―環境をガラッと変えちまうのさ
―今までの緩い空気のぬるま湯
から緊張感が常に漂うピリピリとした
空気にさ。もう、ここに戻ってきたくない。
とてもじゃないがいられない。
こんなとこ、はやく出ていきたい。
簡単だろ?
机の上に置かれた
大量の淀む液体の入った瓶。
―アンタが『失望』
されれば良いんだよ。
ショットグラスに注ぎ、
一気に喉の奥に流し込む。
何度も何度も。
内臓が焼けるような…。
この頃から
僕は飲み慣れないアルコールを
浴びるように飲み始めた。
酔わないと出来ないんだ…
お酒の力を借りないと出来ないんだ…
彼女達を…
あんなに愛しい艦娘達の
心を侵すなんて…。
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本営に感づかれるのを遅らせ、
慎重に解体を進めなければならない、
僕の手で。
正直、どんな事情があろうとも
艦娘を道具のように
扱う鎮守府を野放しにしておく
本営を僕は信用できない。
書類上は『轟沈』『行方不明』という形に
しておき解体した子は孤児院や
施設に送れば良い。
今時、戦争孤児なんて珍しくないだろう。
足がつかないようにしなくては。
そして艤装展開を不能にするため
まずは彼女達から向けられる
信頼を完膚無きまでに
失墜させる必要があった。
だから…
―屑だなぁ…お前ら
―こんなことも出来ないのか…
―何度大破すりゃ気ぃ済むんだよ!
―提督様に奉仕しろよホラァッ!
彼女たちに
罵声を浴びせて
夜に泣いた。
彼女たちを犯し
夜に吐いた。
…彼女たちを傷つけ
隠れて何度も謝った。
……
…
廊下を歩くと、
視線が突き刺さる
すれ違うみんな
まるでぼくを
きたないものをみるような
めつきニなりまシタ。
ヨカッタヨカッタ
…
コンコン
「…」
「失礼…します。…っぽい。」
少し怯えた様子の夕立。
今日に至るまで、何人もの
艦娘達を解体してきた。
どうにか本営に気付かれず、
やっと、ここまで。
「提督さん?」
夕立が先に口を開く
「なんだい?」
「ぶたないの?」
「ぶたないよ…。」
「蹴らないの?」
「蹴らないよ…。」
「ゆ、夕立の『ここ』に」
己の下腹部に手をやる彼女。
見ていてつらくなる。
「…しないよ。」
「じゃぁ、なんで?」
「夕立。」
「ぽいッ!」
特徴的な返事をする彼女。
本当に愛嬌のある女の子だ。
「君は今艤装を展開しても上手く
顕現させにくいとか
そういう感覚はあるかい?」
まずは、艤装の状態の確認
「提督さん、なんで知ってるっぽい?…っあ」
確認終了。
「そう…か。」
「次に夕立、
君は今、海に出るのが怖いかい?」
意思の確認
「提督さん。夕立最近おかしいっぽい。
前まで、演習も実戦もすっっっごく楽しかったっぽい!
でも…」
「でも?」
「もう…最近、怖くて仕方ないっぽい…。」
「僕が原因だろ?」
そう思うように仕向けてきたんだから。
「うん…」
「だって…中破しても…大破しても…
進撃させようとするっぽい…。
緊急救命装置で轟沈は回避できても…
帰ってきたら、
提督さんが…その…
ぶつっぽい。怖いっぽい。」
一度、意図的に植えつけられた
恐怖という感情は
芽を出すととどまることなく
本人の意識とは裏腹に
メキメキと成長し
その心にツタを這わせ蝕む。
「夕立、もう戦わなくても
良いって言ったら君はどうする?」
退役の意思の確認
「提督…さん?どうしたの?」
早く答えてくれ…。
「…ごめん」
彼女の鳩尾に
拳で衝撃を与えた
「え…!?」
白目を剥いて
その華奢な体を僕に預けた。
……
…