ゲームオーバーから始めようか 作:モモンガ
一通りの要望を書いた後、テーブルは消えた。
「これから用意するのだが、事前に用意できないから大変だ。軽く数十体といこうか」
「ぶ、武器は?」
「ちゃんと用意するよ。あと、エンリを痛めつけるわけではないけど、気をしっかりと保つように」
ヤントラが隣りの部屋に行った後、メイド達に見られながら待つ事となった。
彼女たちは声をかけても答えてくれない。近づこうとすると逃げる。
待っている間に一人でも追いつこうとするが足捌きが見事ですべる様に離されてしまう。
それから用意が整ったヤントラが姿を見せる頃には息が上がっていた。
「じゃあ、まずは裸になってね。服が汚れるから」
「えっ?」
「洗ってもいいよね? 返り血が酷いと思うから」
疲れているエンリなど構わずにヤントラは言い、周りのメイド達がエンリの服を脱がしていく。
見事な連携と力の強さになすすべが無い。
ものの数分で裸のエンリが床に転がる。さっきの追跡で疲れたせいもあるだろう。
「ここで垂れ流していいから、モンスターを倒していくように。数多く倒すのが目的だ」
小ぶりのロングソードを渡されたエンリは胸などを隠すように立とうとしたが、下半身も隠したかった。
恥らう
他にも様々な見た事のあるモンスターが出てきた。
「特訓用のモンスターだ。遠慮はしなくていいよ」
「この格好で?」
全裸でンフィーレアも特訓したのだろう。
他にも利用者は裸で行った可能性がある。
特訓なのだから恥ずかしがっている場合ではないのだろう。
「……女性でここで漏らしたりしたんですか?」
「男女問わずね。トイレは見学者用にしか使ってない気がするね」
「一人ずつですか?」
「男女混合で十人近く居た事もあるよ。恥ずかしいだろうけれど……。掃除しやすい床にしてあるから遠慮は要らないよ」
タイル張りは返り血だけではないようだと思い、全身が震えてくる。
もう尿意を感じる。
「汚れてもメイド達が洗ってくれるから心配は無用だ」
「……鬼ですね」
だからこその特訓なのだろう。
一週間という短い期間。楽なわけは無いなとエンリは思っていた。
武器を持ってモンスターを倒すのだが、尿意のせいで足が震え、我慢しているせいか、身体の震えが止まらない。
我慢する時間が長くなるに連れて具合が悪くなってくる。
裸を気にしても意味が無い事に気づいても恥ずかしいものは恥ずかしい。
ヤントラは壁際で椅子に座って見守っているし、お腹はグルグル鳴っている。
緊張のために体調がおかしくなってきた。
動くと危ない、そんな気がしてきて武器が握れない。
それでも助け舟は出ない。つまりはその場で漏らせ、という事だろう。
「……ぐっ、あっ!?」
足がもつれた途端に尻から盛大に便が吹き出た。
物凄い音を響かせて。
その後で尿が勢い良く床に打ち付けられる。
死にたい気持ちで涙が出てきた。
内股から足の殆どが温かい便に汚れていく。物凄い匂いが漂ってきた。
動くたびに勢いの付いた便が吹き出る。
一気に出た後は不定期で少しずつ、というところも恥ずかしい。
ヤントラは手を叩いて合図を送ると複数のメイドがエンリの側に行き、お湯を床にぶちまけて素早く掃除していく。
二人がかりでエンリの身体を掃除していく。
汚れたものは別室に運んでいくが別のメイドがエンリの身体を押さえつける。
更に別のメイドがエンリの肛門に指を入れて激しく刺激する。
「ぎゃっ!?」
それが少し続くと勢いの付いた尿が噴き出し、便も出た。
出尽くした後でまた掃除役が来てエンリの身体を拭いていく。その後で温かいお湯をかけられる。
「綺麗になったところで戦闘再開だ。エンリ、しっかり前を向け」
あられもない姿を晒して涙が出る思いだった。
少しの間、床にうずくまって泣き続けた。その間にメイド達がエンリの背中をさすったり、タオルをかけたりした。
十分の中断の後、泣き止んだエンリの顔をメイドが拭いていく。
「……すみません。みっともないところをお見せして……」
「それはいい。頑張って」
「はい」
武器を握る手に力を込める。
ヤントラは決してエンリの痴態を見て喜ぶ人ではないのだろう。
メイド達の手つきからしても丁寧で乱暴さは無い。掃除も綺麗だった。
モンスターの前で泣いていたら殺されて食べられているところだ。
この特訓は多くのモンスターを倒すのが目的。強いモンスターを倒せばそれだけで強くなるのだろう。
殺すことよりも何か大事な事があるはずだ。
経験を積む、という言葉を考えなければならないだろう。
モンスターの倒し方を教えるわけではない。それは何となく分かって来た。
二十体ほど倒したところで尋ねてみた。
「モンスターを倒し続けていけばいいんですよね?」
「そう。数多くね。技術とか要らない。人の殺し方を教えるわけじゃないし、モンスターの倒し方を教えるわけでもない。例えばモンスター一体倒すと銅貨一枚手に入ることになるとする。数多く倒せば金貨百枚ほど溜まる。そんな感じでいい」
今のところ銅貨二十枚、銀貨一枚分ということになる。
だが、まだモンスターは数多く出てくる。
「無駄な事かと思うかもしれないが……。鍛錬と一緒だ。毎日、百回の腹筋運動をするようなものだ」
「……はい。でも、これで本当に強くなるのかが……」
「目に見えて分かるのはもっと後だ」
今のうちは何を尋ねても理解できないかもしれない。
言われた通りに倒し続けるしかないだろう。
いつも畑仕事をしていたせいか、武器を奮う事は苦にならなかった。
膨大な麦の搾取に比べれば楽な作業だ。
新たに追加されたモンスターも難なく討伐。
ヤントラはエンリの持久力に感心していた。
「今日はこの程度のモンスターを倒せるだけ倒してね」
新たに数十体が出てきたが、それらを倒すと更に多くのモンスターが出てくる。
止め処も無い数だろう。だが、その全てをエンリは倒し続けた。
五時間で休憩を挟んだとはいえ千体ほど。
初回でここまで出来たのは素直に凄いと思った。
「一旦、休憩して食事だ。風呂場でじっくり身体を休めるといい。薬草風呂だ」
下痢の再発防止の為に『
メイドの世話を受けながら湯船に浸かり、そのまま食事を受ける。
身体をほぐされながら休める施設。
モンスター退治が無ければ快適なところかもしれない。
三十分後に戦闘は開始される。
今度の相手は赤い帽子を被った
それが縦一列となって迫ってくる。
それらに攻撃するが攻撃が止まる。ただ単に身体が硬いからなのだが、切りつけても深く刺さらない。
その様子に気付いたヤントラが別のモンスターを送り込む。
それらを数百体ほど倒した後、再度赤い
傷は癒されたのか、傷跡のある赤い帽子の
「
「いえ、大丈夫です」
表情を引き締めてエンリは武器を奮う。
モンスターを倒すために来たわけではない。倒さないと強さが得られないだけだ。
身に付いた力の使い道は自分で決める。
この特訓はきっかけでしかないのだろう。
頭などを切りつけても無駄だろう。確実に息の根を止めるには心臓と首の二つを狙うしかない。
最初は突きで攻撃したが弾力のある皮膚に阻まれる。あと手のひらが痛い。
刺すたびに自分にもダメージが返ってくるような感じだったので首を狙う事にした。
ザックザックと音を立てて切りつけられる。
血を噴き出しつつ赤い帽子を被った
同じ要領で一匹ずつしとめていく。
段々と刃の通りが良くなっていく。
そうして数時間の後に
腕が
見た目には
筋肉痛かもしれない。
湯船に使っていると痛みが和らぐ。明日は腕が動かないぐらいの筋肉痛になっているかもしれない。
その後で眠くなり、気が付けば何処かに移動していたようだ。
広い空間から狭まった空間へ。
温かみのある壁が見えた。
「一日ご苦労様。ゆっくりお休み」
「……はい」
壁の向こうから
地上にある宿舎に来ているのかもしれない。
「最初は何でも辛いだろう。明日は比較的、楽になるかもしれないな」
「明日も……よろしくお願いします」
ベッドに寝かしつけられた後はすぐに眠りに落ちた。
翌朝、多少の筋肉はあったが起きられないほどではなかった。
顔を洗って食堂を探すと
「姐さん、もう大丈夫なんですか?」
「ええ」
「すみません、我々は地下には行けないようで」
「あの施設。地下への入り口が全く見当たらないんです」
「それどころか階段が無くて二階へも上がれないと来ている」
構造的におかしい施設だと
扉が無かったはずの大型倉庫も完全に閉ざされているのに気付いた。
農家の人達もいつもの間にか扉などで閉鎖しているのを目撃していた。
「そ、そうなの?」
「警備が甘いと思ってたんですが……。こちらが甘かったようで」
宝物庫と大型倉庫だけで農家用の仮設住居と職人用の宿舎は異常が無い。
無人にしても警備が万全かもしれないと
誰がどのように管理しているのか、姿の見えない相手はモンスターでも恐いと思う。
不可視化で姿を隠しているのと違う気もする。
レベルの違う相手に
武器を向けてはいけない相手が居る。それは召喚されたモンスターであっても感じる恐怖なのかもしれない。
下手に人間的に思考ができるから、というのもあるだろう。
二日目の特訓は全裸にはなるが比較的、楽な方だった。
羞恥心さえ持たなければ耐えられる特訓だった。
ンフィーレアも精神的に強くなったからこそ、続けられたのだろう。
楽な作業だった。モンスターが麦畑に見えるくらい。
それが人間であったなら同じように倒せたのだろうか。
百体くらい倒した辺りでエンリは嘔吐する。
自分は今、何をしているのか分からなくなって恐くなったからだ。
麦畑ではない。モンスターを倒している最中だ。
すぐさまメイド達が駆け寄ってきて冷たい飲み物を飲ませてくれたり、温かいお湯で身体を洗われたりした。
「錯乱する前に自制するのは難しい。エンリ、無理しなくていいからな」
「……はい」
背中をさすられると朝食べたものを戻してしまう。
変化をつけるために
新たに数千体のモンスターが姿を見せると身体が震えてきて放尿が始まる。
恐いというより果てがない絶望感からかもしれない。
このまま続けると自分という存在が壊れてしまうのではないかと思う。
小さな農村の村長には荷が重い特訓だろう。
「……命の危機に晒されているから……」
おびただしいモンスターを前にしてただの農民の小娘になすすべなどありはしない。
自分の意思では普通に討伐しているつもりなのだろうが、身体は危機を察知して警告を発している。
生物としての生存本能。
早く子孫を残さないと手遅れになるぞ、と言っているのかもしれない。
さっきから股間がビクンと跳ねるようにむず
武器を奮う時に擦れる胸の刺激も関係しているのだろう。
今は身体のあちこちが鋭敏になっている、気がする。
気持ち悪い感覚がせめぎあいをしている。
「……ヤントラさん」
「んっ?」
「今なら胸を揉み放題ですよ。身体がなんか変です。……うぇ……」
呼吸すると吐き気が促されるようで立っていられない。
内股になろうとするが尿とは別のものが滴り落ちていく。
「き、休憩を……」
「分かった」
手を叩いて合図するとモンスターは壁際に向かった。
メイドはエンリの武器を受け取り、同じく壁際に引き下がっていく。
ヤントラはエンリを抱き上げで風呂場に向かう。
床に寝かせて後、桶でエンリの身体に湯をかけていく。
「胸を揉んでもいいのか?」
「……本当はンフィーにでもやってもらいたいです」
ヤントラには妻が居るのは知っていたので出来ることなら揉まれたくない。
あれこれと妄想しているエンリを湯船に入れて胸ではなく肩を揉んでおく。
「少し眠っているといい」
「そうさせてもらいます」
それからすぐに深い眠りに入るエンリ。
普段から農作業で身体を鍛えているだけはあり、屈強な女冒険者に劣らない肉体だった。
肉厚な
性的興奮のためか性器周りが盛り上がり、乳房と同じく肉厚感がある。
メイド達にエンリを立たせたあとで即死耐性の装備を付ける。
胸を充分に揉み込み、数回の絶頂の後で搾取していく。
あとはそれを数回ほど繰り返しておく。
男性化して性交することも過ぎったがンフィーレアが気にしているので諦める。というか、そういうことばかり浮かぶ思考にはヤントラ自身、辟易することがある。
アバターと
エンリを男性化させたりして部位を搾取しておく。
複製の扱いは別だが。
よからぬ事はすぐ思いつく。全ては煩悩のせいだろう。というか、煩悩のせいにする。
それからエンリは途中で目覚める事無く、静かに眠り続けた。
目が覚めると酷く空腹を感じる。
不快感は無くなっていて気分も悪くない。
ヤントラに渡された食事をしっかり食べると安心感がやってきた。
「今日はもう少し頑張ろう」
「どれくらい寝てました?」
「二時間かな。何ヶ月も閉じ込めてはおけないからね。長くて三日ほどが目安だ」
まだ二時間しか経っていない。それはそれで少し安心する。
外の様子が分からないところで何ヶ月も何年も過ごしたくは無い。
湯船に使ったまま寝ていたのか、少しは気分も晴れていた。
風呂から上がり、濡れた身体のまま戦闘を再開する。
ヤントラにお願いして背中にお湯をかけてもらいながら戦う事にした。
それはずっとではなく、数十分ほどだけだ。
「肉厚な胸の揉み心地はいいな、やはり」
「なっ!?」
「折角だ。エンリにいくつか話しておこう」
エンリの頭を撫でつつ、ラキュースにも話した自分の身の上話し。
当初の目的では世界に住む人々もそれなりの強さがあると、淡い期待を持ったものだ。
それが適わないと分かった今は敵対するのは大人気ない。
協力してくれるエンリに話す事は
彼女は色々と驚いていたようだが、黙って聞いていてくれた。
改めてエンリの胸を堂々と揉みつつ話しを続ける。ヤントラはエロい人なので別段、問題は無い。物凄く嫌な顔はされたが。
話し終わった後、エンリは大浴場から現われるモンスターを色々と考えながら倒していく。
「あまりモンスターの姿は気にしない方がいい。材木の伐採と一緒だ。全てに頭巾などを被せられないから仕方が無いが」
歩く材木。樹木系のモンスターだと思いたいがすぐには対処できない。
気持ちが少し晴れたせいか、討伐はそれほど苦にならない。
裸でいることにも慣れてきた。
返り血を浴びるので普段の服のままでは汚れまくるだろう。この格好は
特訓だからと思えば耐えられる、と頭では思うのだが、胸などはまだ隠そうとしてしまう。その事にヤントラは指摘しないが、隠すと戦い難いのは事実だ。
「せっかく用意したんだ。遠慮なく全部倒すといい」
合間にメイドによるマッサージを受けて二時間後には全滅させる事ができた。
「農民は普通、こんなにモンスターは倒さないが……。私の敵だけはあるな」
「それはどうも」
床にへたり込むエンリ。
止め処も無く股間から粘つく液体から漏れ出ている。
メイド達がエンリの身体を押さえつけ、それぞれ彼女の両足を掴んで別のメイドが股間にお湯をゆっくりとかけつつタオルで拭いていく。
強くなっているのならばメイド達を振り払えるはずなのにびくともしない。
モンスターよりも強いのかもしれない。
「意識があると恥ずかしいなら眠っているか?」
「それよりこの人達に見られている、というのが……」
「羞恥も精神的な鍛錬の一つだ。耐えてもらわないと……。身体の方は力を抜いていた方がいい。血尿や血便が出る事になるぞ」
「これ、どう考えても特訓じゃない気がします……」
そう言うエンリの膣を指で撫でるヤントラ。
「あっふ……」
恥ずかしいし、変な声が出てしまうけれど我慢した。
全身というか脳天に痺れを感じてしまい、抵抗が難しい。
「粘っこい体液が出続けるのは困るだろう?」
「うう……」
「ンフィーレア君は股間が硬くなったままだ。二日目ともなると男女共にこんな状態になってくる。エンリだけじゃないさ」
その後、性的興奮についての講義を受けた。
メイド達はエンリを大浴場に運び込み、屠殺場の掃除が
エンリが休んでいる間に地上に行き、
それから昼食と夜食、明日の朝食を用意する。
100レベルの割り振りは冒険において色々と難しい。
一流の料理は作れないが種類は多くなってきた。
用意が整い、地下二階に進み、屠殺場の様子を一通り見渡す。
エンリとラナーが終われば閉鎖かな、という思いがよぎる。
拠点を持ったり妻を持ったりすると身動きが取り難い。
こんな愚痴を考えても仕方が無い。今のうちにメイド数十人に宝物庫以外の床掃除を命じておく。
他のメイドに達にベッドを運ばせる。その用意が出来る間に大浴場に向かう。
普段は危険なアイテムが設置されているが今は厳重に隠し部屋に保管されている。
エンリは全身くまなく洗われて綺麗になっていた。
数時間の労働の後は精神的な疲労により眠り始めていた。
農作業とは違うために様々な疲労が溜まっていたのだろう。
それはそれで好都合なのだが。
快感の海に沈みこんでから数時間後に目を覚ますエンリ。ひどくお腹が空いていた。
身体の方は落ち着いていて、用意された食事も嘔吐せずに食べられた。
屠殺場の方にベッドが用意されているので、今日はこのまま一夜を過ごす事になった。
一人で広い場所に眠るのかと思っていたら、ベッドは複数あり、既に何人かのメイドらしき人間が布団を被って寝ていた。
彼女たちはお世話していた者とは違う一般メイド。顔を見られてもエンリには分からない者達ばかりだ。
等間隔に用意されたベッドは十個ほど。トイレと風呂に近い位置にあった。
広い空間には『
奥には何も無いが得体の知れないモンスターが潜んでいるような気にさせてしまう。
「向うには何も無いですよ。強いメイド達が居ますから、安心して眠ってください」
「はい」
エンリの近くに食べ物と飲み物を載せた台が用意される。
夜中にふとお腹が空いたら食べてもいいと言われた。
「そうそう。モンスター討伐で大事なのは自分より強い相手を倒すこと。弱いモンスターは数万匹倒しても経験は微々たるものだ。意味も無く倒してもらっているわけじゃないよ」
「そ、そうなんですか!?」
意味も無く倒していると思っていた。
とにかくたくさん倒せばいいと思い込んでいた。
強いモンスターと一口に言ってもどれくらいの強さは分からない。
「エンリの強さを十とすると
「はい」
「強いモンスター、亜人や異形は肉体的に強固になるし、一部は弱い物理攻撃を無効化してしまう。エンリの攻撃でも通用しないものは倒しようがない。冒険者が強いのはそういうことを知っているから、というのもある」
農民がモンスターを恐れるのは単に恐いからではなく、攻撃が通用しないような強さがあるから、というのもあるかもしれない。
「私は隣りで寝ているから安心して眠るといい」
「……あまり安心は出来ませんが……」
眠るたびに身体を奪われている気がする。
身体に宿った経験などは消えてしまうのでは、と疑問に思うのだが。
頭だけ無事なら平気なのかもしれない。とは言いつつも恐ろしい事を平然と出来る恐い人なのはいつも通りのようだ。
下手に詮索すると自分の大群が出てくるかもしれないので、眠る事にした。
睡魔に支配されるのは疲労のためか、すぐだった。
朝の時間になり、エンリを起こす。
筋肉痛を感じたので身体は無事だったのかもしれない。
「朝から運動の続きだ。まずは顔を洗ったり、食事だな」
「と、トイレは?」
駄目もとで尋ねてみた。
「行ってもいいよ。メイドもついていくけど」
メイドはもう慣れて来たので構わなかった。
トイレを済ませた後はメイドに綺麗に洗われた。既に裸なのでお湯をかけられたりする事には拒否感は無かった。
顔もついでに洗われて、食事を済ませる。
後は
次に出てきたのは見た目からして悪魔と言えるモンスターが一体。
斬りつけてみるが硬い。
相手も裸なので斬り易そうな
「うおぅ」
その後、叩きつけるように狙っていくが硬い。
血は出ているので無傷というわけではない。
ザンッという音とボタッという床に落ちる音が聞こえて一安心した。
男性への日ごろの恨みのような気もしないでもないが、いつかンフィーレアに対して
まだ玉がついているので、それもそぎ落とすか。と、男性が聞いていたら股間を押さえて逃げていくようなことを考えつつ武器を奮う。
血が放尿のように噴出す体液。それでもモンスターは平然とした顔をしていた。
力任せに首を狙う。ガンッという音はするが手が痛かった。硬い身体に涙が出てくる。
強いモンスターは身体が硬い、というのは本当のようだ。
腹筋辺りはもっと硬そうな雰囲気だし、首を狙うしかないだろう。
数十回は叩き込んだだろう。血を噴出しつつも悪魔は未だに立ち尽くしていた。
頭に頭巾被った人物が現れて魔法を悪魔にかけた。さっき頑張って叩き落した男性器が再生された。
床に転がっている方は残っていたが。
「悪魔はまだ無理そうだね」
ヤントラはほんの数分ほどで悪魔をバラバラに切り刻んだ。
何も装備もしていないのと防御対策をせず無抵抗だから成しえた事だ。
改めて数百体の
それで一旦、特訓は終了だ。
「これを三回ほど繰り返せばンフィーレア君より強くなっているだろう。今は何も実感が無いだろうけれどね」
「ありがとうございました」
「地上の
特訓を受けた人間が強さを実感するのは難しいだろう。
それを目に見える形に出来ればいいのだが、それはそれで新たな不安を呼び込むかもしれない。
特訓料を取れるなら外貨も結構集まるかもしれない。
だが、今のところ宝物庫を運営できるのは自分だけだ。
それもまた大きな問題だろう。移動とか。
他人の予定とかも関係してくるから。
エンリ達を見送った後、地下二階の隅の部屋二つを使って男女による実験を試してみよう。
階段からも別の部屋からも遠いので放っておいても大丈夫だろう。
エンリとラナーの今後の成長は気になるが、地上の農園の状態や宿舎の運営も考えなければならない。
収入を得られるような施設は必要なのだが、食事を作る者が必要だろう。
都市の中に作るとなると充分な広さは必要だから新たに作ることは無理だろう。
竜王国のように占領された後で開発する、というのなら不可能ではないかもしれないが。
思考する頭脳が一つでは、あちこち同時進行で事は進められないか。
多頭にすれば早いのだろうが、それはもはや人間ではないな。
複数体が散らばれば混乱するだろうし、それぞれに自我が芽生えたりすれば大混乱の上で殺し合いかもしれない。
それから王都でラキュースの様子をうかがいつつ畜産の勉強をしたり、羊皮紙を作る職人や家具職人、何人かの料理人の意見を聞いたりした。
特訓と量産と勉強を繰り返していたら
最初の特訓の時のような狂乱振りはなく、ラナー達は真面目に指示に従ってくれた。
施設には牛用の小屋が立てられ、ちょっとした牧場主になっている。
食用でもなく、牛乳を得るでもないところは他の農家にとっては疑問だっただろう。
代わりに食用の豚をいくつか手に入れてエンリに飼育方法などを教わる。
何か忘れているなと思ったすぐ後に地下二階に放置した存在を思い出す。
案の定。扉を開けばこもった匂いが噴出する。
密閉状態ではないけれど、部屋の中はひどく汚れていた。すぐさまメイド達に清掃させて動き続けていた個体達を止めておく。
完全に妊娠しているのではないかという有様だが。それはどうでもいい。
清掃が終わった後の個体達は何事も無かったかのように眠り続けている。
積みあがった経験から何を得たのか気になるところだ。
下処理をした後は大浴場に運ばせる。
個体が得た、または得る予定の
聞いた事の無いクラスが姿を現す。カップリングは職業だろうか。
そもそもクラスなのかどうかさえ怪しい。
必要な情報を得てしまえば用済みなのだが。
今後の計画の為には五百メートル四方の施設では手狭だろう。
今ある施設でも相当広いはずなのに、とは思うが自重で潰れたりしないように仕切りを多くし、柱や壁を太く厚くした弊害かもしれない。
薄く削る事は出来ないが、追加の施設を用意する必要があるかもしれない。
新たに土地を得るよりは空に作る方がいいだろう。
問題は浮遊する素材の入手だが、魔法による永続化の物体で作り上げるのが無難だろう。
城のような大型建築に耐えられるのかが問題で、実物を観察するか奪う方が早いんだろうな。
人海戦術で浮くのも恥ずかしい結果だろう。
解呪系で瓦解しそうだが。
農地部分と作業する農民の意見を聞いた後は帰宅することにする。
大規模農園を作るとすれば結構な費用がかかるだろう。
特訓を始めると地下に
農民はそれほど事情通でもないし。
自宅に戻ればラキュースのお産が近いということで自室で寝泊りする事になっていた。
「もうすぐか」
顔がふっくらしていたが健康そうだった。
膨れた腹を優しく撫でる。双子ということだから仕方が無いが、動くのが大変なのは分かった。
無事に産まれたとしても育てられる自身は無い。
子育て経験が無いからだが。
過去に飛ばされてきたプレイヤーが存在するならば子孫が居ても不思議は無い。それがどれだけ存在するのか、まだ不明だ。
解読していないから、というのもあるけれど。
人間種のプレイヤーならば寿命を迎えている可能性は高いだろう。異形種などであったなら今もどこかに居るかもしれないが、味方になるか敵になるかは会ってみないことには分からない。
自分の味方が
仲間ではなく良きゲーム友達としての彼らしか知らない。今は『真蒼の薔薇』などの原住民の味方というか友達は出来たが。
恐怖心を植えつけておいて友達だの味方だの言っても説得力は無いかもしれない。
「……人でなしの子供と言われない様に生活できるといいのだが……」
「大丈夫よ。いざとなればお父様のところに預けるわ」
財産は充分にあるから問題は今のところ無いけれど、とラキュースは少しだけ将来の人生設計に付いて想像する。
冒険者は今のところ、なるメリットが感じられない。
城づとめの役職も妬みなどが横行しそうだが、良い学者にでもなって国民を幸せにしてくれればいい。
「困っている人が居れば助ける、そんな正義感溢れる人間になるのもいいが……。私に似てエロい、ろくでもない人間になったら……、すぐ没落するだろうな」
「それは教育次第だろうけれど……」
静かな会話の数日後に
男女の赤子で既に頭髪があり、共に金髪。
張り詰めた乳房から母乳が出始め、服を着てもにじみ出るほどだった。
頑張って絞りつくさないと城にも行けない様な状態だった。
出産の影響からか尿漏れがひどい。他の出産経験者も通ってきた苦難だと聞いてはいたが、自分の中ではみっともない気がした。
「母親になったんだから文句は言わない」
「鬼ボスは子育てに集中していればいいの」
充分に栄養を蓄えたために極度の体力低下でも持ちこたえられた。
ふっくらしていた顔は数日でしぼんでしまった。それがメンバーにはびっくりすることだった。
お産はそれほどまでに体力を奪うものだとそれぞれ自分のお腹を触りながら顔を青ざめさせていた。
一日おきに妻の様子を見つつ施設の地上一階に託児所のような部屋を作り上げた。
ラキュースも施設に連れて来たのだが、地下一階にどれだけ耐えられるか試したが無装備では数分もしないうちに嘔吐した。
防具を万全にしないと歩けないようだ。
地下二階は比較的、平気になったが防具を外せばたちどころに頭痛というか不快感に襲われる。地下一階ほどでは無いようだが歩く気力を奪うほどだ。
広大とはいえ二百五十メートルほどの屠殺場は平気そうだった。モンスターが居ない、というのもあるだろう。
大浴場も平気で宝物庫に続く。
「……凄まじい金貨の量ね」
輝きで瞼を開けていられないほどだ。
「手狭だから拡張というか、空中庭園でも造ろうか迷っている。どうやって空中に作るのか悩みどころだ」
「『
そういう建築物は身の回りには無い。
『
スクロールを大量に用意するしかないかもしれない。
どの道、量産体制を整えなければ何も出来ないのが現状だ。
「一度に数十万から数千万枚消費する魔法を使っていけばすぐ無くなるよ」
「これでも!?」
「これでも。都市一つ賄えるか怪しいものだ」
子供たちが居るので見せるだけにして地上へと戻る。
「研究施設もあった方がいいか……」
全てを引き上げるのには相当量の重量がかかるし、模索に時間はかかる。
新たに研究施設を用意する事にした。
ラキュースは子育ての為に城勤めをしばらく休ませてもらい、カルネ村の両親の元で暮らす事になった。
その合間にラナーとエンリが交互に特訓していく。
元が王女と農民とは思えない成長振りになった。
ラナーは悪に傾いたクラスが多い気がする。
要望だからとはいえ多種多様な職が選ばれた。
エンリは村長職を手に入れて交渉に料理、商売をするのに必要な商人職も手に入れた。
指揮官としての職もあったが、
ラナーの成長はめまぐるしい。エンリよりレベルが高い。
狂気じみた討伐風景は他人、というかクライムにも見せられないほどだ。
クラスを得ても実感するのに個人差はあるだろう。
エンリもすぐに珍しい薬草を見つけられるわけではないし。
採取、伐採、採掘などは重宝するだろう。
ンフィーレアも研究関係の職は充実しているので新たなアイテムは開発しやすくなっているはずだ。
王都ではクライムだけ弱い気もするが、実力では以前のアダマンタイト級に並ぶほど。
研究施設を作るに当たってンフィーレアの祖母、リイジー・バレアレをスカウトする。
情報は秘匿せず、カルネ村に帰宅しても良い、などの条件を付けた。ただ、成功報酬は払えないが施設の利用は好きにさせた。
人を招く都市としては魅力が無いし、都市規模の広さの土地は取得していない。
設計はリイジーに任せて必要な道具はヤントラが用意する。
建設予定地は屠殺場の地上部分でいいだろう。
「施設が出来る間、リイジーさんも経験を積んでおきましょうか」
老婆の裸はヤントラも見たいとは思わないので服は着たままにしておく。
裸は三十代まで。ただし、
鑑定魔法が使えるし、魔法系の特訓を試みる。
エ・ランテルでは有名な薬師のリイジーは並みの冒険者よりも強い実力を持っている。
研究に関しても孫よりも貪欲だった。
ポーションのみならずアイテム製作にも興味があるらしい。
既に基本的な強さがあるので
凶悪なモンスターの大群には驚かれたが頑強な精神力で瞬く間に駆逐した。
老体に鞭打って臨んでいるとはいえ二日目ともなると意識が朦朧としてくるようだ。
リイジーは研究するのにモンスターを討伐するとは思っていなかったのだろう。これで強くなってどうするのか、と疑問に思われた。
好き放題魔法を撃ち続けられるし、モンスターを倒し放題出来るのはなかなか体験できないことだ。しかも、それで強くなれるなら数日は付き合ってもいいと思っている。
三日目ともなると手持ちの魔法だけでは歯が立たない強力なモンスターになってきた。
それでも倒し続けた。
一千体に達したのは更に二日経ってからだ。魔法のみでは時間がかかりすぎる。