「私はこのまま死んでも別に構わないわよ?
お前には生きていて欲しい気もするけどね」
バルバリシアにはあまり生気がない。
「さっきから聞いていれば、そんなに死にたいのか?」
「このまま生き延びても、いずれまた殺し合うのよ?」
敵同士という立場である以上、助かったところでいずれ敵として相見えるだろう。
バルバリシアとしては、辛い思いが続くくらいなら責務を全うして死んだ方がいいと考えていた。
カインは問いには答えずに、バルバリシアを強く抱きしめる。
「俺はお前には生きていて欲しい」
もともと、互いにしがみつく様な体制であったが、カインの抱擁はバルバリシアに伝わり、バルバリシアは皮肉めいた発言をやめた。
その時、カインは下方に黒い影を確認する。
「あれは?」
よく見るとそれは船の形をしており、プロペラの音も聞こえてくる。
「セシル達が移動に使っていた飛空艇か……
だがおかしい、誰が操縦している?」
エンタープライズと名付けられた飛空艇はセシル達を乗せてゾットの塔に停泊した。
船に乗っていた人間は全員降り、他に乗組員がいかなかったのは確かである。
「どうするの?
今はまだこっちが速いけど、勢いがなくなれば追いつけなくなるわよ?」
「……飛空艇に乗り込む。
降りてくれ」
「わかったわ」
飛空艇の甲板に降り立つ二人、目視できる範囲では船員は誰もいない。
カインは船内に入り、中を確認するが、やはり誰もいなかった。
船は無人で飛行している。
「無人ね……一体何処に向っているのかしら?」
バルバリシアが疑問を口にする。
「この無人飛行はシドの技術か、流石だな」
カインはシドの技術に感嘆した。
この船はゴルベーザ側が所持する船ではなくシドの最新作である。
つまりこの飛行はゴルベーザ側の思惑ではなく、セシル側の思惑によるもの。
向かっている先はバロンなのも想像がついた。
「ふうっ……どうやら今度こそ本当に助かったな」
カインは胸をなでおろした。
瀕死のバルバリシアを助けて脱出したまではよかったものの、正直バロンまで帰還できるか不安だったのだ。
セシル達にとって飛空艇は必要不可欠な物、この無人船に乗っていれば必ず合流できるといえた。
「お前はここで休んでいてくれ、何か食べられる物と水を探してくる」
「いいの? 二人で探した方が効率的よ?」
「いや、俺を抱えてここまで飛んだんだ。疲労は相当なものだろう?
お前には休んで欲しい」
カインとその着ている鎧の重量を合わせれば100キロを越す。
自分だけで飛行するよりも遥かに多くの不可がかかっており、実際バルバリシアは限界に近かった。
カインはバルバリシアを適当な船室で休ませると、食糧や水などの備蓄を漁る。
食事を用意するとすぐに船室に運んだ。
「気がきくのね」
「何か食べた方がいいだろう?」
血を失っているバルバリシアに食事を促し、カインも軽食を済ませた。
バルバリシアを船室にあるベッドに横にさせるが、その事により、性欲が沸いてくる。
状況が状況なので、行為に及ぶには抵抗があり船室から出ようとしたがバルバリシアが呼びとめた。
「カイン……来て」
カインが振り向き目が合うと、バルバリシアは無言でうなづいた。
二人は口づけを交わし、ベッドに横たわる。
カインはバルバリシアをゆっくり愛撫しながら、肌を見ていた。
戦いで受けた傷や傷跡は一切ない、血まみれで戦っていた姿を思い出し身震いする。
体を舐めまわしながら、脇腹に視線を送った。
そこはカインが槍で刺した箇所であり、カインが最も気にしていた場所である。
間近で改めて確認するが、他の傷と同様、傷跡すら残っておらず、カインはほっとすると同時にエリクサーに感謝した。
「随分と今日は消極的ね。
お前らしくないわよ?」
体をジロジロと眺め、舐めるだけのカインを挑発する。
「バルバリシアすまない」
カインは刺した時の感触を思い出していた。
思わず手に持った武器を手放しくたくなる嫌な感触。
「互いに責務を果たしただけよ。
気にしないで」
「……この船はおそらくバロンに向っている」
「それで?」
「このまま俺と一緒に来い!」
バルバリシアは首を横に振った。
「何故だ?」
「以前、答えた通りよ」
ゴルベーザへの忠誠。
しかし、カインにはどうしてあのゴルベーザにそこまで忠誠を誓うか理解できなかった。
カインが口を開こうとした時、バルバリシアは人差し指でそれを塞いだ。
「今は忘れて……」
カインが頷くと、バルバリシアの口角は吊りあがり、カインを押し倒した。
「全く、優しくしていれば、何を感傷的になっているのだか……
お前にはお仕置きが必要のようね」
バルバリシアはカインに跨り笑っている。
「そうだな、俺が悪かった」
「ここ最近はお前に攻められっぱなしだから。
今日は私がリードしてあげる」
「楽しみだ」
「ほほほ」
「フッ」
二人はこの後、激しく交わった。