※この作品はR-18です。

「もしも苦労人がカルデアのマスターだったら」   作:HK416

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よーし、何とか終了ー!

では、これにて第一部終了。そして、最後には次章の予告が。

あ、新宿、CCCコラボのネタバレがあるので注意してください!


『終焉の時来たれり、其は全てを終わらすもの』その四

 

 

 

 

 

「フォーウ!」

 

「見えました! 回収地点です!」

 

「後、もう少しだ! 頑張ってくれ、虎太郎!」

 

「頑張るのはお前の方だ間抜け。膝、笑ってんぞ」

 

 

 ゲーティアとの決着を完全に付けた虎太郎は、二人と一匹と共に回収地点に向かっていた。

 大量の出血によって顔色は悪いが、足取りはしっかりとしている。寧ろ、危ういのは運動不足のロマニの方。

 

 自ら削ぎ落とした右肩は、米連で開発されたスプレータイプの止血剤で覆われている。

 傷口を泡状の薬液で覆う事で殺菌、止血を同時に行う最新鋭品。これの利点は、医師でなくともスプレーを噴きかけるだけで応急処置が終了する点にこそあった。

 

 

「アルフレッドさん、全員無事に回収地点に到着しました!」

 

『此方もシバにて確認致しました。レイシフトによる回収を開始します!』

 

 

 宙域に浮かぶ、最後まで残っていた足場は青い光に包まれる。

 彼等の全身は疑似霊子に変換され、カルデアに向けて投射されていく。

 

 足場が崩れ去る直前、レイシフトが完了する。

 直後、領域は解けた光帯の魔力によって、完全に破壊される。

 あとに残されたのはソロモンの、或いはゲーティアの墓標である玉座と、十の指輪だけだった。

 

 

 

 

 

―――――

――――

―――

――

 

 

 

 

「――ふぅ、何度やってもこればっかりは慣れん」

 

 

 レイシフトに必要なコフィンから出た虎太郎は、目眩に目頭を押さえて首を振った。

 今、彼は飛行機や船に乗った際に起きる酔いとは比較にならない吐き気と目眩に襲われている。

 平衡感覚を完全に失っていたが、訓練の賜物か、傍目にはそうとは見えない。

 

 

「先輩、大丈夫ですか……」

 

「ああ、問題ない。ほら、先に戻ってた連中も集まって――――」

 

『なんで、あの短い時間で右腕失くして帰ってきてんだ、アンタは!?』

 

「いや、まあ、色々と。それから自分で吹き飛ばしただけだから」

 

『またか! 大概にしろぉぉぉおおぉぉ――――!!』

 

「何やってんのよ、アンタはぁぁああぁぁぁぁあぁあぁあぁぁああぁっっっっ――――!!!」

 

 

 レイシフトルームにて、虎太郎とマシュの帰りを待ち侘びていたサーヴァント達の絶叫が響き渡る。

 最も声が大きかったのはメディアである。最も苦労して、最も心労が溜まるのが彼女なので仕方がない。

 

 あの一戦は、誰にも観測されていなかったようだ。

 サーヴァント達からしてみれば、戦いが既に終わり、無事帰還するのを待つだけの状態だったので、この驚きようも無理はない。

 

 

「ま、まあ、兎に角よぉ、これで人理焼却はなくなったわけだ。オレ達も色々と整理しなきゃなんねぇかなぁ……」

 

 

 きっちり右腕を拾ってきていた虎太郎は、メディアに渡して治癒を開始している。

 面倒だったので、レイシフトルームにそのまま横になって、床を血で染めていた。

 虎太郎にトラウマを植え付けられたマリーと沖田は蒼い顔で目を逸らしている。

 

 そんな中、声を上げたのはモードレッドだ。

 元より虎太郎との契約は、人理焼却の阻止が終わるまで、という内容だった。

 書面ではなく、虎太郎とサーヴァント当人との口約束であったが、これを反故にするような男ではない。

 

 カルナ、スカサハ、ロビン、呪腕、ジャンヌは、以前からその後も契約関係を継続し、残ると明言していたが、サーヴァント全てにそのつもりがあるわけではない。

 純粋に人理焼却を憂いた者も居れば、サーヴァントとして契約を全うしようとした者も居れば、カルデアの居心地が良くて残った者も居れば、聖杯を望んで戦い続けた者も居る。

 まず、虎太郎は彼等の意向を確認し、約束した報酬を与えねばならない。

 

 

「その前に聞かなきゃいけないことがある。神話礼装を始動した後の魔神柱共の行動についてだ」

 

『――――んん? それはどういうことだい?』

 

「いや、ちょいと気になることがあってな」

 

『………………成程、観測データを再生(リプレイ)。解析しておきます』

 

「お前は優秀で助かる。頼むよ」

 

 

 既にサーヴァント達と顔合わせを済ませたのだろう。

 ダ・ヴィンチが空間ウインドウで、虎太郎の質問に首を傾げていた。

 

 他のサーヴァント達も同様だ。皆、凄まじ過ぎる力に崩壊していく身体を押しての戦いだった。

 あらゆる疑問、不審点に蓋をして戦い続けなければならなかったのだ。

 

 しかし、何名か――カルナ、アーラシュ、エルキドゥ、アマデウス、ドレイクは神妙な表情で頷いていた。

 

 疑問を浮かべながらも、ポツポツとそれぞれが戦った魔神柱の行動を語っていく。

 

 個我を得た結果、ゲーティアとの結合を拒ばみ、自ら解除を選択した魔神柱が居た。

 個我を得た結果、三千年に及ぶ研鑽を否定され、徹底抗戦を選択した魔神柱が居た。

 個我を得た結果、英霊達の撃退に意味を見いだせず、自己停止を選択した魔神柱が居た。

 個我を得た結果、自らは長く持たないと判断し、他の仲間に魔力を託して消滅した魔神柱が居た。

 個我を得た結果、晴らせぬ疑問までもを得てしまい、敵対する英霊達と戦いではなく議論を選択した魔神柱が居た。

 個我を得た結果、沸き上がった感情に自己矛盾が発生し、崩壊を選択した魔神柱が居た。

 

 ――――果ては、個我を得た結果、敵対していた筈の英霊達を庇い、盾となって消滅した魔神柱までもが居た。

 

 

「驚いたぜ。こっちが仲間を守ろうと流星一条(ステラ)を放とうとしたら、オレに止めろと言った挙句、盾になったからな。名前は、アロケルとオロバスだったか」

 

「アーラシュ殿。それは私も同じですが、個我を得たのならば当然では……?」

 

「いや、違うよ静謐の。神々に造られたボクだからこそ分かる。いくらなんでも、自我の成長が早過ぎる」

 

「だよねぇ。人は生まれながらに人じゃない。人になっていくものだ。それ以上のスピードで彼等は自我を成長させた」

 

「憎悪、嚇怒、恐怖、疑念――――奴等はあらゆる感情を抱き、持て余していた」

 

「なら単純だろう? 人間に近い自我を持ってる連中なら、ケツ捲って逃げる連中もいるだろうって話さ。何せ、人間だって、死ぬまで戦える奴等なんて稀だからねぇ」

 

 

 ドレイクが締め括った彼等の所感に、他の皆は、そんなことはと否定しながらも、まさかと否定しきれない。

 皆が、アルフレッドの存在を示すスフィアが映し出された画面に目を向ける中、アルフレッドは自らの解析結果を口にした。

 

 

『非常に残念なお知らせですが――――戦闘行動を確認できなかった魔神柱を四体発見しました』

 

「やっぱりか。なら、ゲーティアの崩壊が始まってから“神話礼装(ゼロ・モデル)”を起動させるまで時間を掛け過ぎたことになる。後を追えるか?」

 

『流石に、映像からでは。何処かの時代に潜んでいるのでしょうが、彼らが新たに特異点を発生させるまでは分かりません』

 

「というわけだ――――この中に、まだオレに付き合う暇で物好きな連中は居るか」

 

 

 虎太郎の言葉に、サーヴァント達は何一つ語るまでもなく、信頼の視線を以て答えた。

 若干、何名かは不満げではあったが、降りるとだけは言わない。虎太郎ではなく、別の誰かを心配して残るつもりなのだろう。

 

 これからの戦いも油断はならない。

 単純な強さではゲーティアほどにないであろうが、敗北は成長を促す。魔神柱であっても、それは変わらない。

 十二分な脅威だ。悪辣な罠を用意し、カルデアを待ち構えているに違いない。

 

 戦力が減る憂き目に合わずに済んだが、やるべきことは山積みだ。

 

 

「じゃあ、これからロマニとダ・ヴィンチが隠れていた地下にお前等を送る。暫らくの間、其処で英気を養ってくれ。この人数なら余裕もあるだろう?」

 

『ああ、勿論さ。何せ、この一年、暇を見つけては私が増改築を繰り返していたからね! 趣味で!』

 

「し、しかし、先輩、何もそのようなことをしなくても……」

 

「その必要はある。恐らく、明日にでも時計塔の連中が使節団を送ってくるんじゃないか?」

 

『流石の読みですね。先程から外部からの連絡が止まりません。どうやら、この一年はなかったことにはならない。記憶だけがすっぽりと抜け落ちた状態のようですからね』

 

 

 一年間、地球上の全ての知性活動が停止していた。その原因と経緯を報告しろ、ということなのだろう。

 

 その際に、サーヴァントが居るのは何かと面倒だ。

 時計塔のだけではない。カルデアを監督する側の国連の調査も入ってくる。

 その場合、サーヴァントは使い魔、兵器という認識しかない彼等と、様々な理由から協力してくれた英雄達が衝突しかねない。

 

 

「外の混乱はまあいい。それを治めるのは国連と時計塔、各国政府の仕事だ。こっちはこっちの仕事の内容を、オレ達にとって都合の良いように報告すればいい」

 

「この腐れド外道め。でも、それじゃとてもじゃないが時間が足りない。流石に、明日に来る連中に下手な報告をしようもんなら、逆にコッチの立場が悪くなる」

 

「何を言っている、ロマニ。オレが、戦いが終わった後の事を考えていないとでも? この程度、想定の範囲内さ」

 

 

 そう、一年以上もの間、書類と格闘してきたのは聖杯探索が終わった後を見据えてのこと。

 カルデアにとって不都合な事実を、違和感なく隠し、尚且つ嘘を吐かずに、真実を語らないで相手の思考を誘導し、納得させる報告を考えて、書類にして纏め上げてきたのだ。

 

 

「というわけで、ダ・ヴィンチ、ロマン、アルフレッド。急いで書類に目を通して、穴がないか確認しろ」

 

「――――――おっと、失礼。急用を思い出した。ちょっと近くの街まで結婚指輪を買ってこなければならないんだった」

 

「逃がさん! お前だけは、絶対に……!」

 

「ぐっはぁ?! 嫌だぁぁぁあぁぁ!! ボクだってほぼほぼ不眠不休だったんだぞ! その上、危ない薬にも手を出してだよ!? 死ぬ! これ以上の徹夜はガチで死ぬ!」

 

「なーに、問題ない。ほら、これを見てくれ。危ない薬じゃないけど、良い薬があるんだぞぅ?」

 

「なな、何だいそれは! 何か御徳用って書いてある2リットルの瓶は……!」

 

「咳き止めシロップだ。コーヒーよりも少ない量で含まれるカフェインは二倍。この意味が分かるな?」

 

「ああ、そういうことね! 仕事が終わるまでトイレに行くのも禁止! 席を立つなってことね! ダ、ダ・ヴィンチちゃん、助けてくれぇぇぇ!!」

 

『え? 嫌だなぁ、ロマニ。結婚指輪とか気が早いよ。ほら、まずは諸々の資金を調達しないとね!(テレテレ』

 

「クソッ! 天才は凡人の心が分からない! これはアレだぞぉ! 特別給与を要求するぞぉ!(レオナルド可愛い、結婚しよ)」

 

「ほら、こんなもんで如何でしょ。ダ・ヴィンチとお前の戸籍も用意しちゃうよぉ。マリスビリーよりも巧くやっちゃうよぉ」

 

「うわぁぁぁああぁぁぁあぁぁ!!! 見たことない額が並んでるぅぅうぅぅ! やらせて頂きまぁああぁぁぁぁあぁすっっ!!!!」

 

 

 自分一人だけ逃げようとしたロマニの脚を掴んで転倒させた上に、その上に乗る虎太郎。

 喚くロマニであったが、虎太郎が何処からか取り出した電卓に提示された金額に、涙を呑んで受け入れた。

 

 ロマニは戸籍上、死亡した存在だ。

 つまり、社会に出られない人間である。まともな職になど就けない。結婚も出来ない。

 ここで虎太郎の提案を蹴ろうものなら、その後に待っているのは野垂れ死に、とまでは行かずとも、決して明るくはない。

 

 

「さて、決まりだな。外部の混乱は知らんが、カルデアの利権やら責任問題は、二週間で決着をつける」

 

「は、はぁ?! む、無茶苦茶だ! 国連は兎も角、時計塔の連中だぞ!? それぞれの学科からお偉いさんが涎を垂らしてやってくるし、あの法政科も絡んでくるに決まってる! 大体、こういうのに普通はどれだけ時間がかかると思っているんだ!」

 

「――――いえ、早期に決着をつける、というのは悪い手ではありませんね。酷く難しいという点に目を瞑れば、ですが」

 

「あー、あーあー、そういうことね。無茶苦茶だが、確かに悪くない手かもなー」

 

「ど、どういうこと?!」

 

 

 虎太郎の言葉に、真意を察したのは政治というものを理解したアルトリアと騎士として補佐したことのあるモードレッドだった。

 

 早期に決着をつける、ということは、相手に考える時間と調査する時間を与えないということだ。

 例え、カルデア側に非があったとしても、それに気づかせなければいい。

 例え、時計塔側にとって有利な事実があったとしても、十分な調査が為されていなければ、事実としては使えない。

 

 況してや、国連側の手も時計塔と同時に入る。

 内心は兎も角として、立場は時計塔よりも国連側が上だ。

 そして、国連は基本的に、専門分野(神秘)専門家(裏の人間)に、ということで、カルデアの運営をアニムスフィア家に、その監視と監査を身分を偽った虎太郎に任せきり。

 重大な過失、瑕疵がなければ、国連は納得し、これまで通りの運営を約束するだろう。そうなれば、時計塔でさえも口出しが出来ない。

 

 国連と時計塔が同時に来る明日からが最大のチャンス。

 況してや、共に世界中の混乱を治めなければならない立ち位置。

 カルデアの調査が長引けば長引くほど、世界の混乱も長引いていく。早期にカバーストーリーを作り上げなければならない。

 慌てふためいている内に利権と責任問題を内々に終息させる。時計塔側が後で付け入る隙を見出したとしても、全ては後の祭りである。

 

 

「これだよ! 皆が必死になって人理修復に頑張ってる時に、自分も一緒に戦ってた癖に、終わった後の対策まで立ててる! なにそれ怖い!」

 

「もう暫らくは、カルデアに付きっ切りだな。他にも気になる点はいくつかあるし。その後は、幸いなことにオレは誰の前でも仮面を被っていたから、中身がロマニでも構わんな」

 

「おい、ちょっと待て! 何か聞き捨てならない台詞を言わなかったかい!?」

 

「仕方ねぇな。ロビン、呪腕、百貌、静謐、風魔の五名は日本に飛んでくれ。お前等の能力なら九郎の手助けをしてやれるはずだ。流石にそろそろアイツが死ぬ」

 

「いや、それは構わねーですけど、対魔忍、だったっけ? それの仕事の仕方なんて知らないぞ?」

 

「基本的にコッチとやるこたぁ変わらねぇ。あとは九郎がお前等を上手く使うさ。霊体化の使用も許可する。上手く飛行機に潜り込んでくれ」

 

「承知しました。では、直ぐに」

 

 

 呪腕の言葉に、五名の姿が消えた。霊体化を行い、カルデアがある山頂から近場の空港まで向かったのだろう。

 現世の知識はあるが経験が欠如してはいる。が、其処はアルフレッドと虎太郎が念話でサポートすれば問題はない。

 残る仲間達も、明日から地下室にカンヅメということもあり、各々の自室に必要なものや暇潰しに使えるものを取りに行ってしまった。

 

 残されたのは、治癒が完了した虎太郎とマシュだけだ。

 

 

「では、行きましょうか、先輩」

 

「ああ、そうだな。取り敢えずの区切りを付けに行くか」

 

 

 二人が向かうのはカルデアの正面ゲート。

 その先には、カルデアのヘリポートがある。其処に、発信装置を置いておく必要があった。

 カルデアは魔術的にも、科学的にも、あらゆる視点から完全な防衛防備が為されている。発信装置がなければ、誰も此処には辿り着けないのだ。

 

 虎太郎がマシュに手を伸ばすと、彼女は輝く笑みを浮かべて手を取った。

 それが私に与えられる最大の報酬だと喜ぶように。何の変哲もない、他者の暖かさを感じる喜びを噛み締めながら。

 

 

「でも、意外でした。先輩が、ドクターを助けるなんて」

 

「ん? あぁ、いやなに、アレは普通の人間だったからな。それを助けるのなら、仕事の範疇だ」

 

「ですが、それはソロモン王の願いを叶える行為でもあったのでは……?」

 

「結果としてはな。だが、オレが手を貸したのも、協力を求めたのもロマニ・アーキマンだった」

 

 

 厳密に言えば、彼はソロモンとは別の存在だ。

 だから虎太郎も、ソロモンの慚愧を自分自身がどうなったとしても消し去る覚悟を思い切り踏み躙った。

 

 別段、報われて欲しかった訳ではない。

 因果応報は効きが薄く、努力した者が報われるとは限らないのが世の常。

 

 だから、虎太郎は報酬を支払っただけのこと。

 十年もの時間、理由も目的も分からない人理焼却に備え続ける、地獄にも似た自由(みち)を駆け抜けた、ロマンチスト(ただの人間)に。

 

 

「フォーウ」

 

 

 気が付けば、フォウが二人の隣を歩いていた。

 マシュに気付かれぬように、虎太郎にだけ聞こえる鳴き声を上げて。

 

 他の人間が聞けば、愛らしい鳴き声に聞こえただろう。

 もっとも、虎太郎にはティアマトの歌やゲーティアの威圧感と同じような、獣の唸り声に聞こえていたが。

 

 

(おめでとう、人類最悪のマスター。そして、ありがとう。私は彼女のお陰で本当に、美しいものを見た。私は君のお陰で、人の強さを垣間見た)

 

(そら、どうも)

 

(可能であれば、このまま第四の獣も打ち倒して貰いたいのだが――――)

 

(冗談。倒す必要のないものを倒すほど、オレは道楽者じゃない。今まで通り、魔力を程々に消費していてくれたまへ)

 

(――――そう。ならば、後悔だけはないように。私が私で亡くなった時の介錯、その準備を進めておいてくれ)

 

(………………)

 

(それから、始まりの悪が目覚めた世界は、終局の悪に向けて次々に獣が目覚めるらしい。ティアマトも、私もその一つ)

 

(何となく、そんな気はしていたがね。全く、暇な連中だな。人の世を憂いたところで、救われるものなんぞあるまいに。人は勝手に救われるだけだ)

 

(君らしい結論だ。人類悪を鼻で嗤う悪意。君は、我々にとっての天敵だ。どうか、その旅路が、良き終わりでありますように――――)

 

(良い終わりでなくてもいいがな。まあ、それでも――――折角、手に入れたものを棄てるつもりも、泣かせるつもりもないがね)

 

「――――先輩?」

 

「いいや、何でもないよ」

 

 

 強く握り締めた手に、マシュは不思議そうに彼を見たが、虎太郎は静かに笑ってはぐらかすだけ。

 

 彼が視線を戻せば、災厄の獣は消えていた。

 また、猫のように気紛れに、猛獣と呼ぶには思慮深く、此処に押し寄せてくる人間が居なくなるまで、静かに幸せな結末の夢を見ていることだろう。

 

 正門前に辿り着く。

 余りにも厳重で、余りにも厚い扉が左右に開いた。

 その先には取り戻したばかりの眩い青空(みらい)が、何処までも、何処までも。果てなどないと誇るように広がって――――――

 

 

 

 

 

―――――

――――

―――

――

 

 

 

 

 人理修復は相成った。

 されど、物語は続いていく。人が死滅し、世界が滅ぶその瞬間まで。

 

 ならば、次なる物語も語られるべきだろう。

 

 お集りの紳士諸賢、淑女の皆様。

 次なる舞台は、悪徳へと堕ちた都市。怨嗟渦巻く閉ざされた魔境。待ち受けるは悪の首領と憎悪の化身――――には、ございません。

 

 役者が変われば、流れも変わる。流れが変われば、脚本も変わる。脚本が変われば、舞台も変わるのは当然の事。

 

 故に、次なる舞台は海の底。悍ましき電脳楽土。

 128騎のサーヴァントが殺し合う霊子虚構空間。依存と恐怖が渦巻いた海洋油田基地。

 

 

 ――――では、その女の話をしよう。淫らに現実を侵す、悍ましい愛の末路(はなし)を。

 

 

 

 

―――――

――――

―――

――

 

 

 

 

「オレ、コイツのこと嫌いだわ。鬱陶しいし」

 

「センパイったら、ひどーい! でもでもぉ、BBちゃんは、そんな程度でヘコたれないのであった!」

 

「せ、先輩が、私の先輩が……うぅ」

 

「いやー、後輩はこういうもんだわー。可愛げが大切だわー。おう、ただのラスボス、もう通信切っていいか?」

 

「ら、ラスボス系後輩って言ってるでしょう!?」

 

 

 月の聖杯。上級管理AI。海洋油田基地セラフィックス。

 

 

「え? マジ? オレ一人? 嘘やろ?(鼻ホジー」

 

「へぇっ! マスターが一人きりなんて、私の時代来てる? 来ちゃってる系?」

 

(面倒臭そうな奴。無視無視、存在そのものを認知しないに限る)

 

「ちょ、無視すんなし! ってぇ、煙玉ぁ!?」

 

 

 JKセイバー。鈴鹿御前。マスターの存在しないサーヴァント。

 

 

「貴方―――は、誰、ですか―――」

 

「あー、まあ、カルデアのマスターだが」

 

「カル、デア――と、にかく――――、ここは、危険、ですから――――」

 

「成程、ちょうどいい。こっちはサーヴァントが居なくて困ってる。そっちはマスターが居なくて困ってる。なら、やることは一つだな」

 

 

 壊れかけの無垢なる少女。快楽のアルターエゴ。一人踊るプリマドンナ。

 

 

「下がってください。アレは、きけ――――」

 

「おーい、ガッウェー! ガッウェー! オレだー! ド外道だー!」

 

「おお、虎太郎! 貴方の救援に来ました。まあ、海の中なので大して役には立たないのですが! そこは帰りを待つラグネルへの愛でカバーします!」

 

「良かった。いつも通りのガッウェだった」

 

(…………契約したの、私だけじゃなかったんだ。むー)

 

「……これはどういった状況なのでしょう……私は、悲しい(ポロロン」

 

 

 嫁への愛に生きる太陽の騎士。嘆きのトリスタン。メルトリリス可愛いよメルトリリス。

 

 

「――――お前」

 

「その様子、オレを知っているのか? 此方に記憶はないが」

 

「何? 黒い、黒すぎない? 日サロでも通い詰めたのかな? 黒人の皮膚でも移植したのかな?」

 

「――――――――」

 

 

 嗤う鉄心。無銘の執行者。デトロイトのエミヤ。

 

 

「デカァァァァイ! 説明! 不要!」

 

「はい、大変素晴らしい。これは垂涎ものですね! メルトリリスには心強く生きて頂きたい!」

 

「このッ、蹴るわ、蹴るのよ、蹴ってやる! あぁ、腹立たしい!」

 

「おっ、何か性格違う。これは罠かな? オレは罠に掛けられたのかな?」

 

「違います! これが私本来の性格よ! 残念だったわね!」

 

「特に残念でもない。ガッウェの発言はラグネルに伝える。お前が心強く生きろ」

 

「」

 

 

 囚われた無垢なる少女。愛憎のアルターエゴ。ブラストバレー……ブラストバレー!!

 

 

「――――魔神柱!?」

 

「いや、此処だけの話、これビースト案件やで。臭ぇーし」

 

「はぁ……ッ?!」

 

 

 魔神柱。狂乱の果てにあったもの。ゼパ、なんとかさん。

 

 

「これが、これが、アルフレッドの最適解だ――――!」

 

「せ、センパイ? その人は? 水着姿で拳を構えている人は?(カタカタ」

 

「――――我がカルデア素手喧嘩(ステゴロ)最強の存在、マルタ(凄女様)だ」

 

「――――誰が素手喧嘩最強よ!(ドゴォッ!」

 

「ぎゃふん!?」

 

 

 水辺の凄女。ムーンキャンサー特攻&悪魔特攻。殴ルーラー。

 

 

「虎太郎、そいつはもう――――!」

 

「どうした、撃てよ? 引き金を引いて皆殺しにする。それだけの話だろ?」

 

「――――――」

 

「出来ない。出来ねぇよなぁ? ええ、おい? エミヤよ?」

 

「――――ッ」

 

「下らねぇ事してねぇで、さっさと戻れ、正義の味方」

 

 

 抑止の守護者(ロストマン)。崩れた理想。忘れていた筈の記憶。

 

 

「――――申し訳ありませんが、我が楽土で御眠りなさいませ」

 

「……………………ふーん(シラー」

 

「スゲェ! こんなに白けきった大将、未だかつて見た事ねぇよ! つーか、この尼さんがラスボスって分かってますぅ?!」

 

「年増が何度でも出て来て恥ずかしくないんですか?(鼻ホジー」

 

「貴方の前に現れたのは初めての筈ですが?!」

 

「このたたかい、われわれのー、しょうりだー(白け切った顔と声」

 

「何言ってんのよ! この、自分の脚で立ちなさいっての! コイツは快楽の――――」

 

『―――――あっ(察し』

 

(私は、こんなのに助けられたんだー、あははー(現実逃避)

 

(メ、メルト、し、しっかり!)

 

(オレ――いや私も、こんな奴に……?)

 

 

 魔性菩薩。性技の味方。あっ(察し

 

 

「BBちゃんの色々な努力が台無しにー?!」

 

「そうだよ。オレは他人の努力を踏み躙る事に定評のある男だよ」

 

「いやいやいやいや、でもですねぇ!?」

 

「さーて、けぇるべけぇるべ(ガン無視」

 

『えぇーーーーーー!? このまんまーーーーー?!』

 

「それよりもメルトとリップ、ウチクルー?」

 

「――――ハッ?! メ、メルト! しっかり、答えなきゃ、駄目だよ」

 

「――――別に。別に、見返りが欲しくて、戦ったわけではないもの。私は、」

 

「なんだ? 舞台から無理矢理攫ってほしいかい、プリマドンナ」

 

「――――――ッ」

 

 

 次章、快楽電脳楽土SE.RA.PH。

 

 

(その疑問こそ、私に与えられた罰ならば……彼女のように、アルターエゴになってみる顛末も、有り得るかもしれませんね――――)

 

 





という訳で、こんな感じで第一部は終了。

続いて、次章はCCCコラボ。
なんで新宿寄りも先かって? きのこのシナリオの出来が良すぎるのが悪い! 書きたくなったんや!




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