※この作品はR-18です。

錆びた涙   作:卵白

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デモンストレーション

 

 

 

 

 

 

-システムを起動します-

 

-脈拍 正常値維持-

 

-視界 良好-

 

-兵装 問題ありません-

 

 

 

無機質に脳内のOSが状態を読み上げる。

 

 

 

左目の視界を妨げない程度のウィンドウが

 

表示される。

 

稼働に問題点は見られない。

 

 

 

 

 

男オペレーター「イ-505、準備は出来たか?」

 

 

 

水面に浮かぶ、己の体。

 

 

 

パシャパシャと

軽くジャンプして関節を馴らしていく。

 

 

耳に備えられたインカムより伝わる

少しお歳を召された男性の声。

 

目の前に広がるは、コロシアム。

 

 

ただし、普通のコロシアムではない。

周りの壁が異様に高く囲まれているプールのようだ。

その内側には、まるでサッカーコートのスポンサー枠のように

数々の企業ロゴが掲載されている。

どこかにカメラでも仕込まれているのだろうか。

この映像がどこに流れるかなんてとくに興味は無いが。

 

でなければ、企業ロゴなんて貼る意味なんて無いのだから。

 

だが、掲載されているのは出資者の企業だろう。

 

そして、観客席。

そこには嫌な笑みを浮かべてここを

見下ろす富裕層の『ご来賓』の方々。

 

 

 

 

 

???「はい。戦闘可能です。」

 

 

 

 

 

 

 

数メートル先の同じ境遇の『歪(いびつ)な存在』へと生まれ変わった

オトモダチ2人…いや、2体に目を向ける。

それらも同様に、水面に浮いて亡霊のようにゆらゆら揺れている。

視線には光が無く、ただ冷たいガラス玉がこちらを覗いてる。

 

 

きっと私も同じ様な表情だろう。

 

 

でも…興味無い。

 

 

 

 

男オペレーター「沈めるなよ?」

 

 

 

 

嘲笑まじりの注意がインカムに届く。

 

 

きっと沈むのは私の方だ。

 

 

 

 

男オペレーター「交戦開始」

 

 

 

掛け声がコロシアムに響く。

 

 

…

 

 

 

 

 

 

ザ…ザザ…

 

ザー…

 

ブゥゥゥン…

 

 

-シ…しすテむ さいきドう しま…su-

 

 

 

 

闘技場の水面に全身を預けていた私は目を覚ました。

 

 

 

 

上手く体が駆動してくれない。

 

 

 

 

 

左目にノイズが走っている

参った、これではウィンドゥが

上手く確認出来ないし何より

戦闘に支障が出る。

 

 

 

 

 

ノイズの走った左目に身体情報を表示させる

 

 

 

 

 

 

 

-右腕欠損-

 

 

-体液流出-

 

 

-人工筋肉 断裂-

 

 

-フレーム 断裂-

 

 

-義肢接合部より出血-

 

 

-内臓破裂-

 

 

 

 

 

 

 

中々なダメージだと確認する。

 

 

右腕を見やると、ひじから先が爆ぜていた。

 

 

 

 

 

焦げ臭い

 

 

 

 

 

 

 

 

ねじ切れたように欠損していたからきっと

爆発に巻き込まれたんだろう。

右腕の付け根から、青黒い液体が流れていた。

 

 

 

 

血液と、深海棲艦の臓器を動かすための体液が

混じり合って出来た液体だ。

 

 

 

CPUに指示を出し、

任意に筋収縮を行い、

応急処置的に止血を施す。

 

 

 

 

 

 

-止血を確認-

 

 

-専門医師及び専門技師による診断を推奨します-

 

 

-専門医療ホームページへアクセスしますか?-

 

 

 

 

[ YES]

→[ NO ]

 

 

 

 

 

 

 

CPUの提案を却下する。

 

どうせこの後、専門スタッフから新しい臓器の交換と

義肢の交換、体液の補充が行われるのだから

わざわざ医療機関にアクセスする必要もない

 

 

 

 

 

 

直後、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

社長「お買い上げありがとうございます!」

 

 

 

社長「またのお越しをおまちしております。」

 

 

 

社長「今後ともどうか、わが社をごひいきに!」

 

 

観客席の出入り口に立ち、次々と去りゆくお客様に

フカブカと頭を下げる太い胴周りの男性。

 

 

 

 

ああ、社長のお声だ。

 

 

 

前に検査を受けているときにスタッフが零していたのを思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

―あの社長は全く、とんでもない守銭奴だよ。

 

 

―戦争孤児までビジネスに利用しちまうんだもんな。

 

 

―ウチのガキでなくてよかったよ。

 

 

 

 

 

 

守銭奴とは、どんな意味か分からなかったが

 

私とデモンストレーションをしたあの『2体』はどうやら

 

お買い上げされたようだ。

 

 

 

 

 

 

いつも通りだ。

 

体をゆっくり起こす。

両足は何とか動くものの、

腕が無いから上手くバランスが取れない。

 

 

 

痛覚はあってもそれを不要情報として

CPUが処理してしまうため

感じる事は無い。

 

 

 

 

 

 

便利だ。

 

 

 

 

 

 

よっこらせ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-循環血液が不足しています-

 

 

 

-消化器官の機能を抑制し、自然治癒を優先-

 

 

 

-経口排出します-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直立した瞬間、

口から勢いよく体液、唾液、胃の中の物を

激しくぶちまけた。

 

 

 

 

 

体を『く』の字に曲げて

ドボドボと情けなくその場に垂れ流す、

 

 

 

 

 

グボッ…ブフッ…ボタタ…

 

 

ゲエェッ…

 

 

ハァ…ハァ…

 

 

 

 

ひとしきり吐瀉物を吐き終わると

 

2、3回呼吸をして再び直立の体勢をとる

 

 

 

 

 

良し…今度は吐かない。

 

 

 

 

 

 

 

私自身は…だが。

 

 

 

 

 

後で知ることとなったのだが。

その姿にまわりにいたお客様の中に失神した者や

吐く者も続出したらしい。

 

 

 

すると後ろから声を掛けられた

 

 

 

 

???「おーい、これで何人目だよ。

あとどんくらい人にゲロ吐かせりゃ気がすむんだぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

振り返る。

 

私の専門スタッフの女性研究員だった。

 

 

 

 

…

 

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