※この作品はR-18です。

優しい嘘   作:卵白

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我儘

 

 

 

「寝たか?まったく。狭苦しくて

体が強張っちまった。」

 

 

執務室に備えられてある

掃除用具用のロッカーから

元研究員の男が腰を抑えながら

姿を見せる。

 

長い時間体を

窮屈にしていたため

関節が痛むらしい。

 

 

「すいません協力して頂いて。」

 

 

「あんたがどう、動くのか

興味持っただけだよ。」

 

 

正直、助かる。

 

 

「それにしても…あんたよぉ…。」

 

 

眠り、僕の膝の上に

頭を預ける彼女と僕の顔を

見比べながら呟いた。

 

 

「なぁんで、

ここまですっかね?」

 

 

「僕は…たとえ…恨まれても

彼女たちには生き延びてほしいんです…。」

 

 

「…。」

 

 

 

「深海棲艦なんか…

他の鎮守府の方々がどうにかしてくれます…!

今の、この国にはあの子達以外にも

大勢の艦娘たちがいます…。」

 

 

思いをぶちまける。

我ながらなんと身勝手な意見か。

 

 

「戦地に身を置く立場の人間の

言うことじゃ無いなぁ。」

 

 

「今あの子達がいるのは戦場です。

わかっています。綺麗事です。

エゴです。でも―」

 

 

 

僕の気持ちは―

 

 

 

「大切な人たちに

生きてほしいって願うのは

エゴじゃ…ないですよね?」

 

 

「僕は…あの子達がこの先

生きていける可能性の高い方を

選択しますよ。」

 

 

ただ、それだけなんだ。

 

 

「…そうかい。」

 

 

諦めたように僕の顔をそらす。

 

そろそろ最終ステップ。

 

本来、中央で行われる

この作業を僕個人の認識で

行い

 

 

「夕立。起きて」

 

 

これが表沙汰になったら

どうなるのやら。

そうならないよう細心の注意を

してきたつもりだが

 

 

「ん…ぅ?ていとくさん?」

 

寝ぼけ眼の目をこすりながら

目を覚ます彼女。

 

「夕立、これを飲んで。」

 

 

その小さな

口元に、カプセル状の薬を差し出す。

 

 

「それなぁに?」

 

 

きょとんと目を丸くさせ、

首をかしげる。

 

 

「気にせず飲むんだ」

 

 

お願いだ。

 

 

「イヤッ…教えてくれないなら

飲まないっぽい!」

 

 

首を伸ばして、薬を口元から

遠ざけようとする。

 

 

「夕立…あまり困らせないでおくれ。」

 

 

「教えてやりゃ良いだろ。」

 

 

困ったように頭をボリボリと

掻いて呟いた。

 

 

「…おじさんだぁれ?」

 

 

「僕の…古い友人だよ夕立」

 

 

 

また嘘をつく

ここまで嘘ばっかりだ。

 

 

嘘 嘘 ウソ

 

 

「初めましてお嬢ちゃん。

安心しな、そりゃただの精神安定剤だよ。

そこの提督サンがお嬢ちゃんのために

用意したんだとよ。」

 

 

精神安定剤?

 

 

「提督さんほんと?」

 

 

「あぁ。ほんとだよ。」

 

 

―嘘だよ

 

 

「…。」

 

 

僕の顔をジッと見つめ

しばらく考え込んだが

 

 

「わかったっぽい。

提督さんは本当は

やっぱり優しいっぽい♪」

 

 

物分かり良すぎだろ

 

どうせ、嘘だと疑われると思ったのに…

無理矢理でも飲ませるつもりだったのに。

 

何で…信じるんだよ

また、艤装が展開出来るようになったら

どうするんだよ…

 

 

僕を信じるなよ…

 

 

-------------------------------------------------

 

「こんにちは、

白露型駆逐艦「夕立」よ。よろしくね!」

 

彼女が着任したのは、

僕と扶桑がケッコンしてから

間もなく経った頃だった。

 

 

「うん、よろしくね!

着任したてで疲れたでしょ?

今日はゆっくり休んでね。」

 

 

「っぽい!」

 

 

「ぽ…ぽい!?」

 

 

「っぽい!」

 

片手をぴょんと上げて

特徴的な返事をする彼女に

最初は呆気とられたもんだったけど

 

「っぽい!!」

 

 

「あはは!提督さんノリ良いッぽい!」

 

 

そんな夕立の姿に何度も癒され元気づけられた。

 

 

「何やってるんですか司令、それと夕立」

 

こんなやりとりを幾度となく行い

その度に不知火に呆れられたものだった。

 

------------------------------------------

 

「提督さん提督さん

これなぁに?これなぁに?」

 

 

ただ元気が良すぎるのも

問題がある。

 

 

「あぁ!夕立ちゃぁ~ん!

あんまり、執務室のもの

触らないで~!!」

 

 

彼女によって破壊された備品も

少なくは無い。

 

 

本当に犬のように人懐っこい性格、

もし尻尾が生えていたらきっと

四六時中ふりっぱなしだっただろうな。

 

 

…不知火が激怒し

しばらく夕立を

執務室の出入り禁止にしたのも

良い思い出。

 

 

------------------------------------------

 

「提督さん…。」

 

「ねぇ、提督さんが

元気無いと夕立達も悲しいっぽい。

また、遊んでほしいっぽい。」

 

「…。」

 

「提督さん、

こっち向いて欲しいっぽい…。」

 

「…。」

 

「…提督さぁん…。」

 

------------------------------------------

 

………

……

…

 

夕立は

薬を受け入れた。

 

喉が上下するのを確認して

悲しい気持ちになる。

 

慣れないなぁ…。

 

 

------------------------------------------

 

 

「提督さん…何だか夕立

凄く眠いっぽい…。」

 

大きな目を擦りながら

うとうとと頭を何度も傾けては持ちあげる。

 

「眠っていいんだよ夕立」

 

彼女の頭に優しく手を置き

長い髪に沿うように撫でる。

 

「でも…そろそろ…

しゅつげ…き…ぽい…」

 

 

完全に目を閉じて穏やかに呼吸をする

彼女の顔を見て、二回目の「夕立」の

生涯を終えたのを感じた。

 

 

「もう良いんだよ。」

 

 

「ゆっくり、お休み。夕立。」

 

 

「君とは、あまり長い時間は

過ごせなかったけど」

 

 

「ありがとう。お疲れ様。」

 

 

元研究員の男性が

横から夕立の顔を覗きこむ。

 

 

「これで、次に目ぇ覚ましたときは

まっさら綺麗な頭でお目目パッチリだな。

もちろんあんたの事なんて忘れてるがな。」

 

 

知っています。

 

 

「はい」

 

 

「それとあんた、随分やらかしてんだな。」

 

 

「何が?」

 

 

「ここまで来るにあんたから

教えて貰ったルート通りに隠れながら

来たけどよ、見かけるやつら

笑顔なんて見せてくれなかったぞ。」

 

 

 

「良いことです。」

 

 

「良いことかねぇ。」

 

 

「結果としては、皆には戦意喪失、

提督という存在には不信感を持って

貰わなきゃならないんです。」

 

 

「でないと、

何処かでまた彼女達は

利用されてしまいます」

 

 

「不信感を抱かなくとも艤装が

展開が出来るうちは、その可能性は

捨てきれません。」

 

 

それだけは回避しなければ。

 

 

「なぁ。」

 

 

「あんた自分勝手なんだな。」

 

 

「何を今更。」

 

 

即答する。

 

再び夕立の方に顔を向ける。

 

「このお嬢ちゃんはどうすんだい?」

 

 

「解体はもう済みました。

あとは目を覚ます前に

施設に送るつもりです。」

 

 

「仕事が早いなぁ。」

 

-------------------------------------------------

 

 

君はもう戦わなくて良いんだよ

 

キミはモウ戦わなくて良いんダヨ

 

キミハ モウ タタカワナクテ イインダヨ

………

……

…

 

 

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