ゲームオーバーから始めようか 作:モモンガ
イビルアイはアズス達としばらく残る予定だが、ヤントラは仕事の報告の為に一旦は冒険者ギルドに戻らなければならない。
後は何も依頼されていなければ自由時間だ。
兵士達も奮闘したがヤントラのように簡単には倒せなかった。
「なんであんなに簡単に倒せるんだ?」
あれだけの実力を持っているのに本人はまだ弱いと言う。
どういう世界で生きてきたんだろうか、とイビルアイも不思議に思う。
彼らの『敵』や強者はどれほどのつわものなんだろうか。
兵士の数も多いので多少は善戦できる。
イビルアイが苦戦した槍使いはその後、姿は見せなかった。
渡されたゲイ・ボルグは自分が使うには長いのだが、返すべきか悩んだ。
以前の姿なら返していただろう。今はそれほど気にならない。
あまりに良い武器は無くすのが怖い。あと、誰にも渡したくない欲が出てしまう。
ヤントラの代替武器はどれも切れ味の良いものだが、扱いが難しい。
投げないことを条件に預けておいた。
「ゲイ・ボルグを扱う槍使いは他にも居て、そちらの方が強敵かもしれません」
「うむ。気をつける」
夜間に突入し、しばらくすると非実体のモンスター『
難度を確認せずにさっさと退治してしまうのは滑稽のようだった。
それから少し経って闇夜に輝く獣の瞳が複数灯りはじめた。
気配から獰猛な獣だと分かるのだが、闇夜に紛れているせいで姿が見えにくい。
『
赤い瞳は見覚えがある。
『
レベルは
数としては二十匹。
「
「問題ない」
それぞれ武器を持って警戒に当たる。
数が多めなので無闇に進むことは危険だ。
だが、ヤントラはお構い無しに『
圧倒的な実力差があるので一回の攻撃で六匹は吹き飛んだ。
「……銀プレートは別に皆の為に手加減はしなくていいんだよね?」
「仕事の内容では警備の仕事さえちゃんと出来ていれば……。モンスターがたくさん出て来た場合は不可抗力で良いだろう」
イビルアイの言葉にヤントラは一つ頷く。
兵士達も戦わないと身体がなまってしまうのでは、と気を使ってしまったが、本来は必要ないらしい。
「楽をしすぎるのは危険だがな」
そう言っている間にルイセンベルグ達は次々と
二十匹は減るどころか数を増やし『
それらの魔獣はルイセンベルグ達に任せてヤントラは闇に向かった。
悪魔系をけしかける存在。それは既に感覚で捉えているのだが、退屈しない地域で楽しくなってきた。
風を切るような音が聞こえる。
それは鞭による攻撃である事は分かっていたので『天召バルディッシュ』で絡め取る。
素手では手首が吹き飛ぶ。鞭は意外と危険な武器で強い腕力で振るえば簡単に音速を超える。
鎧で器用に防御するのは難しいだろう。
「よい判断ですね」
暗がりに潜むのは二メートルを超えるほどの女体。
大きな胸がある。
身体は人間の女性だが、暗がりから現れる頭部は異形そのもの。
犬、獅子、馬の三つの頭が一つの身体の上に乗っている状態だ。
それは『
三つ首なのか一つの首なのかは近くで観察しないと分からない。
一体だけのようだ。
そんな事は些細な事だ。
重要なのは女体モンスターだということ。やることは変わらない。
目ぼしい装備は無いが身体が少し大きいなと思った。
下半身が大きい
三十分後には
警備にしに来たのか、女体を収穫しに来たのか。
運搬をメイドに任せれば辺りは静まり返る。
「
「うむ。全て消滅したようだ。まだ何か来るんだろうか?」
「深夜に巨大な
イビルアイと話していると『
それらはさっさと駆除する。
倒してすぐ松明で
『炎剣キリネイラム』のことを思い出し、その武器で虫達を追い返す。
夜間に煌びやかな女神が現れるわけもなく。
夜を司る女神は居るには居る。
「良い狩り場のようですね。他にもあれば散策したいところです」
「危険なモンスターなら文句は無いぞ」
兵士達にはきつい仕事場なのにヤントラは意気揚々とモンスターに向かっていく。
のこのこやってくるモンスターが哀れに見える。
アダマンタイト級の冒険者ならまだしも銀プレートとは思えない働きをしている。
八割近くはヤントラが倒したのではないだろうか。
厄介なモンスターはその後、翌朝まで現れることが無かった。
「お疲れ様。依頼としてはこれで終了だ」
「こちらこそ。楽しい……、いえ、大変なお仕事ですが、頑張ってください」
楽しくない。と言いたいところだが、ヤントラには楽しい場所なのだろう。
もっと強くなろう、と兵士達は思った。
イビルアイ達はしばらく評議国からの侵入者対策の為に残るようだ。
「ばばぁが現れれば話したいこともあるのでな。……槍は無くさないようにするよ」
「追加ダメージがありますから、扱いには気をつけてください」
「うむ」
イビルアイはヤントラを軽く抱擁する。
交代要員と共にヤントラはエ・アセナルの冒険者ギルドに向かい、仕事の完了の手続きを取る。
警備だけなので報酬は安い。ただ、一緒についてきた兵士達は相当数のモンスターを倒した割りに報酬がすくない事が信じられなかった。
証拠品を持ってこないので言っても仕方がないのだが、少し残念だと思った。
遭遇した
受付けカウンターの側で出会った
普通ならば撤退してもおかしくないのだが、追い払ったり
「
と、受付嬢は呆れながら言った。
「それとは関係ない事で殴られてど忘れしたのかも……」
出現頻度なども書き加えていく。
捏造にならないように。
それらを書き終えてから提出した。
「はい。確認しました」
「すみません。
「いいんですよ。こちらも詳しい内容は聞かされておりませんので」
改めて依頼完了を確認し、互いに一礼した。
追加の名指しが無い事を確認した後は施設に一気に戻る。
野ざらしにしていた
六の宝物庫に置いたままにしていた献体の整理もしなければならないが、本体も連れてきたので、これらの処分に困る。
複製体は混ざらないように気をつけつつ洗浄させて保管していく。
『
異形の方も洗浄が終われば保管していくが
ペストーニャと良い勝負が出来る。見た目が。
メイドを増やしても仕方がない。
武具も洗浄して保管し、培養液の方も処置をしていかなければならないだろう。
懸案だった戦闘メイドの培養は比較的順調。何でも培養できるのではないかと思うほどだ。特にシズはどういう原理なのだろうか。
回復魔法がある、などの理由だろうか。
下手をすれば
色々と整理整頓していたら二日が過ぎていた。
狩り場捜索の為に必要な人材を選定しておく。地上に置いてある
リイジーの様子を見たり、施設の中や宿舎の様子を確認していく。
郵便はラキュースからしか来ていない。
自分の人望はあまり無いなと思った。
ンフィーレアはカルネ村で忙しいだろうから、戸締りを確認した後は評議国国境に向かう。
転移で到着したとはいえ早くて便利だなと思った。
二日留守にしただけで得体の知れないモンスターが兵士達と戦っていた。
女の
上空には
滞在しているイビルアイが駆け巡り、雑魚モンスターを片付けているのだが、手間取っているようだ。
「手伝おうか?」
イビルアイにヤントラが声をかけると大層驚かれた。
「おう、ご主人。いや、大丈夫だ。この程度は我々でも対処できる」
「気をつけて。私はダンジョンが無いか探索してくるよ」
「あっ、信仰系を数人貸していただけないか?」
「そうだね。ちょっと待っててくれ」
不可視化していたメイドのうち二人を呼びつけて、色々と命令を下し始めた。
それから羊皮紙を取り出す。
イビルアイはモンスターを倒しつつ羊皮紙に顔を向ける。
「……こんなところだ。では、イビルアイ。二人を残すから。これを見て色々と命令を下すように」
渡された羊皮紙にはリ・エスティーゼ王国の言葉でメイド達の使い方が書かれていた。
イビルアイは最初の命令を早速実践する。
メイド二人に指定された命令を下すと、スカートをつまんで頭を下げる。
「畏まりました」
ヤントラはメイド達に自衛の為の武器と防具を渡しておいた。
「イビルアイ。このメイド達は死体になっても持って帰るようにお願いしますよ」
「心得た。無茶はしない」
ヤントラはイビルアイを抱擁した後は北方を目指して駆け出した。
途中で何匹かモンスターは切り伏せておいた。
不可視化しているメイドは十三体。それぞれ荷物は持っていない。転移のための位置把握が最初の目的だから。
植物の少ない山岳地帯が広がり、進むごとに気温が低くなっている気がする。
四百メートルほど進んだところで
兵士達の詰め所に攻めてくる場合は近くにダンジョンらしき気配があってもおかしくない。
メイド達と共に探すが見当たらないし、地上のモンスターも
少し南下すればリ・ボウロロールが見える、までにはまだ結構かかるだろう。
更に北は海がある。
雪が積もる山頂はとても綺麗だが人間が住むには寒いところだ。
登山客の為の山小屋は見当たらない。というか登山客など居るのだろうか。
地上のダンジョンではなく天空にも顔を向ける。
空に不可視化の拠点があるとは思えないし、ヤントラが建造している拠点は反対方向だ。
一定距離を保ちつつ上位モンスターの出現を警戒していく。
メイド達は固まって移動させて、ヤントラは単独で彼女たちとは距離を置く。
モンスターは少数を狙う性質がある。それを利用するとヤントラの方に集まってくる。
山岳地帯は枯れ木は多いが見晴らしはよく、様々なモンスターがよく見えた。
妖怪系も居て、上半身が牛で下半身が蜘蛛の『
餌場を求めて互いに争うこともあるだろう。海辺に近いから
なだらかな斜面ばかりではなく、岩がたくさん転がっているところや林のような場所もある。
モンスターが住処として作り上げた雑な住居の跡もあった。
奥に行けば森があり、雪山へと続いていくのだろう。
適当な大型モンスターに『
途中で巨大な
この
前者は
中には希少金属も混じっているので、それらは回収する。
仮面を被り、外套をまとって寒さ対策を整える。
メイド達にも外套と仮面を与えていく。
地下ダンジョンの入り口ははた目には分からない。
何かの遺跡でなければならない理由は無いので見つけるのは難しい。
石像の一つでも置いてあれば昔、ここに文明が栄えていた、などという説明が読めるかもしれない。
ヒントの無い冒険はとても大変だ。
前人未到の場所のようで人の気配が殆ど無い。
いわゆる獣道に類する道は無く、モンスターの死骸と思われる骨が散乱するだけだ。
自然界のモンスターはゲームと違い、倒せば死骸が残る。
それから
腐肉の養分で植物が生えることもある。
荒涼とした山岳地帯では草木が生えるのに適した環境とは言いがたい。
最初に見つけた自然のダンジョンなので野営の為のテントを設置していく。
メイド達と共に作業すれば三十分で出来上がる。
巨石などを壁にすれば風雨にも耐えられる。
一旦、施設に戻り、メイド達に身奇麗にするように命令しておく。
外に置いている
つい出入り口の扉の大きさを思い浮かべてしまう。
別のメイドたちに
それと首輪型の飲食不要のアイテムの製作。
ダンジョン近くに仮設の施設を設営する為に必要な物を運び込んでいく。
同時進行で出来ることは限られている。
ンフィーレアはしばらくは来られないようだし。
メイド達でも太刀打ちできないモンスターが居るので、順調に事は進まないようだ。
一日かけて仮設施設を作り上げ、容器類を運び込む。
信仰系のメイド。連絡要因などを用意していく。
下準備が終わればダンジョン攻略だ。
人工的なダンジョンではないので下に降りる階段などはありはしない。
ゲームでは何故か階段が用意されていたり、移動用の転移の床などがあったりする。
こういう時に真蒼の薔薇を連れて行けば良いんだろうけど、みんな忙しいだろう。
黙っているよりは誘ってみるのも悪くは無い。
折角仲間として迎えたのだから。
こちらも彼女達に気を使っている場合ではない。
冒険する人。
建設する人。
管理する人。
いっぺんにはできない。
危険に晒せるのか、安全を取るか。
仲間を持ったことがないヤントラは後者しか選べない。
お前は囮だ、と言えるほど偉くはないのだから。
結論が出たところでダンジョンの内部に潜入する。
気温は低い。
明かりも無い。無いなら『
自然の洞窟なのでどこまで続いているのか
壁を突き崩していくのは得策ではないだろう。
天井は高いが壁の隙間は大人二人分といったところだ。
こんなところに巨大生物が潜伏しているとは思えない。そもそも入れないし、出られないだろう。
そんなことを考えつつ進んでいくと別れ道が現れる。
他にも入り口があるのかもしれない。
狭い環境なのでモンスターが現れる気配がしない。
小型のモンスターなら出てくるかもしれないが、今のところ外敵は居なかった。
壁に印を付けていき、奥に進んでいく。
途中で簡易的な地図を作る。
階段は無いが下へ続く穴や坂は無数にある。
天井にはコウモリが居て、数匹は魔法で打ち落とす。
召喚物であれば消滅するので確認の為に倒しておく。
メイド達に警戒はさせているが目だった大物は現れない。
『
それでも一時間ほど進んだ頃には拾い空間などが現れる。
壁一面を覆う黒い穴のような風景。ただ、それは
光りがなければ闇のまま気づかれない。
ゆっくり眺めずにそれらは魔法の集中砲火で撃退していく。
上位モンスターが居るところは他にも居るはずだ。
奥に進めば
じめじめした洞窟内はアンデッドや粘体系が多く住んでいる。
可愛いモンスターが居る方が怪しいだろう。
水分は豊富かもしれない。
飲食不要の神ならば可愛いモンスターも居るかもしれない。
広くて深いと探索が困難になっていく。
途中で休憩地点を作る必要があるかもしれない。
探索開始から三時間後。
光りのない世界の生物は大抵が目が退化している。
音を頼りに移動するのが基本だ。
それらも魔法で撃破していく。ある意味では容赦の無い攻撃かもしれない。
動く気配が途絶えてからメイド達に掃除をしてもらう。
『
ヤントラは一度、地上に戻る。
日は既に沈みかかっていて、地上の仮設の周りには色々なモンスターが集まっていた。
動物系が多いので蹴散らしておく。
厄介なモンスターは居ないようだ。
ついでにイビルアイの様子を見ると何体かの巨体が転がっていたが無事なようだ。
施設に戻り、追加のメイドを引き連れて拠点に戻る。
一部は『
残りはヤントラと共に更なる奥へ向かうことにする。
強敵が現れれば拠点に戻り、待機するように命令しておく。
改めて『
それらはすぐに討伐されるが一人、上半身を吹き飛ばされたらしい。
別の強敵でも居たのだろうか。すぐに蘇生処置を施すように命令する。
メイドの肉片は『マグヌム・オプス』で復活させる。
無理なら処分だ。
今回連れて来たメイドはレベル80台半ばの強い部類なのだが、それに負けない敵となると新手の英雄だろうか。モンスターとしての
疑問に感じながら進むと精霊系のモンスターの姿があった。
水晶のように壁に張り付いているが鉱石に見えてモンスターだ。
近づけば属性に沿った魔法を撃ってくる。
こういう時は
メイドに先行させて魔法を撃った後で物理的に破壊していく。
少しもったいない気もする。珍しいモンスターは欲しくなるものだ。
それらを撃破しつつ奥に進む。
辺り構わず魔法を撃って穴だらけにしたり、落盤を誘発させるわけにはいかない。
慎重に進むのだが、床は
試しに一つ落ちてみる。
『
広い空間か、
まず天使を送り込んで辺りを探らせる。すぐに黒い空間から触手が伸びて天使に巻きつき、そのまま引き裂いていく。
かなりの数の黒い粘体が居るようだ。
『
メイド達も『
相当量の粘体を駆逐し、辺りを窺う。
こういう場所が他にもあるかもしれない。
一人を更に下にある床に降ろすために駆逐できるだけ討伐していく。
一定の数を減らした後は一人を下ろして穴から這い出る。
下に残ったメイドは超位魔法『
洞窟内が光り輝き、激しい熱波が辺りを包み込む。
夥しい数の粘体は一掃されていた。ただし、効果範囲内に居た者だけだ。
驚異的な魔法ではあるが周りへの影響は少なくない。
別のメイド達を突入させ、残りの敵を一掃する。
第十位階魔法『
範囲内に居る敵に即死効果を与える。
ゆえに他のメイド達は巻き込まれない範囲に散っていく。
三方向に交代で魔法を放つとたくさんの粘体の死骸が床に広がって蒸発していく。
それらを終えてメイド達を帰還させる。
点呼を取り、第一拠点に戻る。
現場は混沌としていて
迂闊な蘇生は危険だと判断し、関知しない分は一掃することにした。
次から次へと出てくるモンスターを倒しきる頃に大きな鎌を持った敵が姿を現す。
レベル90台の上位モンスター。
『
上位モンスターはメイド達を強化したとしても単独撃破は難しい。
アンデッドは生身のモンスターより倒しにくい。
とはいえ、野放しには出来ない。
メイド達の武器を殴打に切り替え、一気に倒しきる。
ある意味、集団暴行に近い。
斬撃が効きにくいのでメイスなどでガツンガツン殴ったりしなければならない。
現れたのが一体だけなので滅ぼした後は場を清めていく。
戻るたびにアンデッドに襲われたくないから。
それが終われば地上に戻るのだが、ここでもレベルの高いモンスターが拠点を取り囲んでいた。
大半はメイドに返り討ちにされたようだ。
中位アンデッドの群れ。
非実体系も混じっている。
今のところ
これだけのアンデッドは今まで出てこなかった。
数体ほどが倒されると消滅するので召喚されたモンスターのようだ。
ナザリックの魔の手が伸びてきたのか。
襲ってくるものは倒せば良い。
信仰系による場の清めも
行く先々でアンデッドが出てくると不安になってくる。
メイド達に仮面を付けさせて蹴散らしていく。
誰が召喚しているのか、辺りを見回す。
召喚モンスターではない場合は非実体系を除けば死骸が残るものだ。
それが次々と黒い煙を発生させて消えていく。
「……お前達は帰還せよ」
この命令に全てのメイドが頷いた。
誰一人として疑問は口にしない。
待機している全てのメイドは『
それからすぐに周りに異変が起きる。
夥しい数のアンデッドが大地と空を覆う。
低位から上位まで。
『
黒い身体に蝙蝠の羽が背中にある人型の『
『
先ほど倒した
多種多様なアンデッドばかり。
見える範囲では数万体は居そうな気がする。
悪魔系は少なく、アンデッド系が大半だろう。
「この程度の戦力が世界の強制力なら……、なめられたものだ」
モモンのように二本の長大な武器を取り出す。
火属性の炎剣キリネイラム。
まず軽く剣を振る。それだけで周りに炎が撒き散らされる。
低位モンスターはそれだけで一部は消滅。
後は普通に攻撃するだけだ。
魔法攻撃も雨のように襲ってくるが構わず駆け巡る。
ヤントラが通った後には炎にもだえるモンスターの姿が転がる。
アンデッドを足場にして円を描くように駆け巡る。
その合間に天使を召喚し、手数を増やしていく。
その天使達も足場にして駆け巡る。
大物を倒さないと召喚は止まらない。それは分かっているのだが、雑魚モンスターの壁は厚い。
切り崩しに手間取る。
面倒なので『
たくさんの目を持つ車輪型の天使。
巨体ではあるけれどレベルは低い。
『
真の力はもっと強大だ。
『
それとは別に一点突破のとっておきがある。
『
こちらは高速回転しつつ一体の敵に雷の魔法を打ち込む。
全ての目を犠牲にして放つので二度しか使えない使いきり。
驚異的な貫通力を持つが威力は目の数に比例する。
多くの目を潰されれば威力も落ちる。ただ、一撃必殺に相応しい美しい演出は一見の価値がある。
あまりにも眩しくなるので盲目状態にも陥り易い。
「〈
スクロールによる第八位階の天使召喚と同時に攻撃の手は休めない。
無駄に立って待つゲーム時代とは違うのだから。
十の動作くらい同時に出来るのがゲーマーだ。
そこまでは無理か。
ゲーム時代よりも柔軟な対応ができ、モンスターや人物もプログラムを超えているというのに三つや五つの同時進行くらい出来ないとは百年前のテクノロジー並みに劣化しているといえる。
十年経てば量子力学は時代遅れの産物だ。
ヤントラは愚痴を思いつつ武器を奮い、最初の天使の一撃で中位までアンデッドを一掃する。
この『
だが、動きは素早く体当たりでも充分に役立つ。
回転攻撃が地味に効果的。
身体の一部が欠けるような攻撃を受けると簡単に墜落するのが玉に
全体攻撃は上位モンスターにとっては微々たるダメージにしかならない。
だからこその『
耐え切った
特に自動的に湧き出るタイプは。
高レベルのモンスターは丈夫だな、と思いつつ殴ったり『天召バルディッシュ』で叩きつけたりする。
背後から飛び道具をぶつけてきたりと様々な攻撃が飛んでくる。
それらは『
アンデッドだから『
高位の魔法に『
数が多いと何が効果的なのか分からなくなってくる。
炎剣キリネイラムと天召バルディッシュで高レベルモンスターを滅多切りし、中位モンスターを片付けていく。
経験値稼ぎもアイテム稼ぎもできないモンスター退治は虚しいだけだ。
仕事をして情報を得られるからこそ冒険者ギルドで働く。
少なからず見返りはヤントラとて欲しい。
それは物でなくてもいい。
これが普通だ。
装備していた大鎌は装備できないものかもしれないけれど。
持ったまま倒すと消えるかもしれない。色々と実験は必要だ。
『
奪えたし、イビルアイが使えている時点で残りそうな気がする。
そんなことを考えつつ残っているモンスターを片付けていく。
折角設営した仮設施設がボロボロになっていた。
召喚した天使に適度に攻撃してもらった後で去ってもらう。今回は隠しだまは使わずに済んだようだ。
簡単に使ってしまうのは、なんかもったいない。
メイド達を全員帰還させたので『マグヌム・オプス』に自力で戻るしかない。
「……仕方ないか……」
また作り直すことにして残った敵は全て排除した。
安心するのもつかの間、ヤントラはすぐに複数体の天使を呼び出す。新手のアンデッドが現れたためだ。
ドロップアイテムがほぼ無いのが残念なところかもしれない。
あればあったでゲーム世界かもしれない。
性行為を許容するゲームというのは素晴らしいことだ。
新たな敵が出ないうちに辺りを探索してみる。
ほぼ召喚物で構成されていたために残骸はほぼ無い。
何も残らないのはつまらない。
壊れた拠点は諦める。
壊れない施設は後で考える事にする。
雑魚相手にスクロールを使うのはもったいない気がしてきたので、探索を切り上げてイビルアイの元に向かう。
上位モンスターは居ないようだが、死骸が散乱していた。
そういえばメイドを二体ほど待機させていた事を思い出し、様子を見に行く。
兵士達の詰め所は所々が破損していたが犠牲者は出なかったようだ。
「さっき物凄い数のアンデッドが現れてびっくりしたぞ」
「こちらもですよ。せっかく作った施設が壊されてしまった」
イビルアイはヤントラの身体に異常が無いか確認して安心する。
身体に穴が空いたまま動き回る人間なので、少しだけ心配した。
預けたメイドは無事なので、早速『
六の宝物庫にメイド達は控えていて、次の命令を待っている状態だった。
荷物を持たせてイビルアイの元に行き、掃除を命じる。それから建物の補修も
それらは低位モンスターなのでさっさと討伐し、辺りを広範囲に清めていく。
新たに施設を建て直し、洞窟内に移動する。こちらにもモンスターが居たが駆逐しておく。
発生頻度が高いようだが、殆どが召喚モンスターなのが気になった。
一人で
別の可能性では複数のプレイヤーとなる。
ピンポイントで狙われているのかもしれない。それならば敵対行為として
世界の強制力なら良い勝負が出来るだろう。
全員に『天召バルディッシュ』を装備させる。
それが合図となったのか、また一斉召喚が
今回連れて来たメイドは三十人。洞窟側にも三十人。イビルアイ達のところには十五人と不可視化のメイド十五人が控えている。その全てが百レベルだ。
敵性モンスターに遠慮は無用。
第十位階も使わせれば十分たらずで静かになる。
数による圧倒的な蹂躙だ。
数十万体の
これでも足りないなら英雄級を百人ほど連れて来い、世界よ。と、ヤントラは思った。
これに迂闊に答える世界が呼べるのは邪神系くらいかもしれない。
『
キリが無いが邪神系はどれも高位のモンスター揃いだ。
『
高難度ダンジョンに生息する悪魔もまだまだ厄介なモンスター揃いだ。
三点を往復するように様子を見てみたが、新手は出て来ないようだ。
さすがに怯んだかな、と思う。
足りなければ数千人が駆逐しに来るけどな、と。
外の建物。ダンジョン内の施設の強化。
改めてダンジョンの攻略に望む。
目ぼしいものは無いはずだが壁などを掘れば希少金属が出てくるかもしれない。
そのあたりは今回は保留にして先を進む。
落とし穴に再度入ると黒い粘体達の姿は殆どなかった。
念のためにメイド達に探索させたが何も発見できなかった。
横道なども無く、次に移動する。
複雑な構造の洞窟だが構わず、目印を設置していく。
古代文明の跡は見当たらず。
自然に出来た天然の洞窟という意外には何も出て来ないかもしれない。
その後は広い空間に届くまで駆け足のように移動していく。
モンスターは非実体系とエレメンタル系ばかりだ。
時計を確認しつつ行ける所まで進む。
散り散りにならないように進んでいき、広い空間に到達したのは四時間後だった。
暗い空間なので人間は長時間、滞在できないかもしれない。
早速拠点を作り、一つ前の拠点の物資を移動させる。
その間に地上の方も確認するとやはり大量のモンスターが出ていたようでメイド達が駆逐していた。
しかも全て召喚物。
魔法の使いすぎに注意させ、回復役の待機も命令しておく。
メイド達の無事を確認し、ダンジョンに戻る。
往復ばかりだが仕方ない。
一段と奥まった場所に新たな拠点を移した後は調査を開始する。一部は待機させて魔力の回復に努めてもらう。
こんなにモンスターが現れては開発どころではないだろう。
というか、勝手に調査するのは良くない気がした。
山を買うべきなのか、高山として地元の許可が居るのか。
調査を中止して攻略だけ優先した方が良いだろう。
十人ばかりのメイドに地上までの『
残りで一気に下っていく。
少人数だが戦力としては申し分が無い。
一定距離を保って目に付くモンスターを討伐していく。
それから数時間かけて最下層と思われる場所にたどり着く。
地熱のせいか、温かい。
火属性のモンスターも目立ってきている。
溶岩帯だと困るのだが慎重に進んでいくことにする。
宝箱も無いし、アイテムも手に入らない。
欲しいモンスターも居ない。
面白くない。
地上に現れていた英雄や女神はここに住んでいるとは思えない。
あれらは空中で自動的に出現するのかもしれない。
考えても仕方が無い。
「ここら辺の壁で希少金属はありそうか?」
メイドの一人が壁などを破砕して、破片を回収する。
自然に出来た道を進んでいくと広い場所に到着する。
最下層化と思ったが横穴がいくつかあり、
それらを打ち落として始末する。
連続戦闘が続いたためか、観察がおろそかになってきた。
更に進むと明るい光りが見えてくる。と、同時に湯気のようなものも立ち込めているのが分かる。
全員に不可視化を命じ、更に進む。
他に探知妨害などを駆使する。それは僅かな話し声を聞き取ったからだ。
距離にして数百メートルはあるかもしれないが、聞き耳を立てる事に優秀なクラスで助かる。
聞こえるのは水の音と女性の声。
つまりは地下に温泉施設があると言う事だろう。
メイドの一人に探知を命じると数十人以上は一箇所に固まっていると答えてきた。
では、次にすべきことは決まっている。
施設に戻り、狩りの支度だ。
二百人のメイドと容器類の用意。一時拠点の仮設の設営。
煩悩は何よりも冒険の糧だ。
再度、現場に戻り支度を整えていく。
声の出所を慎重に窺えば女体の海。
温泉に浸かる女性モンスターというか女神の園があった。
分かる範囲だけでも『
様々な神話が入り混じる。
先日倒した『
同じ顔が複数居ても気にならないようだ。
人間の姿をしているが分類では異形種に入る者も多い。
女性だけなら良かったのに男性も居るようだ。
神々の黄昏。ラグナロク。
嬌声も聞こえるので性行為でもしているのだろう。
モンスター同士でも男女が出会えば子孫を残そうとするのだろうか。
普通のゲームではお目にかからない生理現象もゲームの枠組みから解放されれば普通に行われるのかもしれない。
それは
では、一気に刈り取ろう。全てを。