「で?俺に連絡をしたと?」
「他に頼れる人が外部にいないもので。」
時間的に近くに住んでいる彼に
頼るしかなかった。
「寂しいやつだなお前さん。」
元研究員の男性は
車の前で腕を組んで
僕の手で深い眠りについている
時雨に目をやる。
「ほっといて下さい。後はお願いします。」
「今運んだとこで、
もう間に合わないと思うがねぇ。
俺らも巻き込まれるんじゃね?」
「考えがあります。大丈夫です。
あなたはあの子を連れてここから全速力で
逃げる事だけ考えて下さい。」
彼女の体を男性に預ける。
「…わかった任せろ。アンタは?」
「私は『後片付け』に。」
「そうかい。」
「じゃあな。あの娘っ子はちゃんと施設に送っとくさ。」
「お願いします。」
………
……
…
車の助手席に時雨を乗せた
車の影は次第に遠のいていった。
それを確認すると…
「さて…。」
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ドォン
ドドォン
施設のあちこちの
遠隔操作式の爆薬を仕込み
それを何度も
爆破させ、深海棲艦を牽制しつづけるが
いつまで持つか
その数は十分ではないし
なにより、ダメージを与えるに
距離が遠すぎる。
タイミングを良く
考えないと。
轟音に次ぐ轟音
砲撃による爆発を
なんとか回避しながら
腕時計に目をやる
20分、どこまで
彼らは逃げだせただろう…。
そろそろ、頃合いだろうか
もう、仕掛けた爆薬も底を着いた。
一階にある、施設の外に抜ける
通路への扉がある。
まずは、そこを目指そう。
………
……
…
あった。
廊下の着きあたりにある、
無機質な
金属のドア
囚人達の収容所の
ドアのように
檻状の窓が人の目線の高さの位置に
備えられている。
檻の間の隙間からは中は暗く
窺うことは出来ない。
でも、あれはたしかに
海とは逆方向の
外に続いているはず
施設一階の廊下の壁にもたれながら、
壁を挟んで背後にある港を
窓から確認し…
一気に、駆ける。
突如、海に面する
壁が崩れる
グパァ
大きな白濁した歯
バクン!!
「え…?」
右腕が―
「あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ!!!」
ト級が、すぐ近くに迫っていた、
障害物を破壊しながらこちらに
近づいてきたようだった。
確認した白濁の歯はト級のそれだった
それが
大きな口を開き、僕の右腕を
食いちぎった。
人の体は簡単に言ってしまえば
蛋白質の袋で出来た血袋だ。
循環すべき機関を失えば、血は
そこから流れ続ける。
それを物語るように、
僕の右腕『だった』ものの付け根から
血が溢れる、溢れる。
士官服を真っ赤に染め上げる。
神経が痛みという情報を
次々ととめどなく脳に送り続ける。
「い゛ぃ゛い゛ぁ゛ぁ゛!」
どうにかなりそうだった。
投げ出され、
転がった体を起こそうとするが
上手くいかない。
―逃げないと
必死に呼吸し、意識を繋ぎとめる。
体を中途半端に起こす
バゴン
視界が大きくぶれる。
次いで体の骨が
バラバラになりそうな感覚。
真横からト級に殴り飛ばされたようだった。
僕の体は真横に吹っ飛び、
無機質なドアに叩きつけられ、
その敷居を跨いだ。
目的は、果たした
果たしたものの
もう体が動かない。
ついに痛みさえも感じなくなってしまった。
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血まみれの左手で、ギュッとそれを
握りしめる。
扶桑とのケッコンを果たした、
次の日に青葉が撮ってくれた
あの頃、
笑顔で過ごした日の
―写真
ああ、あの頃に戻りたいなぁ
扶桑がいて、皆がいて
一緒に笑って、怖がって…
「…」
「…」
呼吸が苦しい
あ…薬…
目の前に、ある『薬』が転がっていた。
予備として研究者の男性から
もらった、あの
解体用の薬…
―この薬って人が飲んだらどうなるんです?
―物好きだなぁそんな事知ってどうすんだか。
…艦娘と同じで脳に作用するが。効果が違う、
人の場合強く効きすぎんだ。服用直後に効きやがる
酷い昏睡、人格障害や記憶障害、人によっちゃ
半身不随になったって報告も聞いた事があるな。
ようは人間にとって、そりゃ劇薬ってことだよ。
…
ゴクン