僕は間違っていた。
『神は死んだ』
と説いたのは哲学者の
ニーチェだというのを学生のとき
授業で聞いた事を思い出した。
何が…『神様』だ。
何が…『女神様』だよ。
あの子達は「少女」だ。
艤装を使えるだけの、なんの事は無い。
僕たちと同様に
普通にご飯を食べ、寝て、起きて
恋をする権利を持つ少女たちだ。
そんな少女たちに僕たちは
過酷な運命を背負わせてしまっている。
彼女が沈んでから、気づくなんて…。
あの頃の僕は、戦果や軍内部での評価等
全てが上手くいって
舞い上がっていたのか。
だから扶桑を…
…
……
………
艦娘のメンタルケアについて
艤装による加護の試験結果について
艦種ごとの疲労度の差のレポートについて
艦娘の轟沈報告例について
中でも一際、
僕が熱心に調査した分野があった。
『艤装展開条件』
『艦娘解体時の記憶保持』
どちらも同じ
研究者が記した物だった。
とても興味深かった。
艤装は本来
整備室に保管されているが
彼女たちの任意で
己の周りに出現させる事が出来る。
その光景は
第三者からすれば
突然、何も無い空間に
鉄の塊が現れるように見える。
そして艤装の出現条件は艦娘の
戦おうとする意識、つまり
戦意の有無によって
左右されているようだった。
研究者は
とある酷いPTSD(心的外傷後ストレス障害)
を患った艦娘の協力を仰ぎ
この論文を残したようだった。
サンプルに協力してくれた
艦娘は、劣悪な環境の軍施設で
任務を遂行していたが、そこでは
まさに道具のような扱いを受け
まともに修復を受けさせてもらえない
事が長期に渡り、心を壊してしまった。
戦意の喪失。
患う前から彼女は
艤装の展開が最近うまく
いかないと度々まわりの艦娘に
零していた、というのだ。
さらに、整備室から
直接艤装を引っ張り出してきても
装備した所で
砲弾が打てない、魚雷が
発射できないなどの大きな不具合例が
列挙されていた。
事実、論文内にて
研究者が、『艤装の展開を』と
指示を出すと、今まで空気を吸うように
当たり前に出来ていた
艤装の装備が出来なくなっていた。
との記述があった。
艤装が装備出来なければ
彼女達は脆い人間の少女に過ぎない。
それは艦娘としての道を完全に
閉ざされた事を意味する。
艤装を装備出来なくなり
艦娘生命を断たれた
彼女達はどうなるのか…
そこまで言及された
論文は数少なかった。
僕は、その論文を書いた
研究員に実際に会って話しをしたいと
彼の所属していた研究所に申し出た。
しかし、その人物は
すでに研究室を離れ、今は
引退し田舎に住んでいるとの事だった。
彼に縁のある人物を訪ね
ようやく連絡先を突き止めた。
そして
メールを送り、返事を待った。
内心、無謀だと思った。
その後返事は届いた。
メールに自分は提督であると添えたのが
功を奏したのか、話を聞かせてもらえる
機会を得た。