ゲームオーバーから始めようか 作:モモンガ
自然界で天使系のモンスターは出会いにくいが神の怒りでも買ったのか、会えるとは驚きだ。
ヤントラは装備を傷つけずに手早く捕まえたくなった。
こういう冒険が楽しい。
見たところ
敏捷を上げて行き、空飛ぶ相手にも対応していく。
肉体部分を傷つけてスティレットを首筋に刺していく。
一定のダメージを与えないと武具の特性やスキルに妨げられてしまう。
合図と共にメイドが駆け出す。
イビルアイは勝負がついたと思った。
ルイセンベルグ達が見ている前で敵モンスターの首が飛ぶ。手足も切り飛ばされる。
落ちる部位は全てメイドが受け止めていく。
それぞれ間違えずに部位を集めて魔法を唱えて地面に置いて行く。
保存液が入った容器を並べ、一つ一つに眼球を入れる。
ほぼ同時に決着がついたようにイビルアイ達には見えた。
最悪なのは兵士達が見ている前で何度も目を抉るヤントラの姿を目撃されることだ。
亜人系では耳などを戦利品として切り取り、冒険者ギルドに提出したりはするが、見た目が人間の女性では顔をしかめられてしまう。
新たなモンスターが現れるまで容器に次々と入れられる眼球。
再生を終えた身体もすぐに同じように切断行為が続く。
九体全て、メイドと共に滅多切りにしているようにしか見えない。
大きなシーツに収穫物を包み、メイド達を一旦、撤収させる。それから数分後にまた戻ってきた。
本体は『
「レアモンスターが出てくるとは……」
「……物凄く気の毒に思えたぞ。……ちなみにあれは何なのだ?」
「
「九人で一チームなのか?」
「そう。本物の
部位の搾取は人前で見せて大丈夫なのか、聞いてみた。
今更だから気にしない、という返答にイビルアイはため息が出る。
「モンスターより恐ろしいな、貴様!」
アズスは怒りを込めて言った。
おぞましすぎる。こんな奴が姪と結婚しているとは信じられない。今すぐ別れるべきだ、などという言葉が頭に渦巻くが言葉に出来ない。
一人で多数をものともしない。そんな人間はなかなかお目にかかれない。
「あははは!」
豪快な笑い声が辺りにこだまする。
声の印象からは『また犠牲者が来た』とイビルアイは思ってしまった。
「強いじゃないか、人間!」
兵士達は辺りを見渡すが声の主は見つからない。
遠くから発せられている事はイビルアイとルイセンベルグ達は感じたが聞き覚えの無いものだった。
「……イビルアイ。強敵が来たようです。避難誘導を頼むよ」
ヤントラの言葉を受けて、ルイセンベルグ達にも声をかけるが『何故だ』と言って動かない。彼らを無視して兵士達に詰め所から避難するように伝えていく。
避難しろと言われて避難せずに死ぬのは自己責任だ。
それからすぐに大地に何かが飛んできた。それも辺りを吹き飛ばすほどのものを。
ヤントラは外套で顔などは守った。
土煙に紛れて現れたのは豊満な胸を強調する褐色の肌を持つ女性。
背丈は大人ほどあり、好戦的な顔つきで獲物を見据える。
先ほど地面に打ち込まれたのは槍のようだ。その槍には見覚えがある。
ただ、声の主は女性的だったので想像していたモンスターとは違うようだ。
「……神クラスまで来るとは……。ますます……、期待が高まる」
現れたのはレベルで言えば90台の文句なしの上位モンスター。
槍は『魔槍ゲイ・ボルグ』といい、一度投げれば必ず相手に致命傷を負わせるという
普通に投げたくらいでは意味が無いのだが。
モンスターが所持する
ちなみに
敵が所持している武装は金属から作るものと違い、色々と制限があったり、空きが少ない事もある。
大抵のプレイヤーは希少金属などから作り上げる事が多い。
高らかに笑うのは『
ヤントラは外套を脱ぎ、素早く強敵用の厚めの防具に切り替える。
武器は両手にそれぞれ『処女の業』と『
『万毒礼讃』は毒・負属性が付与されたアポイタカラ製の遺産級のブロードソード。
「お相手願いますよ」
「いいねー。強い男は大好きだ」
武器を構えていると更に二回ほど地面に何かが打ち込まれる。
「一人じゃないんだが……。構わないな?」
レベル90台の上位モンスター『
伝説級の量産化。これはますます逃げるわけには行かない。
「……恨みっこ無し。勝った者に貰われる、ということでよろしいですね?」
「はっ! 勝てたら槍をくれてやるよ!」
「いざ!」
それぞれヤントラを囲むように三方向に散る
防具を変えるほどの相手だ。イビルアイは助太刀に行けば邪魔をしてしまう気がした。
避難誘導は言われたが手助けは言われなかった。そして、真剣な顔のヤントラは無駄口は叩かない。
三人同時に魔方陣を展開。それも巨大なものを。
超位魔法『
武器名そのままだが、珍しいわけではない。
無数にある超位魔法や
即死系爆裂魔法でもある
二次被害の激しい魔法だ。
モンスターとして気付いていないようだが、一般的に先制攻撃で使う超位魔法の勝率は低い。
ダメージを受けると解除される弱点がある。
課金アイテムを持っていればヤントラは大ダメージを受けるだろう。
「〈
慌てずにヤントラは三体の『
「〈
今度は三体の『
更に敏捷と筋力をあげる。
それぞれの『
「……その身体、貰い受ける! 勝負っ!」
「受けて立つ!」
ヤントラの言葉に三人の
相手の魔法よりも早く『
確実に人体の弱点を突く攻撃だった。だが、低位の天使の攻撃は牽制にしかならず、ダメージは殆ど無いだろう。
体勢が崩れる
体術も得意な
『万毒礼讃』は毒と負の属性武器。それらで次々と斬りつける。
完全耐性を持っていると意味が無いのだが効果は気にしない。
上位モンスターには様々な攻撃が効きにくいのはよくあることだ。
まず一体にダメージを与えて、次に別の
三人が離ればなれでは分が悪い。再度の魔法の準備を始められてしまう。
敵モンスターとはいえ超位魔法の連続使用は不可能だ。ゲームの設定が生きていれば。
先ほどの
極端な硬い敵でもないのだが技の洗練さはさすがだ。
伝説級だからなのか、手ごたえが違う。手持ちの武器での打ち合わせでは分が悪い。
ヤントラでも強いと感じる。それも三人も。
「どうしたどうした!」
「脇が甘いぞ!」
「せあ!」
攻防一体の攻撃。こちらは腕が二本。相手は
物理防御もそれなりに厚い。神クラスの恩恵でもあるのかもしれない。
イビルアイは先ほどまでの余裕の戦いとは違う攻防に驚いていた。
ヤントラが押されている。長い得物とはいえ攻めきれないのかもしれない。
同じ顔が三人も居るし、凄腕のようだ。
「あははは!」
「せいせい!」
レベル的にはヤントラが勝っているが最初の先制以降、攻めきれない。
どれか一体を先に倒さないとダメだろう。
「よく頑張るじゃないか」
「弟子になるなら許してやるぞ」
様々な言葉を言ってくる女神級モンスター。
迂闊に仲間を呼ぶと逃げられるおそれがある。貴重なモンスターは逃がしたくない。まして女体でレア武器だ。
胸で遊びはしないがデータには興味がある。
あと、追加の仲間は少し待ってほしい、と願った。
「なんと……。あれだけの攻防を一人でさばききるとは……」
ルイセンベルグ達も助っ人に入ろうかと思っているのだが、イビルアイに止められている。
ヤントラが苦戦するものを自分たちが相手にできるとは思えない。
負けはしないだろうが、それこそ犠牲者を無駄に出すことになり兼ねない。
槍捌きが正直、目で追えないほどに早いし。
同士討ちもしていない。
久方ぶりの強敵に胸が躍るヤントラ。
いつまでも打ち合っていては埒が明かない。
『処女の業』を捨てる。これで少しだけ身軽にする。
まず背後に居る
さすがに三人目は危機回避し、後方に移動したが『
そのまま新たな武器としてスティレットを装備し、槍を避けつつ頭部を狙っていく。
顔と手。あと、倒しきってはいけないので適度なダメージにしておかなければならないのがもどかしい。
三人共同じだから一人だけ残せば充分かもしれないが、逃がしたくない気持ちが強かった。あと、挑戦できるものは挑戦した方がいいだろう。
「やるねー」
片目を潰されても平然としている
神や女神だからといって完全無欠ではない。
「弱いモンスターでがっかりしていたが……。強いモンスターがちゃんといて安心した」
「そうかい?」
「手加減しなくて良い戦いは久方ぶりだ」
スティレットを喉元に刺し、手を離して相手の槍を掴み、引っ張り、両目を切り裂く。
確実に肉体的ダメージを負わせる。
同様に他の二人も顔と手を狙っていく。
一般の人間ではないので文句は言わないし、卑怯という言葉も出て来ない。
視界を奪っても相手に通じていないかもしれないので気にせず攻撃は続ける。
二人目はとにかく顔を狙った。
三人目は首と手、余裕があれば足首を踏みつけて数度斬りつける。
敏捷をあげたヤントラは
高速治癒のことを考慮し、できるだけ三人をまとめるように誘導する。
スティレットを口に突き刺し、ガントレットで殴りつける。
もう一人も同じ目に遭わせておく。
「おっ、おっ……。いいねー」
『天召バルディッシュ』で首目掛けて振り下ろす。
ザクリ、という音と共に
だが、三人の槍は止まらない。
上中下の三段全ての槍を捌くのは大変で、わき腹や耳やが削り取られている。
太ももに刺さってもヤントラは体勢は崩さない。
捨て身の攻撃は初歩。
持ち手に剣を叩きつける。
もう一人の首にも一撃を見舞った後で更に一撃を前の
半分以上を切り裂かれ、首が横にたれ落ちる。そこに腕への一撃で少し千切れかかる。
一人が沈黙した後は二人目も同じようにしておく。人数が減ればヤントラは三人目に思う存分取り掛かれる。
お腹と足を滅多切り。
逃げようとしても無駄。
三人目が倒れた後、股間部分に思いっきり『天召バルディッシュ』を叩き込み、股を引き裂いておく。
「後は楽しい解体作業だ。女神は珍しいからな」
怒涛の攻防に誰もが息を呑んでいた。
一時間の激闘のように感じられたが、実際はもっと早い戦闘だったはずだ。
治癒を始める
乱暴に下半身を断ち切られ、腕を落とされ、首を落とされていく。
再生と解体が続く。
持って帰るには眠らせなければならないが通用するかスティレットを当ててみた。
身動きが取れない状態だから効果が分からない。
「こういうモンスターを支配下に置く魔法ってあったかな?」
メイドを呼び寄せ『
「ご主人……。戦闘は終わったのか?」
「なんとかね。いや~、強かった、強かった」
魔法は三人のうち二人に効果あり。
特殊なモンスターにしては弱い方だろう。とにかく頭部だけ綺麗に再生したところで施設に送り『
先ほど持ち帰った
生首を三つ持ったメイドが姿を消す。
部位と戦利品も別のメイドに運ばせた。
「ご主人、傷だらけだな」
「あの武器は呪いの効果があった気がしますからね。ケガが治りにくいかも」
「どんな相手にも部位の搾取をするとは……。恐れ入るよ。さっきの相手は相当なてだれなのか?」
「そうですね。相当強かった。
普通は一撃で倒そうとは思わないし、思えないものだ。
余程の雑魚モンスターでもないかぎりは。
数度の斬撃にひるまない肉体は見ていて驚いた。
首を切り裂かれても攻撃の手を休めない。
「ここに出てくると言う事は他の地域にも出てくる可能性があるかもしれない」
自然発生する場合はこの世界の人間に対応できるのだろうか。それが少し心配になってきた。
対応できる人材を育成しておく必要があるかもしれない。
ナザリック勢が不干渉を決め込むと困る場合もある。
色々と考えておくことが増えた。
メイド達はその後、三十分以上経っても来ないので魔法は効果があったのかもしれない。
将来的には施設が破壊されるおそれもある。
「一つ気がかりが……」
イビルアイはヤントラのボロボロになってきた服を掴む。
「敵を倒した後の作業が皆を恐怖させている気がするのだが……」
「殺されては文句は言えませんよ。的確に攻撃しないと反撃されますし」
「……そうなのだがな……。子供達の将来が心配になってくる」
敵を綺麗に殺すように教えるのも違うような気がする。
取れるものを取った後に開放することもある。
襲ってくる敵は排除しなければならないだろう。その辺りの
かといって拷問というわけでもないのだろうけれど、複雑な気持ちに表現もうまくまとまらない。
荷物を置いてきたメイド達が現れて辺りの掃除をはじめた。
「次は何が出てくるんだろう。赤い竜かな」
「出てくるモンスターが気の毒に思えてきた。どの程度ならば我々でも相手が出来るんだ?」
「そちらのおじさんたちが銀プレートのクセにって言うから。出てくるやつは全て倒しますよ。
ルイセンベルグの言葉を気にする辺り、人間的で安心する。
ヤントラも
「女体モンスターは出来る限り回収ですね」
発言も行動も突飛なのだが兵士達の安全は優先されている。だから、一人で戦うのだろう。
「拗ねなくて良いから。それより依頼はいつまで居る事になっているんだ?」
「四日間ほど。今日を入れて後三日ですね」
今日、アダマンタイト級の冒険者の合流があって明日以降は誰が来るのか、イビルアイは承知していないので分からない。
この調子では更なる凶悪なモンスターが出てくる気がする。
「仲間達を呼ぼうか? 兵士達も入れ替えないときついだろう?」
イビルアイは現場を指揮する兵士に色々と訪ねた。
彼らは半月の予定で滞在することになっていた。
交代しながら風呂や食事や睡眠を済ませていく。
ヤントラが終われば別の冒険者が警備の任に当たることになっているらしい。
一休みしている間に
もう一匹が顔を上げると天使の翼を持つ女性が弓を構えていた。
レベル60台後半の神クラス『
豊穣と狩りを司る女神。
北欧神話以外にも神が登場するユグドラシルにおいて一部の神は雑魚扱いされている。
公式の超ド級モンスターのワールドエネミーはおそよ三十体ほど。
それらは通常のモンスターとは比べ物にならない。レベル百でも苦戦するし、全滅も不思議ではないほどだ。
後はレアアイテムの為に狩られる役回りが多い。
第八から第十位階魔法が飛び交う世界では数は少ないが神クラスのモンスターは珍しくない。
特殊召喚によって姿を見せるものの方が珍しいだろう。
「よし。あれも捕まえよう」
「強さの判断基準は何なのだ? 調査しないモンスターは危険だと思うのだが……」
「うむ。私にとっての強者はモンスターではなくアインズのような者達だ。それ以外は全て雑魚モンスター。あとは戦って強いか弱いか判断します。もっと分かり易い例では身体が大きいのは逃げて良いです。十メートル以上は撤退して良し」
知り合いに殴ってから強さを判断する『脳筋』と呼ばれた女性の姿が浮かんだ。
戦闘に多大な影響を受けた一人だから仕方が無い。
自分は戦士職だから、と言い訳しておく。
大雑把な判断基準だが、それもまたあながち間違っていないのかもしれない。
兵士達に相手に出来る大きさはあるだろうし、特殊な攻撃をするモンスターでもないかぎりは。
二匹目の
「いやぁ!」
と、睨みつけるような敵意のこもった目で攻撃してくる
一回の攻撃に対し、複数の矢が襲い掛かってくる。
それらを捌きつつ接近していく。
相手はギリシア神話の神だが、他の神同様に好戦的のようだ。
放たれた矢は自然と消滅する。
これは捕まえるのが少し大変な気がする。
これが熟練のプレイヤーならば厄介なのだが、相手はモンスターだ。
一定の条件の下でしか使ってこないだろう。
乱用はしないので慌てなければ活路は見出せる。
敏捷をあげて
攻撃態勢に入っている
「ぐぅ!」
翼が生えているので滞空したまま体勢を維持しようとする。
浮かんだままでは中々力は込められないがガントレットを駆使して距離をつめていく。
浮遊するのは背中の翼の力だろうから、まずは叩き斬る。
すぐに再生と治癒をかけて地上に落す。
体勢が崩れた
これで瞬間移動されても落下し続ける。
空を飛べない神は何度か逃亡を図ろうとするが全て失敗。
あとは様子を見ながらスティレットで首を狙う。
魔法を防がれた後は何度か殴りつけて弱らせる。はた目には弱い者いじめにしか見えないだろう。
狩りの基本は弱らせること。
ユグドラシル時代とは違ったゲームになってきているような気もする。
意味も無く倒してアイテムをドロップする今までとは違うのだから仕方が無い。
身体中にスティレットを突き刺した後は下半身を両断していく。
当然、眼球は頂く。抵抗されないように手足も落としていく。
翼を治して搾取。
あとはメイドを呼んで次々と部位を集めていくだけだ。
取れるだけ取った後は身ぐるみを剥いで全身を縛り付ける。
「今更だが、君たちはどこから来た?」
「ぐうぅ……」
唸るだけで会話が成立しない。敵対行動になっているからだろうか。
先ほどまで居た
神クラスとはいえ人間と大差ない姿をしている。
「会話が成り立たないなら仕方ないな」
話す気が無い場合は嬌声で様子を見よう。
数十分後には失禁の跡が水溜りを作る。
あとは眠らせて持ち帰って身体を洗い、保存するように命令する。