※この作品はR-18です。

「もしも苦労人がカルデアのマスターだったら」   作:HK416

49 / 50

どうしよう、イベント辛いなぁ、これ。モチベを維持するのキッツイ。
イベント礼装一枚も落ちひんし。これ終わるまでに揃えられるかなぁ。まあええ、回転数が全てじゃ。回すぞ回すぞぉ!!

久しぶりに筆がのってる。
そして、BBちゃんが副題を乗っ取る。

さあ、エロの前にBBちゃんの逆襲が始まるぜ!




『BBちゃんの逆襲/電子の海で会いましょう……なんて言うと思いましたぁ? こっちからカルデアに乗り込んであげますよぉ!』

 

 

 

 

 

「ビーストⅢ/(ラプチャー)、霊基の完全消滅を確認」

 

「て、こぉ~、とぉ~、はぁ~……?」

 

「未帰還者が一名ありますが、はい、我々の勝利です! 皆さん、お疲れ様でした!」

 

 

 BBの作成した学び舎の中で、一同から歓声が上がった。

  

 最も霊基に深い傷を負ったマルタ、傷の様子を見ているロビンとエルキドゥ。

 リップが細心の注意を払ってキャットと鈴鹿に腕を回し、二人もリップと共に互いの身体を抱き合っている。

 ガウェインとトリスタンは皆の、また互いの健闘を讃え、微笑んでいた。

 そんな中、虎太郎とメルトリリスは神妙な面持ちをしていた。未帰還者の最後を思っているのだろう。

 

 

「ねぇ……あの黒いアーチャーは……」

 

「気にするな。アレは自分で決めた自分の責務を果たしたんだ。それに、敵の完全な死亡を確認するのは当然のことだろう?」

 

 

 未帰還者はエミヤだった。

 霊基の損傷が激しく、現界できていたのも奇跡的。

 独自に手にしていた髄液(アンプル)とBBに託されたリソース、何よりも当人の意思だけで持っていたようなもの。

 それを押して戦っていた。キアラへの憎しみからではなく、自ら選んだ道――悪の敵(正義の味方)の義務として。

 

 虎太郎は、確かに見ていた。彼の表情をではなく、彼の背中を。

 身も心も見る影もなく傷ついてはいたが、微笑ましくも逞しい、理想を背負い立つ者の背中だった。

 

 

「何よ、ソレ。男同士の共感(シンパシー)ってわけ? 気持ち悪い。貴方とアイツって辺りが特にね」

 

「オレは共感なんぞしないさ。だがまあ、男の人生なんぞ独り善がりで報われないもんだ。だったら、最後は清々しく終わった方がいいだろう?」

 

 

 復讐を果たした満足ではなく、理想を追って去っていったのだ。

 少年は何時だって暗闇の荒野を進んでいく。ならば、正義の味方とて同じだろう。何せ、理想(ユメ)を追い求めるのは、少年だけの特権だ。

 

 エミヤは、その過程で此処に立ち寄っただけ。たまたま道が交わり、その背中を見送った。

 決して明るい未来など彼にはなく、その道は暗黒に閉ざされているが、せめて見送る者は晴れやかに送り出してやらねばなるまい。それが餞別というものだ。

 

 

「それで、暫くしたら特異点からの退去が始まるだろうが、カルデア(ウチ)に来る物好きはいるか?」

 

 

 今回の件で、よく分かったことがある。

 逃げた魔神柱を倒したとしても、2017年以降の未来は、まるで安定していないということだ。

 人理焼却という引く波による、人理再編という寄せる波が大きいだけかとも思ったが、違うとしか考えられない。

 

 マリスビリーの残したシステム・アニムスフィア。

 未来へのレイシフトを意図的に封じていた点。

 カルデアには、アニムスフィア家には、オルガマリーすら知らない秘密が、まだ隠されている。

 

 どのようなどんでん返しが待っているか分からない以上、戦力は増強しておいて損はないだろう。

 

 

「私はパース。今回の共闘だって苦渋の決断だったし。アンタに扱き使われるのは今回だけね」

 

「そうですか、レディ・スズカ。残念です…………トリスタン卿、貴方は?」

 

「………………」

 

 

 もともと性格的な相性の良くない鈴鹿は、にっこりと厭味ったらしい笑みを虎太郎に向けてハッキリと断った。

 これには虎太郎も、ああ、良かった、とでも言いたげな笑みを浮かべて応える。

 バチバチと見えない火花が二人の間で散っていた。

 

 ガウェインに促されたトリスタンは、僅かに迷っている素振りを見せた。

 今回、生前は果たしきれなかった騎士としての務めを果たしきれたのは、虎太郎あってこそ。

 サーヴァントとしての役割は第一義であるが、それに伴って騎士として仕えるのも悪いものではない、と思い始めていたのかもしれない。

 

 しかし――――

 

 

「それに――――」

 

「あ、バカ……」

 

「聖槍を持つ我らが王やベディヴィエール卿もいることですし」

 

「私も遠慮しておきます! 私の役割は此処まで! 十分な働きであったと自負していますので!」

 

「……そ、そうですか。残念ですね」

 

 

 ――――ガウェインの不用意な一言に、高速で拒否が入った。

 

 円卓において、誰よりも自分を恥じているのはトリスタンだ。

 いや、ガウェインやランスロットも同じように様々な後悔を抱いているのだが、二人は王の下で引き起こした己が失敗が原因である。

 対し、トリスタンは苦しんでいた王の下から、王の苦しみを理解せずに見捨てた裏切り者、と自認している。

 ある意味において、トリスタンは二人よりも後悔の度合いが大きい。

 

 合わせる顔がなく、また後悔を払拭できるほど、精神的に強くはなかった。

 だから、エルサレムにおいても円卓同士で殺し合い、悲しみでもう戦えないと分かっていながらも、王を二度とは裏切らないという思いから“反転”のギフトにまで手を出して外道に堕ちた。

 

 それにガウェインも悪かった。

 彼の親友たるベディの名前を出しながら、叛逆の騎士であるモードレッドの名前を出さなかった。

 これでは居た堪れない。トリスタンにしてみれば、ガウェインとベディは最後まで王に尽した忠節の騎士なのだから。 

 せめてモードレッドの名前を出していれば、彼の心境も多少の変化はあったのだろうが。

 

 

「では、私は行きますね! ムーンセルからは案件を解決後、消滅されているように命令されていますが、このBBちゃんが潔く消えるわけがありません!」

 

「その前に、お前にはやることがあるだろうが、もう一人のお前――――キアラから再摘出されたBB/GOを倒してからだ」

 

 

 そう。BBには、まだやり残した仕事がある。それがBB/GOを倒すこと。

 キアラに手を貸すわ、エミヤを焚きつけるわ。BB以上に厄介で危険なAIと言えよう。

 BB/GOの目的が何なのかは定かではないが、キアラに勝って貰っても困る上に、BBに出し抜かれるのも困るような目的。碌でもないことだけは間違いない。

 

 

「むっふっふ~、ご安心を! キチンとプランを考えていますので」

 

「ああ、そうか。なら良かった。カルデアはこの件から手を引く」

 

「…………は? あの、セン、パイ? 此処は、頑張りに頑張った後輩に、快く手を貸す場面じゃ……」

 

「知るか。マルタを休ませてやりたいしな。自分のケツくらい、自分で拭きな」

 

「ちょ、ちょちょちょ! 待って! 待ってください! 別に、もう一人の私が暴走しているのは、私のせいじゃ……!」

 

「そうだね。でも、オレなら手を組むと決めた段階で、後の暴走を未然に防ぐ手を打っていた。目の前の大事に拘って、後の小事を見過ごす阿呆はオレのカルデアには必要ない」

 

 

 BBが虎太郎に積極的に手を貸したのは、その能力を認め、BB/GOとの対決に使えると踏んだからだろう。

 諸々の目論見やら悔しさを呑み込んで手を貸した努力やらが破綻し、BBは頭を抱えてしまった。

 

 

「BBちゃんの色々な努力が台無しにー?!」

 

「そうだよ。オレは他人の努力を踏み躙る事に定評のある男だよ」

 

「いやいやいやいや、でもですねぇ!?」

 

「さーて、けぇるべけぇるべ(ガン無視」

 

『えぇーーーーーー!? このまんまーーーーー?!』

 

 

 BBの泣き言なぞ聞きたくないらしく、虎太郎はガン無視。その場に居たほぼ全てが驚きの声を上げた。

 

 虎太郎にしてみれば、最終試験だ。

 BBの性格は好かない。ひたすらに面倒な、人理に関係しない案件でなければ、決して手を組まない相手。

 性格的な相性すら押し退けて手を組みたくなるような、能力を見せてみろ、ということ。虎太郎としては、このままBBに消えて貰っても構わないのだから。

 

 

「あー…………大将、なんだ。オレの本来の霊基はカルデアの方にあるわけだから、こっちの霊基を放棄すりゃ、そのまま戻れる公算も高いよな?」

 

「まあ、そうなるか? 今回の案件は他の特異点のような、カルデアからの再召喚ってわけじゃない。何とも言えないが、可能性は高いかもな?」

 

「じゃあ、こっちに残ってBBに手を貸しても問題ねぇよなぁ?」

 

「……ろ、ロビンさん!」

 

 

 ロビンの意外な提案に、虎太郎は片眉を上げ、BBは泣きそうな表情で彼を見た。

 

 元よりロビンは面倒見が良い。

 生前は、敢えて守りたかったものを守るために人の輪からは外れ、名も顔も隠して戦い続けたが、元来の性格はそういったものなのだろう。

 それに月世界で召喚された時からBBとは縁があった。冷徹で現実的な意見を口にするが、何のかんのとお人好しなのが、彼の魅力の一つだ。

 

 

「…………オレとしちゃ、貴重で有能な斥候を失う可能性は極力を減らしたいんだがな。何だ、パシリ根性でも染み付いたか」

 

「違ぇーですよぉ! このポンコツAI、追い詰められると何しでかすか分からんですし。あと、手を貸しておいて貰って、このままじゃ義理に欠く。それは大将の方針じゃねぇだろう」

 

「ふむふむ。…………じゃあ、私も手を貸すし! このまま消える前にもうひと暴れしましょうか!」

 

「では、私も共にしましょう。これだけの戦力があれば何とかなりますね、BB?」

 

 

 ロビンに釣られてか、鈴鹿とトリスタンもBBに力を貸すようだ。

 放っておけない人格というのも立派な能力の一つ。それに何も、BB一人で全てをやれとは指定していなかった。

 虎太郎は物好きと思いながらも、彼等の助力を否定はしなかった。

 

 

「それよりもメルトとリップ、ウチクルー?」

 

「――――ハッ?! メ、メルト! しっかり答えなきゃ、駄目だよ!」

 

「――――別に。別に、見返りが欲しくて、戦ったわけではないもの。私は」

 

 

 虎太郎のドライさにフリーズしていたリップであったが、声を掛けられてようやく再起動を果たし、メルトを見た。

 しかし、メルトは如何なる心境であったのか。照れていただけなのか、迷っていたのか、答えない。

 

 彼女の頑なさに、リップはもうと頬を膨らませたが、虎太郎は気にした様子はなかった。

 

 

「キャットはどうする?」

 

「あたしか? あたしは別にカルデアに行きたいわけでもないし、お主に力を貸したいわけでもないからなぁ。もうお主の指示で戦うのはゴメンだワン!」

 

「……え? キャットさん、来ないんですか?」

 

「――――うん?」

 

 

 キャットのつれない返事に、ショックを受けたのは他ならぬリップだった。

 何せ、最も仲が良く、キャットもまたぶっ飛んだ理性で妹のようにリップを猫可愛がりしていたのだ。

 

 リップの落胆は如何程か。見る見る内に肩を落とし、ショボくれていく。

 出会いがあれば別れがあるのは常なれど、絆を深めた者との別れは寂しくて仕方がないと言った風情だ。

 

 

「むぅ…………虎太郎よ、カルデアにメイドは足りておるか?」

 

「炊事洗濯係は大歓迎だ。オレの場合、お前には戦闘をやらせるよりも、そっちをやらせていた方が楽でいい」

 

「決まりだな! このキャット、リップちゃんの守護獣としてカルデアのメイドとなろう。如何せん、騎士ガウェインはスケベ。虎太郎はド変態と来ておる、誰かが守ってやらねばナ……!」

 

「やったー! ばんざーい!」

 

 

 輝く笑顔で巨大な両手を振り上げ、万歳三唱をしてみせるリップ。それほどまでに嬉しい。

 うむうむ、素直は可愛い、とキャットは顎を擦りながらその姿を眺めている。

 

 いい落とし所ではあるだろう。

 基本的に、キャットとは彼女のマスターを人として眠らせてやるまでの関係だった。

 特異点攻略へと共に向かうのは不安、戦闘を行わせるのも不安。

 ならば、カルデアの生活水準を一ランク上げることに貢献してくれるならば、虎太郎としてもありがたい。

 

 日々の温かい食事は癒やしと活力となる。

 サーヴァントである英霊には不必要なものではあるが、あるならあった方がいい。

 それで余計な軋轢が解きほぐされるなら、万々歳である。

 

 

「うむうむ! 攻めのメルトに守りのリップちゃん。そして、帰る場所を守るこのアタシと来た! 三騎のアルターエゴが揃えば無敵と言っていいのでは……?」

 

「私をか――――いえ、待ちなさいキャット。何か、とても、聞き捨て、ならないことを……」

 

「うん? 憎き本体から不要なものと切り離された一尾がこのアタシ。霊基はバーサーカーだけど、アルターエゴだよ?」

 

「ちょっと待って。いや、いやよ、やめて! そんな事実、知りたくなかったんだけど……!!」

 

「あ、やっぱりメルト、気付いてなかったんだ」

 

 

 思いもよらぬ事実に、メルトは情けないほど狼狽えていた。

 プライドの高いメルトのこと、キャットと同類などと思われるのは耐えられない。

 だが、事実は事実である。粛々と受け入れるしかなかったのか、げんなりとした表情で首を振った。

 

 けれど、カルデアに行くとだけは言わなかった。

 

 自分を怪物だと理解しているから人と分かり合えるとは思っていない。

 自らの愛のカタチが、恋をした人にとって、どれだけ危険なことをよくよく理解しているからこそ、恋した人の為に首を縦に振る訳にはいかない。

 

 そんな当然で、だが意固地な態度に虎太郎は苦笑を漏らしながらキザったらしく告げる。

 

 

「なんだ? 舞台から無理矢理にでも攫ってほしいかい、プリマドンナ」

 

「――――――ッ」

 

 

 胸中を見透かしての一言にメルトは頬を朱に染めて虎太郎を睨みつけたが、肩を竦めるだけ。これでは暖簾に腕押しだ。

 

 羞恥と苛立ちと妙な安心感に鼓動が高鳴る。

 

 メルトの悩みなど下らない、と虎太郎は笑ったも同然だ。

 何せ、彼は知っている。どれだけの怪物性を持とうが、どれだけ完璧な存在であろうが、メルトはもう以前の自分には戻れないと。

 

 自分の意思で、快楽の水面から飛び立った。

 あの時、教会でたまたま手を取ってくれたというだけの理由で、振り回されながらも相手に尽し、自分の心と折り合いをつけ、相手の心を慮る苦しさと悦びを知った。

 

 命懸けの恋をした。本当の愛を知った。他人の存在にときめいた。

 そんな少女で、ましてや有能であるのなら、虎太郎がその手を離すはずもない。

 

 

「…………はぁ、もう分かった。私の負け、貴方の勝ちよ、マスター。何処へでも、何処までもついていくわ。貴方と一緒に、行けるところまで、ね」

 

 

 愛して欲しくて戦ったのではない。

 彼女は、恋をするために快楽の湖から飛び立った。

 これは、飛び立った先がカルデアだっただけの話。

 

 けれど、メルトの顔には、少女そのものの笑みが輝いているのだった。

 

 

 

 

 

―――――

――――

―――

――

 

 

 

 

 

『お帰りなさい。今回もいつも通りの戦果のようですね』

 

「当然だろ――――しかし、何があったんだ?」

 

 

 BBの手によって特異点から戻った虎太郎をレイシフトルームで出迎えたのは、相棒たるアルフレッドだった。

 しかし、カルデアのおかしさに気づき、首を捻る。

 

 まず、いの一番に出迎えるであろうマシュがいない。

 彼女は自分が虎太郎のサーヴァントであることを誇りに思っている。

 そんなマシュが戦いの助けにもなれず、その上で出迎えすらなしとは異常だろう。

 

 そして、レイシフトルームを俯瞰できる位置にある中央管制室では、ロマニとダ・ヴィンチが談笑しながら何事かの調整をしていた。

 彼等は戦いのバックアップが主な仕事。それが出迎えもなく、いつも通りの仕事しているなぞ在り得ない。

 

 

「BBの奴、とんでもない裏技を使ったようね――――――機械仕掛けの神なんて言うから、どんな名前負けしている奴かと思ったけど、とんだ思い違いだったわ。BBがチートなら貴方はバグね、アルフレッド」

 

『メルトリリス様、パッションリップ様、タマモキャット様の霊基基盤(キューブ)の受け入れ完了。名前負けは否めないかと、今の私は虎太郎の相棒ですので』

 

 

 虎太郎が背後を振り返ってみれば、メルトとリップ、キャットの三名が変わらぬ姿のまま立っていた。

 

 何事かと話を聞いてみれば、BBは特異点での一件を虚数事象として全てなかったことにしたらしい。

 セラフィックスは既に解体済み。職員達も皆無事であり、各々が別々の道を辿っているそうだ。

 唯一の例外が、ゼパルとキアラの最後。この二人だけは、BBの救済から弾き出されたとのこと。

 

 あの特異点での事実を覚えているのは、当事者たる虎太郎とサーヴァント達。観測と記録を行い、BBから三人の霊基基盤を預かったアルフレッドだけ。

 

 虎太郎は当然か、と思う反面、余計な事を、と嘆息した。

 これでマリスビリーの遺産が一つ消えたこととなる。彼とアニムスフィア家の所業と狙いを追い難くなったことを意味する。

 BBとしても2017年以降の未来を知ることは、アニムスフィアの秘密に簡単に辿り着くことは避けたいらしい。

 

 ともあれ、落胆はない。

 いつも通りだ。来るかも分からないものに徹底して備え、地道な調査を繰り返して情報を得るのみである。

 

 差し当たって必要なのは、カルデアの案内と新たなサーヴァントの紹介だった。

 これから三人はカルデアで生活することになり、多くの仲間と生活を共有する。

 

 その為に、カルデアの施設とルールを覚えて貰わねばならない。

 生憎、彼女達を任せられる人物は己以外に存在せず、虎太郎は自ら買って出た。

 

 カルデアの内部を物珍しそうに眺めるリップとキャット。

 微妙な利便性の悪さを上から目線で指摘してくるメルト。

 

 そんな三人を伴って、まず始めに彼女達に割り当てられる自室へ案内し、後は施設を回りながら擦れ違ったサーヴァントに新たな仲間を紹介していく。

 

 

「虎太郎! それにお三方も! 問題ないようで何よりです!」

 

「ガウェインさん!」

 

 

 その途中、ガウェインとも合流した。

 聞けば、既にエルキドゥやマルタとも話をしているようで、三人ともBBの荒業及び裏技に呆れ返ったらしい。

 

 時間帯は昼も中頃。

 この時間帯に皆が集まっているのは食堂ということもあり、キャットの新たな職場の見学も兼ねて食堂へと向かった。

 

 

「ほほぅ、食堂も厨房も中々の広さ。これならば、リップちゃんへのお料理教室が開けるナ!」

 

「え、で、でも、キャットさん。私の手はこんなですし……」

 

「あー、メルトもリップもそんな手足じゃ生活しにくいな。アルフレッドとメディア、スカサハに相談して、霊基の書き換えが出来るか相談してみるか」

 

「呆れた。そんなことも出来るわけ? ほんと、反則にも程が有るわ」

 

 

 人の数こそ少ないものの、活気溢れる食堂の様子にキャットは満足げだ。

 そして、メルトとリップは思いもよらぬ特典に、目を丸くしている。

 SE.RA.PHでの一件からアルフレッドの性能は薄々と、実際に見てからはBBですら敵わない存在であると認めていたが、流石に予想外だったようだ。

 

 

「さて、じゃあまずは――――」

 

『センパーーーーーーーーーーーーイっ!!』

 

『ちょ、ちょちょちょ! 君、誰ぇ!?』

 

『サーヴァントのようだけど……英霊、じゃないようだね? うーん、興味深い!』

 

『うぉい! BBの嬢ちゃん、いきなり何やってんのぉ、オタクぅ!?』

 

 

 その時、カルデアの館内放送からBBの声とそれを止めようとしたロマニとロビン、一歩引いた視点で眺めているであろうダ・ヴィンチの声が響き渡った。

 

 サーヴァント達は聞き慣れぬ声に、何事だとスピーカーのある天井や壁を眺める。

 自身のアイデンティティを揺るがしかねない一言に、ガタッ、と食堂の椅子から立ち上がっていた。

 

 仕事の早いことである。

 どうやら、もうBB/GOを倒してきたらしい。いや、あの特異点では時間の概念も曖昧なものなのだろう。

 恐らくはハリウッドの長編映画のような冒険活劇を越えてきたに違いない。BBとロビンの声の疲れ具合からも、何となくそんな気がしないでもない。

 

 

『はぁ……はぁっ……BBちゃんの逆襲は、これからですよぉ!!』

 

「はぁ? BBの奴、何を言っているのかしら?」

 

「負け惜しみではないのか、ワン?」

 

『センパイとガウェインさんの失言を垂れ流しにしてやります!!』

 

「……はい?」

 

「…………………………ハッ!? ロビン、アル、そいつを止めろぉぉぉぉおおぉぉぉぉおおぉぉっ!!!」

 

 

 皆がハテナマークを頭上に浮かべる中、一足早くBBの思惑に気付いた虎太郎は叫び声を上げるが、もう間に合わなかった。

 

 

『いやぁー! ないわー! 年増とかないわー! オレでも食指が動かないわー!! な、ガウェイン!!』

 

『まさしく! 年上の妻など二度とゴメンです! あと十年は肉体的にも精神的にも若返ってから出直してきて頂きたい!』

 

 

『何やってくれてんのぉ、オタクぅぅぅうぅっっ!?!』

 

『『ガウェインと腐れ外道ェ……』』

 

 

 さあ、地獄の幕開けだ。

 キアラに向かって放たれた筈の虎太郎とガウェインによる暴言が、BBの悪意ある編集によってカルデア全域に垂れ流されたのだから……!

 

 虎太郎は目頭を押さえ、ガウェインは大きく口と目を見開いている。後ろの三人は、笑えばいいのか憐れめばいいのか。

 食堂に居た女性陣は一様に鋭い視線を向けている。あたかも女を年齢で判断するなど最低だ、とでも言わんばかりに。

 食堂に居た男性陣は、これから二人の身に起きるであろう悲劇に、哀れみと呆れを向けている。

 

 時が止まってしまったかのような空間の中、ゆらりと食堂に来た一同に向かう者――――いや、ガウェインに向かう者が一人。

 

 本日の食事当番であったラグネルである。

 I ♡ Gawainと自ら刺繍したであろうエプロンを脱ぎながら、近づいてきている。

 

 

「………………ガウェイン様」

 

「ら、ラグネル。ちが、違うのです。これは編集がされています! 私は君を決して――――」

 

「いい、のです。私との婚姻は、貴方様の望まれたものではありませんでしたから……」

 

「い、いえ、確かに私にとってそれはトラウマですが、君は良き妻として、私を――――」

 

「今まで、お世話になりました――――――ガウェイン様のおっぱい大好きバスターゴリラァっ!!」

 

「――――――――(チーン」

 

 

 わっ、と泣きながら食堂を走り去っていくラグネル。後に残されたI ♡ Gawainのエプロンが痛々しい。

 そして、ガウェインは更々と赤い砂とメロン色のキューブに還元されていく。

 

 

「き、騎士ガウェイーーーーーーン!!」

 

「ガウェインさん! こ、呼吸をして下さい! いえ、それどころか、これマナプリズムになっちゃってますぅ!?」

 

「バッ! “座”に還ってる場合じゃないわよガウェイン、追いかけなさい!!」

 

「――――――――――ラグネェェェェェェェェェェェェェルっっっ!!!」

 

 

 危うく“(じっか)”に戻りかけたガウェインであったが、メルトの言葉に再起動を果たした。

 身体を翻し、去っていったラグネルを追い掛けるために地を蹴る。閉ざされた食堂の自動開閉ドアをショルダータックルでぶち破り、カルデアの何処かへ消えたラグネルを追いかけていった。

 

 被害。ドアの修繕費数百万、及びラグネルの心の傷、キャメロット一の鴛鴦夫婦(ガウェイン自称)破綻の危機。

 

 ガウェインの武運を祈りながら、虎太郎は前に進みでる。

 其処では、一人の女性が待ち構えていた。

 

 

「何があったか知らないが……やらかしたねぇ、アンタもガウェインも」

 

「………………はい」

 

 

 両腕を組んで呆れ顔をしていたのはドレイクであった。

 少なくとも彼女も肉体年齢的には、虎太郎よりも年上である。

 

 だが、怒りと言った感情はまるで見受けられない。

 事実として年増だろうしねぇ、とでも考えているのだろう。それに普段から黒髭にBBA、BBAと呼ばれている。この程度では動揺しない。

 

 

「あたしゃ気にしないが、分かってるね」

 

「…………はい。スカサハとかコアトルとか此方に飛んできてるんと思います。ブーディカとか泣いてるかも」

 

「だねぇ、一番の爆弾はスカサハだ。アイツに年齢の事でイジるのはタブーさね。コアトルは、女神様だからちょっと分からないね」

 

「…………そっすね」

 

「アタシが何を言いたいか、何をするか分かるね?」

 

「オナシャス……!」

 

「よぉし! いい返事だ! 歯ぁ喰い縛んなぁ……!!」

 

 

 瞬間、虎太郎の身体は宙に舞った。

 ドレイク必殺のボディーブローが決まったからである。

 

 事の一部始終を見守っていたメルト、リップ、キャットの三名には、自分達の頭上を凄まじいスピートで飛んでいく虎太郎の姿がスローモーションに見えたような。

 

 スカサハやコアトルなどが今の放送に如何なる感情を抱こうとも、先に制裁を加えられているのなら、出鼻を挫かれたようなもの。その勢いも削がれるだろう。

 ドレイクはそれを見越して、虎太郎を殴り抜いたのである。

 

 ガウェインがぶち抜いたドアの上部の壁に減り込むほどの勢いで殴られた虎太郎は、血塊を吐き出しながら、地面へと叩きつけられた。

 

 被害。壁の修繕費数十万、及び虎太郎の肋骨胸骨の全壊、内臓破裂複数。

 

 

「ほん……と……、オレ、…………こんなん……ばっか――――――ガクっ」

 

『あっはっはっは! センパイのボロボロになってる姿、初めて見ましたよ! いい気持ちだッ!!』

 

 

 こうしてセラフィックスでの幕が閉じ、新たな幕が上がった。

 『虎太郎 VS BB オタク等ちったぁ仲良く喧嘩してぇ! 大戦』の幕開けであったが、それはまた別の話。

 

 カルデアは新たな仲間を迎え入れ、喧騒の中で日常を過ごしていく。

 多くの英霊、怪物、そして人も加えた守護者達は、変わらずに人理を守っていくのであった。

 

 





というわけで、アルターエゴ三人衆、ようこそカルデア&ガウェイン夫妻、とばっちりで離婚の危機&BBちゃんの逆襲が成功し、杉谷選手になる、でした。

御館様とBBちゃんはトムとジェリーの関係。なお、御館様がジェリー、BBちゃんがトムの模様。これは痛い目を見る比率と力関係からね。大抵は御館様がやりたい放題だけど、時々酷い目に合わせるのがBBちゃんよ。

あ? ガウェイン? 完全にとばっちりだよ?

よし、これで次回はメルトのエロやでぇ! 気合入ってきたぁ!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。