※この作品はR-18です。

ゲームオーバーから始めようか   作:モモンガ

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H-6 世界級アイテムの増産を解明

 大浴場の方で身奇麗にされた後、服を着る。

 不思議とちゃんと歩けるものだと感心する。

 屠殺場の方は片づけが終わり、辺りはとても綺麗だった。

 クライムと合流する頃には表情も落ち着いていつもの笑顔に戻れた。

 辛いのは最初だけだろう。最終日を乗り越えて、次の特訓までに精神を鍛える必要がある。

 肉体的には問題は無い。ただ、単純作業の恐ろしさはどうにもならないだろう。

 権謀術数(けんぼうじゅっすう)に長けていると思っていた自分はまだまだ実力が足りないようだ。

 宿泊施設に戻り、粛々と昼食を食べる事ができた。

 まだ時刻は昼頃だ。一日経ったわけではない。

 空いた時間は瞑想(めいそう)などに費やし、頭の中で数字を数えたり、暗記した事柄の復唱をする。

 日が暮れるころにヤントラから羊皮紙と筆とインクを貸してもらい、文章の清書などを行(おこな)う。

 差し障りの無い文章の後は軽い日記。

 さすがに自慰行為などは書けないが、朝から行動したことを書ける範囲で書く。

 モンスターと戦った事も書けないが感じた自分の内面などを文字として表現していく。

 迎える三日目は赤帽子の小鬼(レッドキャップ)というモンスターが数体ほど待機していた。

「とにかく倒せるだけ倒してください」

「はい」

 今日は朝から身体が軽い。

 屈強な戦士のようには行かないが武器はちゃんと握れた。ただ、モンスターに刺さる感触はとても重かった。

 ガンガンガンと叩きつける様に振り下ろす。

 大振りのせいで体力が一気に失われるのかもしれない。だが、大振りでなければ刺さらないほど自分の力は弱い。

 無駄な力は抜いてザクザクと斬りつけていく。

 頭を狙うより首の方が確実、に見えてきた。

 ザクザクと斬りつけると血が噴き出してくる。

 半分くらいでモンスターは倒れた。

 だが、少し経ったら立ち上がってきたので更に斬りつける。

 倒れたからと言っても安心できない。確実に倒さなければいけない。

 赤帽子の小鬼(レッドキャップ)の首を跳ね飛ばす。

 そのすぐ後でラナーは嘔吐する。

 一匹は倒した。だがまだ後ろにモンスターは残っていた。

 失禁しながらも倒せるだけモンスターを倒し続ける。

 二時間後には十匹は倒しただろうか。

 休憩を挟んで一列に並んだ赤帽子の小鬼(レッドキャップ)を倒し続ける。

 一撃ではさすがに倒せなかったが確実に多くのモンスターは倒せただろう。

 一時間後に休憩に入る。

「……お願いがあります」

「はい」

「私自身と戦わせてください。三十人ほど」

 ラナーの願いにヤントラは素直に応じる。

 疲れの為に痛みはあまり感じないが浮遊感はあった。

 更に一時間の休憩のあとラナーの望む敵が用意された。

 全裸の王女ラナーの軍勢。

 本来は記憶の転写がされておらず歩く事すら出来ない状態なのに、どれも優しい微笑をたたえて近づいてくる。

 それがとても気(・)持(・)ち(・)悪(・)い(・)。

「疑問はありますが……。えっと、こんにちは」

 まずは呼びかけてみた。誰も返事を返さない。

 近づいて膣などを触ったり、剣で突き刺してみる。

 表情は変わらない。

「……これはなかなか……」

 相手の膣を刺激し続けると潮を噴いた。

 指を深く突き入れると破瓜(はか)の血が内股を伝(つた)う。

「自分の身体とはいえ……。女の身体とは男性を刺激するもののようですね」

 ヤントラは黙って見守っていた。

 変に声をかけない分、真面目な特訓だと思ってくれているのだろう。

 自(・)分(・)殺(・)し(・)の戦いが始まる。

 手足を切り落として首を撥ね続け、最後の一体は組み伏せて胸を触ったり接吻したり互いの性器をこすり合わせて共に絶頂したり、膣に舌を入れて味や感触を確かめたり、女の身体というか自分の身体を徹底的に舐(ねぶ)り続けてから殺した。

 自分自身と抱き合う事など経験できない事だろう。

 普通のモンスターよりも憎しみや抑圧からの開放を込めた戦いだったかもしれない。

 転がる肉片は未来の自分の姿のようだ。

 痴態を見られていたが不思議と恥ずかしさは無かった。

 他の女性も生命の危機を感じて痴態を晒しているのかもしれない。それにいちいち反応するほどヤントラは野暮な人間ではないだろう。

 全ての敵が死んだ後は身体を洗われ、屠殺場は綺麗に掃除される。

 その後、ラナーはクライムの複製を依頼した。

 最初の肉体がオリジナル。それだけを確認して複数体はヤントラに進呈する。

 屠殺場に残されたクライムは寝ていたのだが、ふいに起き上がり片膝をつく。だが、こちらからの呼びかけには何も答えない。

 オリジナルの記憶保持者は服を着せられ風呂場で待機していてもらう事になった。

 偽者との区別は起きてもらわないと判断が付きにくい。作業を行(おこな)者しか分からないかもしれない。

「これは……偽者でよろしいのですよね?」

「身体は本物ですが、偽物というよりは複製ですよ」

「事が終わったら汚れた身体を……、取ってください。……大丈夫ですわよね?」

 自身の首をかき切るような仕草でヤントラに確認を入れる。

「はい」

 二人っきりと言いたいところだが精神的に発狂するかもしれないのでヤントラに静寂の魔法を展開してもらい、離れた位置に待機してもらう。

 待ち望んだクライムの身体。

 鍛え上げられた青年の胸板は厚くなっていた。

「ああ、クライム。返事が無いのが寂しいですが……。男の匂いがしますよ」

 誰かれはばかる事も無くラナーはクライムに口付けし、互いの舌を絡めて行く。

 抵抗しないクライムの身体を愛おしそうに嘗めていく。そうしてクライムを床に仰向けで寝かせる。

 汗臭さはオリジナルゆえかもしれない。

 無抵抗は味気ない。多少は動いてほしいところだ。

 自制と願望がせめぎ合う中、クライムの小さな男性器を咥(くわ)え、丁寧に舌で嘗めていく。

 肉体としての反応は正常のようで陰茎(いんけい)が膨張してくる。生理現象も起きるのだから不思議は無いだろう。

 充分に大きくなって立派な姿を晒すクライムの陰茎に満足し、唾液で濡れた肉棒を自身の純真が守られていた女性器に突き入れていく。

「……あ……ふぅ……」

 疲労などのおかげか破瓜の痛みは酷くなく、ゆっくりと肉の壁に入り込む感覚を味わう。

 初めての性行為。

 待ち望んだ結果の一つ。

「あは……。はは……」

 誰に教えてもらったわけでもなく自然と腰を上下させる。

 生物として女として気持ちのいい快感を得る為の動きが植え付けられているかのように。

 自然と息遣いが荒くなる。

 発情期に狂うメスのように。

 ただ、初めての交尾のせいか、長くは続けられなかった。

 お腹の中で何かが吹きつけられる感覚があり、それがクライムの射精だと理解する。ただ、自分はまだ絶頂に至っていないので物足りなかった。

 もう少し長く耐えてほしかったのに、と口が自然とへの字になる。

「はぁ……。すみません。回復魔法とかで続けられませんか?」

「分かりました」

 射精によって萎(な)え始めた男性器は回復を受けた途端に屹立していく。それが分かるとラナーは苦笑する。

 疲れさえ取れれば一日いっぱい交尾し続けられると。

 ラキュースはそうして発狂じみた生活を送っていたのだろう。終わりの無い快楽の地獄は精神を狂わせる。

 自分もやりすぎればラキュースの二の舞になるかもしれない。

「……出来ればクライムに色々と動いてほしいのですが……」

 自分が望むクライムの要望を出していく。

 聞き届けたヤントラが退出してすぐに変化があった。

 ラナーの腰をしっかりと掴む。それは絶対に動かないはずの人形に意思が宿ったような恐怖があった。

 だが、それは自分が要求した結果だ。すぐに受け入れる事ができた。

「ああ、クライム……。まだ続けましょう」

 接吻すれば相手も舌を絡(から)めてくる。

 腰の動きが早くなり、ラナーもようやく絶頂する事ができたが、それで終わりではない。

 その後は更に絶頂に至った後で床に組み敷かれ、両足を広げられる。

 胸を揉まれたり、吸い付かれたりしつつ腰の動きは早く三回ほどの連続的な射精と絶頂が続く。

 ヤントラが居ないのに射精後に萎える筈の陰茎は屹立したままのようだ。

 ラナーが疲れて動けなくなっても相手は動く。

 犬のような体勢にさせられて交尾が続き、快感で犬の鳴き声のような嬌声が出てしまう。

 女性器に肉棒が出し入れされる度に快感が刺激されて気持ちよかった。

 自分では自制が働き、ためらうところが相手はお構い無しに動いてくる。

 男女の営みの神秘に触れて快感に溺れそうになる。

 膣への射精が一段落すると今度は口に陰茎を入れられる。今は頭の中が快感で満たされていて拒否はしなかった。というよりは出来ない状態かもしれない。

 二度ほどの射精が続く。初めての男性の精液はとても苦(にが)った。

 呼吸がしにくくなり、さすがに吐き気を感じてきたので性行為をやめようとしたが、クライムの力は強く膣から精液がこぼれても構わず続けられた。

 途中でさすがに嘔吐したが止まらない。

 自分が無抵抗なら永遠に交尾され続けるかもしれない。口と膣へ交互に射精するクライム。果ての無い拷問のように続いていく。

 こちらも負けじと陰茎をしゃぶりつくすように口に含み、クライムの顔に女性器をこすりつける。すぐに彼は膣に舌を入れたりして粘液を吸い尽くそうとする。

 自然とラナーは陰茎の刺激の仕方を覚えて先端部分を口に含んだまま指で刺激し、射精を促す。途中で何度か精液の噴射を目撃し、匂いのきつい白い粘液に驚き、顔がにやける。かなりの量を出しているはずなのに陰嚢(いんのう)の中はどうなっているのだろうかと不思議に思うほどだ。代わりにラナーは噴き出す潮をクライムに飲ませていく。

 苦い精液をどれだけ飲んだのか分からないうちに、途中で意識が無くなったようだ。

 呼吸が苦しくなったところまでは覚えている。

 美しい王女の肉体は貴重な素材なので取れるものは男性化(性転換)させても搾取する。

 大きな容器に満たされるラナーの部位。美しい肉体は貴重な資源だ。

 ラナー同士の性行為。

 それは究極の近親相姦。

 背徳にまみれた行動にヤントラの煩悩は反応しているようだ。

 美しい肉体同士が互いを求め合う。うっかり見惚れてしまいそうになるほどだった。

 王女で遊びすぎて身体に異常が発生しては困るので数回程度でやめておく。

 他人を弄(もてあそ)ぶアバターではない。

 

 抑圧された煩悩が解放されているだけだ。

 

 次にラナーの目が覚めると大浴場の中だった。

「……あ……、止めてくれたのですね……」

「要望どおりに。身体の方は一日休めば大丈夫だと思います」

「……汚れた身体は……?」

 と問いかけはしたがバチン、バチンと何かを叩くような音が聞こえてきた。

「そこにあります」

 ヤントラが指し示す方に顔を向けると一心不乱にクライムと交尾を続けるメスが居た。

 互いに身体を求め続ける発情の止まらない獣にしか見えない。

 腰の動きが異常に早いし乱暴に見えるほどだ。膣や口から精液が汚らしく辺りに飛び散る。猛獣同士の激しすぎる交尾。

 それは不快な気分にさせる光景だろう。吐き気が蘇るが胃液しか出ない。

 所詮は複製。別物なのだと自分を納得させる。

 呼びかけても返事は返さないし、振り向かない。交尾をやめようともしない。

「自分の手で処分するといい」

 渡された剣でまず自分の複製と思われる女の顔を削ぐ。

 性行為している複製の顔は鏡でも確認したくないほど醜く歪んでいる。発情した獣そのもの。それは先ほどまでの自分の顔だ。

 悲鳴は無く、削がれた部分から血が吹き出る。床に転がる顔の一部は気持ち悪い肉や皮の塊にしか見えなかった。

 それでも二人は愛し合うのを止めない。

 女の首を撥ねると活動を停止するがクライムは死んだラナーの複製の膣に陰茎を出し入れし続け何度も射精する。

 口内射精を試みようとしたのか。頭部が無い事に気づいたクライムは首の切り口に開いている食道に陰茎を差し込み、血だらけになりながら射精を繰り返す。

 おぞましい性行為にラナーは思わず嘔吐した。しかし、お腹は空なので胃液も出にくく、嗚咽のような声が出た。

 主と性行為する姿勢は一瞬、忠誠心の現われに見えてしまった。

 自分が望む愛の形は気品が伴っている方がいい。

 嘔吐の苦しみで涙が出てきたが、しっかりと現実を目に焼き付ける事にした。

 得体の知れない趣味の敵に捕らわれれば目の前の光景が現実に起こりうる事も考えられる。その時、クライムはきっとラナーを獣のように犯しつくすだろう。

 自分の命が尽きるまで、は常識的に考えれば無理かもしれないが。

「……いつか本物と致しましょう、クライム……」

 そう呟いてクライムの首を撥ねる。首が無くなったにもかかわらず身体はしばらく性行為を続けた。それから少し経って動かなくなった。

 交尾して絶頂と射精しながら命を終える肉の塊と化した一組の恋人の末路のようだ。

「……確かにやりすぎは人を堕落させるようですね。彼らの魂は……、何処へ行くのでしょうか?」

「一般的には倒した人の経験となります。後はただの残骸です。魂とは定義しにくいものですが……、草木に宿る事もありますよね。魂喰らい(ソウルイーター)というモンスターが居るくらいですから魂を貪(むさぼ)り食らうモンスターの餌食という事もあるでしょう」

「夢の無い話しですわね」

 それでも自分は生きている。いや、そう思い込んでいる複製体かもしれない。

 自我はあるが確証が無いのは不安だ。

 模索しているのだから本物だといえるのだが、信じきれない。

 複雑な思考を完全再現できるのかという疑問がある。その点で言えば本物と言えなくもない。

 自分と戦うのは精神衛生上、良くないことだろう。

 今回限りにしておこう。

 死んだ残骸は仮面のメイド達によって別室に運ばれていく。

 伝え聞いた情報では死体を捨てる場所というものがあり、金貨の足しにされているとか。

 それが宝物庫の天井に設置されている箱のようなアイテム。そこに残骸は捨てられるのだろう。

 おぞましくも便利なアイテムがあるものだと感心する。

 

●↑●

 特訓を終えて地上に戻ると新鮮な空気がラナー達を出迎えた。

 強くなったかは分からないが、徹底的に強くなるには一ヶ月以上はぶっ通しで特訓する必要があるらしい。

 通しで特訓するほど王国領内にはモンスターは居ない。だから、簡単には強くなれない。

 屠殺場はその状況を打破できるからこそ短期間の能力上昇を容易にしているのだろう。

「クライムも頑張ったのですね。私、甘く見ておりました」

「ラナー様こそ、すっかりおやつれになられて……」

「王女がモンスターを倒すのですから……。帰ったらちゃんと食べますよ」

 二度と体験したくない。それが正直な気持ちだった。

 だが、強くなると決めたのだから簡単に覆すわけにはいかない。

 何の為に強くなるのか。それは今は考えることではないだろう。

 職業(クラス)を得るといくつか特殊技術(スキル)というものを得ることが出来る、と聞いている。

 今の自分も何らかの特殊技術(スキル)によって人格が整形されているのかもしれない。ならば新たな特殊技術(スキル)は自分に何をもたらしてくれるのだろうか。

 愛する心も何かの特殊技術(スキル)であるならば、それを得ない人はとても悲しいのかもしれないし、それもまた人の生き方と言えるのかもしれない。

「では、ヤントラ様。私の部屋まで……」

「すみません。用を済ませるまでお待ちください」

「こちらは先に移動して城の近くに待機しております」

「分かりました」

 少しフラフラしながらもラナーはクライムと共にゆっくりとした足取りで馬車に向かう。

 ヤントラは地下の様子をざっと確認してから強欲を使ってみる。

 殆ど経験値が手に入らない。

 ならば、それはそういうものだと割り切るしかないのだろう。それから量産を始めて一時間後にラナーと合流する。

 ヤントラは良くも悪くも目立つので外套を頭から被り、クライムと共に城に入る。

 お忍びの外出のお陰か、意外と簡単に入る事ができた。

 クライムと別れた後、ラナーと共にヴァランシア宮殿の王族の住居に向かった。

 疲労の顔を見せるわけには行かないのでそそくさと自室に向かうラナー。

 目的の部屋に入った後、ラナーはヤントラを寝室の人目につかない場所に隠れてもらい、湯浴みの為に退出した。

 ラナーが戻ってくる頃に現われるメイド達を合図で襲うという事態になったが誰も死んでいないので問題ないです、という笑顔のラナーの言葉があった。

 日も暮れて夜食が終われば就寝の時間だ。

「魔法は使わずに頑張って下さい。謁見の間の窓や抜け道の場所はこちらになります」

 強引に壊されては困るので簡単な室内の状況を記した図面を受け取る。

 隠密の部下を控えさせる為に用意している場所というものがある。それはその中の一つでもある。

「頑張ります」

「終わったら戻ってきて下さいね。ここなら朝まで安全ですから」

「はい」

 暗殺者(アサシン)の職業(クラス)を持っているヤントラにとって夜間の活動は特に問題は無い。

 静寂(サイレンス)に代表される隠密系の魔法は使えない。

 ひとたび使えば『警報(アラーム)』が鳴り響く。

 城の警備の様子もうかがえるので色々と情報集めは出来るだろう。

 あと、王は玉座で眠ったりしないので自分も寝ないように気をつける必要はあるだろう。

 城の警備は交代制だ。通路には常に誰かが居る。

 ラナーが就寝した後、念のために室内の調査を開始した。引き出しなどを開ける必要ないのですぐに終わる。

 続いて窓の外に出る。

 城の中を移動するのは得策ではないので外壁を伝っていくしかない。

 一流の盗賊(ローグ)ならば容易(たやす)い事だろうが盗賊の真似事はあまり経験の無いヤントラにとっては大変な重労働だ。とはいえ経験が無いわけではない。

 他の都市や帝国、竜王国の隠密作業は経験済みだ。

 漆黒の盗賊が夜空をかける。

 不可視化などしなくても暗黒に似た世界では黒い装備だけで事足りる。

 もちろん『闇視(ダークヴィジョン)』などを持つ者に発見されるおそれはあるだろうが、視界に入らなければいいだけだ。

 盗賊職には隠密、軽業、脱出術、知覚に登攀(とうはん)、手先の早業。はったりなどもあるらしい。

 交渉や言語学、真意看破。

 複数のクラスを持っているからまだまだ他にもスキルはあるのだが、豊富な技術は素晴らしい。

 移動自体も登攀(とうはん)も難なく進めるのだが、城の警備が手薄というわけではないだろう。

 中の襲撃の他に外からの襲撃にも備えているはずだ。

 実力差があるから容易いのかもしれないが、これがナザリックなら既に無数の探知系、関知系モンスターに見つかっているだろう。

 宝物庫も万全の体制で臨(のぞ)んでいるから無防備に見えて地下への入り口は決して容易に現れない。

 ただし、天井ぶち抜きのような強引な手法には弱いのだが。

 一般の職人が作ったものだから仕方が無い。

 そんな物思いの果てに謁見の間の側まで到着できた。

 来る事自体は容易(ようい)だろうが侵入しなければならない。空気の逃げ道はあるし、室内に光りを取り込まなければならない。

 無ければ作るだけだ。さすがに装飾華美の城を力技でどうにかなるわけもなく。

 やったとしても目立つだろう。

 壁は一般住宅とは違うだろうし。無難に窓からだな。魔法も使えないから。

 他の隠密系に見つかる前に侵入する。

 室内は完全に闇(やみ)に閉ざされていたが目的の玉座の周りには誰も居ないようだ。

 念のために辺りを調べていく。当然、足跡などは残さない。

 玉座に黒いシーツを被せる。

 作業効率を上げたいところだが頑張って急いだ。

 数回は訪れなければならないと思うとため息が出そうだ。

 見張りに注意して作業を一旦終える。

 あとはラナーの元に戻れば終了だ。

 物取り、という目的は無いが相手を説得させるのは大変だ。

 一夜を明かした後でラナーに残念なお知らせを告げることになる。

「……黒き王女(ブラックプリンセス)……ですか?」

 黒き王女(ブラックプリンセス)のレベルは2だが、既に取得されていた後だった。

 王女(プリンセス)の特殊技術(スキル)として、はったり、変装、動物使い、騎乗、隠密と色々あり、上級職と言えるのかは不明だが黒き王女(ブラックプリンセス)は全体的に悪に偏った職業(クラス)のようだ。

 他に取得していた職業(クラス)はレベルは1だが死刑執行人(エグゼキューショナー)というものがあった。

 首を切断しすぎたのが原因かもしれないが。

「あはは。中々に楽(・)し(・)い(・)職業になれるようですね、私は」

 得られる職業に売春婦や狂人関連があると思っていたが、ラナーの場合は見当たらない。

 性に貪欲な一面はクライムを求めている証拠かもしれない。

 年頃の女であり動物的に発情してもおかしくないとラナーは自己分析する。というよりどうやって知りえるのか、不思議だった。

 玉座がヒントかもしれないという予測は付くのだが、なにをどうしているのやら。意外と秘密を守るのが上手い。

 自分でもこっそりと座って呪文らしき言葉などを思いつく限り色々と唱えてみたのだが、何も発見できなかった。

 試しに魔法や特定の言葉を実際にランポッサ国王に言ってもらったこともある。

 ヤントラは出来るだけ王女の希望は叶えてあげたいところだ。

 二千もあると変なクラスが紛れ込むのは仕方が無いだろう。

 この世界特有だとすればもう五百くらいは追加されているかもしれない。

 やり直しには殺害による五レベルダウンが必要だろう。弱体化によって辛(つら)く厳しい戦いが繰り返されてしまうかもしれない。

「……不思議と悪くないと思います」

 穏やかな表情で希望のクラスを書いていく。

 次回の特訓予定も伝えて解散となった。もちろん紙に書いただけでは強くなれないことは伝えた。

 

●↓●

 宝物庫に戻ったヤントラは闇雲な願いでは非効率的かもしれないと判断し、発想の転換を図る事にした。

 屠殺場の中心に『強欲と無欲』を置く。

 今回の為に用意した一万体ほどのアンデッド達に共(・)通(・)の(・)願(・)い(・)を(・)同(・)時(・)に発動させてみる。

 超位魔法による大規模な願望。

 五レベルドレインで不可能を可能としてみる。

 シャルティアにかけられた効果が世界級(ワールド)アイテムによる影響であった為に願いを聞き届けてもらえなかった事は聞いた。

 今回の方法で結果として一万個の『強欲と無欲』が現われても困るので試験的に色々と試して見る事にした。

 世界級(ワールド)アイテムの効果は打ち消せない。それが通説だし、設定ではそうなっているらしい。

 では、五(・)万(・)レベルドレインの願いならどうだろうか。世界を破壊するほどの願望と世界級(ワールド)アイテム。どちらが上だろうか。

 単純に一万体を用意するのはヤントラでもキツイことだが無駄に終わっても経験値は増えるので問題は無い。

 既にレベル100分は溜まっている。

 超位魔法が発動してから『強欲と無欲』が物凄く発光した。このまま消し炭になるかもしれないな、と思った。

 

 意外と思えるのかは分からないけれど、自分はか(・)な(・)り(・)淡(・)白(・)な(・)思考で結果を見ている事に気がつく。

 

 光量が多くて熱い気がする。

 聞き届けられなければ何も起きないのが定説だ。それが何かが起ころうとしているという事は成功を意味しているのだろう。

 こんなチームプレーはゲーム時代ではありえないだろう。

 複数個手に入れられる世界級(ワールド)アイテムがあるくらいだ。

 決して不可能ではないだろう。

 一万体では少ないかなと思ったが結果は満足できるものだった。

 二対(につい)の『強欲と無欲』の下にあるタイルが赤く溶けたような状態になっていた。熱量に晒されていたようだが、結構危険な行為だな。

 燃えやすい世界級(ワールド)アイテムなら危ないかもしれない。

 乾拭(からぶ)きなどして綺麗にした後で鑑定する。アイテムの効果、内容などの結果は異常なし、だった。オリジナルももちろん確認しておく。

 ならばと、メイドに複製された方を運ばせて残りを続けさせた。

 世界級(ワールド)アイテムに対抗するには大雑把ではあるが三千体以上は必要らしいことが判明する。

 

 15000レベルドレインと世界が同等。

 

 複製された世界級(ワールド)アイテムをエクスチェンジ・ボックスに放り込むと膨大な金貨が湧き出てきた。

 数億枚分かもしれない。部屋が潰れるのではと思い、二階部分の扉は開放した。

 数千体規模で一つの願いというのは実に非効率的だ。それは何とかしたいところだ。

 複製された『強欲と無欲』を実際に使用して効果の差を確認した。

 結果としては特に問題は無かった。ならばオリジナルは無用だ。

 充分に冷えたところで綺麗に拭いた後、包みに入れる。

 隣りの宝物庫に移した後で色々と試す。一万体から三千体になった事で発光はだいぶ抑えられたし、本物の近くに複製が転がる事はなかった。

 呼び出した、または儀式する部屋を基準にしているらしい。

 装備していると願いは聞き届けてくれないようだ。所持か装備しているアイテムでは駄目だというのが分かる。なのでアインズの持っている世界級(ワールド)アイテムはおそらく引っこ抜かなければ駄目だろう。無理して欲しいとは思わないので諦める。

 色々と試していると二十個ほどに増えてしまった。次の日には百個ほどに増えたのでメイド達を避難させてから一気に十個ほどエクスチェンジ・ボックスに放り込んでみた。怒涛の勢いで金貨が噴き出したので扉を閉めた。

 後日、オリジナルの『強欲と無欲』をアインズの自室に届ける。経験値がまた溜まっている事に疑問を感じていたが鑑定に異常は無く、安心したようだ。

 お互いが邪魔しない内はケンカも起きない。

 複製の方は壊れたところで気にはならないがオリジナルは慎重に取り扱った。

 

●↑●

 地上の開拓も少しずつ順調に進む頃に次の目標を探さなくてはならないだろう。

 遥か南方の砂漠にあるという空に浮かぶ城。素材を手に入れるのに最適だが守護者が居るらしい。

 それも物凄く強いとか。

 聖王国や近くの大森林も行かなければならないだろう。

 よその国も気になるが、我が家の妻の身も忘れてはならない。

 カルネ村から両親の手紙が届いたのか、懐妊を祝福する内容に彼女(ラキュース)はうっすら涙を浮かべていた。

 あと数ヶ月で臨月らしい。滅多に帰宅しないせいか、少しは労わってやらなければ。

 お腹の大きさからいって双子らしい。

「歩くのも大変そうだね」

「栄養も取られているから頑張って食事を摂っているけれど……。辛い……」

 出産前の母親は結構弱音を吐くものらしい。

 栄養補給の為に太ってしまうようだが、出産後は一気に血の気を失うので命の危険が伴う。

 ルリマリスとガガーランがかいがいしく世話を担当している。

 それから上火月(七月)を数日ほど過ぎた。

 つまりはこの世界に来て一年が経ってしまったということだが、ヤントラ自身には実感はなかった。

 カルネ村から村長のエンリが小鬼(ゴブリン)と共に訪れた。

 作物を育てている色んな村から来ていた農民たちと触れ合い始める。

 施設の開いた土地に様々な植物が植えられ始めていたが、それらは根を張って外壁を侵食しないものに限定されていた。

 何処からか飛んできた植物の種が発芽して花などを咲かせていく。

 新たに仔牛生産の為の牛などを放牧。牧草は必要ないのだが寝床用に大量に敷いていた。

 傍目(はため)からは大規模農園に見えなくも無いのだが、地下はおぞましい宝物庫『マグヌム・オプス』である。

 カルネ村で生産している一部の作物や植物の種などを持参してきた。

「大量に必要かと思ったのですが……。一袋分でいいんですか?」

「実験だから少量でいいんだよ。ありがとう」

 保存液に浸けていたものは今のところ発芽は確認されていない。専用のアイテムだからなのかもしれない。

 小鬼(ゴブリン)達は武器を持つ手に力を込めて辺りを警戒していた。

 ここに居るだけで身震いする、という意見が多数。

「とんでもなくヤベー!」

「早く帰りましょうよ、姐さん」

「今日は訓練に来たの。小鬼(ゴブリン)さん達は宿舎で休んだらどうお?」

「ええっ!?」

 一斉に不満の声を上げる十人以上の小鬼(ゴブリン)たち。

「野生の小鬼(ゴブリン)を倒すのは可哀相だから、どんなモンスターがいいかな。とにかく、君たちは宿舎でくつろいでいなさい。食事はどうしようか……。農家の人に頼んで作ってもらおうか」

 常駐する農家の人達に小鬼(ゴブリン)達の食事の面倒を依頼した。

「風呂場は使っていいが、掃除はちゃんとするように」

 小鬼(ゴブリン)達は心配と不安がない交ぜとなっていたが、どうしても施設本体には近づけない雰囲気を感じる。

 並みのモンスターどころではない恐ろしい建物の入り口に思えて仕方が無い。

 そんな施設が存在していていいはずがないとそれぞれの身体が訴えているほどだ。

 

 急に気弱になった小鬼(ゴブリン)を尻目にエンリは施設内に入った。

 村長として小鬼(ゴブリン)達を使役する者としては好都合だった。

 彼らに出来ない事をすれば誰が主(あるじ)かはっきりする。

 そんな軽い気持ちがあったのだが地下に降りた途端に足が震え始める。

 雰囲気が地上とはまるで違う。

「……これではラキュースも入れるのが大変そうだ」

 歩みが遅いエンリを抱えて屠殺場に一気に向かう。

 恐ろしいのは地下一階だけ。それ以降は身体が楽になった。

「農民の君を強くするのに相応しい武器は……、鎌かな……」

「こ、ここでンフィーは特訓したんですね」

「努力家だったよ。最初は恥ずかしがっていたが……。あまりに強くなると人生が虚しくなる。かといって弱すぎても駄目だろう。ここでは経験を積むのが目的であって筋力は二の次だ。一日で最強にはなれないよ」

「はい」

「それでどんな風に強くなりたい? 出来るだけ希望を叶えよう」

「農家(ファーマー)として村の発展に貢献したいです。武器を持って敵を倒したいわけじゃないけれど……。皆を率いていける自信が身に付くような強さが欲しいです」

「とりあえず、希望のアンケートだ。書いたら強くなるアイテムじゃないから。魔法を覚えたいのに戦士職になった、という事態を防ぐ為にね」

 椅子とテーブルを用意された。

 エンリは必要事項を書き加える。

「この施設は屠殺場。モンスターを殺しつくす場所だ。壁際に居るメイドさんは食事担当だ。近くにトイレと風呂場がある。あと……」

 合図すると複数の人物が音も無く現われる。

 現われる仮面を付けたメイド達はすべて裸足であった。

「ンフィーレア君より強い方がいいのかな?」

「そ、そうですね。……少しだけ」

「早くても一週間はかかりそうだが……。村は大丈夫か? 往復が必要なら三日ずつでもいいぞ」

「……一週間? その期間で強くなるんですか?」

 随分と早いなとエンリは疑問符を浮かべる。

「ある一定までは早いものだ。ただし、それはそこまでのモンスターが存在しなければ成り立たない。疑問に思う多くの者が失念している事だ。一週間も倒し続けられるほどのモンスターが居るのかな?」

 そう言われてしまえば居ないと答えるだろう。

 居たとしても倒し続けられるほどの大量の数は見たことが無い。

 森に行けば居るかもしれない。それでも膨大な数かと言うと疑問に思う。

「毎日一万体を一週間。充分強くなるだろう?」

「……そうですね」

 一万体はありえない数字ではあるが、それがありえるならば不可能ではないかもしれない。

「一日ごとに睡眠は取らせる。過酷な方がいいのだが、弱いうちは誰もが最初、具合を悪くする。普段、大人しい人間が強くなったらどんな風に変わるのか、それは興味がある。例えば王様や皇帝を鍛えたら、どうなるんだろうね」

 過酷な特訓なのはなんとなく分かった。

 それから王様たちが強くなるとどうなるのかは想像できない。筋骨たくましい姿になるのではと、想像するに留まる。

「物凄い筋肉質になるわけではないが、少しは筋力が上がるかもしれない。身体を動かすから当たり前だが……。一週間ほどエロいことだけするとどんな風になるか、それはちょっと興味あるかも」

「それはお断りします」

 はっきりと言い切った。

 

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