「もしも苦労人がカルデアのマスターだったら」 作:HK416
うーむ、万年種火不足、強化素材不足で悩まされる我がカルデア。
今回の復刻イベで逆鱗は回収出来たからいいものの、角も足りない! 世界樹の種も足りない! どうしろと!
エリちゃんイベに期待するしかないか。もうマラソンは嫌なんや!
では、今回はスカサハ師匠がメインです。
その導入部なので、次回はエロに行ける! …………といいなぁ。
では、どぞー
『死を望む女の欲望 前編』
「………………う」
産道を経由し、世に生まれ落ちる苦痛は如何程か。
数百に分断した意識がパレットの上で絵の具の如く掻き回される猛烈な吐き気。
心の臓腑から脳髄の芯まで犯す激烈な痛みに、目覚めたばかりの意識で虎太郎は考えた。
瞼を開けば、やたらと眩ゆい光を放つ照明が、やたらと遠い鋼鉄の天井が見えた。
――――気を失っていたか。
目覚めた瞬間から滞りなく展開される思考によって、一つの答えが導き出される。意識を失う直前から遡って一時間ほどの記憶が抜け落ちていたからだ。
「……目を覚ましたか」
天井を映すばかりだった視界に、見慣れたスカサハの顔が上下さかしまに現れる。
彼女の無表情は鳴りを潜め、普段は見られない表情をしていた。そして、後頭部に感じる柔らかな感触に、膝を借りているのだと思い至る。
其処で、蓋のされていた記憶が蘇った。
事の起こりは数時間前。
虎太郎自身ですら大胆かつ無謀、無理を通り越して愚行であると理解しながら、スカサハに実戦訓練を申し込んだ。
スカサハにとって虎太郎は弟子ではなく、あくまでも
本来であれば、にべもなく断られて終わりだが、今回に関して言えば、二つの理由から受け入れられてしまった。
一つは虎太郎自身が、スカサハの興味を引く対象であったこと。
彼女の見識、観察からしても、虎太郎の潜り抜けた鍛錬と修羅場は地獄そのものであったが、決定的に才能というものが足りていない。
確かに、策と暗躍といった行為に長けていることは認めているが、それだけでは説明のつかない強さを身に着けているのもまた事実。
その真髄、その強さの源泉を見極めてみたい、と思いのままに、彼女も珍しく自身の立ち位置を曲げて、訓練に応じた。
もう一つは、スカサハが“死”を体験した後だったこと。
本来、“スカサハ”などという英霊など存在しない。
そもそも、本来の彼女は神霊に近づきすぎ、その“
栄転と言う名の世界からの追放。影の国ごと世界の外側に至った彼女の魂は長い月日の中で既に死んでおり、性根は冥府の魔物のそれとなんら大差はない。
だが、人理焼却の影響によって影の国もまた焼き尽くされた。疑似的な死へと至った彼女は、全盛の、或いは往年の、もしくは人間らしい精神を取り戻している。
つまり、ケルトということだ。
集団よりも個人を。社会性よりも信念を。醜い生よりも華々しい死を良しとし、戦こそを尊ぶが、それ故に逞しくも美しい蛮人。
ある意味で、その頂点に立つ女王だ。他のケルトよりも多少の自制は利くが、ケルトはケルトなのだ。
そんなこんなで始まった実戦訓練であったが――――結論から言えば、三分で終わりを迎えた。
だが、三分と侮るなかれ。相手は“影の国の女王”スカサハ。
天地の理を与えられた裁定者、この世全ての財宝を手に入れた英雄王、ギルガメッシュ。
星によって鍛えられた聖剣、聖槍を持ち、ブリテンを守護した騎士王、アルトリア・ペンドラゴン。
己が肉体と技量によって数々の試練を乗り越え、遂には神の席に名を連ねたギリシャ最大の英雄、ヘラクレス。
真紅の魔槍を手に、誰よりも速く、誰よりも美しく、流星の如く英雄たる人生を駆け抜けた猛犬、クー・フーリン。
数多の呪い、神々の策略、人々からの誤解がなければ、単身で三界を制覇すると謳われた施しの英雄、カルナ。
為した偉業――――即ち、知名度という点において、ケルト神話において端役に過ぎない彼女では及ぶべくもない。
だが、亡霊、幻想種、竜種、果ては神霊までもが跋扈した影の国を統べた女王の性能は、彼の大英雄達にも劣らぬもの。
手加減があったとは言え、未だ人の身に過ぎない虎太郎が、三分も持った事実は、凄まじいの一言である。
これは、スカサハにも驚くべき事態だった。
才能のある者ならば、いくらでも見てきた。
セタンタ、フェルディア、フェルグス。
英雄としての人生を駆け抜け、死後、英霊として祀り上げられた彼等にも、若かりし頃というものは、どうしようもなく存在した。
当時の彼等であっても、これだけの時間を持たせられるかどうか。
彼等は生まれた時から強かった。
父と母によるものか。或いは彼等の運命を定めた者によるものか。何はともあれ、彼等には才能という恩恵があった。だから、強かった。
対し、虎太郎は弱かった。
そもそも、数々の才能溢れる英雄を見てきたスカサハにとって、目を見張るようなものなど、あろう筈もなく。
それでも三分もの時間、実戦さながらの訓練を続けられたのは、彼の言う所の“自覚”があったからだ。
自身に何が出来るのか。自身に何が出来ないのか。自身の持てる能力にどのようなものがあり、どのような技術と相性が良いのか。
僅か三分で虎太郎が見せた手段と能力と策は、合わせて百に届こうかというほど。
その多彩さ、その多様さ、その多芸さは、魔境の智慧を得たスカサハでも舌を巻いた。
また、彼は意識の間隙を突くことに長けていた。相手を理解することに長けた彼らしい戦い方だ。
“真正面から正々堂々、不意を討つ”
“千の手段を用意して、その中で一つでも敵に通用すれば上等”
常々そう語ってきた彼の面目躍如と言ったところか。
だが、虎太郎とスカサハの力量差は明白。人とサーヴァントが、一合打ち合えるだけでも奇跡的。この事実は覆し難い。
その上、多彩かつ未知の強さ。面白い、スカサハにそう思わせた時点で、その結末は決定的だったのかもしれない。
互いに、あ、と思った時にはもう遅かった。
真紅の魔槍――クー・フーリンに送ったものに比べて一段古い“
その刀身は真っ直ぐに。魔槍の宿命を果たすが如く、虎太郎の心臓を貫いていた。
『――――――し、しまったっ』
この事態には、さしものスカサハも蒼褪めた。
何せ、こんなド外道であるが、今や人類最後のマスターにして希望なのだ。
それを加減を過って、挙句に面白がって、訓練で殺してしまったなど笑い話にもなりはしない。
慌てて背中から地面に倒れた虎太郎に駆け寄ったスカサハであったが――
『うぉぉおおぉお! やべぇぇぇえええ!! はぁあぁ、死ぬ! これ死ぬぅぅううぅ!!』
『――――――……………………えぇー』
無駄に元気に起き上がった虎太郎が迎えたのであった。
『いや、あの、……お主、人間? ……人間だったはずだな? え……? それで、何故、そんな元気に…………』
『いざって時の為の能力を発動させたんだよ! 早く! 早く治せ! マジで死ぬぞ、これぇぇえええぇぇええええッッ!!』
彼が“左目”の能力で発動したのは、“拒死変換”と呼ばれる魔界に生息する一部の魔獣が持つ能力であった。
特定の部位、特定の臓器が機能を停止した時に際し、他の部位、他の臓器が停止した機能を補う能力だ。
無論、不死になるような能力もあれば、再生力を高める能力も過去に奪ってはいたが、これでは魔槍とは相性が悪過ぎる。
よって“傷を治す能力”よりも、“どのような傷を負っても長らえる能力”の方が、相性が良いと判断して発動させたようだ。
スカサハは呪いの槍の使い手であると同時に、原初のルーンの使い手でもある。
どのように呪いを解呪するのか。どのようにして傷を癒すのか。答えを導くにも、実行にも造作もない。
結局、呪槍の一本を破棄して呪いを解き、ルーンによって裂けた心臓を塞ぎ、失血を造血によって補い、事なきを得た。
心臓が治ったのを見届けると同時に虎太郎は意識を手放し、目覚めに至った、という訳である。
「――――よっ、とぉ」
「余り激しく動くな。傷口が開くぞ」
「げ。何、まだ治ってないのか?」
「まずは傷口を塞いだだけだ。完治には時間が掛かる。医者にかかる必要はないがな」
全身の発条を使って跳ね起きた虎太郎であったが、スカサハの忠告に表情を歪めた。
しかし、直ぐにそれも消えた。目に留まったモノの珍しさに比べれば、苦痛と吐き気、ましてや完治していない事実など遠く及ばない。
――――僅かに沈んだスカサハの表情に比べれば。
確かに、人類最後の希望を殺しかけた事実は、そのまま世界と人類を滅ぼしかけたも同然である。
死を望む彼女と言えど、世界を犠牲にするつもりはない。落ち込むのも無理はない――というのは誤り、というのが虎太郎の見解だ。
どちらかと言えば、これは……
「ああ、何だ。アンタ、自分の弟子を殺したことはなかったのか」
「…………あるさ。あるとも。私の課す試練は、それこそ英雄の身でもなければ越えられん。その過程で命を落とす者も居た」
「でも、自分で手を掛けたことはなかった、と」
「はあ。お前は本当に、嫌になるほど確信を突いてくるな。…………ああ、そうとも。私の元に集った者は皆、立派な勇士だった。私が手を掛ける理由はない」
それこそ、彼女が殺そうと思ったのは、アメリカ大陸を蹂躙した狂王くらいのものだ。
才能溢れる優秀な、何処までも真っ直ぐに勇敢な。
そんな若者を育て上げ、背中を見送ることこそが、彼女の師としての矜持。
その矜持に自分自身で傷を付けてしまった。
虎太郎は弟子ではなく、力を貸し、共に戦うと誓った同盟相手。
だが、彼女からしてみれば、まだまだ未熟でありながらも、まだ見ぬ未知に溢れた存在だ。
そんな相手を一時の享楽で殺してしまうなど、戦士としてならばいざ知らず、導く者としては失格だろう。
自身に膝を貸していた状態のまま項垂れるスカサハに、虎太郎は逆に溜め息を吐いた。
彼にしてみれば、この程度のことは如何と言う事はない。
何せ、生きている。死んだわけではない。生きているだけで丸儲け、という考えが彼の中には確かにあった。
また世界や人類を救う使命感も彼には乏しい。
世界や人類をたった一人の人間が背負うなど、狂気の沙汰。
何よりも己のしているのは仕事だ。成功することもあれば、失敗することもある。
その果てに事を為せなかったとしても、恥じるつもりもなければ、詫びるつもりもない。
元より、既に人類は死滅したようなもの。失敗した所で、誰が自分を責めるというのか。
だから、彼にとってスカサハの消沈ぶりは見当違いも甚だしい。
けれど経験上、このような事態において、下手な慰めは無駄と知っていた。だから――
「よし。そんなに気に病んでいるのなら、一つ頼みがある」
「…………詫びの一つも、ということか?」
「まあ、其処までのものじゃないがな。今夜一晩、付き合ってくれ」
「――――――――は?」
「じゃあ、自室で待っててくれ。よろしく頼むわ。オレは着替えてくる」
――物凄く馬鹿な理由で、自分のペースに巻き込んでしまえばいい。
余計なことを考えてしまうのなら、余計な考えが浮かぶ暇さえ与えなければいいだけの話。実に単純な理屈である。
(……今夜、一晩……ということは、つまり、
(少なくとも、虎太郎のいうことだ。
(いや、待て待て待て。確かに詫びの一つも必要だろうが、そのようなことでなくてもいいだろう!)
(そもそも、
「ま、待て虎太郎、今夜は用事が――――って、居ない!!」
若干、頬を染めたスカサハは虎太郎に再考を促そうとしたのだが、当の本人はトレーニングルームから消え去っていた。
床に点々と続く血痕が出入り口まで続いており、呆けたスカサハを放って退散したことを物語っている。
その現実に、スカサハは無言で頭を抱えたのだが――――その胸に、僅かな期待を秘めていたのは、彼女だけの秘密だ。
なお、この十分後、彼女はジャンヌによる旗の一撃と説教を受けることになるのだが別の話。
その原因は血塗れのままの状態でカルデアを歩き回っていた虎太郎の姿を目撃し、トラウマスイッチの入った沖田が号泣、マリーが卒倒したことにある。
無論、虎太郎もジャンヌによって制裁と説教を受けたのは言うまでもないことだ。
というわけで、御館様またも死にかける&スカサハ師匠、弟子ではないけど気になる人物を殺しかけて落ち込む&沖田さんとマリー、地味にトラウマ再発の回でした。
そんなこんなで、御館様はギリッギリでサーヴァントと戦える程度の強さ。
性能の低さを、能力の多彩さと技術との合わせ技で一段昇華させて戦っている状態です。
なので準備をしっかり整えないと即座に消し飛ぶレベル。
ゲーム性能的には他が三つのスキルなのに対し、コイツだけはスキルの数が倍とか、バフデバフ率が馬鹿みたい高いとか、優秀な回避、ガッツスキル持ち。でも、攻撃力も体力も激低というピーキーなキャラをイメージ。
使い方は、コマンドオーダーでボス戦時に引っ張ってきて、回避で生存しつつバフデバフ特盛のサポートキャラな感じですかねぇ?