ゲームオーバーから始めようか 作:モモンガ
屠殺場を作る上でナザリックの者達を集めるのが近道だったから、ということもあった。
部位を集めて飾ることも複製の量産も必要な素材が揃わなかった事を考慮してのことだ。
今はほぼ自前で揃えられる様になった。それはクラスの解明があったからこそだ。
現地の人間の調査も難航はしたが、今は充分な資料が出来上がっている。
ここまで来るのに随分と苦労したものだ。
「このメイド達と同じものを食べろ」
ヤントラが
「畏まりました」
「喋った……」
問題があるとすれば正確に伝えないと動かないことだ。
食事が運ばれるまで動かないかもしれない。
「メイド達、この子のために色々と注文してくれますか?」
「はい。承りました」
引っ張るように
食べ方が汚い。
「……
「命令だから喜怒哀楽は介在しない。食べろと命令すれば死ぬまで食べ続けるだろう。食器類は分かるようだが、命令次第ではテーブルもかじるおそれがある」
シズを含めて全員が嫌そうな顔になった。
「……性格をつけないのはオリジナルに忠誠心が無いから?」
「そうだね。君たちとは違うから。違うというか、私の従者として生まれていないから、というのか正確かな」
本来の
「……アインズ様も我らの裏切りを恐れていると言う事か……。……忠誠心を疑われるのは辛い」
証明するすべが無いからナーベラルは苦悩していた。
自分ならばどう証明するだろうか、とシズは考える。
だが、自害しか思いつかない。
相手に信頼されようとするのは敵対者も同様だ。だからこそ相手の懐に飛び込むのだから。
自らの体内に爆弾を仕込んでもらい、疑われればいつでも爆破してくれと言う以外に無いかもしれない。
相手に信じてもらう方法を敵が手に入れてしまえば、それはそれで危険度が増してしまう。
難しい問題だろう。
「……証明不能……。……これ以上は頭脳に多大な負荷をかけてしまう恐れがある」
「答えのない問いもあるだろう。悩みすぎて自害ばかり選ばないでくれよ」
「……了解した」
シズを慰めた後、
好き嫌いなく、黙々と食べ続けてお腹が膨れてきた。
食事の邪魔を他のメイド達に
命令遵守の姿勢は狂気じみていた。
「ちなみに身体が破裂しても止まらない。君たちは自制が効くから止められる。……こういう実態があるわけだ」
食事をやめるように命令して初めて
「見習った方が良いのか、教訓として受け止めた方が良いのか……」
「命令は絶対というのは頭では分かっているのですが……」
「従順な部下は欲しいけれど、これは従順すぎる。ナーベラルの方がまだ可愛い」
「ナーベラル・ガンマ先輩も命令には厳しい方だと思いますけど?」
「従順ではあるけれど自制は出来る。シズも機械ほどに融通が聞かないわけじゃないし」
シズは軽く唸った。
「……一方的な命令に疑問があれば質問する。……それは自然なことではないのか?」
「疑問を差し挟むな、と言われたらどうする?」
「……それは……」
「そこまで厳しくは言われないだろうけれど、疑問があれば質問するのは確かに悪い事ではない。それぞれ種族が違うから感じ方も千差万別」
「……うん」
それから程なく、嘔吐を繰り返し、
「メイド達の命令を聞きなさい」
一般メイド達にお世話を頼むと目を輝かせて了解していった。
変な命令も聞いてしまうかもしれないので、羊皮紙に一通りの命令の出し方を書いて渡した。
「お世話をかける」
「いえいえ」
複数のメイドが
「……バスパ様、質問」
「なんだい?」
連れて行かれる
「……我らの複製は今はどんな命令を受けているんだ?」
「保存したままだ。色々と学んだし。液につけるから服は着せていないけれど」
「……戦力には使わないのか?」
「最初はそれも頭を過ぎったが……。今は博物館のような状態だ。人に見せられないのが残念だが……」
「見せられない?」
他のメイドが首を傾げた。
「人間世界では身体そのものを標本のように飾らないからね。死体だと思われる。アンデッドも居るけれど……」
「……死体ではない標本……。……それは可能なのか?」
「活動を止める魔法がある。解呪しないかぎり動かないし、窒息もしない」
「……すごい」
「あのメイドも標本の一つなのでしょうか?」
「最初の一体は標本かな。標本と言っても内蔵を取ったりはしないぞ。止めてるだけだ」
「解呪した場合は動きますか?」
「オリジナルではないから命令が無ければ動かない。止まったまま死んでいくかもしれないな」
メイド達の知らない魔法が奇跡を作り出すことに感動していた。
疑問はあってもちゃんと解決策を持っているヤントラは凄いと口々に言っていた。
「……複製がたくさんあってもバスパ様は寂しい。……我々のように自我を持って話したりしないから」
「うん。自我というか性格付けだな。どこまでの命令を与えたら良いのか、分からない。このナザリックを
「……だが今はナザリックとは違うメイドを使っている。……それならば……いや違う。……複製だからダメなのか」
複製だから本物と鉢合わせして混乱が生まれてしまう。
混乱を避けるにはオリジナルの従者が必要で、そのあてがヤントラには無い。
あるなら悩んだりはしないだろう。
「本体は私の従者ではないからね。いっそ君たちを引き抜きたいくらいだ」
「まあ!」
「引き抜くといっても往復してもいいという感じで……。今は私の施設に入っても誰にも襲われないよ、外部の敵以外」
「ああ……、第十階層と繋がっていましたね。えっ? お邪魔してもいいんですか?」
「食事処が無いけどね。宝物庫だから人が殆ど来ないから。……居るには居るけどね」
食堂が無いとメイド達はお腹を空かせてしまう。
実験農園があるとはいえ食欲旺盛なメイド達を養うほど大量の食材は備蓄されていない。
「
この話しは何度もしてきたはずだが、つい言ってしまう。
部下の扱いがうまければ悩みもだいぶ解消されるだろう。
飲食が出来ない部分でメイド達はがっかりしたようだ。
一通りの話しを終えて
念のために普通の献体でも確認する。
人造系は基本的に妊娠しない、はずだ。
だが、世界の理が狂っていれば不可能も可能になるかもしれない。
それは例えば『
構造的に人間に近いし、生物に違いは無い。
NPCが妊娠するなら不可能ではないはずだが種族的な制限の問題もある。
妊娠したとしても胎児が肉の塊では意味が無い。
同じ種族なら可能性があがるかもしれない。それでも
一部の種族はメスしか産まなかったり、女神は生まれて数分で成人になるという仕様だ。
装備品の都合があるのかもしれない。
神や英雄から生まれたものは知恵をつける。それがすこぶる厄介なところだろう。
従順な人形ではない。
敵は倒す、という本能に従う者達。
本体が主に忠誠を誓うのであれば子もまた従う。なので複製を
神々の複製体は従順だが住人としては使いにくい。
知恵がついたものはオリジナルと言えるから、それはそれで実験のしがいはあるだろう。
ンフィーレアに見せる前にイビルアイにおぞましい実験を見せることにした。
地下施設なので彼女は仮面を外す。
「まず
寝台に置かれた裸の女性が一人。
イビルアイは身体を触っていく。種族的には天敵に匹敵するのだが素手で触っても問題は無いようだ。
神だと手が焼けるかと危惧していた
死体というわけではなく、胸が上下しているので生きている事が確認出来た。
目蓋を開けたり、口を開いたり。脇をくすぐったりした。
「……エロいな。生理現象は起きるのか?」
「起きるかもね」
細い管を渡されたが、これでなにをしろとイビルアイは少しだけ疑問に思い、すぐに理解する。
「変態としか言えないのだが……。実験、なんだよな?」
「そうですよ。ご自分の身体でやりますか?」
「……嫌です……。あと、ごめんなさい」
拷問室の本来の使い道も理解出来た気がした。
こういう生物の実験する為に色々と作ってきたのだろう。だからこそ必要な道具は揃っている。
「無抵抗の身体は安心はするのだが……。悲鳴とか上げないものか?」
「屠殺場で見たままですよ」
「……ああ、なるほど。すまない、愚問だった」
イビルアイは他人の身体をいじるのは初めてではない。
罪人の身体を調べることには割りと慣れているのだが、綺麗な生きた献体は色々と抵抗を感じる。
憎しみがあれば平気でいられたかもしれない。
「縦に真っ二つにした場合はどう再生するだろうか、という疑問がありました」
ヤントラの言葉にイビルアイは少しだけ驚く。
そんな方法は思い至らなかったからだ。
普通は首を切断するものだから、想定外の斬り方ではある。だが、ありえないわけではない。
「肉体の体積が多い方。心臓の無事な方などいろいろと予想してみましたが、確実に精神は片方に統合されるはずです」
「片方は確実に死ぬと?」
意識が双方にあるならば双方に分かれるかもしれない。
以前、ガゼフに真っ二つにされた時は双方の精神を持ったまま接合にこぎつけた。
再生では死ぬかもしれないが治癒での接合なら片方が死ななくて済むかもしれない。
「魔法に出来ることには限界があります。では、魔法以外ならどうでしょうか? 色々と想像すると面白くもありますが、恐ろしくもあります」
「うむ」
「例えば頭だけ縦に割ると治るだけで、変な再生はしません」
「しないのか」
「はい。生命力のある
「……気持ち悪い事だが、大事なことだよな」
何の役に立つか分からないけれど、調べておくのは大事だろう。
様々な事柄を実験してこそ今の自分は生きていられる。
再生力が弱い場合は高い位階魔法に頼って解決することもある。
「例えば
「混ざるか。別々に復活する」
「拮抗した生物なら……。混ざるように復活します。内臓を潰しあうのでしばらくすると死にます」
「……それはきついな」
「血液だけとか。小さな肉片なら強い方に吸収されて消えるか、排泄されます。イビルアイなら大抵の生物には負けないでしょう。
「
イビルアイの指摘にヤントラは頷いた。
「というような実験を一人でやってきたのだな。……私でも続けたくないな……」
知ることは大事だ。だが、精神的にきつい。
イビルアイでも投げ出したくなるだろう。
気持ち悪い話しを切り上げて献体の性器や肛門をのぞき込む。
それだけで実験でなければ変態だなとイビルアイは自己嫌悪に陥る。
それぞれの献体というか種類には
「採取した尿はどうするんだ」
「土に撒いたり、下水に流したり。捨てますね」
「……ついいかがわしい想像を……」
飲んでいるような気がした。
「とっかえひっかえ毎日女体いじりしているわけではありませんよ」
「いや、分かっている。ついつい想像してしまうんだ。ほら、思い込みが激しいから」
保存された献体もかなりの量を見せられたのに変な想像が
それは素直に申し訳ないと思っている。
「女体は好きだが……。変態的なところを人に見せるのは私も恥ずかしいと思ってますよ。……だから秘密にしてたりするのですが……。あまり隠していると不安がられるから言える部分は言っているだけです」
性器を舐めている場面を見せられては気持ち悪い以外に感想は出ないだろう。
それはそれで想像通りなのだが。
「他人の性行為を見るのは大好きですけどね」
「正直すぎるぞ、ご主人」
「変態談義ばかりではンフィーレア君に解説するのが長くなりそうです」
「分かった。私が悪かった。ごめんなさい」
イビルアイは素直に謝った。
その後でもう一体の献体を用意する。
こちらも別の
「まずは男性化に挑戦する。
「うん」
イビルアイを椅子に座らせる。ただし、目の前に性器が丸見え状態なのが同じ女性として少し恥ずかしい。
ヤントラが居なくなった後、片方の献体に変化が起きはじめる。
寝ている献体の下半身が肉体的に変化する。
下腹部辺りが蠢くように。それから性器部分が盛り上がっていく。
「……おお」
肉体が目の前で変化するのは再生される肉体のようで少しだけ気持ち悪い。
どんどん肉が盛り上がるのだが、顔や体つきには変化は無い。
数分後に治まった後は少し見慣れた男性器が現れる。上半身は女性的だが胸は平らになっていた。
「なんだこれは……」
今のが魔法なら気持ち悪い。
そうは思っても今の自分の身体も似たように変化している。一概に嫌うのは筋違いかもしれない。
それにしてもちゃんと男性化したのは驚いた。
体毛に変化は無いけれど、数日後には毛むくじゃらになったりするかもしれない。
ヤントラが戻り、変化した献体を確認する。
「これも魔法なのか?」
「そうですね。秘密が多くて申し訳ない」
「あ、ああ。あまり口外できないものは秘密でいいよ。それにしても……、生えたな」
「触ってみます?」
「……う~ん。あまり触りたくないな……。つい口に含みそうだ」
女性と言うかメスとしての本能を刺激されてしまう。
数百年もオスとの合体を禁じられた身体なのだから欲望が計り知れない。
出来なくはない。ただ、欲望を止められる自身が無い。
「まずは……」
ヤントラが合図送ると数人のメイドが姿を見せる。
「実際に交尾の様子を観賞しましょう」
「ひゃあ……。見ないとダメなのか?」
「見るのは大好きですから」
「ま、まあ、私も健全な男女の……。言いにくいぞ」
顔を真っ赤にして恥らうイビルアイ。
見た目は十代後半の乙女だ。
処女喪失から交合。腰振りに射精と続く場面をメイドに押さえつけられながら見せられてしまうイビルアイ。
身体の奥がとても熱くなるのを感じた。
行為に対して献体たちは無表情で嬌声一つあげない。
淡々と命令を遂行するだけだった。
どれだけ続けたのか分からないが、男性化した献体はイビルアイに見えるように自慰を始めて十回近くの射精を見せる。
「……ひたすらエロいな……」
「夫婦には良い教材となるでしょう」
「……そうなのだが……。バレアレ氏には見せたくないな……。もうやってるからいいのか……」
「問題はこの後ですね」
エロい現場はメイド達に掃除させ、男性化した献体は連れ去られてしまった。
「お腹を見ていて下さいね」
「うむ」
十分後に献体のお腹が膨れ始めた。
「はっ? ど、どうなっている!?」
「本来なら半年以上はかかる妊娠期間を縮めています。倫理を捨てるとこういう結果が得られるんですよ」
牛の大量生産の謎。
短期間で妊娠出産させる方法があるから羊皮紙の生産が順調なのだろう。
命の冒涜と言っていた。
それから得られた方法の一つなのは確実だ。
「秘密は秘密のままがいいだろう。ご主人。私は何も言わない。バレアレ氏は口が軽いから、この場面は見せない方がいい」
「そうかもしれないね。どんな方法かはさすがに言えないが……。そろそろ出てくる」
充分に膨れた腹。
メイド達がお腹を撫でたり、性器を刺激したりする。
うめき声一つ出さない献体。
腰を浮かせると性器が広がり始め、血が漏れ出て来た。
それから裂けるほど広がり、奥から青白い肉塊が姿を見せる。
間近で見る出産現場にイビルアイは息を呑む。
メリメリという音ともに胎児が出てくる。頭部分が顔を出した後はメイド達によって引っ張られる。
首が千切れないように慎重に。
それから小気味良い音ともに抜き出され、胎盤も引きずり出される。
出て来た胎児は床に置かれる。
「ここから見ものですよ。胎児をよく見てて下さい」
「おう」
見た目は人間の赤子。どこにも異常は無い。
それから数分後に身体が光り始め、強烈な発光の後にはイビルアイと同じくらいの背丈の女性が姿を現す。
武具を一通り装備した
「はっ? なんだこれは。なんなんだ、いったい」
説明を受けたが理解できない。
胎児から一気に色んな物を吹っ飛ばして
常識的に理解しろ、と言うのは無理があるだろう。
「成長に関しては何もしてませんよ。これが普通らしいです」
「いや、普通じゃないよ、これは」
現れた
「九人揃うとチームを組んで人を襲うようだ。それまでは個人で自由に動き回る」
「世界は狂っているんだな」
イビルアイは
生まれたばかりとはいえイビルアイを睨みつける
「バレアレ氏と交尾させても
「今のところは
「異形種なのか?」
「うん」
「女しか
あんまり格好も良くないし。
「では、ここからは本当の意味でおぞましい実験になると思うけど、黙って見ていてね」
「善処する」
ヤントラの合図で更にメイドが現れる。
取り押さえた
見ている分には酷い格好なのだが、嫌な予感しかしない。
暴れる
その容器の中には肉の塊が浮いていた。
「……それはまさか……」
どう見ても切り落とした男性器にしか見えない。
それを一つ取り出して、水で洗う。
床がタイル張りになっている真の理由が目の前にあった。
ヤントラが男性器に刺激を与えると柔らかそうな肉の塊は硬く変化していく。それは一つの生き物のような反応だった。
「通常は腐って死んでいくのだが、これは特別で、適度に保存しておけば長期にわたって生存する。もちろん、何でもってわけじゃないよ」
「うわぁ……。取られた人は可哀相だな」
他にもあるんだろうなとイビルアイは見たくない光景を思い浮かべてしまった。
眼球並みに具合が悪くなってきた。
「予想は出来るのだが……。隠して構わないから」
「そうか。イビルアイはこういう事は苦手か……」
「……すまない。私は人間的すぎるようだ」
だからこそ手伝えない。
ヤントラを孤独にしてしまうのだろう。
共に一緒に居ても今のままでは役に立たない。おそらくナザリックの者でもない限りは。
メイド達により、仕切り壁が用意された。
後は壁の向こうで
後半には嬌声と泣き声が混ざったような悲痛さがあった。
生まれたばかりの
「酷い実験だな」
これが異種交配の現実なのだろう。
程なく
次に生まれたのは大人くらいの
産みの苦しみを味わった
「他の種族も試したいところだが……。イビルアイには耐えられないか」
「何事も少しずつだ。いっぺんには無理だ。……ところで生まれた
「うん。自我をもつ生物だ。しかも言う事を聞かない」
今にも暴れ出しそうな怒りを見せている。これでは施設の管理など到底無理だろう。
自我を持たせないようにした理由でもあるのかもしれない。
「ちなみに……。そんなに簡単に、というか早い段階で妊娠するのか?」
「しないよ。普通は半年以上はかかる」
「……そうか」
「老化が早まるから安易に使えない方法でもある。ろくに調べもしないで使えば危険だ」
「うん」
老化が早まれば老衰で死に易くなる。そうなれば蘇生魔法が通用しなくなってしまう。
そのあたりの事を考慮してヤントラは実験を
ちゃんと勉強しているからリスクに対して慎重でいてくれる。
今の話しでは不死性のモンスターにとっては何も問題の無い事かもしれない。
装備を外された
それから手足をもがれたのか、次々と部位が投げ捨てられる。
殺したばかりだから微妙に動いていた。
あえてイビルアイに見せているともいえる。
これが『マグヌム・オプス』の本当の姿だと。
「……そんなに乱暴な扱いはしなくていい。楽に死なせてあげてほしい」
「綺麗ごとではない、ということを忘れないためさ。異種交配の実験はこんな感じだ。一人で用意していると理解者が欲しくなるよ」
「私は実験には向かないかもしれない。罪人ならいざ知らず……。割り切るのも時間がかかりそうだ」
バラバラになった
それは作業をしているヤントラも同様かもしれない。
淡々と無感動に人体を切り刻む。
だから精神的に疲弊してしまうのかもしれない。
「部位は処分するんだよな?」
「そうだよ」
「信仰系なら死んだものに祈りを捧げてあげてくれ」
「分かった」
祈り方を忘れたならばヤントラの代わりに祈ろう。
イビルアイに出来ることはヤントラの代わりに悲しむことだろう。
次の日に
様々な悪魔系と交尾してもらい、妊娠状況を把握する。
人間形態に近い方が妊娠し易いだろう、という予想を立てて。
それぞれの種族の
強い弱いは抜きにして見栄えだけで選ぶとすれば格好良くて可愛い方がいい。
人間部分のお陰か、化け物と呼ぶほど原形をとどめない崩れ方はしていない。
不細工は要らない。
ドラウディロンの場合では
ラナーは普通の
レベル60台なので、どの
一体だけでも都市防衛の要となれる。
聖剣持ちのモンスターも欲しいところだ。
別の日にはンフィーレアにも異種交配を見せる事になる。
「イビルアイに見せたのだが不評だった」
「……そうでしょうね」
「綺麗な部分は無いから仕方がないのだが……。ンフィーレア君にも酷いところを見せる事になりそうだ」
「覚悟はしています。……アンデッド系は居ませんよね?」
大方の予想はしているのだが身体に悪影響が起きない事を再確認しておく。
エンリに叱られてしまう。
「アンデッド系と悪魔系は意外と危険らしい。特に一般人には……。まず、昨日の内に掛け合わせた
メイド達に連れてこられたのは
足に当たる部分はそれぞれ防具が巻き付いていた。
「へー。かっこいいですね」
「掛け合わせが出来るらしい。女性限定だが」
この
ンフィーレアは装備品の鑑定を始めた。
上位のアイテムも鑑定できるようになっているので様々な事柄が判明する。
「おお、これは凄い品物のようですね」
「……胸を触っても怒られないぞ」
「ええっ!?」
ンフィーレアが驚いている間に別の者を呼びつける。
総勢二十人。
「イビルアイには不評だったが君はどうかな、異種交配は」
「興味はありますが……。不穏な空気を感じます」
「じゃあまずは一通りの説明から始めようか」
羊皮紙を取り出し、簡単な説明をしていく。
作り方に処分方法。
ンフィーレアは顔を赤くしたり青くしたり、忙しく表情を変えていた。
やはり処分方法は顔をしかめられた。
「必要な処置だとしても安易な処分は問題がありますね。どんな結果か分からないのは理解出来るのですが……」
非情な研究者としては間違っていないのだろう。
不測の事態を避ける上では理解出来る。自分でもきっと同じ事をするだろう。
覚悟が出来ているのか、という問題においてはヤントラほどは出来ていない。
「牛の件といい、胎児生産は精神的にきついですね。こんなことを繰り返していたんですね、お一人で」
こんおぞましい実験を手伝える者はンフィーレアの知る限り、祖母くらいかもしれない。
今はナザリックの者達が居るからまだ少し多いかもしれない。
一人で誰にも救いを求めず今まで続けてきた精神力も脱帽ものだ。
「疑問に答えてくれたヤントラさんの手伝いはしたいです。驚いてばかりではいけないとは思います。……しかし」
処分の手伝いは出来そうに無い。
命を軽々しく扱うのはまだ少し抵抗があるし、我が子を平然と殺す人間になりそうで怖い。
ヤントラの言う愛情が無くなり掛ける、みたいな表現はこういうことなのだと今更ながら理解してきた。
「犠牲を前提にした実験だ。心に刺さるものがあって当然だろう。月では大規模に
「あうぅ……。そうですよね……」
少人数の犠牲で立ち止まっている場合ではない。
数百万規模の住人を作り上げるのだから。
それはもはやンフィーレアの想像を絶する
動物の生産現場のように。
「有史以来、人口はどうして増えた? 正論を言っても仕方が無いのだが……。異種交配と言うのは危険性を排除する上では必要な事だ。もちろん、性行為は大好きだが……」
「……最後は本音ですね」
真面目なことばかりではないのだろう。
本当に活動させる場所は月であり、地上はまだ実験段階。
地上で活用する気は無いのだろう。
持って行くとき大変かもしれない。
「『マグヌム・オプス』の邪悪な部分を見せているんだ。毛嫌いくらいは想定内だ」
「僕は武器を持って彼女達の処分とかするんですか?」
「それはしなくていい。アイテム製作やポーション造りを頑張ってくれ。早い話しが原住民と性行為するとどんな子供が生まれるのか、だ」
なんとなくそんな気がしていたンフィーレアは自然と前かがみになってしまう。
「彼女たちは神や英雄などだ。何が生まれても処分してしまうのだが……」
「育てないんですか?」
「それはそれぞれの親がやればいいだろう」
無責任のように聞こえるが対象の人数が多すぎる。
一人二人ならンフィーレアも育てたいと思う。エンリが許せば。
数万人規模となると話しが変わってくる。
それはもはや国家と同じだ。
「教育係は用意するけど……。まずは前段階として安全な種かどうかだ」
こちらの人間を連れて行けば早いかもしれない。けれども安全は保証されていない。
往復できるとも限らないし、未知の領域だ。
異種交配で実験をするのは理にかなっている。