「もしも苦労人がカルデアのマスターだったら」 作:HK416
悔しいので、コツコツ書いた。でも師匠はあんまり関係ない話。
では、海賊組の話と…………多分、一番可哀想な幸運Eが出てくる話です。どぞー。
海賊組と幸運E。
「お前等も物好きだな。サーヴァントの召喚する所を見たいなんて」
「いやぁ、未知の探求は海賊の本分だからね」
「どちらかと言えば冒険家の本分だと思いますけど。私は、宝の地図の方が好みです」
「完全に同意かねぇ。ま、あたしは御義理御義理。んぐ、んぐ」
カルデアの廊下を行く一行の姿があった。
先頭を行くのはカルデアのド外道、弐曲輪虎太郎である。その後に続くのは、二騎のサーヴァント。
黒い衣装の小柄な少女、赤い衣装の長身の女性。両者ともにライダーのサーヴァント。真名はアン・ボニーとメアリー・リード。
世にも珍しい二人一組の英霊。ジョン・ラカムの船で誰よりも勇猛に戦った女海賊。それがアンとメアリー。
二人が一組の英霊として召喚されたのは、その珍しい
纏った真紅のコートでは包み切れず、豊満な胸の谷間を大胆に露出させ、豪快に酒瓶を煽っているのもまたライダーである。真名はフランシス・ドレイク。
世界一周を生きたまま成し遂げた海賊。人類のターニングポイントとなるほどの偉業を為した大英雄。歴史には男性と語られているが、真実は女性であったらしい。
どうやら、彼女の周囲にいた船乗りは彼女を女と認めると男としての自分達が立つ瀬がないと考えたようで、女性と見做さなかったが故に後世には男性と伝えられたようだ。
それぞれタイプの違う美女を侍らせて向かっているのはカルデアの召喚場だ。
守護英霊召喚システム『フェイト』。日本の冬木市で開かれた聖杯戦争の召喚術式に大きな影響を受けた召喚システムである。
ここにアルフレッドの演算能力が加わる事で、望んだ英霊を選定し、契約・魔力供給を行うのである。
「おや? そこを行くのはマスターではござらぬか。なんと奇遇な!」
ババーンとポーズを取って現れたのは、何かの萌えアニメTシャツを着た口髭の男。クラスは三人と同じくライダー。真名はエドワード・ティーチ。
かつて海賊時代のカリブ海を支配下に置いた海賊。彼は黒髭と呼ばれ、他の海賊からすらも恐れられた。
爛々と輝く瞳は正に地獄の女神か悪魔の化身か――――――だったのだが、今の彼はネットスラングをバリバリに使いまくるオタクと化していたのである。聖杯、余計な知識与え過ぎである。
黒髭の存在を確認するや、三人の表情筋が死んでいく。三人が三人とも黒髭の被害者だからである。
とある特異点にて黒髭の部下となっていたアンとメアリーは常にセクハラの被害を受けていた。
ドレイクは同じ特異点にて黒髭にBBA、BBA、と散々馬鹿にされるわ煽られるわ。三人の顔も当然である。
「マスター! ネットで発見した百合ものの薄い本を買ってくだちぃ」
少女がすれば愛くるしいと思えるポーズで両手を差し出す。ハートまで飛び交っているが、やっているのが黒髭なので全てが台無しである。
その姿に露骨に顔を顰める三人であったが、どう考えても黒髭の術中に嵌っている。
この黒髭、本当にオタク趣味ではあるのだが、これはポーズだ。この男はよくよく自身の能力を理解している。
英霊――のみならず、神秘というものは古ければ古いほどに強大な威力を秘める。それが世界の
比較的、近代の英霊である黒髭は、その法則に則れば強力な英霊とは言い難い。
ドレイクのように、人類のターニングポイントとなった証である“星の開拓者”というスキルを持てれば別だが、彼女は例外中の例外だ。
だからこそ、黒髭は他者に侮られる為に、他者に嫌われる為に、他者に蔑まれる為に、本来の自分をオタクという仮面で押し隠しているだけ。
全ては寝首を掻く為に。
少しでも隙を見せた瞬間に、黒髭は仮面を被ったまま、見るも悍ましい冷徹で残忍な手段で敵を殺す。
「ああ、ほらよ」
「――――え? あの? マスター? え?」
そんな黒髭に対して、虎太郎は取り出した自分の財布を渡して、そのまま隣を通り過ぎた。
これで好きなの買えば、という意味なのだろうが、視線すら合わせようとしない塩対応である。
呆然と立ち尽くす黒髭の横を通り過ぎる三人はプルプルと肩を震わせていた。
アンは噴き出し、メアリーは涙目で笑いを堪え、ドレイクですらが口の端を歪ませている。
それはもう面白いだろう。他人を引っ掻き回すだけ引っ掻き回す男が、良いようにあしらわれているのだから。
虎太郎には黒髭の仮面など通用しない。
元より他者に共感はせずとも理解は早く、何よりも味方であっても油断や隙は決して見せない猜疑心の塊、完全なる偏執狂だ。何を言われたところで動揺などするはずもない。
「………………ハっ!? ま、待て待て待て待て待て待て、待つでござるぅぅ!!」
「何だよ、うるせーなぁ。それで好きなの買えばいいじゃねぇか」
「買うは買う! けどぉ、拙者への対応が酷過ぎでは?!」
「お前の相手するの面倒なんだよ。令呪を以って命じる。黒髭、ドレイクが船長、お前が副船長の設定の冒険譚を書いてこい」
「ほぎゃああああああああああっっ!! おっま! このガキィ! 人に何てもんを――」
「感謝して欲しいもんだね。お前、ドレイク尊敬してるし大好きじゃん。よかったねぇ、そんな設定の
「やめ、やめろぉぉぉぉぉぉおおおおおおぉぉおおぉぉっっ――――――!!!」
本気の絶叫を見せながらも、黒髭は半泣きになりながらも自分の部屋の方へと走っていってしまった。
何を隠そう、黒髭にとってフランシス・ドレイクという海賊は憧れの存在である。
自身の生まれた時代よりも少し前にこの世を去った大海賊。過去の経歴のまるで残されていない黒髭は、もしかしたら、彼女に憧れて海賊になったのかもしれない。
そんな相手をBBA呼ばわりで煽るなど、色々と台無しだが。
好きな女子を虐める男子的なアレと同じ理屈なのだろう。台無しなのは黒髭の方なので何の問題ない。元々台無しな男である。
きっと出来上がってくるのは、
単純な欲望を曝け出すのならば、黒髭もここまで慌てはしまい。そんなものは常に晒しているようなもの。
だが、自身の憧れを、自身の最も深い部分にある願いを晒されるなど、あの男であっても耐えられない。
「「な、なんて、冷静で的確な嫌がらせなんだ!!」」
「これが正しい対応よ。マトモに相手をするからつけ上る。相手の嫌がることを的確にすれば、相手の方から近寄ってこなくなるからね。ほら、オタクは構ってちゃんだけどナイーブだからね」
「………………いや、そんなもんに登場させられるアタシの身にもなっておくれよ」
「ええやんけ。お前、悪党だろ? 悪党なんて、笑っちまうほど哀れな目に合うんだよ?」
「カーっ! アタシ、なんで悪党になんてなっちまったんだー! カーっ!」
「「「あっはっはっはっはっはっはっ」」」
ざまぁない、とばかりに笑う女海賊三人組。どうやら溜飲は下ったようだ。
哀れ、カリブの大海賊――――――でもない。全部全部、自業自得である。そんなことだから、生前も今もモテないのだ。
そうこうしている間に、四人はレイシフトルームに辿り着いた。此処こそが、カルデアの中枢でもある。
事象記録電脳魔『ラプラス』、疑似地球環境モデル『カルデアス』、近未来観測レンズ『シバ』、霊子演算装置『トリスメギストス』、英霊召喚システム『フェイト』
魔術と科学が交差し、融合を果たした世界最高にして最先端のシステムの全てがこの一室に収められている。
魔術協会の総本山である“時計塔”から奪った、年月を重ねた魔術理論。米連から奪った未成熟であった機器と理論と研究者達。
これらに加え、アルフレッドの演算能力での試行錯誤の末に、5つのシステムは生まれ、完璧な調整と調和が齎されていた。
4人が部屋に入ると、英霊召喚の準備は既に整いつつあった。
金属製の天井、壁、床にはそこここに穴が開き、その中からあらゆる用途を想定したロボットアームが伸び、部屋の中央で忙しなく作業を進めていた。
中央で組み上げられているのは機械であった。形は、カルデアに唯一存在するデミ・サーヴァントの持つ盾と形状がよく似ている。
この機械は、言わば魔法陣の代わりである。アルフレッドとジャンヌが選定した英霊を、より正確に喚び出すためのものだ。
『おや? 虎太郎は兎も角、珍しい方々もいらっしゃいますね。どうされました?』
「いや、私達がどんな風に召喚されたのか気になる、って物好きな二人が居てねぇ。アタシは暇潰しさ」
『成程。そう楽しいものでもないとは思いますが、よろしければどうぞ』
「えーっと、アルフレッドさん。私達は邪魔にはなりません?」
『私は他人に見られていても緊張しない性質ですので。どうぞ、お構いなく』
「うーん、アルって本当に機械なの? 普通に人と話してる気分なんだけど」
『勿論、機械です。正確には少し違いますが……召喚の準備が整いました。システム『フェイト』起動します。電力の魔力変換開始。充填40……50……60……70……80……90……100%、臨界に到達』
『召喚術式に介入。データバンクより英霊の情報を抽出。演算開始――――“
アルフレッドの宣言と同時に、機械式の魔法陣から放電現象にも似た青白い魔力の光が迸る。
光は次第に大きくなり、部屋全体を照らさんばかりに輝きを放つ。部屋の空気――いや、空間そのものが鳴動していた。
角膜を焼くような光に目を細めたが、三人は確かに見た。光が徐々に、だが確実に人の形を成していくのを。
やがて光は徐々に輝きを失ってゆき――――此処に、新たな英霊がサーヴァントとして現界した。
「フィオナ騎士団が一番槍、ディルムッド・オディナ、推参いた――――――――」
布に覆われた短長のある二振りの槍を手にした男。クラスはランサーであることは間違いない。真名は自ら名乗った通り。
輝く貌のディルムッド。スカサハが影の国と共に世界の外側へと追放された時代から300年ほど先、エリンを守ったとされるフィオナ騎士団の勇士。
頬の黒子は妖精からの贈り物であったが、ある意味で、彼の最期を決定付けた女までをも惹きつけた呪いでもあったという。
騎士道精神に溢れ、正道を歩まんとする英霊であるとアルフレッドとジャンヌが目を付けたのが彼――なのだろうが、虎太郎の姿を確認すると、ディルムッドは目を見開いた。
「――――貴様……っ!」
「「「――――!?」」」
次の瞬間、ディルムッドの両目から赤い血の涙を溢し始めたではないか。その光景に、海賊三人組は驚きから肩を震わせた。
「ちょ、ちょっと……」
「そんなにも……そんなにも、我が歓喜を踏み躙り、楽しいか!」
「あの、何を言ってるか分からないんですけど……」
「この俺が……たった一つ得た誉さえ踏み躙って……貴様は、何一つ恥じる事もないのか!?」
「いやいやいや、これアタシらに言ってないよな? お前には出会ったことも――――」
「赦さん! 断じて赦さん! 手段すら選ばず、騎士の誉を貶めた外道……その願いを、我が血で穢すがいい! 聖杯に呪いあれ! その願いに災いあれ! いつか地獄の釜に堕ちながら、このディルムッドの怒りを思い出せぇぇ!! ――――がふっ」
『えええええええええええええええええええええええええっっっ!?!?』
呪いの言葉を吐きながら、ディルムッドは自分で自分の胸を貫いた。ディルムッドが死んだ! この人でなし!
召喚されたばかりだと言うのに早くも自害した槍兵に、三人は絶叫を上げ、赤い砂となって消えていく様を呆然と眺める。
続き、虎太郎の右手を見たが、まだ令呪は一画残っている。
彼は常に最低でも一画は令呪を残しておく。敵の強襲、味方の裏切りを警戒して、決して裏切らないカルナを即座に手元に喚ぶためだ。
一日過ぎれば令呪は補填される。馬鹿みたいな使い方をするにはするが、必要な分は必ず残すのである。つまり、虎太郎の強制自害命令ではないということだ。
ディルムッドは自分自身の意思で、胸を貫いたということだ。三人には、全く理解不能の行動だ。
「………………今のが英霊の召喚だ。よく分かったか、三人とも?」
「いや、そこじゃない! そこじゃないからね!!」
「そんなに楽しくなかっただろ。何せ、召喚した奴はすぐ死んだし」
「楽しいも何も、こんな召喚、絶対にありえませんわ!!」
「いやぁ、それがあり得るんだよなぁ。全部オレが悪い」
「分かってるよぉ! アイツ、死ぬ寸前までアンタのこと睨んでたからね! 何したのさっ!!」
事の発端は、第五特異点での出来事である。
聖杯により召喚されたケルトの狂王と女王が、大軍勢と共にアメリカ大陸を蹂躙した在り得ざる過去。
カルナは敵側についたアルジュナと仲良く殺し合い、スカサハは狂王を討たんとケルト軍勢へと無闇矢鱈に、とても元気に無双をかましていた特異点。
進軍するケルト軍に対し、虎太郎と
その折、敵の将はフィオナ騎士団の長と勇士――即ち、フィン・マックールとディルムッドだった。
フィン・マックール。フィオナ騎士団の長であり、エリンを襲った堕ちたる神霊すら打ち倒した神殺し。
アイルランドの一部の地域では、
妻であるグラニアの件もあり、ディルムッドの死の要因となり、晩節を穢す結果となったものの、紛うことなき大英雄だ。
フィンとディルムッドは、かつて失った友情を取り戻したが故か、無駄に元気にカルデアメンバーの前に立ちふさがったのである。
やる気に満ち溢れた騎士団の長と騎士団の一番槍、無数の軍勢の前に、前線を支えていたモードレッド、ガウェインも押され始めていた。
残りのメンバーは、少しでも二人の負担を減らそうとケルトの雑兵相手をしている。
『
『軽々しく殺すなんて口にするんじゃありません。そこいらのチンピラみたいだぞ? だから、殺したなら使っていい』
『よくありません! ジャックも、マスターの言葉遣いは真似しないように!』
『はーい。でもジャンヌ、どうするの? このままじゃ、モーさんもガウェインも、負けちゃうかも……』
『我々が加勢するしかありませんね。この乱戦では二人の所に辿り着くのも一苦労ですが、このまま捨て置くわけにも行きません。ジャック、“
『いや、ちょいタンマ……モーさんとガウェイン、フィンとディルムッド、こっちの位置関係が…………ふんふん。よし、ジャック、宝具を展開しろ』
『りょーかーい!』
(………………何故でしょう? 猛烈に嫌な予感が)
後方で支援に徹していた虎太郎、ジャック、ジャンヌの三名は劣勢に立たされたモードレッドとガウェインを救うため、打って出た。
ジャックが古ぼけたランタンを取り出し、グローブを開く。
すると、そこから漏れ出した煙――否、産業革命後のロンドンを襲った公害の霧が溢れ出してくる。
これこそがジャック・ザ・リッパーの持つ宝具の一つ、“
一般人ならば数分で死に至り、魔術師であってもダメージは免れない。サーヴァントであればダメージを受けないが、敏捷性がワンランクダウンする。
この宝具の最大の利点は、他者へのダメージでも、自身の存在を覆い隠すことでもなく、効果を与える対象を選別できる点にこそある。
カンカン照りの荒野に、突如として展開された霧は、瞬く間に全ての存在を襲っていく。
『ガウェイン、行くぞっ――――!!』
『承知――――!』
『これは……!』
『気を付けろ、フィン! 宝具だ!』
ジャックの宝具を認識していたモードレッドとガウェインは、機と見るや防戦から一転攻勢に出る。
フィンとディルムッドは、僅かに遅れて守りに入った。戦場の機微を知る者、ましてやエリンを守護した騎士団だ。僅かな動揺もなかった。
《モードレッド、ガウェイン、オレが指示を出すぞ、構わないな?》
《……また絶対、あくどい事考えてる》
《嫌か? どうする? 令呪使う?》
《簡単に令呪使うんじゃねぇよ! あと令呪じゃ細かい指示出せねぇだろうが! 従えばいいんだろ! 従えば!》
《友の頼みとあらば、仕方ありませんね!》
虎太郎の指示は何のことはない。
ジャックの“
そして、虎太郎の指示通りに動くこと――――最後に、ガウェインにだけ奇妙な命を与えた。
その言葉に、さしもの元太陽の騎士も首を傾げたが、躊躇や迷いは皆無であった。流石は馬鹿、流石は絆レベルMAXである。
『どうした、叛逆の騎士! 彼の騎士王の剣は、こんなものではなかったぞ!』
『父上のこと引き合いに出されてもな。オレには、オレの剣があるんだよ!』
『大人になりましたね、モードレッド。
『うるせー! テメェは真面目に戦え!』
『大丈夫です。ええ、宝具の影響を受けまくりですが、午前中の私はほぼ無敵なので』
『はっはっはっ! 何とも奇妙な宝具と勇士達よ! これほどの強敵、何時以来か! 此度は我らこそが悪であるが、友に背中を預け、強敵と雌雄を決する! これに勝る喜びはない!』
『フィン……!』
ほんの数メートル先も見えない濃霧の中で、好き放題に喚き合う四人の騎士。
ディルムッドなど、フィンの言葉に感極まって泣きそうだ。モードレッドとガウェインは、心の中で合掌する。
虎太郎が策を講じた以上、虎太郎が直接指示を出す以上、情け容赦のない冷酷な手段で殺されるのは間違いないからだ。
僅か数分。彼等の剣戟は周囲の地形を抉り、変形させる。
サーヴァント同士の戦いは宝具を使用せずとも、凄まじい。その只中は、正に暴風圏。魔術師であろうとも原型を留めておくことすら難しい。
そんな中、モードレッドとガウェインはジャックの宝具による影響を受けていることを前提とした己の性能で剣を振るう。
戦いに集中しているが故か、或いは“暗黒霧都”による焦りか、フィンとディルムッドはその事実に気付いていないようだ。
高台に移動した虎太郎とジャック、ジャンヌの三人は霧に包まれた戦場を俯瞰していた。
霧の中で時折迸る火花、アルフレッドを介して繋がっているレイラインから四人の位置関係を完璧に把握していた虎太郎は、その瞬間が来るのを待ち侘び、とうとう――――
『ここだ! モードレッド、令呪を以て命ずる! オレの元に来い!』
『え? はぁ?! おいおい、ちょ――――』
『――――何ィっ!?』
『このタイミングで、伏せる――!』
『え? ――――――がふぅっ?!』
令呪の効果によってモードレッドは虎太郎の下に転送され、ガウェインは指示通りに、その場に伏せた。
フィンとディルムッドには唐突にしか映らなかったであろう。何せ、彼等から見れば、ほぼほぼ互角の戦いだったからである。
ディルムッドにとってモードレッドが突如として姿を消したことも、フィンにとってガウェインが攻撃を避ける訳でもないのに伏せたことも、理解不能であった。
ディルムッドがモードレッドと戦い、フィンがガウェインの相手をしていた。
モードレッドとガウェインは背中合わせとまでは行かないが、それにほぼ近い形で戦っていたのである。
そんな中、モードレッドが消え、ガウェインがその場に伏せればどうなるか。結果は御覧じろ。
――ディルムッドの宝具、“
『うわ、うわわわわわあああああああああああっっ!!!』
『ディル、ム……ッド、……やはり、お前は、私のことを、許しては……いなかったの、だな』
『ちがっ――――!?』
『いや……いいのだ。私は、多くの柵に捕ら、われ……お前を救う、機会を……自ら…………恨まれて、当然、だ』
『待て、待ってくれフィン……! オレはお前に恨みなど……!』
『……ふふ、冗談は、よしこ、さん、だ………………ガクっ』
『フィィィイイイイィィイィィィィンンンンンンンンンンンンンっっっっ――――!!!』
ディルムッドの腕の中で、赤い砂となって座へと還っていくフィン・マックール。最後の言葉があんまりだった。
自らの友を、自らの主君を、自らの手で殺してしまったディルムッドの胸中は如何ばかりか。あんまりにもあんまりである。
ディルムッドは膝を折り、武器すら手から取りこぼして咽び泣く。その姿に虎太郎は――
『よし、チャンスだ。ガウェイン、宝具だ宝具。蒸発させろ』
『いえ……あの、……いくら友と言えども、これは、ちょっとぉ……』
『そうか。なら、こっちからモーさんに宝具ぶっぱさせるわ。今のお前なら死なないだろ』
『この剣は太陽の現身! かつ、友の敵を焼き尽くすもの! “
『―――――あ』
太陽の灼熱で
三人のサーヴァントは、ただただ呆然と一連の光景を眺めていることしか出来ず、やがて口を開いた。
『な、なななな、何をやってるんですか、貴方はーーーーーーーーー!!!(目グルグル』
『
『何処がだ、ジャック? 戦場で呆然としてる方が悪いんじゃないですかねぇ? これがケルト軍の狂った王様の方針だろ?』
『そうだけど! そうだけれども! こっちまでその方針に沿う必要ねぇだろ! 大体、あのまま戦っててもオレとガウェインなら負けなかっただろうが!』
『だが、無傷じゃ済まなかった。この後には狂王、ケルトが生んだスーパービッチとの戦いが控えてる。余計な消耗は避けなきゃねぇ』
『スカサハやカルナがいるでしょう?!』
『スカサハは色々と弟子に思う所があり過ぎて余計な事しそうだし、カルナは怨敵のアルジュナがいる。狂王相手にした時、その場にいるという確実性がない。それに……』
『『『…………それに?』』』
『ほら、アレだ。フィンはディルムッドを見殺しにしたんだろ? ならディルムッドがフィンをぶっ殺したからおあいこ。これで対等だ。二人の真の友情はここから始まるんだよ。そして、友殺しの悪人はガウェインが誅した。うーん、悪が滅び、友情が育まれる理想的な展開じゃないか。この後、二人が出会えるのか知らんけど』
『この強制自害魔!』
『この人類の恥!』
『この悪意の塊!』
『このきちくげどー』
『ふ、二人の友愛を育むキューピッドに、この罵声だよ』
『こんな邪悪なキューピッドが何処にいますか―――――!!』
『あ、石だ。蹴ーろぉっと』というくらいの気軽さで、確実に勝てるとはいえ、二人の友情を利用した策を実行した虎太郎は全く悪びれもしない。
この後、ジャンヌの旗による体罰が炸裂したのだが、彼の態度は全く改善されなかった。こんな程度で改善されるのなら、誰も性格矯正を諦めていない。
「――――とまあ、大体こんな感じ」
「そりゃ、さ。私達も生前、色々と悪事を働いたけど、さ……」
「これ、もう、言い逃れできないと申しますか……」
「アタシも結構な悪党だって自覚はあるけどねぇ、流石にアンタほどじゃないよ……」
「ふー、女海賊二人と星の開拓者に褒められちゃったぜ」
「「「いやいやいや、どう考えても褒めてない!」」」
三人の女海賊の悲鳴が迸る。
今日も今日とてカルデアは平和である。何せ、虎太郎による自害ではなく、サーヴァント自らによる自害しかなかったのだから。
エドワード・ティーチ。
☆2ライダー。不憫枠。準戦闘&輸送担当。んんwwwww一方的ですぞwwwwww
第二章で大暴れしたカリブ海の大海賊。通称、黒髭。
カリブ海の海賊自体がオタク気質なのか、黒髭が現代の知識に染まりオタクと化したのかは謎。前者も後者もあり得そう。公式ェ……。
キャラ的に他者を引っ掻き回すトリックスターなのだが、我らがド外道は精神が揺れることはないので、煽っても、オタクを気取ってもムダムダムダ。
お陰様で、虎太郎&アルフレッドカルデアでは不憫枠に。ドレイクの姐さんをBBA呼ばわりとか冗談でも許されざるよ。
宝具“
その性質を利用して、敵の拠点への強行突撃に用いられる。敵を蹴散らして突き進む様は、正に、んんwww一方的ですぞ!wwww
だが、虎太郎の場合はそれだけではない。使えない、話を聞かないが霊格の高い英霊、神霊を何の説明もないままに突撃させて、自走式の核爆弾にしたりする。黒髭、涙目である。
彼が協力する理由は“もう色々と嫌になったからオタク生活を満喫する”ため。
初め、召喚に応じたのは横から聖杯を掠め取るためだったのだが、虎太郎の外道っぷり、油断のなさに諦めざるを得なかった。
それに他の海賊仲間もいるし、BBAもいるし、マスターがアレでなければ大満足一歩手前の生活を送っているのであった。
最近、一番恥ずかしかったのは今回の件。
その後、御館様は毎日一ページずつ黒髭の部屋にガチの黒歴史を送り届けている。吾輩憤死しちゃうのほぉ! マスターは敵ですぞ(ガチ)!
「このガキ! 今日と言う今日は許せねぇ!」
「ほーら、黒歴史だよぉ? カルデアメンバー全員に配布しちゃうぞぉ!(にっこり」
「やめろください!」
アン・ボニー&メアリー・リード
☆4ライダー。顔芸&不憫枠。準戦闘担当。アン、後はお願い! はーいっ、それでは狙い打ちますわよ!
ある海賊船で活躍した二人の女海賊。史実でも女です。
長身ナイスバディのアン。貧乳リトルなメアリー。因みに、メアリーの方が10歳も年上。
二人一組のサーヴァントという他にはない性質に御館様が目を付けた。これが彼女達の不幸の始まりである。
とはいえ、二人に余り不満はないようだ。自分達のような海賊であっても躊躇なく、そして効果的に使ってくれるから。
何より、失敗しようが成功しようが、頑張ってさえいれば文句は言わない。結果を出せば、信賞をくれるので。
性格的な相性は非常に良い。
かつて海賊として生きた二人には方針など二の次。結果に繋がっているのならば、それで良いとしている。
だが、海賊ですら裸足で逃げ出す虎太郎には戦慄している。今回の話の件もあり、もし自分達が言う事を聞かなくなれば、言葉巧みに自分達が殺し合うように仕向けるのでは、と戦々恐々とした気持ち。
彼女達が協力する理由は“聖杯を手に入れたい”から。
但し、聖杯に託す願望があるのではなく、聖杯と言うお宝が欲しいという海賊的な欲求に従ってのこと。
手に入れてさえしまえば、願いそのものはないので、他の誰かにくれてやってもいいつもりであるようだ。
因みに御館様には喰われて……いる。どっちとは言わないが。どっちとは言わないが。
最近、一番驚いたことは、あのフランシス・ドレイクすら御館様が喰っちまった事実を知った時。
黒髭はそれを聞いた瞬間、泣きながら『BBAはチンポなんかに負けない! BBAはチンポなんかに負けない!』と泣き喚いていた。
が、その後、ドレイクが若干照れながら『チンポには勝てなかったよ……』宣言をして黒髭轟沈。二人は爆笑した。若干一名、微妙に嫉妬しており、夜は燃え上がってしまったらしい。
「ほら、マスター、クエスト行こうよー」
「そうですわ。私達はお宝を求めていますのよ?」
「オレは別に要らない。そのお宝が、オレの苦労を軽減してくれるなら別だけど」
「「そ、それはちょっと……(メソラシ」」
(ふふ、でも、その後で……)
さぁーて、御館様にご褒美を上げたのは、どっちなんでしょうねぇ?
フランシス・ドレイク
☆5ライダー。開けっ広げエロ姐さん。戦闘&輸送担当。アタシの名前を憶えて逝きな! 『テメロッソ・エル・ドラゴ』太陽を落とした女ってなぁ!
生きたまま世界一周を成し遂げた大海賊。海軍でもあり、商人でもあり、冒険家でもあるスーパーマルチサーヴァント。
豪放磊落。宵越しの銭を持たない、男よりも男らしい女海賊。そりゃ、誰も女と認めたがらないわけである。
カルナ、スカサハ、モードレッドに並ぶ戦闘担当。ライダーのクラスだが、宝具を展開していなくても、持ち前の幸運EXと星の開拓者で何とかしてしまう。
虎太郎を上官、自らを副官という立場を取っているので、虎太郎の指示には従い、不在時には独自の判断をしつつも虎太郎の不利益になる行動は決してとらない。
性格的な相性は良好。
アン&メアリーと同様に生前は悪党であったと自認しているので、虎太郎のド外道な方針にも従える。但し、戦慄は隠しきれない模様。
生前は軍で上官としばしば意見の対立があったので、他者を信用も信頼もしていないが自身の策や考えを考慮に入れる虎太郎に満足している様子。
彼女が協力する理由は“マスターが良い男”だから。
手段や策はド外道。されど願いや守ろうとするものは自身の嫌う平凡で退屈なもの。
それでも多くの自己矛盾と向き合ってなお狼狽も動揺もせず、生まれ持った正義感に従うでもなく、自ら定めた使命を全うする姿にこそ、彼女は“良い男”と認めたのである。
生前には出会うことのなかった男に、興味を惹かれた。今日も今日とて、彼女は銃を手に取り、舵を握り、上官と仲間に背中を預けて戦うのであった。
御館様に喰われているよ!
史実で男だろうが、この世界では女だ。男よりも男らしい? だから何だ! 女だろうが!
初めに手を出したのは姐さんの方。あの聖女や影の国の女王すら喰っちまう男がどんなものか気になったから。
彼女も性豪で、生前は気に入った男を喰っちまっていたのだが、今回は逆に喰われた。性欲の強さなら負けないが、性技で劣っていたのである。チンポには勝てなかったよ。
でも、本人は満足気。未知の体験に心を震わせるのは冒険家としての本能なのか。これで、御館様は『太陽を落とした女を堕とした男』という称号を手にした。
最近、一番ドキンチョしたのは、御館様に組み敷かれて絶頂に達した時。
顔の傷や、快楽で蕩けているであろう自分の顔を見られていることが急に恥ずかしくなって、顔を覆うも両手を押さえられて全てを見られてしまった。
流石、御館様だぜ。流石、エロゲ主人公。これは性技の味方ですわ。ドレイクの船の乗組員は卒倒間違いなし!
「や、やめとくれよ。こんな、アタシの傷っ面を見て、何が楽しいのさ……」
「普通に楽しいけど? なあ、アンタの女、全部見せてくれよ」
「ひぅっ! ひ、人の顔の傷なんぞ舐めやがって、この――――ん、くぅうぅんんっ♡」
フィン・マックール
今回の被害者その1。
ケルトのスーパービッチに仕えるのは不満だったのだが、ディルムッドと仲良く戦場に出れたことには大満足していた。
晩年の姿ではなく全盛期の姿による召喚なので、基本的に善の人ではあった。
もし、虎太郎達や西部側の陣営が自身達に打ち勝てないようであれば、狂王を自ら討つつもりであったようだ。
のだが、生憎と相手をしていたのがド外道だったので、自らの志からディルムッドの友情まで全てを粉砕されてしまう。
良い事があったとするのなら一つだけ。
ディルムッドから許されていないと思い込んで座に還ったため、今までの自分や周囲の不幸が、あれ? これ、私が悪いんじゃ……? と思うようになった。
凄いな、御館様。あんなナルシストに自分にも悪い所があったと思わせるなんて。いやぁ、流石主人公ですわ。
ディルムッド・オディナ
今回の被害者その2。ディルムッドが死んだ! この人でなし!
ランスロット自分から自害事件。トリスタン悲しみの余り自爆テロ自害事件に続く、三人目の自分から自害枠の幸運E。
フィンと再会し、過去の蟠りもなくなったと喜んでいたのだが、敵に回したのがド外道だったのが運の尽き。
二度目の生では、今度は自分がフィンを殺してしまった。そりゃ、血涙も流すってもんである。
しかも、やらかした当人が、これでおあいこ、だからノーカンと主張しているのである。そりゃ聖杯に呪いあれって望むよ、災いあれって望むよ。
フィンの最後の台詞は、自分が悪かったと認めて、ディルムッドに僅かでも罪悪感を抱かせまいとしての冗談はよしこさんだったのが、全然通じていない。
この二人、気が合うし、仲もいいのだが、絶妙な加減で噛み合っていないのである。流石の幸運Eである。
そもそもケリィという外道相手にすら良いようにやられたのだ。その外道を言葉だけでガン泣きさせるド外道は相手にしちゃいけないよ、君ぃ。
黒髭潜ってきた修羅場ならまだしも、御館様の他人に対する興味関心の無さには勝てなかったよ&ディルムッド無残! の話でした。
そりゃ、必要な時だけ仮面を被って、死んでも本性を明かさない男には黒髭の考えはお見通しである。相性は最悪ですわ。カリブの大海賊涙目。
そして、ディルムッドは血涙流して自害するレベルで憎まれている模様。
まあ、残念ながら当然だね。念願叶ったところにアレだからね!