※この作品はR-18です。

優しい嘘   作:卵白

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優しい嘘の後日譚2です。


約束

 

 

「おかーさん、おなかすいたねー。」

 

 

手に伝わる

ほんのりとした体温。

 

小さな手を握りながら

16時頃の

スーパーに安売りのキャベツを狙いに来ました。

 

 

『そうですね。

こんやは なにが たべたいですか?』

 

 

ボールペンでさらさらと

手のひらサイズのメモ帳に

記すとそれを

見せます。

 

即答する我が子

 

 

「はんばーぐ!」

 

 

困りました。

ハンバーグは、先日

夕飯で出したばかりです。

やはり今日は野菜中心のメニューに

しましょう。

 

 

 

バランスは大事です。

 

 

施設にいた頃は

自分でもそれなりに

台所には立っていたつもりでしたが

 

 

あの頃はあまり、バランスを考えず

少量の野菜、炭水化物で十分でしたが

子供の事を考えると

バランスを最優先すべきでしょう。

 

 

 

『いえ こんや は、おやさいにしましょう。』

 

 

 

「おやさいきらーい。」

 

 

 

それでは困ります。

今のうちに好き嫌いは

無くしておくべきでしょう。

 

そうです、あれです。

先日、『ママ友』から

教えて頂いた『レンコンのはさみ焼き』

 

丁度、冷蔵庫に蓮根がありますし

あれを試してみましょう。

 

 

『そんなこと を いってはいけません。

 

おやさいさんたち も おいしくたべてほしくて

 

がんばっておおきくなったのですよ?』

 

 

『あなた も おかあさんから、きらいだと

いわれたら かなしいでしょう?』

 

 

「…うん。おやさいさん、ごめんなさい。」

 

 

しょんぼりと反省し

カゴの中の野菜に謝罪する

愛おしい我が子。

 

 

ここまで素直に育ってくれて

お母さんは嬉しいです。

 

 

この子は絵本が好きで

朗読用のCDをかけてあげたら

驚くほどに言葉を覚えてくれました。

おかげで簡単なものですが

私の書いた文字を理解してくれます。

 

 

店員さんが値札に×を

つけ20%引きの値段を書き始めました。

 

戦争の始まりです。

 

 

………

……

…

 

 

「ちょっとアンタじゃまよ!」

 

重量級のマダムの肘が

私の顔に食い込みます

 

 

フフ…!

4歳の子を持つお母さんを怒らせたわね…!!

 

 

その重量ボディでどこまで出来るかしら!

 

 

「な!?はやい!?」

 

 

あっという間に2玉 獲得です。

 

 

………

……

…

 

「おかーさん、すごいね~。」

 

 

『つまらないわね、

もっと骨のある敵(主婦)はいないのかしら。』

 

 

 

思わず筆が乗ってしまい

メモ帳に綴った文字を広げてしまいました。

 

 

「お、おかーさん?」

 

 

満足気にドヤ顔で

スーパーを後にしました。

 

 

------------------------------------------------------

 

退院し、不知火は

しばらく司令…『元』司令の

マンションに住まわせて頂く事になりました。

 

 

今後の方針を決めるまで

との条件の下です。

 

しかし、その生活もあまり

長くは続きませんでした。

 

 

ある日の、いつもと

変わりない日の夜の出来事です。

 

 

「不知火」

 

 

不知火が夕飯で使用した

食器を洗っていると

司令が後ろから話しかけてきました。

 

 

『なんですか司令?』

 

 

一旦その手を止め

 

冷蔵庫にマグネットで

ぶら下がっている

室内での会話用の

ホワイトボードに

書き、それを

司令に見せます。

 

 

「君も、解体されてくれないか?」

 

 

いきなり何を…

 

 

「もう、思い出したくもないだろう?」

 

 

 

不知火は―

 

 

 

『私はあなたを忘れたくありません。』

 

 

「不知火」

 

 

そんなに困ったような顔をしないで下さい。

 

 

「でも、そうしないと…今後君は

艦娘に復帰する事も、人間になれることも出来ず

社会の補償を何も…受けられなくなってしまうんだよ。」

 

 

「そんなこと…『僕』が望むはずはないだろう。

それは君が良く知っているはずだよ。

これは、ズルズルと引きずってはいけない問題なんだ。」

 

 

 

そうでした。

この世界はあまり、生きやすい世界では

ありませんでした。

 

それに前の司令も、解体を望んでいます…ですが

 

 

 

『そうですね。失言でした。

甘んじて薬を受け入れましょう。ただ』

 

 

 

『不知火の最後のお願いをきいてもらえませんか?』

 

 

 

「なんだい?」

 

 

 

『私が忘れて、

あなたが一方的に覚えてるのはずるいです。

だから』

 

 

 

言わなくては…。

こんな形になってしまいましたが

 

 

 

『だから、不知火の「中に」あなたを刻みこんで下さい。』

 

 

 

文字通りの意味です。

あなたの『情報』を不知火に塗りたくってほしいんです。

 

 

「…不知火、馬鹿な事はよしなさい」

 

 

 

『好きです司令』

 

 

 

言ってしまった。

 

 

 

「…。」

 

 

『駄目なんです。あなたの事を思うと』

 

 

 

そのペンを

司令が止めました。

 

 

 

「良くお聞き。

君は、薬を飲んだ後、

服用前の事は忘れてしまうんだ。

そんな状態で君に子供が出来たなんて…

きっと君は後悔する…。」

 

 

『しません。』

 

 

これは言いきれます。

 

 

『不知火は、後悔しません。

きっと次の不知火も後悔なんてしません。』

 

 

だって、愛しいこの人の子供なら

 

不知火が、不知火で無くなっても

愛する自信があります。

 

理屈ではないんです。

 

柄でもありませんが。

 

 

『でも、教えて下さい。』

 

 

『次は、いつ会えますか?』

 

 

--------------------------------------------------

 

この子…

 

娘の父親は、わかりません。

私が身籠った事が発覚したのは

施設で目が覚めて2ヶ月が経過してからでした。

 

体の傷を見た、施設の職員さん曰く

施設に来る前

暴行されてその際に孕まされたのではないのか?

と推測を立てましたが

 

私にはそんな事はどうでもよかったのです。

 

 

なぜか嫌悪感など抱く隙もないくらい

ただただ、愛おしく。

ひたすらに愛情を注いでいました。

 

 

入居当時

私自身、年齢は不明でしたが

 

当時の検査結果では14歳の体だったと

思います。

 

世間的に14歳はまだまだ

子供です。

 

子供が子供を産んだと、当時は

白い目で見られましたが

施設の方々を含め私に味方をしてくださる

人達が意外にも多くいました。

 

 

-----------------------------------------------

 

教室に入るとクラスの女子が

声を懸けてくれます。

 

 

「あ、ぬいちゃん、おはよう!」

 

 

………

……

…

 

 

当時の、私の持ち物は

メモ帳と私の名前だけが刻まれた認識票

 

それだけでした。

そこに刻まれていたのは

 

『不知火』という名前でした。

 

 

………

……

…

 

 

『これが、初めてハイハイをした時の写真です。』

 

 

時折、クラスの子からせがまれて

娘の写真を見せるのですが

見せる度に悶絶する彼女達をみると

中々面白いものです。

 

 

「きゃー!可愛いぃぃ!!」

 

 

『これが、初めてお母さんと呼んでくれたときの』

 

 

「いやー!プリティ!」

 

 

今では、クラスの女子からも娘は人気者です。

 

 

「これが授乳のときの写真です。」

 

 

「男子こっち見んな!!」

 

………

……

…

 

今では、子供を保育園に預けて

通学するという形態をとっています。

 

特殊人権取得者という事で

お国からの援助金のおかげで最低限

生活は出来ていますが、今は

アルバイトもして生活を稼いでいます。

 

 

満足な生活ではありませんが

充実した

幸せな日々です。

 

------------------------------------------------

 

さて、今日ははやく寝ましょう

 

明日は特別な日ですから。

 

 

私が、当初手にしていたメモ帳には

こう書いてありました。

 

 

『20XX年5月21日の午前10時

○○鎮守府跡地で』

 

 

高校の授業で習いましたが

この○○鎮守府は数年前、

深海棲艦の襲撃を受けて

廃墟になったと。

 

その原因となったのが

とある不誠実な提督の

失態で起きた事件だと。

 

ただ、おかしな事に

艦娘の死体や提督本人の

死体が上がってないとの事でした。

 

非常に不可解です。

 

そんな場所が記されたこの

メモ帳。

 

 

 

私にどんな関係があるかどうかは

分かりませんが…。

 

その日は丁度、明日です。

 

その文字は明らかに

私の筆跡とは異なりましたので

他人が書いたものだと判断できました。

 

ですが他人と一言で片づけてしまうには

心苦しさを覚えます。

 

そのメモ帳には

この文しか記されていなかったのですから。

 

 

 

------------------------------------------------

 

 

穏やかな潮風です。

 

この感覚は、とても懐かしいです。

 

以前、ここには

見学で訪れた事があります。

 

今はここも

この政令指定都市の観光事業の一部に盛り込まれており

、観光客がひっきりなしに訪れています。

 

今日は休日ということもあり。

老若男女。ミリタリーファッションの集団等

様々な人たちがいます。

 

 

ここで良いのでしょうか。

 

 

跡地を囲うように

今でも立入禁止のテープが

張られていますが、その周辺には

撮影スポットやお土産屋など露天なども

出店し、

 

さらに休憩用のスペースとしてベンチまで

設けられています。

 

晴れていますから

とても気分が良いですね。

 

娘もご機嫌な時に良く着る

スカーフ付の薄いグリーンのワンピースを着ています。

 

今日はおとなしくしてくれそうです。

 

 

 

 

あぁ、ほっぺにソフトクリーム

が着いてますよ。

 

 

 

それを指にとり

舐めとるとお土産屋さんの前にディスプレイされている

時計に目をやります。

 

間もなく10時です。

 

一体ここで何があるのか

 

あのメモが何なのか

 

これでわかります。

 

 

………

……

…

 

 

突然、私達の左手側に

ほっそりとした男性が音も無く

ゆっくりと座りました。

 

 

「…」

 

 

「…あのメモをした者です。」

 

 

 

突然すぎます。

 

驚きました。

 

ソフトクリームを食べて

満足そうに

私に膝に頭を載せて眠っている娘を

起こさないように顔だけそちらに向けます。

 

 

グレーのジャケットに

タイトな黒のパンツ

チェックのハンチング帽

 

 

 

この…人が…

 

 

一体…

 

 

「お子さん…可愛いですね。」

 

 

この人は、私とこの子を親子だと見抜きました。

傍から見れば、姉妹にしか見えない私たちを。

 

 

『あなたは、一体誰なんですか?』

 

 

 

「…お時間、ありますか?」

 

 

 

「お話しましょうか。

今までの全てを、私が何者で、

あなたが何者だったのか」

 

 

 

 

 

「ぬいぬい」

 

 

 

 

温かさと、寒さが絶妙なバランスの風が

私たちを包みました。

 

温もりを感じたのは

娘の体温や

風のせいだけでは無いのでしょう。

 

その『言葉』の響きが、懐かしく

心地良いです。

 

 

 

------------------------------------------

 

 

―不知火

 

 

―はい

 

 

―この日に、またここで会おう。

 

 

―…司令

 

 

―大丈夫。もし君が子を産んで、

その子に愛情を注いでくれるなら、

それはきっと私を受け入れてくれたっていう事。

そしたら私たちはきっとまた、会えるはずだから。

 

 

―はい。

 

 

 

―きっと、その頃には私も結構おじさんだがね。

 

 

―構いません。司令は、司令です。

 

 

―もう『司令官』じゃないんだがね。

 

 

―その日までお休み

 

 

―ぬいぬい

 

 

 

―…

 

 

―ぬいぬい言うな。

 

 

 

後日譚2-完-

 




優しい嘘
如何でしたでしょうか、何分、独自の要素が
入っていたり、場面があっちこっちに飛んで
読みづらかったとお察し致します。

SS投稿速報の方では「らんぱく」という名前で
2015年の2月頃に投稿しました。

当時は、初の長編もので勝手が分からず(今もわかりませんが)
色々と苦労させられました。

ではでは、またご縁がありましたら
別の作品で。
失礼致します。


↓SS投稿速報版↓
http://sstokosokuho.com/ss/read/1091
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