ゲームオーバーから始めようか 作:モモンガ
既に用意を整えられた新しい金貨の保管庫。
前の場所にあったものは移されていたが部屋が広い分、山が低くなっているように見えた。
天井付近にはエクスチェンジ・ボックスが据えられ、様々なゴミが処理出来るように他の部屋とも繋げられていた。
「
「それでも凄い量ですよね。どれくらいあるんだろう……」
ヤントラの記憶では数千億枚は超えているはずだ。
枚数の限界があるならば途中で消えるはずだ。それは『オーバーフロー』というのだが、そんなことが起きるのか、実際に確かめる必要があるだろう。
この世界が『まだゲームの世界』なのかどうかが判明する、はずだ。
「ずっと居ることは出来ないので、すぐ逃げますよ」
「は、はい」
「うむ」
ヤントラが手を叩いて合図すると数人のメイドが一つの箱を運んできた。
再度の合図で放り込まれるのはンフィーレア達には見えなかったがタオルで包まれていたのは分かった。
それが一気にエクスチェンジ・ボックスに放り込まれると同時に膨大な金貨が落下してきた。
「ほえー」
「うぇ!?」
それぞれ感心し、呻く。
箱一つにしては出てくる金貨が多すぎる。
滝のように流れる金貨。
「今回の為に用意したのだが……。どうなるのか
「いや、凄いですよ! 何を入れればあんなに……」
人間ではないだろう。
箱一つ分にしては金貨の総量は釣り合わない。
部屋を埋めるほどとなると数千兆枚は超えるかもしれない。
金貨一枚は小さいので滝のように流れる様では数えようがない。
「……重量のこと考慮してなかった……」
物騒な言葉が聞こえたのでンフィーレアは顔を青ざめさせた。
こういう時こそ『
途中でやめることは出来ない。
注がれる時間から見て、今から用意するか。
広げたタオルにそれぞれ450トンに耐えられるものを十枚くらい差し込んでおけばいいか。
「地面が抜けては困りますので、一旦
リイジー達を地上に避難させて、ヤントラは色々とメイドに用意させた。
扉を通過できるほどの大きさのタオルを広げて、それぞれ十人がかりの『
その後で『
いくら怒涛の流出とはいえ一度で規定の重さに達するには時間がかかる。その時間差を利用して更に十枚ずつ追加していく。
メイド達を動員し、床に散らばる分も追加のタオルに乗せて行く。
重さを少しでも分散させる事が出来ればいいので、多少の落下は気にしない。
最終的に五十枚のタオルを差し込んだ黄金の花の模様のようになって停止する。
これも一つの貴重な経験だ。
改めてリイジー達を呼び、景色を見せた。
「これは凄いですね」
ほぼ一階層が金貨で埋まっている。扉や壁が壊れないか心配だが、それは後で考えよう。
複数のタオルの段差が膨大な金貨を支えていた。
「……施設が壊れないうちにすぐ作業を
「えっ? は、はい。壁が壊れたら大変ですもんね」
先ほどから嫌な
人が造りあげた施設だ。魔法でも壊れるのだから金貨の圧力に耐えられない事もあるだろう。
後先考えない人間の末路がすぐに浮かんでヤントラは苦笑した。
「いやいや、人生何が起きるか分からんもんだ。後は若い者に任せるぞ」
ヤントラはリイジーを地上に上げて、すぐに戻って来た。
「ンフィーレア君は階段から牛たちの居る壁を見張っててほしい」
「分かりました。なだれ込んだら、みんな死にますね、確実に」
「……もったいない……。七の宝物庫までは行かないと思うが全体的に崩落するのは困るな」
「……ですねー」
壁の補強までは想定していなかった。というか忘れていた。
ンフィーレアは金貨に埋もれないように移動して、ヤントラはメイド達と共に今回の失敗を反省する。
やる事は一つ。金貨を消費しつくす事だ。
まずは百体の素体を用意し、殺しつくす。
その後で蘇生すると一気に金貨が目減りしていく。
それだけでも重量的には軽くなる。それを五回ほど繰り返す。
部屋にかかる圧はどんどん軽減される。
問題点が発覚しただけで良しとする。
一日かけて素体を数千体に増やすと一気に金貨は床が見えるほどまで減っていった。
蘇生コストが膨大で助かった。
タオルなどを回収し、全てを処分すると金貨の小山程度で静まった。回収した経験値もすごいことになっているようだ。使わないと暴れるんじゃないかと思うほどだ。
辺りは重みに耐えられなかったタイルのひび割れなどが目立つ。前の部屋でも酷い有様だった気がする。
色々と重さを分散させる方法は必要だろう。あと、壁の補強だ。
一階層部分は全て封印。
ンフィーレアも入れて現場検証する。
膨大な金貨が消失して驚かれたが無視する事にした。
「上から降りるなら
壁も相当強固なもの。というのは分かるのだが、圧力を分散できるのかというと
重さ、圧力などを無視できるのだろうナザリックは。
実際は色々と問題が山積してしまう。
天然の洞窟ダンジョンでも落盤するのではないだろうか。
多数の部屋に分散させるのが一番無難な案だ。
「二メートルごとに板を浮かせてみようか。中央だけ穴が開いた状態にして」
吹き抜け構造だが何層にも分けておけば、それぞれ重さは分散されるかもしれない。
問題は奥に行った分の回収が難しいという点だ。
『コ』の字状の
中央に一番の重量がかかるので溢れる事を想定した複数の箱が必要だろう。
床は壊れてもいい石の大きなタイルを用意する。
本番はもっと強固な素材で仕上げるのだが、試行錯誤するのは嫌いではないし、意見を聞きながら作業するのは楽しい。
当面の資金は必要なので一個分の金貨で五の宝物庫を閉じてしまう。
「くそぅ。大失敗だ」
素直に悔しい。それもまた一つの経験だ。
無理なことをやっても仕方が無い。
忘れないうちにリイジーに若返りの希望を聞いておく。
長く錬金術の研究をする上で寿命と言う縛りは超えられない問題だろう。
事前に孫から聞いていたのか、即答で二十歳と答えてきた。
「記憶を逆戻りさせるわけではないので喋り方はそのままですよ」
「年寄りくさい二十歳か……。すぐに老けるから心配は要らん」
孫には引き続き『おばあちゃん』と呼ばれてもいいと言ってきた。今更な話しだろう。
「秘密を知られて困るのは止め処もなく頼られる事だ。なので目隠しはさせてもらうよ」
「ちと、残念じゃが、いいだろう」
一気に若返る事はせず、少しずつ様子を見ていくことを説明する。
第八位階『
下位は一時的なことが多いが上位は永続的に効果が続く。もちろん解呪対策も用意しなければならない。
今のところクレマンティーヌの体調に変化は無いらしい。いや、若返った弊害として生理が起きているとかいないとか。
経験値消費型なので
小さい身体が少しずつ大きくなる様子は不思議なのだが、年寄りは栄養が抜けてしまうのか小さくなりやすい。
急な若返りは身体に負担となるかもしれないので、運動を軽くやってもらった。
「すごいの……。研究真っ盛り時代のわしだ。服がきついかもしれん」
孫も祖母の変貌に驚くが精悍な顔つきは見覚えがある。
声も少し透き通っているような若々しさがあった。
「若返ったからといって弱体化はしていません。普通の時間の巻き戻しとは違うようです」
「うむ。当時はもっと細い身体だった気がする」
続いて十年ごとに戻し、要望の二十歳まで戻れば別人の完成だ。
胸のある美人のリイジー・バレアレ。
「……意外と経験値は消費しないものだ」
『
「これがのちにあんな姿になるのか……」
ヤントラの言葉に孫は苦笑する。
時が経てば小さな祖母が姿を見せるのだろう。
というよりは今はほぼ同年代。年寄りになるのは五十年以上も先の事かもしれない。
「解呪対策は出来ているので、急に老化する事は敵の魔法でもない限りは起きないはずです」
「了解した。……逆に老化させる事も出来るのか?」
「この魔法は若返りと老化の両方の効果を持ってます。ですから出来ると言っておきますよ」
「うむ」
しばらく寿命を気にせず研究に励める事になり、リイジーは若返った分だけ凶悪な笑顔になった。
それは欲望そのもののとも言えるだろう。
「……おばあちゃんは昔から笑うと怖かったんだね」
「大きなお世話じゃ。命は大切にするぞ」
当時はもっとひ弱な印象だったが強さが維持されたままだと肉体的な変化も起きるとは思わなかったようだ。
参考までに肉体は貰っておいた。再生も問題が無い事が確認される。
妙な部分で最適化が
剣を持てばアダマンタイト級も目指せそうなほどだとリイジーは思った。
記憶も特に変化が無いようだ。今まで蓄積したものは維持されている。
孫の顔も覚えている。むしろ頭が
別の日にはフールーダを宝物庫に招く。
前回は大して相手が出来なかったが今回は一対一。
まずは老化を遅くする魔法を聞いておく。
元々講師も務めていただけあって教師姿がよく似合う。
独自の理論で第六位階までたどり着いたのは並大抵の努力では不可能だろう。
ヤントラは素直に感心し尊敬する。
自分たちの魔法理論は適当すぎる。仕様だから仕方が無いのだが。
「では、もう二百年ほど頑張っていただきたい。魔法の未知の可能性や新しい魔法などを作ってほしいです。……出来れば安全なものがいい」
「危険な魔法が多いのも事実。自滅しないものを研究するとしよう」
フールーダに若返りの魔法の性質を説明しておく。
弱体化に伴い、個人で永遠に扱う事は難しい。
人間の寿命に限界があれば突然の死もあるかもしれない。
色々なデメリットを説明した上で魔法を行使していく。
体形や調子の調査などをしつつ時間をかけて戻していく。
長かった髭は無くなり、精悍な顔立ちがよみがえる。
「ほほう。これは凄いの。老化を遅らせるのではなく、本当に若返らせるとは……」
低位ならば時間で戻ってしまうかもしれない。
それでも若かりし頃の姿に戻れたのは素直に嬉しかった。
目標まで戻った後は適度に運動するのだが、若返ったせいか、体力が増えた気がした。
背筋も伸ばせるし、肉体的に強靭になっている気もする。
「若返ったからと言って魔力が増えたりはしないようです。体力はついてるかもしれませんが……」
「ふむ、しかし、この姿で帝国に行っても誰にも信じてもらえんかもしれんのう」
「ナザリックの者達と行けば大丈夫かと。少なくとも彼らは信じてくれるでしょう」
「そうか。いやしかし、魔法とはかくもすさまじいものだな」
年寄り特有の身体の不調は回復しているかもしれない。
その後、回収して年寄りくさい言葉を言うフールーダをナザリックに返した。
気がかりを終えた後はアイテム製作の為の人材を一人作ってみることにした。
一通りの名づけなどを終えた後で屠殺場で戦闘。
疑問も疲労もしない戦士なので作業は淡々と進められる。
用意したモンスターをすぐ殺していくのだから供給する側はとても大変だ。
数時間後に休憩に入るのが表面上は疲労しないと言っても肉体的には疲労は溜まっている気がした。
適度に癒しの魔法などをかけてメイド達に身体をほぐしておく。
その間にモンスターを用意する。
単純な命令で済むので楽なのだが、同じモンスターばかりでは飽きてしまう。
自動的に出来れば、とは思うけれど不測の事態は怖い。
地味な作業だが仕方が無い。
膨大な数のモンスターに文句も弱音も吐かない。
日をまたいで量産を続けて討伐させていく。高レベルモンスターも相手に出来るようにクラスの調整をし、午後には五十レベルは到達する。
通常のゲームでは狩り場があろうと一日二日で高レベルには到達しない。
無抵抗だからと都合のいいモンスターが一気に大量に現れてくれるから成り立つ。
虎型を休ませている間に更なる増産を終えていく。それが魔法で楽に出来ればいいのだが、あればあったで最悪な未来しか見えないだろう。
一日潰して量産したものを討伐させていく。
地上に上がり、リイジーの様子を見ると客で賑わって居るようだ。
ンフィーレアも手伝い、忙しそうにしていた。
一部は冒険者に依頼していた素材調達だと思われる。
久しぶりに王都に戻れば我が家は廃墟、というよりは改築されたのか、少し大きな建物になっていた。
ガガーランが今は主となり、若い兵士たちの憩いの場にしているとか。
掃除はルリマリスが
クレマンティーヌは技を磨くために真剣に鍛錬に打ち込んでいるらしいのだが、罪人は容赦なく殺す事もあるとか。
という説明を双子のニンジャ、ティアとティナから聞いた。
イビルアイも後から合流する事になっている。
「空飛ぶ遺跡の開発は進んでいるのかな?」
「急いでいないからゆっくりと研究しつつ進めているよ。数日がかりになるから外の世界に置いていかれる」
「鬼ボスは大都市の大貴族になるし、真蒼の薔薇も王都を守護する防り手になっているし、色々と変わってきたよね」
「凶悪なモンスターは今のところ出てこないようだけど……。山や森には居るようだよ。あと、海も」
「いやもうすっかり冒険の仲間が要らない状態になってて……、面白くない」
話すたびにため息をつくヤントラ。
研究は進んでいるのだろうけれど、信頼できる仲間が殆ど居ない状態だった。
イビルアイとラキュースはリ・エスティーゼで手いっぱい。
クレマンティーヌは戦闘に特化しているし、ルリマリスは争いごとやおぞましいことが苦手。
ンフィーレアが今のところ助手として相応しいのだが口が軽いのが欠点かもしれない。
後はナザリック勢だから問題外。
「どっかに地下百階層くらいのダンジョンとか落ちてないですかね」
「山の奥地に行けばあるかもしれないけれど……。百階層は……大変だよね」
二十階層くらいから溶岩地帯になって進めなくなるかもしれないし、毒ガスが充満しているかもしれない。戻ってくるのも大変だろう。
「アゼルリシア山脈にでも行かないと……」
「旦那さん、一人で行きそうだけど。
「知ってますとも」
ボスクラスではないけれど戦った事はある。
プレイヤーに比べれば戦いやすい強敵だ。
集団で襲われない限りは負けることはないだろう。
対
というか
難度も高く二百超えは確実だとか。
青いローブを頭から被り、仮面をつけているのは変わらないが、その仮面に青い薔薇の模様が描かれていた。
「ご主人。久しぶりの我が家に戻ってきたな。今は若い兵士達に解放されているぞ」
「そのようだね」
「リ・アインドルも治安回復に努めている。……それで見物かな?」
「そうだね。未知の冒険は何処へやら……。色んな出来事に翻弄されていて、今は空虚な感じだ」
アバターの支配は精神的なのか、よく分からないが多くの冒険が潰されてしまった気がする。
出向くところにナザリック。
開き直っても良かったのだが、結局は何も出来なかった。
今は自分の拠点が世界の全てのようで、狭い空間に押し込められて身動きが取れない。
本来ならば宿を転々として冒険の旅に出るはずだったのかもしれない。
「ご主人は凄い人だよ。あのアインズ・ウール・ゴウンの世界征服を一人で押しとどめたのだから。……変態が思いのほか広まっていたのは驚いたが……」
「変態が広まるとは私も想定外だ……。困りました、あはは」
「人間社会はそれでまとまるかもしれないが……。亜人の国が残っている。アーグランド評議国を敵に回すのは厄介だが、それまでは我々だけで頑張るから。ご主人は自分のしたいようにしてくれ。こうやって様子を見に来てくれるのはありがたいのだが」
「寂しいだけだよ」
「うん。あと、モモン様とは冒険者として良いお付き合いをさせてもらっている」
「真蒼の薔薇がバラバラになってるけど……。旦那さん的には……、それで構わないとか?」
「絶対にまとまって行動しろ、とは言ってませんよ。拠点に詰めている以上はチームとしていた方がいいと思ったまでで。後は自由です」
命は大切にしてほしいのかもしれない。だから、それぞれ目の届く位置に集めたのだろう。
クレマンティーヌは目を離せば殺されるかもしれない危機に立たされている。それは今でもスレイン法国から狙われている、という意味になるがヤントラは引き渡す気は無いらしい。
「それとご主人。仮面はやはり付けさせてもらう。天気の良い日は顔が焼けるように痛くなる」
大したダメージではないが日差しが強いと肌が赤くなる事がある。
「それと若返りは不要だ。私は人の営みを見届ける事にした。……月とかには連れて行ってもらうが……」
「イビルアイが居なくなるのは困るなー」
「旦那さん、往復できるように頑張って」
「頑張ります。……ラキュースを貰うべきではなかったかもしれないが……、煩悩は凄まじい」
変態的なことを言ったようだが三人は無視する事にした。
今に始まった事ではないし、ラキュースも結婚自体はもうどうでもいいと思っているようだ。
邸宅を構えているが夫の不在をイビルアイは少しだけ気にしていた。
街中に宝物庫を作る余裕は無いので仕方が無い。
ティア達は任務に戻り、イビルアイはヤントラと共に散歩する事にした。
アインズ・ウール・ゴウンの外交戦略のおかげか変なモンスターの襲撃は起きていない。
力技から政治戦略に切り替えたようだ。
これが戦争後の戦いの形なのだろう。
帝国としては本来の戦略として財政悪化を狙って疲弊させて一気に国を手に入れる計画だったようだが、同盟を結ぶ事になる上で停戦が条件に出された。
本来なら徴兵制が始まってもいい頃なのに未だに戦争の
帝国は独自にカッツェ平野でアンデッドの襲撃に警戒していた。
モンスターの脅威は何処の国も変わらず、兵士や騎士は日ごろから訓練を続けている。
「ご主人は何も言わないようだが……、協力を欲しているなら遠慮は要らないぞ」
「人の使い方が下手だからね、私は。君達の邪魔はしたくない、という考えが浮かんでしまう」
それはナザリックも同様なのかもしれない。
イビルアイの経験からも人様に関わらず、迷惑をかけないようにするのがヤントラの人柄のようだ。
それがいつの間にか部位の搾取で歪んでしまった。本来の予定には無い方法を発見してしまったのだろう。
いつでも女体観賞が出来る方法、だったのかもしれない。
「ナザリックではご主人脅威論が展開されていたようだ。あれだけのモンスターを抱えているというのに……」
「手の内を知る者ですからね。支配者としては脅威なんでしょう。……ナザリックから旅立ったのに攻めることばかり言われるのは面白くないのですが……。まあ、仕返しに殆どの仲間は手に入れてしまった気もしますけどね」
ヤントラは苦笑した。
今の戦力なら充分にナザリックは陥落させられるのではないかと思う。
千五百人の襲撃とは違う桁違いの数の暴力。
数段構えなら出来そうだが、用意するのが大変だ。
ナザリックを攻めても面白くない。宝物庫と同じく一人寂しい結果になるだけだ。だから、攻めたりはしない。
そもそもナザリックはヤントラにとって、と暗い思考に沈みかけた。
「少し早いが君達に私の秘密でも教えようかな」
「なに!? い、いや、無理に聞きたいわけではないぞ」
「……アインズには伝えてしまった。それ以上の秘密というか個人情報は出ないぞ、と……」
イビルアイはヤントラの手を両手で包む。
「ナザリックが王国側だったら苦労はしなかったのだが……。思い通りに行かない方が楽しいのかもしれない」
「わ、私も秘密は守ろうとしたのだが……、アインズは思いのほか鋭い思考の持ち主で……」
「言ったらすぐ死ぬわけじゃないですよ。そうそう簡単に死にませんよ。ラキュースに黙って居なくなったりもしません。勝手な旅行はあるかもしれませんが……」
心配してくれるイビルアイを抱きしめた。
「相手が看破するところまでは面倒見ませんよ」
コキュートスが来た時はさすがに覚悟した。
武器を持った
「出来れば手伝いたいと言いたいのだが……。複製の使い道を考えると……、怖いんだ」
「屠殺場に使ったりしてますからね」
「……勝手な思い込みなのだが……、ご主人はこっそり食べてやしないかと……」
「食べません。命令の一環で見せる事はありましたが……、食料としての備蓄ではありませんよ」
見せる、と聞いて悪寒が走った。
「このところラキュースと食事していないけれど、飲食不要の指輪をしているからです」
「あ、ああ、そういうのもあるんだ……」
思い込みが激しいけれど心配になってしまう。
直接見に行けばいいのに行けない。内臓や手足が散らばるような風景ばかり浮かんでしまう。
イビルアイが直接見たのは胸とクレマンティーヌなどの仲間達くらいだが。
地下の施設には特訓以外で入りたくないので資金管理だけさせてもらうことにした。
『マグヌム・オプス』の執務室に手持ちの資金を用意することを約束した。
「女性型モンスターがたくさん増えたから、それらがうろうろして驚くかもしれないな」
「メイド以外にも増えたのか?」
「それこそ古今東西の女体モンスターが」
「……変態だな、ご主人は……。じゃなくて持って来る奴か……」
施設の中のメイド達は服を着ていたことを思い出す。
どんなモンスターか聞いてみた。
「
「容器が足りなくて野ざらしがいくつか居る」
「若返ったリイジーの様子を見るついでに確認させてもらおう。私も珍しいモンスターに興味がある」
聞いた範囲では本当に古今東西の女体モンスターだったのでイビルアイは興味を
珍しいモンスターは女体など気にならないくらいだが、どれも研究したい素材だった。
物騒な話題は切り上げて王都の中を散歩したり食事したり、買い物を楽しむ。