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鈍い感覚が手に伝わる
次いでバランスを崩し
横滑りする右手
グシュッ
ズルッ
赤い閃光がパッと散った
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情けない事に
その場に膝をついてしまいました。
「ブッ…ゴフッ!」
ゴボゴボと
白い首から湧き出る血の泉。
命の象徴。
それが不知火の首から
次々と流れます。
止めどなく流れる血液は同時に大量の体温を奪って
持ち主から離れていきます。
それは横一線の
傷口からドロドロとシャツを赤黒く染め上げ
腿を伝い、
血の池を作ります。
体に力が入らず、堪らず血だまりに
沈みます。
「し、不知火ちゃん!?」
一瞬、悲鳴が聴こえたかと
思うと、それが愛宕さんのものだと瞬時に気づきました。
耳元で愛宕さんの声が聞こえます。
体がとても寒いです。
顔から血の気が引くのを感じます。
不知火は、死ぬのでしょうか。
船として戦いで沈んだ身としては
第二の人生、いえ艦生をまさか
地上で失うとは、なんとも不思議な気分です。
「…ぁ。」
「提督邪魔!!!
早く止血しないと…!」
呆然とする司令を跳ね除け
その体から想像もつかない
素早さで
医務室に設置されてる引き出しから
清潔な白いタオルを取り出し、不知火の首に
押しつけます。
タオルは不知火の血で
すさまじい勢いで赤に染まっていきます。
ぼんやりする意識の中、
司令の顔が視界に入りました。
酔いが完全に醒めたのか
すっかり青ざめていました。
あぁ、司令
どこか御気分が優れないのですか?
不知火は大丈夫ですよ。
すぐに…すぐに…
……
近くで張り上げている
声のはずが段々と遠のいていく感覚。
視界がぼやけて、視力が大きく失われています。
いくら呼吸をしても
肺に取り込まれないような錯覚を覚え
必死に息を吸います。
水中にいるかのような視界の
端に、医務室の窓が見えました。
そういえばそろそろ窓ふきの掃除当番は
不知火でしたね。
なんて良い天気なんでしょうか。
最近まで、悪天候が続いていたにも関わらず晴れた今日。
今朝方は夕立と、久しぶりに外出しようと話していました。
許可が降りるかどうか不安ではありましたが、そういう小さな希望が
ここで働く上でどれほど重要か…。
嗚呼
今日は良い事があると思っていたのですが。
そうです。
『彼女』を言葉を借りるなら…
はぁ…
……空はあんなに青いのに―
不知火の意識は再び
闇に落ちて行きました。