ゲームオーバーから始めようか 作:モモンガ
一通りの調査を終えて報告書をまとめようとするのだが、ルプスレギナの寝相が意外と悪くて困った。
仕方が無いので布団で包んで縄で縛り上げた。
小一時間ほどをかけて報告書をまとめた後で就寝する。
翌朝、職人達の声で目が覚める。
ルプスレギナは既に縄から抜けて顔を洗いに洗面所に向かっていた。
二人は
こちらは事前に用意されていた。出来てそれほど経っていないのだろう。
ヤントラのお手製料理のようだった。
「縛り付けるほど寝相は酷かったっすか?」
「うん。邪魔だった」
身支度を整えて外に出ると多くの職人達が整列して朝の体操を始めていた。
ヤントラの要望で健康的に作業をする上でやらせている行事ということになっていた。
適度に身体を慣らしてから作業に入らないと大きな事故につながるから、という。
この現場で作業する職人には馴染みの風景である。
しばらく眺めているとヤントラがフールーダと共にやってきた。
「今日も一日がんばりましょう」
「了解した」
「全身が痛いので、お手柔らかに……」
フールーダは筋肉痛のようだ。
地下に降りていき屠殺場まで三人共に無言だった。
現場についた後はそれぞれ離れた位置に置いてある椅子に座る。
「フールーダさんは楽な方法でいきましょうか。まずモンスターを並べるので」
と、昨日の夜半のうちに量産した
「貫通する魔法で一気にやって下さい」
「ふむ」
第五位階の『
もう一度唱えると七体目で止まる。
「貫通だと……前に来るまでに手間がかかりますね……」
楽だと思ったのに、とがっかりするヤントラ。
『
地道に一体ずつ倒すしかないのだろうか。
「とにかく、モンスターを集めましょう」
千体は用意したモンスター軍団をフールーダの近くに固めた。
後は『
魔力が切れればペストーニャ型のメイドが魔力譲渡を
数十体とはいかないようなのでしばらく時間がかかるだろうから、ナーベ達の様子を見る。
こちらは魔将の大群を用意した。
「魔法を駆使してでもいいから確実に撃破すること。それと身体を提供してもらってもいいかな?」
「バスパ様、献血みたいに言うっすね。痛いのは苦手っすよ」
「私は構わん」
「……ナーちゃん、
武器が使えるから武人でもいいのだが、基本は魔力系
戦闘メイドの時は
「今なら失敗しても蘇生できるぞ。金貨はこちら持ちだ」
「……魔法も便利すぎると残酷っすね。相手にやる分にはゾクゾクするっすけど……。自分の身に降りかかるのは抵抗があるというか……。……また狼形態になったりするんだろうな……」
「臆するなルプー。我々の忠誠心をアピールするチャンスだぞ」
「そんなのナーちゃんだけやってほしいっすよ」
「ここに送り込む覚悟を決めたのだから、二人は相当信頼されているよ。何かあっても私がぶちのめされるだけだと思うぞ。二人に失望した、などと言わせはしないさ」
「……いや、先日もう言われちゃいました……」
照れたようにルプスレギナは言って舌を出した。
「はっ?」
「ルプーのサボりが
「……自業自得だな、それは」
「村の防衛があんまり強固なんで私の仕事が退屈で退屈で……」
いっそ村を壊滅する部隊とか来たらいいのに、と期待していたが蒼の薔薇に阻止されてしまった。
ガゼフの部下達なども集まってきたからモンスターをけしかける事も出来ない。
「午後、充分に疲れたらすっきりさせてやろう」
「疲れを取る方法間違ってるっす」
抗議しつつモンスターを撃破していく。
魔法での討伐も許可したが施設を壊さずに倒すのは意外と難しい。
野外ならばまた違うのだろうが、外で裸体を披露する事になるし、遠隔地からの監視を受ける可能性がある。
「そういえば……。建設中の施設は今のうちに見てもらってもいいからな。どういう風に作っているのか分かってもらえるだろう。図面はンフィーレア君と相談した。基本デザインはナザリックの宝物庫のデザイン画を参考にしている」
「ナザリックの? 入ったんすか?」
「アインズに頼んで絵を描いてもらった」
「おお、直接交渉していたんすね」
「この宝物庫の大まかなデザインもナザリックを参考にしている」
感心しつつもナーベ達はモンスターを倒していく。
第七階層の魔将なのでナザリックに戻った時に襲わないか不安になる。
自然界のモンスターは弱すぎるので、特訓には向いているとはいえない。
「今更だが、色などを変更してもらえたら助かる」
「そうだったな。そのままでは都合が悪いな。知人を倒すのは精神的にきついだろう?」
「精神的と言うか……、仲間を
敵対すれば仲間とて殺さなければならないだろう。ためらいは自分の死を意味する。
「……いやいい。このままで……。甘えは許されないだろう」
「
「我々レベルで五つほど上げるとなるとどれくらい倒せばいいんすか?」
「う~んと、魔将クラスが数千体かな。八十台ともなると数十万体ほどだろうか? そこまで用意するのは数日かかるから大変だ」
MPの都合もある。
「魔将の方々を数十万体……。充分、ナザリックに攻め込めるレベルに聞こえるっす」
「忘れてはいけないのは肉体は複製できるが装備品は無理だからな」
「おお、そうでした」
装備品込みなら充分、脅威だ。
「君たちの装備品をうちの者に着せても良いか?」
「いいっすよ」
ルプスレギナは即答した。
戦闘メイドとしては一般の服装と大差なく、街に溶け込めるようなものだった。
対するナーベラルは金属板を用いた特異な防具で卵型。
街中ではけっこう目立つ部類だろう。
「似た物ならば構わないが……。装備させてどうするんだ?」
「見せびらかすだけだ。かっこいい装備は人に見せたいものだよ。戦闘に使う予定は無いが……。ナーベラルも戦闘メイドの姿はなかなかお披露目できないだろう? 少しもったいない気がしてね。ルプーはその点、そのまんまだよな。偽装しなくていいのか?」
「偽装まで考えてなかったっすよ」
「擬装用の装備はあるにはある。だが、みんな着ないようだ。王都の悪魔襲撃の時は仮面だけ付けていたし。エントマは……、あれはさすがにまずいと思ったのだがな。偽名も使わない、そのままの姿を見せていたのが心配だったが……」
「あー、あれっすね。エンちゃん食事を見られたらしいっすね。しかも隠そうともしなかったとか。後でユリ姉にこっぴどく説教を受けたらしいっす」
「あの顔自体が仮面だからってことなのか?」
「……いや、あの顔はお気に入りに結構似ていたから……、もう少し変えてもらわないと駄目っしょ」
偽装するなら
「……私は一種類しか偽装できないから大変よ」
顔を隠す魔法の防具でも装備しないといけない。
野外で活動する事が多く、ナザリックでの仕事は久しくしていない。
冒険者の仕事が一段落して戻ると懐かしい我が家に帰ってきた気分になるので、幸せが味わえる。
普段の装備でないと落ち着かない。
「
「許可が降りなかった……」
二人と話している間にフールーダの様子を見る。
完全に部外者のような扱いだが、仕方ない。話す事が無かったのだから。
特訓内容はナーベ達と違いは無く、モンスターを倒しきれば新しく用意するだけだ。
魔法を使い続けるだけ。途中で新しい魔法が使えるようになる、というようなことはない。
三日間、通しで単純作業するだけ。
「三日とはいえ、少しくらいは強くなると思います。生徒達も魔法を使っている時に何か起きるかも、と期待していたようですが、見た目には何も起きません」
「では、どうやって強くなったとか、新しい魔法を覚えられたりするのだ?」
「秘密です。明日の特訓が終われば一覧表を見せましょう。それまで退屈な作業ですが、頑張って続けてください」
「う、うむ」
「フールーダ。パワーレベリングとは弱い人間が手っ取り早く強くなる手段だ。地道に努力して積み重ねた知識などは介在しないから実感がないだけ」
「そうそう。っていうかナーちゃん、あの人の名前覚えてたんすね」
「……
「……
「ど、努力しているわよ」
二日目は淡々とモンスターを倒し続け、休憩を挟みつつ単純作業を繰り返す。
それは三日だからこそ耐えられるかもしれない退屈な特訓。
特別な知識や技術の講義が無いのだから。
魔法を使うフールーダは中々効率が上がらず難儀する。
高い位階魔法で地味なものが良いのだが、本人に色々と選ばせた。
魔法を使い続ければいいのか、モンスターを倒し続ければいいのか。実際のところはどちらが効率的だろうか。
自分としてはモンスターを倒す方が良いのだが、戦士系と魔法系は相容れないものかもしれない。
老体であるフールーダは三回目にして脱落。それは仕方が無いのだが千体を越える討伐を達成したのだから良しとしておこう。また特訓すれば良いだけだ。
人生でこんな変な特訓をやったことは無いだろう。戦争時に大部隊を殲滅するのならまだしも。
「特訓させていて悪いのだが、私は充分に強いから特訓しなくて卑怯だ、と言われることがあります」
「……ふー、ふー」
息も絶え絶えのフールーダにヤントラは話し始めた。
メイド達がフールーダの身体をマッサージしたり、癒しの魔法をかけたりしている。
「自分のクラスを変更するときは使うかもしれませんね。皆様のクラスを参考に新たな可能性と言うものを見つけるために。スキルや魔法を多く覚えられないし、扱うのが下手なところがあるので難儀している次第です」
「いちいち一覧表を見ながら戦うのは非効率的っすよね」
「物覚えが悪いのは自覚している」
「高い位階魔法をバスパ様は結構扱うようになったんすね」
「勉強している。それこそ一覧表を見ながら……。六千個の魔法を全て把握するのは不可能だし、二千を越えるクラスを全て習得する事もできない」
「……膨大っすよね。特殊な条件でなれるものとか」
「ちなみに、
「課金や特殊な条件のものは難しいだろう。それは『
非常に強力な魔法しか使えないので制御の難しいクラスと言われている。
戦闘に際し、すぐにMP切れを起こしやすい欠点がある。
傭兵魔法職のギルドの中で
アインズ・ウール・ゴウンのメンバーの中にはアインズをしのぐ
上には上がいるものだ。
戦士職であるたっち・みーもアインズより強いというのだから桁違いの実力は見なければ分からないだろう。
単純にレベル百だから強い、と言うわけではない。
個々の種族レベル、クラスレベルの最高は十五。その配分次第では少し低いレベルでも脅威となるし、課金による強化でも強くなる事は可能だ。
神器級装備に身を固める事も手段の一つ。
「今更だが、強くなった事で規定のポイントを超過したことが原因でナザリックに拒否されないかどうか……。ちゃんと受け入れてもらえるかが心配な点だな」
「そういうこともあるっすか?」
「やったことがないからね。しかも前代未聞だ。成長の可能性を持つ者とナザリック地下大墳墓
規定レベルを超えています。レベルダウンしてから入場して下さい、というアナウンスみたいなものが流れたら可哀相だな。
警告音は存在する。それが鳴らない事を祈るだけだ。
「仮に拒否されたら……、敵対することになるっすか?」
「それは無いと思うが……。融通が利く拠点なら受け入れられてもおかしくない。メイド達も働いた分の恩恵を貰う権利があるだろう」
「
ナーベの言葉にヤントラは眉根を寄せた。
「
「トブの大森林に居た部族を制圧して迎え入れた。コキュートス様が現在、管理していらっしゃる」
「……やっちまったか……。皆殺しではないだろうなって何人か居るのか……」
腕を組んで唸るヤントラ。
ルプスレギナはアインズがヤントラに
「……ナーちゃん、バスパ様に
「何故だ?」
現場に居なかったナーベには理解できなかった。そのことをルプスレギナは思い出す。
「言ってしまったものは仕方ないっす」
「……トブの大森林に攻め入ったからモンスターが激減しているのかな?」
「こ、こちらにも色々と事情がありまして……」
下手に出るルプスレギナに苦笑を浮かべつつ、彼女の頭を撫でた。
「アインズに関知していないところの事は仕方が無いと諦める、そう伝えておけ。竜王国は干渉しているからドラウディロン女王には手は出さないでほしいな。帝国の同盟国でもあるから」
「畏まりました」
「……珍しいモンスターが手に入らないのはもったいないからな」
「手に入らないとナザリックのモンスターが貰われると……」
「確実に居るからな、あそこは」
居るから捕まえてくる、などという人間はヤントラだけだろう。
「神の座に近しい存在は凄まじいっすね。全種類制覇とか狙ってたりするっすか?」
「施設の都合とか運びやすさとか安全度とか。それらを考えた範囲だ。バラエティーに富んでいればいいんじゃないかな。
多種多様なモンスターは欲しいが保管場所が手狭だ。だから拡張しているのだが。
欲を出せば土地は足りなくなる。
「自己増殖するのは危険だしな。恐怖公とか」
「……あー、なんとなく理解したっす……。あれは危険極まりないっすね。一時、ナザリックの危機として騒がれたほどっすから」
眷属の召還。食糧不足による共食い。
今はエントマのおやつとして処理されているようだが、ナザリック地下大墳墓内を埋め尽くすのではと警戒されたことがあった。
「うちのイビルアイの殺虫魔法を駆使すれば一網打尽だ」
「殺虫!? うわ……、エンちゃんの天敵っすね、あの人……」
「戦わなくて良かっただろ?」
「はい」
もちろんそれはタレントによる未来予測。
エントマは確実に敗退する、という。
戦闘メイドとしてのレベルは低く、アダマンタイト級より少し強い程度だ。
油断すれば負ける可能性がある。
休憩を挟みつつ討伐の続きが始まる。
フールーダは午後までは持たず、後半は瞑想をさせた。
体力が無いのは仕方が無い。二百年近く生きているというのだから。
様々な魔法を駆使して寿命を延ばしているらしい。
「ここで死なれても困るので、若返りの魔法を試しますか?」
「そんな魔法があるのか?」
「あー、あれじゃないっすか。
「経験値消費では困るな」
「五百パーじゃなかったはずっす。でもそれ魔力系の魔法だからナーちゃんは使えそうっすね」
「
魅力的な魔法なのだがフールーダの魔法では一日いっぱい使ってしまうと特訓のような疲労を感じてしまう。物凄い労力の要る魔法だった。
その労力が経験値消費なのだろう。
ヤントラがクレマンティーヌに魔法を施しただけではなく、解呪対策も取っている。
その解呪対策は魔法では出来ないこと、のはずだ。
「アインズ様があまり教えない状態だとバスパ様に寝返られる可能性が……」
「魔法の知識ではアインズ様の方が優勢だ。詳細までは……」
大急ぎでナーベは頭に
兎耳で半裸のナーベは世の男性の視線をたくさん集められるだろう。
色々と情報のやり取りをした結果、フールーダにちゃんと魔法を教える事を約束したようだ。
弟子を取られるとかっこ悪いから、という理由だろう。
大きな失態でも犯してくれればすぐ捨てられるのだが、今は帝国の顔を立てているので迂闊な事は出来ない。
「一つ疑問なのだが……」
マッサージを受けつつ体力や精神的な回復を遂げたフールーダが尋ねた。
「第六位階が扱えるというのは分かったが……。それ以上の位階魔法に精通しておるのは何故だ?」
「知っていても不思議はないっすよ」
答えたのはルプスレギナだった。
「えっ?」
「今は戦士職で第六位階までしか覚えていないかもしれないっすけど……。この方は別に魔法を知らないわけじゃないっす。一時は魔法職も極めて第十位階も収めた事があるんすよ」
「なんと!」
「すぐに殺されちゃいましたけどね。そうやって数々のクラスを得ては殺されを続けて今に至るんす。だから、一度は修めた知識は残っているんじゃないっすかね」
使えないだけで知らないわけではない。
数が膨大だから覚えられないだけ。
「とっかえひっかえ選びまくったからね。以前は使えたことが今は使えない……。そんなことがたくさんありました。全体の六割近くは経験したんじゃないかな? 他の人も試行錯誤で努力していたから別段、私だけ特別凄いという事はありませんよ」
死んだ回数では世界一っすけどね、とルプスレギナは呟いた。
「もちろん人間の範囲で……。異形種のことはそれほど詳しくないですね」
なったことがないだけだが。
「戦闘用以外の魔法もあるから創意工夫は必要不可欠ですよね」
「その方法が突飛だと言われているっすけど……。斬新な発想はアインズ様も驚かれていたっすよ」
「世界に変態として君臨しているだけはあるっすね」
「自業自得なのだが……、恥ずかしい事になってしまったな」
「それはそれでアインズ様は喜んで……、怒ってたっすかね。怒ったり感心したりしてたんで、よく分からなかったけれど……」
感心した後で変態め、と怒り出す場面が多かった。
「というわけで……。バスパ様は並々ならぬ努力を積まれているのですよ」
「若造にしか見えないのだが……」
「年齢を重ねただけで結果を出せない愚か者とは違う。結果を出すから凄いのだ」
戦士としての技量はたっち・みーの教えを受けてこそだし。
様々なクラスを習得し、スキルなども勉強したはずだ。
死亡時のペナルティで消えてしまうが知識は消せないだろう。
使えた魔法が使えなくなっても、どんな魔法かは覚えている範囲では知りえているのだから。
「死亡時に得た知識を記憶ごと消すようなものでなくて良かったよ」
「もう少し物覚えが良ければすごい事ができそうっすけどね」
記憶を改竄する魔法と言うものがあり、それを使われると知識がめちゃくちゃにされる恐れはある。そして、その魔法『
ギルドメンバーにも『誰でも楽々PK術』なる方法を伝えた奴がいたな、とヤントラは該当する人物を思い浮かべる。
それぞれ技術を創意工夫して腕を磨く。
楽して強くなる裏では並々ならぬ努力の結晶が支えている。
「で、では一つ尋ねたい!」
勢い込んでヤントラの前に平伏するフールーダにナーベは敵意を持って睨みつける。
「
「はい」
と言いつつヤントラは頷く。
「魔法でかのモンスターを支配下に置く、という魔法は存在しえるか?」
「他人の召還物だと難しいですが……。自然発生したものならば可能かと」
「やはり!」
「……第六位階辺りにあったような……。なんだったかな、アンデッドを使役する都合のいい魔法は?」
「アンデッドだけっすか?」
「モンスターを使役する魔法だから召還系はどうでもいいのかな?
見も蓋も無いがルプスレギナ達は納得した。
「強さ的に近ければ使役は難しい。農民が魔王を使役できるわけもなく、だ」
「……実力不足と言うことか……」
「一般的な召還モンスターは倒されれば消えてしまいます。複製も取れない。死体を媒介にしたものは条件さえ合えば取得できる可能性がある」
「消えないっすか?」
「消えなかった。
無から生まれるモンスターほど残りにくい。という推論をヤントラは立てていたし証明してきた。
儀式召還による
ど忘れする事が多くて困る。
何かを媒介にして呼び出したものは消えにくい、だっただろうか。
「魔法も強力なものは悪用が酷くなるだろう。即死系がそこらにたくさん居るのは困るのだが……」
「対策するだけで大変っすね。アンデッドはアンデッドで神聖属性に弱いし」
「無敵の魔法は無いし、無敵のクラスも種族も無い、ということだろう。
「確かに」
ナーベはフールーダがこのままではヤントラに様々な質問をして裏切ってしまうのではないかと気になって仕方が無い。
主があまり目をかけていないのも原因なのだが。
人間とはいえナザリックに属した以上は裏切りは許さない。
忠誠心の無いものはただの敵だ。その点で言えばヤントラは忠誠心のかけらも無いのだが、ナザリック自体には忠誠を誓っているとアルベドが言っていた。
アインズかナザリックかの違いだが。
「この宝物庫に今、
ふとそんなことが浮かんだ。
急に浮かんでしまったのだから仕方ない。
「保護して返さないんすか?」
「拠点を持ってから荒らされるのでは、と思うようになってね。折角作ったのにあちこち壊されるのは面白くない。君たちにあちこち部屋を開けられるのは嫌だなと……」
「ナザリックでも個室を荒らされるのは迷惑だ。……なるほど、その点では納得できる」
「あそこは現状維持のまま搾取して癒して戻す。施設は壊さない、という方法を取っている」
「それはそれで迷惑行為かと思うけど……。見事な手腕っすよね。ナザリックの影響がほぼゼロ。そんなことが出来るのはバスパ様くらいっす」
犠牲者を出さずに大量殺戮を成し遂げる。そんなバカみたいなことが現実に起こりうるのだから信じられない。
「偽者と入れ替えそうっすけど……。じゃあ、偽者をナザリックに送り込むとどうなるっすか?」
「管理データを見れば一発で偽者と分かるだろう。というか名前が載るかは分からないが……」
「へっ? 分かるもんなんですか?」
「複製には名前が無いし、属している組織名も付属していない。君達がナザリックから消されない限り何処へ行ってもナザリックの所属だ」
「それを偽装する事は可能か?」
「本物を殺してからなら可能かもしれないが……。面倒くさいだろうな。あと、単純な方法は取れないぞ。魔法で何とかできるレベルではない」
「では、シャルティア様の件はあれは完全に敵の攻撃で間違いないのか?」
「間違いないだろう。完全耐性を覆す事はとても難しいからな。まして階層守護者は限界まで強化されている。位階魔法程度では無理だろう」
「すごいアイテムなら可能だと?」
フールーダが居るので
「その可能性は高い。あとはそれに匹敵する敵だ。この世界にも居るかは……、それほどの化け物は聞いたことないけどな。たぶんアイテムの方だな」
それほど詳しくないが存在は噂程度には聞いたことがあった。
話してばかりでは特訓にならないので再開するのだが、新たにモンスターを用意する間にナーベはナザリックに情報を伝える。
アインズが不在の時はアルベドが情報を集める事になっていた。
先ほどの偽者の情報も伝えると感心していた。
追加されたモンスターだが、順調に討伐しているので用意するのが大変だ。
いつもであれば休憩の後に午後には引き上げているところなのだが、ナーベ達の体力と精神力の強さに驚く。
自分殺しの時はさすがに動揺するだろうが、それ以外は比較的、問題は出ない。
効率を上げる方法を模索しなければならないだろう。
下からバラバラに切り刻みつつ再生していく妙技。MPの譲渡や魔法を他者に任せるような事でもない限り。
一人で出来なくなりつつある。
複製は問題ないが命令を与える方法も考えなければならないだろう。
撃ち漏らしの処分方法も考える。
頭を使う方法ばかりで大変さは変わらない。
ヤントラも膨大な単純作業を繰り返しているので様々な技術を編み出してしまう。
変態スキルに日々、磨きがかかっていく。
あまりに洗練しすぎればナザリックというかアインズにとって脅威となるのだろうな、と思った。
アインズを倒せない、または倒さない理由としてはNPCの暴走を招くという問題がある。支配者が目をかけている限り、彼らはとても大人しい。
無から仲間たちを作っているわけではないが、手足となる仲間は必要なのだろう。
パワーレベリングの場合は仲間ではなく道具だ。
そこはどうしても避けられない問題だろう。
人としての感情も維持しなければ遠からず自滅するかもしれない。
しっかりした土台を未完成のまま放置しては、つまらないだろう。
「……頑張りますか……」
スパスパスパと華麗に切り刻みつつ、再生を施す。
一体から十体以上は作れるだろう。それを百回も繰り返せば千体は造作も無い。
ただし、MPに限界がある。そこはまだ色々と試行錯誤中だ。
相手が無防備であるからこそ出来る芸当だが。
後は秘密の通路を通り命令を与えれば終了だ。
大浴場は二階層となっている。ただそれだけだが。
このような芸当が果たしてどこまで続けられるのかも研究対象である。
自動的に湧き出るモンスターは時間がかかるのだが、レベル的に弱く経験値にならない。
高難度のダンジョンの奥深くに居る高レベルモンスターというものが居れば捕まえてくるのだが、そんなダンジョンや遺跡はどこにあるのやら。
無ければ自分で作るしかない。きっとそんな感じになるのだろう。
百階層の空中ダンジョンとか作ったらすごい事になりそうだな。そんなゲームもどこかにはあったのかもしれないが。
性急な冒険よりはましかもしれない。
のんびりと一つずつ前に進めばいい。そんなことをいつまで考えていられるかも不安ではあるが仕方ない。
何でも都合よく進められる事は無いのだから。