ゲームオーバーから始めようか 作:モモンガ
ヤントラに近い
相手に届くか、かわすのか、などという思考が
「!?」
無言の攻撃。
無音に近い速さで尻尾を根元で叩き切られる。
硬い鱗と皮膚で出来ている、はずの
翼を落とされているので空には逃げられない。
仲間の
「胴体は……、ちょっと難儀しそうだな。あきらめて首にしておくか」
その言葉がどこから発せられているのか、確認する間もなく下から物凄い勢いで振るわれるのは長大な剣。そして、
斬り飛ばされたわけではなく、飛ばずに静かに大地に落下する。
その間は全く身体が動かなかった。だが、意識はある。
不思議そうに見つめる仲間の視線を確かに見た。
「まだ生きているだろうな? 簡単に死ぬなよ。無理に抵抗しなかったら生き残れるぞ」
そう言われた後で魔法が唱えられる。
数秒間で肉片と化した
首だけになった
かなりの重量がある肉体を一人の人間が引きずって持っていく。
それは私の身体だ、と言いたかった。
だが、驚きのあまり言葉が出ない。というか動けない。
「巨体が復活するまで結構かかるから大人しくしていろ。まだ意識はあるようだし、その間にもう一匹、解体しておこうか」
「がっふ! あう!」
肺がまだ再生されていないせいか、それとも発声器官に異常があるのか、言葉がうまく出せない。
強固な胴体は短時間では再生しない。
心臓が無いのに生きられる理由。
意外と生命体というのはしぶといもので、身体に命令を送る部分と体液を循環する部分が無事であれば少しの間は生きていられるようだ。
頭と心臓のどちらかさえ残っていれば良い。それでも生存期間は短いので胴体部分の再生は一時間以内でなければならないだろう。
後方に控えていた仲間が逃げ出すのが音で分かった。
得体の知れない人間が二体目を瞬く間に解体していく。
音が無情に聞こえて、視界の隅に転がる仲間の身体と思われるもの。
翼を落とされれば地をかけるしかない。
尻尾を落として、前足を叩き斬られた後で乱暴に胴体を分断された後に魔法が使われる。
その後で首を根元で断ち切られる。
攻撃する間もない。だが、使われる魔法はなぜか『
「混ざっては困るな」
そう言いながら今度は容器を取り出す人間。
「胴体が出来るまで相当な時間がかかるようだな。また胴体を叩き斬ったりはしない。再生が終わったら帰ってもらうよ」
その再生が終わるまで眼球を抉られ続けた。
回数としては二十ほどだろうか。再生が終われば抉られる拷問のような感じだ。
一思いに殺さないのは再生のためなのだろう。こんな人間は初めてだ、と
しかも痛みはすぐに消えてしまう。ただただ気持ち悪い感触が顔に広がる。
憎しみもあるにはあるのだが、仲間を殺したわけではない。
侮った自分が悪い。
「身体が大きいと持ち帰るのも大変だ」
二体の
施設の扉を通らない可能性があるので身体の方は野外に置いていくように命令する。
再生が終わった後はメイド達による軽い治癒魔法で全体的に癒しが
再生が終わった翼や尻尾はメイド達がマッサージするのだが硬い皮膚の為に効果が無い。
軽く押したり、撫でる方法に切り替える。
「
そんな物騒な単語が聞こえてきた。
「な、何故、殺さない!」
「殺すのは短絡的だからねー。かといって拷問する趣味はないよ。乱獲してはもったいないし。色々と試行錯誤したら、こうなったわけだ。この方法が出来ない人が大勢居るから
「こんなことをして
「そうだねー。ケンカを売る手間が省ける。向こうから来るのが楽しみだ」
つまり
人間の姿をしているが、八欲王の転生体か子孫なのではないかと。
「あと三十分くらいは大人しくしているといい。身体が安定するのに時間がかかるからね。急には飛び立てないだろう。そういえば、空腹だろう。人間以外で
「……野山に居る獣などだ……。人間でいうところの家畜も……食べる」
答えたのは相方のようだ。
確かに空腹を感じた。
当たり前だが、胃袋に相当する部分を一度は失っているのだから。
「その身体だと相当量を調理しないといけないな。魔法で牛は出せないが……」
備蓄していた野菜と肉と鍋を持ってこさせ、拾わせた薪を燃やして軽く茹でる。
メイドの一人でも食材にすれば早いのかもしれないが、人間の調理法方は知らないし、知りたくなかった。
お腹に優しいオートミール入り、肉と野菜のスープ。
それをそれぞれの
「足りるか!」
「牛を持ち歩いているわけじゃないからな……。複製でいいなら牛も食べてみるか?」
ちゃんと焼けばいいだろう。
だいぶ身体が大きなった仔牛達も新たに用意しなおさなければならないだろう。
アイテムを外した牛四頭の首と手足を落とし、豪快に焼いていく。
ヤントラが料理している間、兵士達は物陰で状況を観察する。
なにより、
既に身体は再生し終わっているのに攻撃の意志を見せていない。
通常の『
じっくりと時間をかけて焚き火で焼いていくしかない。
肉体的に火の耐性を持っているモンスターなら炭にならないかもしれない。
溶岩を作る魔法や炎の壁などの魔法もあるけれど、魔法なので料理に向くかはまだ実験していない。
メイドの一人が
第三位階の魔力系『
この魔法は一度に三回まで火が吐けるが段々と威力が落ちていく。
消し炭にしない程度に言いつけてやらせてみた。
さっそく口から火を吹くメイド。持続時間一杯に次々と牛を焼いていく。
二回の火吹きの後で表面を削り取り、余計な内臓は切り分けていく。
三回目は適当に地面に火を吐いて終了させる。
「本来は内臓類は綺麗に洗っておいた方がいいんだがな」
高いレベルだったのか、短時間でもしっかりと火が中に通っていた。
ゴミはメイド達にまとめさせて、完成した焼けた肉を
「骨は取った方が良かったか?」
「いやいや、美味い。ほほう、これはこれで……」
素直に焼肉を食べる
巨体を維持するには物足りないかもしれないが、多少は腹に入れておかないと飢えるかもしれない。
少しの満腹感でも気持ちは落ち着くだろう。
メイド達はゴミ掃除などの後始末をした後は消えていった。
別のメイドは
食事を終えた
「人間め! 我らは生物の頂点!
「……素直に帰ろうよ。この冒険者はメチャクチャ強いって……」
相方の方は参ったようで、大人しかった。
捨て台詞を言いながら二体の
長居しているとまた身体をバラバラにされるかもしれないから。
深追いはせずにメイド達を下がらせるヤントラ。
複製も火を通せば問題なく食べられるのかもしれないが、後の祭りだ。
食用として牛も備蓄した方がいいのかもしれない。
とにかく、施設には食料保管庫も居るだろう。
今の
大群で襲われていたら部位の採集は出来なかっただろう。それは少し安心した。
それと話しは通じるようだから無理な殺生はしなくてよかったのかもしれない。
あの二頭はしばらく人間社会には関わってこないだろう。
牛を焼いたせいか、匂いにつられて野生動物が集まってきた。
それらを蹴散らすように大型モンスターが姿を現す。
獅子と山羊の二つの頭を持つ
似たモンスターでは
数は少ないがバラエティーに富んだモンスターが出てくるな。
威嚇しながら走ってくる
飼う事は出来ないのでさっさと駆逐する。
「あっ!」
長大な武器なので結構可哀想な攻撃だと気づいた。
普通のブロードソードにした方がいいだろう。目立つし。
上空から舞い降りるのは青いローブを頭から被り、青い薔薇の模様が描かれた仮面を被るイビルアイ。
「……次のモンスターは君か……」
と、言いながら剣を構えるヤントラ。
「ご主人。なんとなく言いたい事は分かるのだが……。剣は収めてくれ」
「立て続けにモンスターが来ていたからね。犠牲は今のところ居ないようだ」
「そのようだな。それよりも……
聞くまでもないのだが、つい言葉に出してしまった。
というより大地の一部が凍りついているのは
他のモンスターはバラバラにされているようだし、牛を焼いたような美味しそうな匂いも残っている。
どういう状況なのかさっぱり分からない。
「若い
「……うん。よく分からない」
足元に転がるモンスターの残骸からは牛どころではない色々なことが気になる。
「戦いの邪魔はしないつもりだが、何か手伝えることはあるか?」
「兵士達の食事の用意や他のモンスターの襲撃が無いか見張るくらいだな。それにしても巨体用の食事も用意した方がいいようだな」
「なんで?」
イビルアイは条件反射的に尋ねた。
「
「メイドを食べさせるわけには行かないな。そんなことだと思うけれど……、ご主人。余裕があるんだな」
「モンスターが居ないと寂しいからね。つい、逃がしてしまう。甘いんだろう」
これがゲームなら全滅させても再生成されるから気にならないのだが、この世界は再生成される保証が無い。
増えるものは適度に搾取する程度でいいだろう。
猛毒でも持っていない限りは。
「それよりイビルアイはどんな用で来たんだ? 私の様子を見に来たのか?」
「『
「親戚として会っておかないとね」
それからイビルアイは兵士達に撤退の意思を確認したり、食事の用意などを手伝うことにした。
買い出しは近くの都市でできるのだが山岳方面からは色々なモンスターが現れるので仲間が心配だった。
今まで出て来たモンスターを告げると
魔法のみならず、モンスターの倒し方も熟知しているようだ。
十体の
このモンスターは体液が猛毒なので倒すのに手間取ってしまう。
「……さすがご主人だ。根拠は無いが納得させてしまうものがあるようだな」
それからたくさんのメイドが何故か出て来た。
それは荷物運び用だろう。話しから戦闘に参加させていないようだし。
冒険者としては少し卑怯な気もするのだが、やる気の無い今の状態では注意しても仕方ないんだろう。
兵士達の無事を見る限り、人間側にとって安全であればいいのかもしれない。
あるいは巨体を持ち帰れないから諦めた、とも考えられる。
『マグヌム・オプス』に
確認するのが少し怖い。それはこの身となってから感じるようになった。
自分はまだ怖いものがあるようだ。
十メートルほどの『黒い仔山羊』を入れなかったのだから、外で保管するのだろうか。
ヤントラの行動はアインズすら呆れさせる。
自分は時々、どちらの味方なのだろうかと疑問に思うことがある。
兵士の移動が激しくなる頃に物資の移動をイビルアイも手伝っていた。
空からやってくるモンスターを打ち落としたりしながら交代の兵士を先導する。
元々モンスターの出現率が高い地域なので静かになることが少ない。
どこかに
それと
「数は少ないけれど色々と出てきますね」
「そうですね。凶暴なものは少ないんですが……。繁殖期にかちあったのかな?」
イビルアイが兵士達を先導して数分後にはモンスターが死体になっているという。
確実に致命傷を負わせているようで戦闘時間が短い。
「そんなに弱いモンスターではないと思うのだが……」
ヤントラが強すぎるのだろう。
戦士職ではアインズも実力を認めているくらいだ。
これでは
攻撃は凄いが防御が低い。
「それにしてもあの冒険者……、強いっすね」
「なんで一人なんだろう……」
一人で冒険してきたから、とは聞いていた。だが、今は仲間は一応は居る。
アダマンタイト級と人殺しと気弱な
名前だけ置いているが冒険者を引退しているラキュースも。
だが彼女は悪魔相手に成すすべが無い。
悪魔と言っても物凄い強い悪魔だが。
普通の
「ご主人は仲間は作らないのだな。居ることは居るのだが……」
と、イビルアイはヤントラに尋ねてみた。
不毛な気もする質問だとイビルアイ自身が思った。
「一緒に楽しく過ごせれば仲間というこだわりはないですからね。他人の生活に干渉したくない、というのもあったのかも。結婚したところでラキュースや君たちを自由にするようなものだよ」
一人で旅をしたいわけではなく、誰かが側に居ればそれで満足するのだろう。
イビルアイがヤントラの様子を見るように。
強制的なことが嫌いなのか、苦手なのか。
はた目からは寂しいように見えたりする。
一緒に冒険しよう。ではなく、相手の都合が良ければ手伝う程度。無理に誘うことはしない。
最初はそうでなかったからこそラキュースを手に入れたのだろう。
思惑が崩れて今の状態に至る。
では、本来はどういう道を歩んでいたのだろうか。
今更蒸し返してもやり直せはしない。それは自分の身が人間であったなら、と思うのと一緒だ。
数十分後には
再生力の強いモンスターだからイビルアイは魔法でどう倒そうか思案した。
「〈
ヤントラの側をかすめるように魔法が飛んでいき、
「ああ、ご主人の仕事の邪魔になるな。申し訳ない」
「いいよいいよ。こっちも派手な武器で頑張ろうか」
鞘に収まった大剣を取り出し、鞘から引き抜く。
赤い刀身の『炎剣キリネイラム』だ。
魔剣キリネイラムを参考に作らせた炎の大剣。魔力を込めれば炎のエネルギーを放射することが出来る。
ヤントラは軽く魔力を込めると炎が刀身を包み込み赤熱化する。それを奮えば炎の軌跡が現れる。
駆け出し、
イビルアイは幻想的な攻撃に少しばかり見惚れた。
離れた
「ん~、派手すぎるな」
全ての
派手さをアピールする気は無い。では、なぜ派手な攻撃をしたのだろう、と自問自答する。
辺りに肉のこげる匂いが立ち込めて、更にモンスターが現れ始める。
現れるモンスターは弱い部類なので兵士達にも充分に対応できる。
散発的な出現が普通で大部隊というほどの数では襲ってこない。
そうして昼ごろには昼食が始まる。
評議国と戦争していないのに最前線のような様相にイビルアイは少し笑ってしまう。
都市周辺ではモンスターの出現頻度が低いので、少し羨ましいと思った。
ヤントラは兵士達に食事を振舞った後、待機の為の部屋で一息つく。昨日から連戦で魔力の回復もしておかなければならない。
程よい忙しさは嫌いではない。
数分後には眠りに陥っていた。
「……眠っているのか?」
イビルアイは彼の頬に触れたが静かな吐息だけ聞こえて目覚めなかった。
通常なら苛烈な戦闘と言われてもおかしくないところだが、ヤントラの場合はようやく冒険者らしくモンスター退治が出来て、満足したので疲れて眠った印象がある。
二時間後にヤントラが目覚める頃、兵士達がボロボロになっていてイビルアイも身なりが汚くなっていた。
「どうした?」
「い、いや……。
兵士達を守りながら戦ったので防具が少し汚れてしまったようだ。
それでも犠牲者を出さずに済んだのは助っ人が来たからだとか。
リ・エスティーゼ王国のアダマンタイト級冒険者『朱の雫』の二人。
チーム名の由来となっている赤い鎧は
あと髪の毛も赤く染めている。この人物はルイセンベルグ・アルベリオンという。
もう一人は
「銀プレートが暢気に昼寝か……」
厳つい剣士はヤントラを一瞥して言った。
ルイセンベルグは背中に大剣。腰にもブロードソードと思しき武器を下げている。対するアズスも帯刀はしていたが
それは魔力が込められた宝石が先端についた魔法金属で出来た杖。
アズスの防具は軽装鎧風で二人共に外套をまとっていた。
「この方は昨日から今まで一人でモンスターを倒してきたので……。少し休憩をしてもらっていたのです」
「我々の食事の用意もしてくれたので、そろそろ休ませないといけないと……」
「命がかかっているのにか?」
ルイセンベルグの厳しい言葉にイビルアイは身を乗り出す。
「お言葉だが……。戦士にも休息は必要だ。
「犠牲が出るようであれば起こしてくれても良かったのだが……」
「銀プレートは警備任務が中心だ。あまりモンスターを倒しすぎると飛び級にされかねんぞ」
イビルアイの言葉にヤントラは少しだけ唸った。
今回の仕事は昇進には関係ないが、目立つこともあまり好きではない。
だからといって無駄に手を抜くことも出来ない。
「それと、こちらがラキュースの叔父だ。アズス殿。彼がラキュースの夫のヤントラだ」
口ひげの生えた中年の顔にはヤントラがひ弱そうな冒険者にしか見えなかった。
伝え聞いたところによれば変態で姪を
実際にラキュースの子供を見せてもらった時は血の気が引いたものだ。
可愛かった姪の姿が陵辱の限りを受けた後のような痛々しい姿に変えられたようで。
なので、勢いに任せてヤントラを殴りつける。
「この変態野郎!」
「ちょっ! アズス殿!?」
狭い室内で中年が暴れだしたのでイビルアイと兵士達でアズスを取り押さえる。
「初対面にいきなり殴られるとは……」
姪の今までの人生を聞けば殺したくなるかもしれないが、イビルアイはとにかくアズスを宥めた。
世界の命運がかかった戦いが続いたので妥協せざるを得なかったわけだが、それでも国の為に尽くしたラキュースの為にも拳は収めさせた。
「開口一番に殴りつけるのは……」
「イビルアイ。この変態は滅ぼすべきではないのか?」
兵士達の間に『変態』という言葉が飛び交う。
こうして世界に変な噂が広まったのだなと不思議と納得してしまった。
「その判断はラキュースがすればいい。我々は見守るだけだ」
ここ最近は家族で食事をしたり、子供の面倒も見るようにしている。
研究一筋という路線から外れて家族との触れ合いも増やしているようだ。
精神的な安定が必要なのだろう。
「ご主人は何か言いたい事はあるのか?」
「弁明することは無いよ。それぞれの想像通りだ」
言い訳してほしい気持ちはイビルアイにはあるのだが、
とはいえ、いつまでも諍いを続けるわけには行かない。打ち漏らしたモンスターが仲間を呼んでくるかもしれないから。
「アズス殿。この議論は虚しい。過ぎてしまった時は戻せないのだ」
「わ、分かっている!」
ルイセンベルグはヤントラの胸倉をつかんで外に放り投げる。
意外と身体が軽いことにルイセンベルグは疑問に思った。
戦士職なら筋肉も付いて重い装備をしているものだと思っていたから。
疑問はあったが仕事はしてもらう。ルイセンベルグの目には熱い炎が揺らめいている。
二時間の休息でも大丈夫なのか、イビルアイは心配になったが仕方ない。
アダマンタイト級の戦士は厳しいのだから。
「……そういえば、聞いていなかったが奴のクラスは何なんだ? 戦士か?」
「
アンデッドを退散させる聖印などは見た事が無い。叩き潰す方だからかもしれないけれど。
「
「
多岐に渡るようにクラスを得ている。
平均的な強さと言うわけではない。
今は創作系に傾きかけているが最強種が現れても対応できるクラスに調整している。
このまま退屈しなければ変更の可能性はある。
アイテム使いからメイド使いになっている。
「……なんてことだ……。敵襲っ!
「はっ? この辺りに奴が出るのか!?」
「天然の
暢気に首を動かすヤントラにイビルアイは苦笑する。
「撤退の準備を!」
ルイセンベルグは命じるがイビルアイは物陰に控えるように命令しなおす。
「私も随分と強くなった。
「なに言ってるんだ。相手は凶悪な
「ご主人が倒されるようであれば撤退してもいい」
自信満々に行った後であっさりヤントラが倒されたら笑うしかないだろう。
敵モンスターは武器を携帯しつつ物凄いすばやさで駆けてくる。その後方から
「あの野郎! 余計な刺激を!」
アズスは魔法の準備を整えつつ兵士達を下がらせる。
無抵抗の
ただ、魔法を当てられる自身は、ない。
ヤントラは何がしかの魔法を使ったようだがブロードソードを軽く振る程度でモンスターが来るのを待っていた。
そして、
剣で攻撃するものと思っていたが武器は落とし、代わりに棘付きガントレットで二匹まとめて殴り飛ばした。
それだけで
一撃。
それからまだ生きている方の
「なんだ? 俺たちに止めを刺せってことか?」
「……いや、あれは持ち帰る為の身体だ。既に再生が始まっているのが分かるか?」
首の無い
切り口から肉が盛り上がり、僅かに微動している。
「再生する
「治癒の魔法をかけたからだ。あれがご主人の恐ろしい技だ」
どんどん頭部が形成されていく。その間に先ほど首だけにした方も再生が始まっていた。
身体が小さいので全体的に出来上がるころに手足を落として軽度の治癒魔法をかけ、スティレットを取り出して頭部に触れさせる。
暴れたところで問題が無さそうだと判断し、詰め所の方に置いておく。
「警備の仕事のはずがモンスター退治に変わるとは……」
見たところ女体モンスターは
外套と仮面を被り、軽く伸びをした後で駆け出す。
すぐに攻撃するものと思っていたイビルアイ達だったがヤントラは相手のそばまで行った後で話しかけたようだ。
メスの
その後の交渉が決裂したのか、殴りかかられた。
あとは遠めだが
戻りかけると
ヤントラが詰め所に戻る頃に物凄い勢いで滑空するモンスターが突撃してきた。それは見張り役の兵士でも視認できなかった。
まばゆい光に包まれた天使。
輪を描くような陣形で襲い掛かってくる。
「これは珍しい」
ヤントラは素早く剣を構えて突撃するモンスターの猛攻に対処する。
イビルアイもルイセンベルグ達も見たことの無いモンスター。というか眩しくて全体像がよく見えないのだが複数居て、剣や槍、盾などを装備しているようだ。
目が慣れてくると分かるのだが背に白い翼が生えているようだ。
レベル50後半のレアモンスター。
『
人間であり
超位魔法『
この超位魔法は複数存在し、最終的には九体まで呼び出せる。
「全部、逃がさん」
イビルアイの方向にヤントラは『
てっきり狙ってきたのかと思ってイビルアイは驚いたが、すぐに違う驚きに変わる。
複数のメイドが姿を見せて物騒この上ない容器の準備を整えている。
「なんだ、この子達は?」
「……ご主人のお抱えメイドだ。どうやら、あのモンスターを全て捕らえるようだ」
ヤントラにとって女体モンスターは格好の獲物だ。逃がさないだろう。
イビルアイは少しだけ