※この作品はR-18です。

優しい嘘   作:卵白

14 / 19
激痛

 

 

 

 

「で?俺に連絡をしたと?」

 

「他に頼れる人が外部にいないもので。」

 

 

時間的に近くに住んでいる彼に

頼るしかなかった。

 

 

「寂しいやつだなお前さん。」

 

 

元研究員の男性は

車の前で腕を組んで

僕の手で深い眠りについている

時雨に目をやる。

 

「ほっといて下さい。後はお願いします。」

 

「今運んだとこで、

もう間に合わないと思うがねぇ。

俺らも巻き込まれるんじゃね?」

 

「考えがあります。大丈夫です。

あなたはあの子を連れてここから全速力で

逃げる事だけ考えて下さい。」

 

 

彼女の体を男性に預ける。

 

 

「…わかった任せろ。アンタは?」

 

「私は『後片付け』に。」

 

「そうかい。」

 

「じゃあな。あの娘っ子はちゃんと施設に送っとくさ。」

 

「お願いします。」

 

 

………

……

…

 

車の助手席に時雨を乗せた

車の影は次第に遠のいていった。

 

それを確認すると…

 

 

「さて…。」

 

 

-------------------------------------------------

 

 

ドォン

ドドォン

 

 

施設のあちこちの

遠隔操作式の爆薬を仕込み

それを何度も

爆破させ、深海棲艦を牽制しつづけるが

いつまで持つか

その数は十分ではないし

なにより、ダメージを与えるに

距離が遠すぎる。

 

 

タイミングを良く

考えないと。

 

 

轟音に次ぐ轟音

 

 

砲撃による爆発を

なんとか回避しながら

 

 

腕時計に目をやる

 

20分、どこまで

彼らは逃げだせただろう…。

そろそろ、頃合いだろうか

 

もう、仕掛けた爆薬も底を着いた。

 

 

一階にある、施設の外に抜ける

通路への扉がある。

 

 

まずは、そこを目指そう。

 

 

………

……

…

 

あった。

廊下の着きあたりにある、

 

無機質な

金属のドア

 

囚人達の収容所の

ドアのように

檻状の窓が人の目線の高さの位置に

備えられている。

 

檻の間の隙間からは中は暗く

窺うことは出来ない。

 

でも、あれはたしかに

 

海とは逆方向の

外に続いているはず

 

 

施設一階の廊下の壁にもたれながら、

壁を挟んで背後にある港を

窓から確認し…

 

 

 

一気に、駆ける。

 

 

 

突如、海に面する

 

 

 

壁が崩れる

 

 

 

 

 

 

グパァ

 

 

 

 

 

 

 

大きな白濁した歯

 

 

 

 

 

 

 

バクン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…?」

 

 

 

 

右腕が―

 

 

 

「あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ!!!」

 

 

 

 

 

ト級が、すぐ近くに迫っていた、

 

障害物を破壊しながらこちらに

近づいてきたようだった。

 

 

 

確認した白濁の歯はト級のそれだった

 

 

それが

大きな口を開き、僕の右腕を

食いちぎった。

 

 

 

 

人の体は簡単に言ってしまえば

 

蛋白質の袋で出来た血袋だ。

 

循環すべき機関を失えば、血は

そこから流れ続ける。

 

 

それを物語るように、

僕の右腕『だった』ものの付け根から

血が溢れる、溢れる。

 

 

士官服を真っ赤に染め上げる。

 

 

神経が痛みという情報を

次々ととめどなく脳に送り続ける。

 

 

 

「い゛ぃ゛い゛ぁ゛ぁ゛!」

 

 

どうにかなりそうだった。

 

 

投げ出され、

転がった体を起こそうとするが

上手くいかない。

 

 

―逃げないと

 

 

必死に呼吸し、意識を繋ぎとめる。

 

体を中途半端に起こす

 

 

 

 

 

バゴン

 

 

 

 

視界が大きくぶれる。

 

 

次いで体の骨が

バラバラになりそうな感覚。

 

 

真横からト級に殴り飛ばされたようだった。

 

 

僕の体は真横に吹っ飛び、

無機質なドアに叩きつけられ、

その敷居を跨いだ。

 

 

 

目的は、果たした

果たしたものの

 

もう体が動かない。

 

ついに痛みさえも感じなくなってしまった。

 

-------------------------------------------------

 

 

血まみれの左手で、ギュッとそれを

握りしめる。

 

 

扶桑とのケッコンを果たした、

次の日に青葉が撮ってくれた

 

あの頃、

笑顔で過ごした日の

 

 

―写真

 

 

ああ、あの頃に戻りたいなぁ

 

 

扶桑がいて、皆がいて

一緒に笑って、怖がって…

 

 

 

「…」

 

 

 

「…」

 

 

呼吸が苦しい

 

 

あ…薬…

 

 

目の前に、ある『薬』が転がっていた。

 

予備として研究者の男性から

もらった、あの

 

 

解体用の薬…

 

 

 

 

―この薬って人が飲んだらどうなるんです?

 

―物好きだなぁそんな事知ってどうすんだか。

…艦娘と同じで脳に作用するが。効果が違う、

人の場合強く効きすぎんだ。服用直後に効きやがる

酷い昏睡、人格障害や記憶障害、人によっちゃ

半身不随になったって報告も聞いた事があるな。

ようは人間にとって、そりゃ劇薬ってことだよ。

 

 

 

…

 

 

 

 

ゴクン

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。