ドォォン!
=…=
=着弾確認出来ず=
=仰角修正=
=第6射 発射準備に取りかかります=
=放熱=
=対象鎮守府より通信=
=通信対象『イ-505』=
=砲撃の停止を要求しています=
=砲撃を中止しますか?=
[YES]
→[NO]
=放熱及び充填完了 発射しますか?=
→[YES]
[NO]
ドォォン!!
=…=
=目標 着弾観測出来ず 放熱します=
=…=
=対象鎮守府より接近中の物体アリ=
=イ-505です=
=障害として排除します=
…
抜けるような青空
きっと皆さんだったら
『気持ちの良い空ね』とか
お出かけをしようとか
気分を高揚させるんだろう…
これからたった一機で
戦艦に応戦しなくてはいけないというのに
不思議と脈拍は安定している。
脳内麻薬という類のものでもない。
次第に距離が近づく脅威
その体が視界に入り始める
すでに深海棲艦化しているのか?
両手の義手からは
長い二つの砲身が覗いていた
先ほど波止場を吹き飛ばしたのは、
あの砲だろう
一直線に向かっていたベクトルを
直角に曲げる
水飛沫を上げて、方向転換し
ル-101を中心として円を描くように
水面を駆る
その巨体は
ノロノロと緩慢な動作で
こちらに砲身を向け始めていたが
未だに私を視界に入れることは叶わないようだ
速力ではこちらが上だ
ならば、背後をとりつつ近づき
射突機でダメージを与えれば
単機でも勝機はあるはずだ
海面を駆けながら両腕の兵装の機関を
稼働させる
これでいつでも発射できる
あとはタイミングを計算して…
すると先ほどまでこちらを捉えようと
動いていた巨体がピタリと動きを止めた
この機を逃す手は無い
ちょうど、私から見てソレは背
出力を50%に抑えているとは言っても
私の標準速度なら後ろを捕るには
十分だ
円を描くように移動していた足を
その背に向ける
駆!
ガコン
-両射突機 充填完了-
…
=兵装変更=
→[射突機改]
=出力変更=
[20%]→[50%]
…
ル-101[]グルン
!?
砲身が体に収納されて
振り向いた!?
動きが先ほどまでと全然…!!
ル-101[…]ガシッ
胸に手を…!
まずい…こんな無防備な体勢では
ズゴン!
イーゴ「…!!」
-装甲貫通 装甲貫通-
-血液が流出しています-
-貫通物質を取り除き止血してください-
-止血してください-
イーゴ「…!!このっ…!」
黒い巨体が右手を私の胸に手を当てた
次の瞬間
指が体にめり込み肉を掴まれ固定される
そして
その手のひらから
絶対的な質量が発射される
アンカーが胸部装甲を貫いて中の肉をかき分け
背から飛び出す
傷口から、血が流れ警報音が脳内に響く
左目の義眼に次々とエラーメッセージが表示される
この一撃だけで甚大な被害を被っていた
急所は外れたものの衝撃は凄まじく
周りの肋骨を何本か砕かれたようだ
離れなければ
左腕の充填を解除し、右手でル級モデルの
顔面を鷲掴みにする
[Fire]
ゴォン!
右手の平からアンカーを打ち出し
黒い仮面にたたき込む
衝撃により、打ち出した方向とは真逆に
力が働き、背中の方向に大きく飛んだ
距離にして、およそ5m
着水し、再び巨体と対峙する、
だが大きく空いた傷口からドボドボと
赤い液体が垂れ流れる
白いシャツがみるみる内に塗れていく
そこを手で押さえつつ
視線を前に向ける
黒い巨体は再び静かにそこに佇んでいる
黒い煙が顔面を覆っていたが
潮風で流れるとそこには、傷一つついていない様子の
黒い仮面、その両目は
先ほどまで、白濁していたソレとは異なり
青白い光を放っている
深海棲艦化による現象だった
そして、射突機にこびりついた私の体液を
むき出しの口元に持っていき
赤黒く変色した舌でキャンディを
与えられた子供のように
舐め取っている
-筋収縮で止血しますか?-
→[YES]
[NO]
イーゴ(これで止血は出来たが…
ごっそりと肉を
持って行かれた)
胸に空いた穴を確認する
穴の周囲の筋細胞を収縮させて
出血は抑えたがそれまでに失った血液の量は
計り知れなかった
私達、兵器はただでさえ生体部分が少ない
つまり絶対的な血液量も少ない
深海棲艦化とは生体細胞を人ならざる細胞
に置き換えて能力を引き出しているに過ぎず
力を得るため消費し続ければならない
腰のホルスターに手をかける
そこにぶら下がる4本の針の短い注射器
―良いかい?深海棲艦化も勿論だめだよ?
とある女性の声を思い出し、その手を引く
―お願い
…パシュ
小石を水面に投げ入れたような軽い音が耳に届く
視線を戻すと、先ほどまでル-101がいたはず空間から
姿が消えていた
あるのは、ただただ小さく広がる波紋
…
…
パシャッ
-急速接近中の物体アリ 注意しt
ガゴォォォォン
視界が大きくぶれる
ル-101が高速で、自分の死角に回り込んで
強烈なハイキックを叩き込んだと
認識したのは自分の体が水面に沈んでからだった
意識せずともビクビクと痙攣するこの体、
中枢神経をやられたのだろうか
左目の義眼に亀裂が生じ、
大きなノイズが走っている
砂嵐状態だ
仰向けに倒れた体は未だに小刻みに痙攣を繰り返し
コントロールが効かない
わずかに動く右目を動かすと
ル-101がこちらをのぞき込んでいる
首を掴まれ、持ち上げられる
ブン
真上に信じられない怪力で放り投げられる
重力に従い真っ逆様に頭上から再びル-101の元に
落ちていく、
自由の利かない右目が捉えたのは
大きく右腕を引いた黒い巨体
その瞬間はやけにスロウに見えた
右手の平から覗く先端部が露出したアンカー
巨体の前を私の体が通り過ぎ
ちょうど腹部が彼の懐の位置に重なる
そして―
バゴン
重く鈍い音
アンカーが腹部を叩き、衝撃が内部を破壊し
生体の臓器と人工の臓器が機能を失い始めるのがわかる
打ち出されたソレの方向に従い体が吹き飛び
水切りのように二回、三回と水面にぶつかっては跳ねる
頭部が水面に激しく擦られ、それがブレーキとなる制止力
を生みだし、やがて私の体は止まる
仰向けに体が沈み
ジワジワと己の周りに赤いインクが広がる
体の痙攣は収まったが、今度は別の箇所がひどい
ダメージを受けた
アンカーは私の腹部、腹膜を裂いた
ようやくいう事を利き始めた右手で
バックリと割れた腹を撫でる、
ヌルヌルとした粘度の高い液体の感触を感じとり
指先に引っかかるが何かをつまむ
首を持ち上げ、確認する
―腸がはみ出ている
おそらく人間のままであったなら
この時点でショック死は確実だ
意識はある
まだ戦える
早く体勢を立て直さねば
イーゴ「…」
…体が動かない