時など、この世の終わりかと思うほどに絶望しましたがね!』
『そ、その点については謝罪するしかなく。仕方がなかったとは言え、卿の意思も確認せずに……』
『何を仰る! アレほど出来た嫁は他にいません。王には感謝しか。それは兎も角、トラウマはトラウマですが!』
この嫌味っぷりである。
もっとも、ガウェインに嫌味のつもりなど毛頭ない。
ただ、彼は自身の心に正直になっただけである。お陰様で、思ったことは大抵の場合、そのまま口から飛び出すようになってしまった。相手をどれだけ傷付ける言葉であろうとも。
アルトリアも、当時のガウェインの表情を思い出し、それ以上、何も言うことは出来ず、怒る事すらままならない。
『では、私はこの辺りで! ラグネルをあひんあひん言わせる仕事に就かねばなりません、夫として!』
『…………そ、それはそれは』
『王も、カルデアでの生活をエンジョイして頂きたい! そして、聖剣――いえ、此方の王は聖槍でしたね! 聖槍をぶっぱする王のお仕事、頑張ってください!』
『………………』
『ラグネェル! 昼間の私の力は三倍! ならばあひんあひん言わせる力も三倍ですよ、ラグネェェェェェェェェェルっっ!!!』
爽やかな笑顔と共に、妻の名ととんでもない台詞を叫びながら砂浜をかけていくガラェイン卿。
さりげなく王の仕事をディスっていく忠義の騎士。その背中に、私は嫌われていたのでしょうか、と落ち込んでしまうアルトリアなのであった。
(何をやっているんですか、ガウェインさん!)
「まあ、今のアイツのことだ。アンタを嫌ってるわけじゃない。ただ、生前とは優先順位が違っているだけさ。余り考え込み過ぎないでくれ」
「そう、そうですね。それから、此方にはモー――――」
虎太郎のフォローで気を取り直したのか、沈んでいた表情が持ち直される。
だが、次の瞬間には恥じらいから真っ赤に染まっていく。アルトリアの腹の虫が怒りの声を上げたのである。
「も、申し訳ありません。魔力は十分に頂いているのですが、慣れない現界からなのか、このような……」
「気にするな。オレ達も後から行くから、先に食べていてくれていいぞ」
「ははは、はい。し、失礼しましたぁ……」
聖剣の騎士王に比べ、肉体的にも精神的にも彼女は成長している。
大人びている分だけ冷静ではあるが、はしたない行為への恥じらいも増しているのだった。
アルトリアは瞬間湯沸かし器のように顔を真紅に染め上げると、肩を落としながらも足早に桟橋を戻っていった。
「アルトリアさん、モードレッドさんのことを探していましたね」
「だな。まあ、聖剣を持ってる方よりも成長してるんだ。モーさんにも色々と思う所があるだろうよ。単純に嫌いってだけでも、かと言って無関心でもいられないってところか」
モードレッドはアルトリアに対して愛憎その他様々な感情を持っている。
彼女の話を統合した導き出されるアルトリアの姿は、モードレッドに対してただひたすらに無関心でしかない。
自身を父と呼び、王位を譲るように進言する姉との間に生まれた全く身に覚えのない不貞の子。
そんなモノ、大抵の人間であれば嫌悪感に耐えかねて遠ざけるか、謀殺するかのどちらかだろう。
だが、アルトリアは徹底して無関心であり続けた。モードレッドには、騎士としての力のみを求めた。それを優しさと取るか、或いは冷徹と取るかは人によるだろう。
そんな彼女が、今になってモードレッドへと自分から声をかけようとしている。
当時のブリテンは諸処の問題を抱えており、アルトリアは王として在り続けなければならず、モードレッドが何を思っていたのかも、アルトリア自身の心ですらも、忽せにせざるを得なかった、とでも思い至ったのか。
もう既に死した身。王としての責務から解放された身。
王としての己ではなく、単なるアルトリアとしての感情や考えに浸れるだけの余暇も余裕もある。だからこその自発的な働きかけであったのだろうが、タイミングが悪すぎた。
複雑な二人の心情を察した虎太郎は、これはまた面倒なと嘆息したが、首を振る。
酷く面倒で、とても関わりたくなどないが、これを改善するのは
「ところでモーさんは何処に隠れてんだ?」
「テラスの方に逃げていきましたから、そのまま海に飛び込んだのでは……?」
「はぁ? プリドゥエンは此処にあるけど……?」
「いえ、慌て過ぎて忘れていっただけでしょう。何か問題でも……?」
「いや、問題っつーかよ……」
壁に立てかけられた
そう、虎太郎は知っていた。そして聞いていた。
共に大波で難易度の高いトリックを極めた時のことである。
その難易度の高さ故、身体能力の高いモードレッドであっても、僅かながらにバランスを崩してしまった。
その時の呟きは――
『わわっ、溺れる……!』
――であった。
その後も何度か似たような事態に陥り、似たような呟きは虎太郎の耳にまで確かに届いていたのである。
虎太郎は慌てて海に面したテラスへと駆けていき、海の中へと入ったかもしれないモードレッドの姿を必死で探した。
「あはは、嫌ですよ、マスター。アレだけ海で遊んでいたモードレッドさんが泳げない、わけ、が――――」
虎太郎の後を追った沖田は笑っていたが、目にしたあるものに次第に笑顔が消え、眉根を寄せていった。
彼女が見つけたのは、ボコボコと波間に現れては消える無数の泡。
すすす、と視線を水底へと向けていく。透明度の高い海はハッキリと底まで見通せるほど。
水底に彼女が見つけたのは、両手で口を押さえ、必死で両脚を動かしているモードレッドの姿。
「ごぼぼごぼごぼ………………ごぱぁっ!!」
「えええぇぇえぇぇえぇぇっっ!! モードレッドさん、泳げなかったんですかー!!?!(ガビーン」
「うぉぉおぉおぉっっ! そんなアホな死に方許さんぞ、モーさぁぁんんんんんんッ!!!(ザパーン」
一際大きく
―――――
――――
―――
――
―
『この世界線のモーさんは泳げない』
「全く、泳げないなら言って下さいよぅ、モードレッドさぁん」
「う、うるせー! 海に来てんのに、泳いだことねーなんて言える訳ねーだろ! バカッ、バーカ!」
「別に、これくらい恥ずかしいことじゃねーんだけどなぁ」
何とか海底からモードレッドをサルベージした虎太郎達は、浅目の海に腰まで浸かっていた。
叛逆の騎士モードレット。
彼女はモルガンの魔術が施された不貞隠しの兜と鎧を、キャメロットにおいても脱いだことはなかった。
ひたすらに騎士王に憧れて、やがては騎士王を憎み抜いた人生。そんな人生では遊泳など楽しむ余裕などなかっだろう。
兜も鎧も脱いだことはない故、遠征において川を渡る際も、船か馬の力を借りていたらしい。
という訳で、折角海に来たのだから、とモードレッドのカナヅチを解消しようとお節介を焼こうとしたのが沖田であった。
虎太郎は単なる付き添いである。モードレッドは泳げない、沖田は病弱のスキル持ち。こんなところで二騎のセイバーを溺れさせるなど笑い話になりはしない。いざと言う時のライフセイバーは必要だろう。
「では、まずは水に慣れるところから始めましょうか。海に顔を浸けてくださいねー」
「ふ、ふふふ、ふざけんな! だって、海だぞ?! しょっぱいし、ベタつくし、あと呼吸も出来ないんだぞぉ!」
「モーさん、海好きなのか嫌いなのかハッキリしようぜ。ほら、さっさと浸けろ」
「やーめーろーっっ!!」
「あの、マスター、それはちょっとやり過ぎですぅ……」
あれだけ楽しんでいたというのに、根本的に水に対する恐怖心が抜けていないらしい。
ぶんぶんと首と手を振って沖田の指導を拒絶するモードレッド。
そんな彼女に業を煮やした虎太郎は、彼女の頭を引っ掴み、顔面を無理やり海面へと浸けさせようとした。
元よりこと鍛錬においては、死んだとしても許しを与えず鍛え続けるのが基本方針の男である。この辺りは全くと言っていいほど容赦がない。
「やめ、やめろぉぉぉっ!! こんなのイジメだろッ! イジメはいけねーんだからな! せめて! せめて自分のタイミングでやらせてぇー!!」
「も、モードレッドさんもこう言っていますし」
「えーでもなー、オレまだるっこしいの嫌い」
「何時もはまだるっこしい手段取る癖に、こんな時ばっか短絡的な手段取るよなぁ、アンタはぁ! 大体、オレの場合は魔力放出で泳げるからいいだろうがぁ!!」
「モードレッドさん、それは泳いだうちに入らないので」
「モーさん、いいのか? モーさんが全てにおいて円卓一であるのは疑いようのない事実だけど、泳ぐという点に関して円卓一じゃなくなくなっちゃうけどいいのか?」
「ぐ、ぐぬぬ……! ど、どっちにしろ、ケイには勝てねーよ! アイツの泳ぎは変態的だ!」
魔力放出を使った場合、泳ぐと言うよりかは水上スキーのような滑走である。
もしくは単なる低空飛行でしかないだろう。確かに泳いでいるとは言い難い。
そもそも魔力放出の魔力消費も馬鹿にならない。いくらアルフレッドの貯蔵魔力が聖杯以上とは言え、限界というものは存在するのだ。消費は少ないに越したことはない。
そして、モードレッドの言もまた事実。
サー・ケイ。円卓の最古参であり、何とも珍妙奇天烈な能力が逸話の中で語られている。
曰く、機嫌がいいと背が伸びる。九日間、水の中に潜っていられる。掌から熱を放てるために洗濯物を乾かしやすい等々。
円卓は妖精の加護を受け、とんでもない能力を持つ者が多数いるが、こんなにも役に立つんだか役に立たないんだが分からない能力持ちも珍しい。サー・ケイは人間なのだろうか。
彼が円卓一の水泳の名手であるのは疑いようがない。九日間も水の中に潜っていられる水泳とはどんなものなのか。エラ呼吸でも出来るのか、確かに変態的である。
しかし、其処は負けず嫌いのモードレッド。円卓を引き合いに出されて引ける筈もなく。
「よし! いくぜぇ! ほっ、はっ、よっ!」
「モーさん、そういうのいいから早く」
「た、ただのイメトレだから。よし、よっしゃ、はぁああぁぁっ!!!」
「早くしろよぉ!」
「怒鳴るなよぉ! だから、頭を掴むの止めろぉ!」
何度となく勢いよく身を沈めるのだが、その度に海面付近でピタリと止まるを繰り返す。
その無様な姿に焦れてきた虎太郎は、またもや頭を掴んで無理やり水の中へと押し込もうとする。
大変危ない絵面である。
屈強な男が、線の細い少女を水へと沈めようとしているのだ。犯罪臭が酷い。酷過ぎる。
「はーっ、はーっ、……いくぞぉ……いくぞぉっ!」
「モーさん、はよ」
「まあ、水に慣れることが最初の一歩ですので、頑張ってください」
「おぉぉおおぉぉりゃぁああぁぁああぁぁ―――――ッッ!!!」
「「――――え?」」
いよいよもって覚悟を決めたモードレッドは、呼吸を整え、腰を深く落とした。
今回は止まらない。モードレッドは今度こそ止まることなく、水中に全身を沈めるほど腰と膝を深く落としたのである。
「ど、どんなもんだー! やってやったぜ! …………って、アレ? 何で言葉も喋れるし、呼吸も、わぶぼぼぼぼぼっ!!」
「ぐわぁああぁぁああぁ――――!」
「ひぇええぇぇえぇぇぇ――――!」
モードレッドが腰を落とした瞬間、不思議なことが起こった!
彼女を中心に半径5mほどの海が突然消失したのである。まるで海を割ったとされるモーセのようだ。
だが、モーセのように神の御業ではなく、まして海を割ったのでもなく、単純に魔力放出によって周囲の水を吹き飛ばしただけ。
気合の入り過ぎたモードレッドは無意識の内に魔力放出を発動させていたのであった。
虎太郎も、縮地持ちの沖田ですら、こんな事態に対応できる筈もなく、敢え無く魔力放出によって吹き飛ばされる。
モードレッドはモードレッドで目を瞑ったままだったので、周囲の状況など把握できるはずもなく、空白へと流れ込んできた水に飲まれていった。
「わぶぶっ、わばっ、お、溺れ――――!」
「モーさん、そこ脚つくから。オレ、ここに来てからこんなんばっか――――ガクッ」
「お、沖田さんも、こんなのに巻き込まれるなんて――――こふっ」
砂浜に背中から叩き付けられた虎太郎と沖田は、衝撃と痛みで立ち上がる気力すらなく。
モードレッドはモードレッドで自分の巻き起こした被害に気付けずに、足が底につくことすら忘れ、もがき続けるのであった。
というわけで、モーさんヘタレ化が進行中&上乳上ガウェインの惨状にドン引きしつつもモードレッドを(どのような感情によるものかはともかくとして)気にかける&モーさん実はカナヅチでした。
モーさんが実際に泳げないかは知らない。当時のイベントやれなかったしね。
というわけで、此処ではモーさんはカナヅチ設定で。まあ、父上の方も泳げないので似た者親子ってことで許してくんさい。
サマーバケーション編もあと少しで終わりが見えてきたぜ!