バロンの実権を握るゴルベーザは、バロン王の替え玉となっている四天王の一人カイナッツォに宗教国家ファブールへの大規模な軍事遠征の命を下す。
バロンの誇る飛空艇の船団赤い翼を主力に侵攻を開始した。
一方セシルはファブールへ招かれると、軍の指揮を任され、これを迎えうつ。
ゴルベーザとセシルはファブール城内で交戦しゴルベーザが勝利。
その結果、セシルを仕留めそこなったものの、ローザを人質に捕え、バブイルの塔の何処かに監禁した。
カインはその日、バルバリシアの居室の扉を叩いていた。
「誰?」
「俺だカインだ。開けてくれ」
「珍しい事もあるものね。
お前が私を訪ねてくるなんて」
珍しいどころか実際、初めての事であった。
バルバリシアは不信に思いながらも扉を解錠する。
「それで一体なんの用かしら?」
カインは、何かに必死に耐えている様な表情しているが言いだせずにいる。
「……随分と辛そうね」
カインの心は今まさにどす黒い心に支配されようとしていた。
ローザが自身の暮らす建物の何処かに監禁され、距離的に近くなった事で、術によって引きずり出された憎悪や欲望、嫉妬といった負の感情が抑えきれなくなっていたのである。
直ぐさまローザを見つけ出して自分のものにしたい。拒むのであれば無理やりにでも犯したい。
とはいえ、ローザの監禁場所は極秘事項でありカインですらその場所を知ることはできなかった。
というよりもゴルベーザがドス黒い感情に支配されたカインとローザを会わせたり、会える様な位置に置いていては、利用する前に事故が起きると判断したのである。
「……して……くれ」
屈辱に耐えながらも喋る。
「……何かしら? もっと大きな声で言ってくれないと聞こえないわ」
バルバリシアには聞こえていたが、わざと聞こえない振りをする。
「してくれ! 頼む、このままでは……」
カインの懇願を聞いて気分がいいのか、口角が吊り上がる。
―しかし、一体何故?
今までコイツは快楽を受け入れても、私を求めてくることなんてなかったのに。
バルバリシアはローザが捕えられ監禁された事を思い出した。
「ほほほ……
そういう事なのね」
バルバリシアはカインを見下して笑い始める。
「どうなんだ?」
笑うバルバリシアに苛立った感じで詰め寄るカイン。
「ん~、そうねえ。
私、今色々とやる事が……」
カインの焦らされ苦痛に歪む顔を見て快感を覚えるが、同時に発せられるドス黒い感情に少し危機感を覚えた。
確かにこの男は暴走すると何をするかわからない。
主が気に入るだけあって腕も立つ。
最悪、乱心し自身の主にやり場のない負の感情をぶつけるかもしれない。
「わかったわ。
でも、手足は縛らせてもらうわよ?」
バルバリシアがカインの手足を拘束したまま行為に及ぶには快楽以外の理由があった。
自身も戦闘ができるとはいえ、男性に組みつかれては分が悪い。
なんらかの事情により、カインが自分に牙をむく事を警戒していているのである。
「……ああ。それで構わん」
「では、大の字になってベッドに寝てなさい」
バルバリシアは遠距離から風を操りカインをベッドに拘束すると、行為に及んだ。
「はあ……はあ……」
カインは精を解き放った後、いつものように呆然としていたが、少し気が晴れた顔をしていた。
―まるでコイツに巣食う心の闇を受け止めた様な気分ね。
バルバリシアはいつも背徳感に悩んでいるカインを眺めるのが好きだったせいか、少し満足そうにされると面白くはない。
「すまない……助かった」
カインはバルバリシアに礼を言った。
余程、心を蝕む負の感情に苦しめられていたのだろう。
快楽や性行為によって、一次的に欲望を発散させることで、なんとか自我を保っているようである。
バルバリシアは礼を言われる事に慣れておらず一瞬とまどったが、直ぐにいつものように冷たい態度をとった。
「用が済んだら出ていって」
バルバリシアはカインの拘束を解き、カインは服を着て部屋を後にした。
――
ローザが監禁されてからというもの、カインがバルバリシアの部屋を訪ねる日は次第に増えていった。
性行為もカインも別に嫌いではないバルバリシアは、それを受け入れる。
ところがある時、カインが訪問するとバルバリシアは部屋にはいなかった。
話を聞けば、敵勢力エブラーナと交戦中に負傷し、バブイルの医療区画で治療を受けているとの事。
カインはいてもたってもいられなくなり、医務室へと直行した。
「あらカイン」
「無事か」
その区画は病院の様な空間であり、バルバリシアは医療用ベッドに腰をかけていた。
治療は既に終った後らしく、特に目立った外傷はない。
「少し腕を斬っただけよ。この通り傷跡が残る事もないわ」
傷を負ったと思われる右腕をカインに見せる。
カインはその腕を見て安堵していた。
「……それで。一体私に何の用かしら?」
からかうようにバルバリシアが問い質してくる。
勿論、性を目当てに来た事は見抜いている。
「……それは」
「まあいいわ。治療も終わったし、私はこれから部屋に戻るつもりよ。
お前も一緒に来る?」
バルバリシアは口角を吊あげながら、聞いてくる。
「……ああ」
一方、カインは少し戸惑いを感じていた。
バルバリシアが負傷したと聞いて、その身を心配し、全くの無事とわかると胸を撫で下ろしている。
カインにとってバルバリシアは、自分を辱める女でしかない。
そして現在、それに依存している自分にどこか許せないものを感じていた筈。
部屋につくと、いつもの様に四肢を拘束された。
「ほほほ、私が待ち切れなかったのね」
カインを嘲笑するが、カインの様子が少しおかしい事に気づく。
今までは、どこか自分の内なる黒い感情に悩まされ苦しんでいるような感じだったのが、今日はじっとこちらを見据えているのだ。
「バルバリシア……はやく!」
カインがバルバリシアの名を呼ぶ。
「急かさないで! 全く童貞だったくせに」
バルバリシアは、待ちきれないといったカインの態度に苛立ったが、いつもと同じよう様に性行為が行われた。
しかし、カインの心境はいつもと違っている。
いつもなら、自分の内に渦巻き蝕む、黒い感情を発散させるかのようにバルバリシアを抱いていたが、此度は純粋に行為を楽しんでいるかのようだ。
―何故俺は、この女を心配した?
部屋にいなかった時の虚無感や負傷したと聞いた時、何処か胸騒ぎを覚えた。
―自分を弄ぶ憎い女である筈なのに……
―一体何故?
―何故だ!?
黒い感情とはまた別の感情が沸き上がる。
今までは完全にマグロであり、されるがままであったカインが、足を拘束されながらも腰を思い切り突き上げた。
「あぁん!」
バルバリシアの体全体がビクンと跳ね、口から喘ぎ声が漏れる。
腰を下ろす瞬間にカインが突き上げたため、槍の先はバルバリシアの最も奥を突いた。
強烈な衝撃はバルバリシアの頭の中を真っ白にし、全身を快感が駆け廻る。
不意を突かれたとはいえ、常に相手を見下し、性欲に溺れる男を嘲笑する行為を好むバルバリシアにとってこれは失態以外のなにものでもなかった。
だが、カインはその喘ぎを聞き、より興奮してしまう。
もっと聞きたい、もっと喘がせたいと思い、さらに突き上げるが、バルバリシアは感じつつも声を荒げる真似はしなかった。
「うっ……くっ……
一体どうしたのかしら? お前が自分から動くなんて」
思わず喘ぎそうになる自分を必死に抑えながら虚勢をはるバルバリシア。
少しカインに身を委ねてみたいという心境にかられたが、プライドがそれを許さない。
―こいつを抱いている時だけが……
カインの動きが一層激しくなる。
「くっ……」
何回も突き上げられる事で快感がいっそう大きくなる。
カインの激しい動きに、今にもイってしまいそうだったが、先にイかされたくはなく、必死に堪えていた。
―俺にローザを忘れさせたからか?
ドクッ……
感情が最大限まで高まった時にカインは絶頂を迎え射精した。
「はあ……はあ……」
「……中々よかったわよ?
まさか、お前から突きあげてくるなんて思いもよらなかったわ。
一体、どういう心境の変化かしらね?」
カインは何も答えない。
「まあ、いいわ」
バルバリシアは、カインから降りると外した胸当てをつける。
「……その。助かった」
カインは恥ずかしそうにぼそりと言うと、いつもの様に押し黙ってしまった。
バルバリシアはカインの拘束を解き部屋を出る様に促した。
「……ふん。危うく醜態さらすところだったわ」
バルバリシアは腑に落ちないものを感じていた。
カインが激しく腰を動かし、ペースを崩された。
本来、性奴隷がとっていい行動ではなく、許されざる行いであったが、体としては嫌な感じはしなかった。