※この作品はR-18です。

ゲームオーバーから始めようか   作:モモンガ

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K-10 ンフィーレアの子供たち

 イビルアイ同様に不評ではあったが処分するところは見せないことで実験に付き合うと約束した。

 まずはそれぞれの献体の身体検査から。

 ただ、眠っている複製体ではなく、全員が起きている。

 触られても声は上げず、大人しくしていた。

「じっと見られているのも恥ずかしいですね」

 脇などを触っても文句は言われないし、舌打ちも聞こえない。

「顔を隠すと死体の検分のように見えるから」

「……なるほどー」

 手足。顔。お腹に尻も触った。

 どれも柔らかいし、エンリに見せられない。

「裸にすると種族が分かりませんね」

 神と英雄の違いが今ひとつ見分けられない。

 女神と言っても色々と居るし。

 背中に翼の生えている者も居るが基本的には人間と似ている。

 それぞれの献体の間には仕切り壁が立てられて互いの様子はうかがい知れない。それだけでも精神的に助かっている。

「耳とか鼻を削ぎたいなら武器を出すよ」

「しませんよ!」

「自分の子供と区別しろ、とは言わない。屠殺場で随分と殺しつくした気がする。ンフィーレア君は自分の子供を大事にしてくれよ」

「はい。ヤントラさんの子供も言ってくれれば面倒を見ますよ。もちろん、アインドラさんと一緒に」

「その時は頼むよ」

 片方ではモンスターを殺しつくし、片方では子供に愛情を注ぐ。

 本来なら両立など出来はしないだろう。

 自分でも気が変になる、とンフィーレアは思った。

 変に感情を持っていると実験に支障が出る気がする。

 無心に淡々と調査するのが正しいんだろう。

「………」

 胸を触るのに羞恥心は要らない。けれど、柔らかいなと思った。

 他人の女性の胸ではあるけれど、大きいし。

 エンリは肉厚で、と良からぬ思考が脳内を駆け巡る。

「裸になってもいいぞ。無理しなくていい」

「……それはちょっと抵抗があります」

 調査といっても何をメモればいいのか分からない。

 身長。体重。胸の大きさに髪の毛や瞳の色だろうか。

 下腹部の体毛の具合。

 さすがに足の匂いは遠慮したい。

 排泄物の味とかもヤダなと思った。

 管(くだ)を渡されて、これで直接、尿を飲めと思ってしまうくらい頭の中が混乱する。

「これは僕への拷問でしょうか?」

「イビルアイと似たような反応で面白いよ」

「意地悪な人だな、もう……」

 管(くだ)の使い方は聞いた途端に顔が赤くなった。

「ここの穴に深く入れる」

「いいです、結構です。それは調べなくていいのでは?」

「排泄行為が出来るのかは大事なことだと思うぞ。ちなみに人造人間(ホムンクルス)は穴は空いているが排泄行為は出来ない」

「ああ、それは以前に聞いた覚えがありますね」

 一定量の食事は出来るが胃の中でどこかに消えて排泄行為には至らない、という。

 彼女達の腸内はとても綺麗だとか。

「舐めるなり、指を入れるなり、好き放題だ」

「こら!」

 さすがにンフィーレアは怒った。

「本当にエロい人なんですね」

「そうだよ。それが大好きなのさ」

 どうしようもない大人だなと思うけれど、とても研究熱心なのは嘘ではないようだ。

 胸は揉むが顔はとても真面目になる。

 女体の神秘に真剣に取り組んでいるからだろう。

「エンリの身体はもう見たり触ったりしただろう。他人の身体には抵抗があるのか?」

「それはそれです! 他人と言っても同じ女性ですから、同じ構造のはずですが?」

 同じでも性的に興奮するのは自分でも不思議だと思う。

「それにしても無抵抗ですね、この人達は」

 足を広げられても声一つ出さない。

 恥ずかしい体勢にも平然としている顔が少し怖い。

 ヤントラが尿道に管を刺すと程なく尿が漏れ出る。それでも抵抗しない。

 水を一定量、飲ませると勢いの付いた放尿が始まる。

「肛門もつついてみるかい?」

「結構です」

「なかなか間近で見られないだろう? 拷問室はこういう事を目的としていた。罪人に試すのがいいんだろうけれど、うるさいからね」

「メイドさんに試すのも可愛そうな気がします」

 無抵抗だから出来る実験なのだろう。

 一般のメイドであれば泣き叫んだり、激しく抵抗されただろう。

 まして素直に異種交配に応じるわけがない。

 命令次第で自分で性器を広げてよく見えるようにしたりしない。

「ンフィーレア君を精神支配すれば大人しく実験が出来るかもしれない。こちらとしては強引な手も色々と考えたことはあったよ」

「非道ですね。遠まわしに脅迫しているようなものです」

「そうだね」

 ンフィーレアが断ったとしても誰かが実験につき合わされるだけだ。

 それこそ自分の複製は絶対に断らない。

 あえてオリジナルの協力を得ようとしているのは良心なのかもしれない。

 本音の部分もまた貴重な情報だ。

 色々と悩みどころだが全員の身体を調べてから改めて考える事にした。

 五体目から似たような身体になってきて目新しさが無い。

 不思議と見慣れてきたのか、淡々と胸を触っても恥ずかしくない。

 最後まで行くと性器に触っても平気になっているという。

 見た目以上に柔らかい。

 性病対策の為にメイド達が現れて、すぐに濡れタオルで洗う。

「……あー、慣れって怖いですね」

 最初に戻って潮吹きをさせても平気、なわけは無かった。

 物凄く恥ずかしい。

 女性になんて事を、などと思って謝ってしまう。

「もう一周すれば全員の絶頂が拝めるよ」

「しませんよ、もう……。……いやまあ、やりそうですけど……」

 声を出さないから気持ちいいのか、どうなのかが分からないけれど。

「感覚はあるんですか?」

「あるよ。人造人間(ホムンクルス)も人並みには。ただし、体液は出ない」

 つまり試したことがあるという。

「……女殺しって、そういうことなんだ……」

「共犯者だ、とかは言わないよ。殺しの手伝いはしなくていい。処分するところは見たくないだろう」

「はい。本当は一体でもと思ったのですが……。いかがわしいことしか浮かびません」

「亜人や異形は育てるのが大変だよ。森妖精(エルフ)だと奴隷とか言われるだろうし。カルネ村に居る人狼(ワーウルフ)が丁度いいのかもね」

「そういえば食べることの出来る異形種って居るんですか?」

「すぐ思いつくのは『樹木羊(バロメッツ)』かな?」

 羊のなる植物のモンスターで味は蟹に近いのだとか。

「亜人などは食べたことは無いが……、それは……。抵抗があるかもしれない」

「ヤントラさんも食べることには抵抗があるんですか?」

 エロい事には抵抗が無いようなのに意外だと思った。

 飲食不要のアイテムを装備しているようだし、食のこだわりが無いだけかと思っていた。

 さすがに食べる為に女体モンスターを集めているわけではないだろう。

「人蛇(ラミア)とか焼いたら美味そうかもしれないが……。調理となると……、抵抗はあるね。悪魔系は食べたら危険だろうし。邪神系は完全に身体を悪くしてしまうだろう」

 海の生物なら平気かと思っても人魚を丸焼きにするのはンフィーレアも抵抗を感じるかもしれない。

 上半身は少なくとも人間だ。

「牛頭人(ミノタウロス)の母乳……。得体の知れない食べ物は怖いな」

「そうですね」

 家畜以外の食肉の為に様々な食材や動植物を別個に集めていたのだろう。

 モンスターはモンスターで研究する為に。

 これは一緒にしてはいけないのかもしれない。

 何でも平気そうな人にも弱点はあるんだなとンフィーレアは思った。そういえば酒類は全くダメだと聞いた覚えがあるし、エンリから馬車移動が苦手と言う事も聞いた。

 人間的というか安心する事柄のような気がした。

「余計な人間(エンリとかイビルアイとか)が来る前に一人ずつやっていこうか」

「一人ずつって……。ええっ!? 全員と!?」

「魔法って便利だよね」

「便利と言うか……。うわぁ、こういう使い方を考え付く人、嫌いだな……」

 モンスター退治に魔法を使ってほしい。

 便利な魔法は色々と助かるけれど、エロい事に使われるとは開発した人は思っても見なかっただろう。

「……じゃあ、この誰かから斬り落とした男性器を一人ずつ入れていくかい?」

「ほぅわ!」

 ヤントラの手に思わず自分の股間を押さえたくなるような物体が乗っていた。

「……僕のもありそうな気がする……。仮に、仮に僕がやるとして生まれた子はどうするんですか?」

「殺処分だな。それはンフィーレア君だけじゃなくて、どういう風に生まれて、敵対行動を見せるのか、形状などの調査が目的だ。育てたりはしない。エンリも並べていたら良かった、とかあるのかな?」

「い、いいえ。……やはり処分ですか……」

「見た目は人間の女性だが、全員が異形種だ。亜人だと中途半端な形状になりやすい」

 異形種。

 人間ではない。

「育てる用の人材は居るんですか?」

「君も見た保存液に入っている者達だ。あれらは活動を止めているだけでアンデッド以外は生きているからね」

「はい。それは分かっているんですが……」

「相手を変えつつ胎児生産だ。それは君にはきつい現場となるだろう。人間以外の相手で我慢してもらうかもしれないが」

 それはそれできついけれど、とンフィーレアは言いたかった。

「僕……、口が軽いんですよ」

「いいさ。君は実験に興味の無い人間には何も言わないだろう。ルプー達は興味を持つかもしれないが世間に口外するようなマネはしない。不可視化でこっそりのぞかれているかも知れないな」

「おう……。そうでした。……夫婦の営みを覗き見ます?」

「見るかもな。年頃の女性だし。ここでは調査が目的だから育てたりはしない。そう割り切らないと扶養家族が増える一方だ」

「はい……」

「これにするか?」

 ヤントラの手の上でピクピクと動く肉の塊。

 明らかに生きている。

「……誰のだろう……、すごく聞(・)き(・)た(・)く(・)な(・)い(・)な……」

「起きていると躊躇(ためら)うなら眠っているか? それなら処分も見なくて済むだろう」

 何を選んでも誰かが行(おこな)うのだろうし、それはきっと自分の複製かもしれない。

 罪悪感から言えば逃げ出したい。

 そうするとヤントラは孤独なまま作業を続けるだろう。

 助手を買って出た筈が逃げ出しては本末転倒だ。

 既にエンリと結婚して子供まで生まれた。だから、後は実験の調査だけだ。

 しかも全員が異形種。

 肉体的には人間と変わらないけれど。

「……僕しか居ないんですよね……」

「城勤めの兵士という案も過ぎったが……」

 兵士では下心満載だ。

「禿げないように海藻類はたくさん用意してあるから」

 本当に海草が頭髪に有効かは不明だ。

「やりすぎると抜けやすくなるってことですか?」

「そういう傾向があるかもしれない。魔法で栄養が補えるかもしれないけれど、後で調理しておくよ。……一気に抜けたりはしないよ。気苦労が激しくても抜けやすいらしい」

 終わったらたくさん食べよう。

 とはいえ、全員といっても二十人。

 魔法を駆使すれば可能な人数だとしてもかなりの重労働だ。

 それでは毛も抜けるだろう。

 問題があるとすれば他人の目が気になることだ。

 洗浄役に掃除役のメイドと控えている。

 ヤントラはエンリに言ったりはしないだろう。けれど、自分は口が軽い。

 多少は怒られるかもしれない。これはあくまでも実験なのだから。

 そういうこともエンリは想定しているだろう。

「……でも、意識が無い方がいいかも……」

 様々な感情が行動の邪魔になりそうだ。

 気持ちがいいのは妻だけでいい。

 自分の欲求は家族だけで充分だろう。

「精神支配と言ってもどんな事をするんですか?」

「眠らせるだけだ。後はメイド達に腰振りを手伝ってもらうだけだよ」

 メイド達に見られながら異種交配するのは恥ずかしいが、そのメイド達も処分されるんだろう。

 育てられないとはいえ、命がもったいない。

 自分の妻と子供は大事にしようと思った。

 寝かせる場所は宿舎である事を伝えてンフィーレアを眠らせる。

 後は服を脱がしての異種交配だ。

 一人ずつ妊娠出産などを調べていき、色々と必要事項をまとめていく。

 調査をしているときのヤントラは完全に研究者だった。

 

 生まれてすぐにメイド達に取り押さえられて手足を乱暴に切り落とされて口に武器を差し込まれ喋れなくする。その後で装備品を剥ぎ取る。

 後は夢見心地のンフィーレアが女体を貪る。起きていれば様々な快感が得られただろうに、とヤントラは少しだけ残念に思う。

 精神支配系は人形遊びのようで大して面白くない。それなら複製だけで充分だ。

 射精のたびに治癒魔法がかけられる。

 各五回ずつ。終われば丁寧に洗浄される。

 人造人間(ホムンクルス)まで終わった後で風呂に運ばせ、全身マッサージを行(おこな)う。

 その間に人造人間(ホムンクルス)の妊娠状態を確認するが兆候は見せない。

 妊娠出産の方法が無いわけではない。実際に人造人間(ホムンクルス)・戦乙女(ワルキューレ)は出来た。ただし、形だけ。

 人工的な存在だから自然界の生き物のような振る舞いはしないのだろう。

 次に排卵せよ、という命令を与えてみる。

 人造人間(ホムンクルス)でも妊娠する事はあるはずだが通常の交尾では不可能かもしれない。

 同じ人造人間(ホムンクルス)のペストーニャ型の一体を風呂場に行かせて交配させてみる。

 結果としては人造人間(ホムンクルス)という種が生まれるのだが成長しないので動かない肉の塊と大差ない。

 男性化した人造人間(ホムンクルス)とならどうなるのだろうか。

 その前に射精できるのかと思い、自慰の命令をさせてみたが何も出ない。

 放尿しないのだから当たり前かもしれない。

 色々と調べてみたが人造人間(ホムンクルス)は思った結果が現れないようだ。

 人造人間(ホムンクルス)同士では種は残せそうに無い、という結論に至る。

 ただし、性行為は出来るし、絶頂や射精の感(・)覚(・)だ(・)け(・)はあるようだ。

 涙や鼻水、唾液などは出るようだが首から下の部分、内臓や生殖機能だけは備わっていないように思われる。

 それもまだ色々と実験しなければならないだろう。

 

●↑●

 日が暮れる頃に調査が終わり、ンフィーレアを布団に寝かせる。

 結果としてはほぼ全滅。妊娠しなかったのではなく、ヤントラが期待した結果が得られない、という意味で。

 異形種と人間種は相性が悪いのだろうか。

 というよりは良い結果とは何か、という問題にぶち当たってしまう。

 人造人間(ホムンクルス)は肉体的な部品は揃っているのだが老廃物がほぼ出ない。

 成長しない身体だが体液循環は存在し、不足分は補うようだ。発情期は無く、子孫を残す命令は無い。

 翌朝、疲れきった顔のンフィーレアに大量の海草料理を振舞いつつ実験結果を伝える。

「一日で二十人と……」

「生まれた子供も入れるともっとだけど……。原住民との間の子供の資料が得られただけ収穫だがね。最後の人造人間(ホムンクルス)は難儀した」

 エンリが居たら大激怒間違い無しだ。

 実験だから仕方が無い。

 起きていなくて良かったのかもしれない。

 鏡に映る自分の顔の悪さはひどく、髪の毛は無事だがいずれ抜けてしまうかもしれない。

 極端な抜け方はしないようだが、食事はちゃんと食べようと思った。

「この白いのは……」

「温めた牛乳だ。……お腹が弱い人も居るけれど、ンフィーレア君は大丈夫かな?」

「はい」

 すぐ良からぬ考えが浮かんでしまう。

 青春真っ盛りなのか、発情するオスだから、なのか。

「特定の装備を持つ者は子供時代をすっ飛ばすようだ。そう簡単に新種は出来ないようだし。極端に化け物になる者も居なかった」

「そうですか。一気に成長する、というのは信じられませんね」

「発光した後に成人になる。普通の森妖精(エルフ)などはそんなことは起きないが……。ンフィーレア君にそっくりな蜘蛛女(アラクネ)とか出来ると思ったのに」

「親に似ますかね?」

「多少の外見的特長は出るはずだ。髪形までは再現しないと思うけど」

 敵対しない方を連れて来てみた。

 正確には生まれた献体の複製の一種だが。

 金髪の影の国の女王(スカアハ)とココヤシの女神(ハイヌヴェレ)。

「……どことなく僕に似てますね」

 本当に自分の子供達だと確信できた。背は高かったが。

 連れて帰れないだろうなとも思った。

「あれ? 昨日の今日でこんなに成長するんですか?」

 一気に成長する話しは聞いたが信じられなかった。

 どう見ても自分より高い背丈だった。

「ある程度まで成長してしまうのは秘密としておこう。他にも……」

 と、ンフィーレアそっくりの人蛇(ラミア)種と人馬(ケンタウロス)種が出て来た。

「こちらは亜人だ。蜘蛛女(アラクネ)も亜人に入るのだが異形種の蜘蛛女(アラクネ)ではなかったのが残念、という意味だ」

「……同じような顔がいっぱいだ……」

 親がンフィーレアなので当たり前かもしれない。

 多少の性格付けがされているので喋ることは可能らしい。

「……でも、可愛いですね」

 可愛いけれど自分が父親なんだよな、と思うと複雑な気持ちになってくる。

 折角生まれた命だから育てようかと思う。だが、ヤントラは処分するだろう。

「酷い現場を見せて申し訳ないと思うけれど、私が居ない間は大抵のことに動じない精神は養えたのではないだろうか」

「どうでしょうか。ぐちゃぐちゃにするような現場を見せられたら泣いてしまうと思います」

「子供の処分はこちらでやっておくが……。君の助手として数人ほど選ばせてあげようか? エロい事は抜きで」

 人蛇(ラミア)の頭を撫でつつ、確かに魅力的な種族は観察したいと思っていた。

 あと、子供達を処分しなければならない現実も納得するしかないだろう。

 自分には全てを幸せにする力は無いのだから。

 せめて村に居る子供達だけでも幸せな生活は送らせてやりたい。

「……亜人の国があるのだから異種交配は避けては通れないでしょう。それは理解できますが……、処分と言うのは今は受け入れられません。気持ち的に……」

「優しい気持ちは無くさないでくれ」

「はい」

 食事を終えた後、子供達はどこかに連れて行かれた。

 当然、その子達とは二度と会うことはないのだろう。

 荷物運びや助手としても罪悪感の抱かない種族を選ぶのは簡単ではない。

 けれど、丁度良い献体が居た。

 自動人形(オートマトン)。

 専用の飲み物の生成方法はンフィーレアでも用意が可能で安価でもあった。

 使用に関してはナザリックの許可を事前に取る必要があるので、それはルプスレギナに委ねた。

 

◆ ☯ ☯ ☯ ◆

 人間種と交配に成功した例の資料をンフィーレアに渡しておく。

 将来的に交流が盛んになった時、役に立つかもしれない。

 ンフィーレアの子供ではない人蛇(ラミア)と人馬(ケンタウロス)の子供をカルネ村に送った。

 種族以外は人間と同じ常識を持つ亜人。

 ただ、森妖精(エルフ)にそっくりな外観だった。

 もう一人、蜘蛛女(アラクネ)種の戦乙女(ワルキューレ)を後日、送ってみた。

 実力的にはルプスレギナより劣るが武装面は優秀だ。

 好戦的ではなく、防衛を主体とさせている。

 三人共、名前は村で付けてもらうように言われていたので村人たちは必至に考えることにした。

 それぞれ短命かもしれないので、死んだ時は手厚く埋葬するように言いつけてある。

「首輪は成長に合わせて広がるんで、心配はないっすよ」

 ルプスレギナは村人に装備品の解説を始めた。

 食料は基本的に必要は無いが食べる事は可能。

「いざとなればナザリックで面倒を見ても良いとアインズ様も許可してくれたっすから、安心して下さい」

「そうですか。ンフィーの話しではよく処分されるとか」

「それはある意味では正しいっすよ。この子達はエンちゃん達の正しさを証明する為に寄越したと思うっす。だから、ちゃんと育てて教育して見返したらいい」

 番(つがい)となる相手が居ないのが問題っすけどね、というのは胸の内に収めた。

 戦乙女(ワルキューレ)以外は亜人種のようだし、不死ではないのでいずれは死ぬだろう。

 どういう意図かは本当のところは分からないけれど、託したことに何か意味があるのかもしれない。

 危険な匂いは感じないが、エンリ達の行動に任せようと言う事かもしれない。

「そういえば、猫耳の人狼(ワーウルフ)って居ないんすね」

「あ、ああ、そういえば……。……確か、種族名が不明になるとか」

「ふ、不明っすか!? そりゃあ、まあ仕方ないんすけど……。ありゃりゃー」

 居たら面白いのに、と少し残念に思った。

 村人に連れられて塀の外に出たアラクネ(蜘蛛女・戦乙女)は麦畑の中を歩かされる。

 図体が大きいので被害の確認が必要だ。

 武装は取り外しが出来る。

 足元は刺さるように小さな穴しか開かない。座らなければ潰されることは無い。

 壁なども伝って移動できるらしい。

 体重は見た目よりも軽く、身軽だった。

「資料によると戦士職。魔法は使えないみたいっすね。ただし、スクロールは使えると……」

 ルプスレギナ用の日本語マニュアルも用意されていた。

「喋らないようだけど?」

「喋るみたいっす。仕事に集中するから物静かなだけでは? 性格はナーちゃんを基にしているけれど暴言は吐かない……」

 最後の方でルプスレギナはつい笑ってしまった。

「色々と調べてあるっすねー。感心したっすよ」

 子供の方は親が不在である事にいずれ疑問を持つかもしれない。その時はどう答えてあげたら良いだろうか。

 以前の謎の行動を見せるタイプとは違い、アラクネ(蜘蛛女・戦乙女)は命令には従順だが自害は村長の許可が要るらしい。

 戦乙女(ワルキューレ)としてのスキルも持っているし、小鬼(ゴブリン)達より遥かに強い。

「他の村にも派遣してよい、とのことだけど……。子作り要員にされたりしないんすかね?」

 羊皮紙には迂闊に妊娠させると人間を襲う子供が生まれる、という物騒な一文が書かれていた。

「……ンフィーちゃん。これどういう事っすか?」

「異種交配で生まれた子供……。異形種の子供は種族によっては人間は敵だと認識されてしまうらしいです。人蛇(ラミア)達のような子供時代がある種は教育次第で問題はなくなるようですけど……。僕が見た限りでは敵意むき出しが多かったです」

「……うわぁ、それは怖いっすね。つまり……、交尾まで順調でも生まれた子供は親でも敵だと思って襲ってくると?」

「ええ、その認識で合ってると思います。あと、胎児として出てきて数分経つと成人に一気に成長する種がいるようです」

 ルプスレギナは露骨に嫌な顔をした。

 普段は笑顔の絶えない優しい表情の多いルプスレギナでも嫌なことはあるようだ。

「……それはちゃんと実験して正解っすよ。村が滅びてしまう」

 想定していなかった異種交配の弊害。

 慎重に行動しない人間には扱いきれないだろう。

「イビルアイさんも確認はしたようですけど、口に出して説明できない光景だったと」

「あらら。他人の交尾シーンは性欲を刺激するのに、もったいない」

「……ルプスレギナさんはエロい事は平気なんですか?」

「大好きっすよ」

 考え方の違う相手によってはヤントラの実験は魅力的なのだろう。

 ンフィーレアも他人と合わない感性は持っていたが、やはり人それぞれ違うのだなと改めて感じた。

「じゃあ、あのワルキューレ(蜘蛛女型)だけ危ないって認識でいいっすか?」

「はい。自我は持っていないので数十年先か分かりませんが、それまでは我々の命令を聞いてくれるはずだとうかがいました」

「了解っす。……それにしても蜘蛛女(アラクネ)の戦乙女(ワルキューレ)とは。かっこいいっすね。……えっと、精神支配を受け易いかも……。装備品をはずされたら不味いってことっすか」

 色々と調べられているし、解説書のおかげで色々と対処も考え易い。

 それを作ったヤントラにルプスレギナは深く感謝した。

 後日、ヤントラは獣人(ビーストマン)虎型の人狼(ワーウルフ)を送ってみた。

 見た目は猫耳の獣人。変身すると大型の狼になる。

 種族名は不明。

 無理に名付けるなら獣人(ビーストマン)・虎狼(タイガーウルフ)。

 可愛いけれど。中間的な生物だとルプスレギナは思っていたようだ。

「……これじゃない……、って感じっす。猫でも犬でもない新種かと……。虎(タイガー)でも可愛いっすけど……。……わー、物凄く残念感が……」

 獣人(ビーストマン)には狼(ウルフ)型も存在し、人虎(ワータイガー)というモンスターも居る。

 獣人(ビーストマン)狼型と人狼(ワーウルフ)を掛け合わせると。

「二足歩行の獣が四つんばいの獣になるだけっすね……。物凄く残念感がぱねぇっす……。……いや、これ……、ただの獣(ビースト)っすよ!」

「こんなことの為に生まれてきたわけじゃないのにな」

「……ネタモンスター……。人知れず処分をお願いします」

「うん。過度な期待は危険だな」

「……はいっす。報告書は提出してもいいっすか?」

「いいよ。デミウルゴスにも渡しておくといい。献体が少ないから、あいつの実験の影響は少ないだろう」

「畏まりました」

 送った三体のモンスターには変な命令は与えていないと断りを入れて、獣人(ビーストマン)達を回収した。

 マヌケなモンスターを作っても仕方が無いのだが失敗もまた貴重な情報だ。

 

◆ ☯ ☯ ☯ ◆

 変な実験を除けばイビルアイは魔法の開発の為に意識を集中する。

 見るべきものは確認した。

 種族の掛け合わせもリスク回避のためには必要なのだろうと。

 変な想像ばかりしていたが研究者としては間違っていないだろう。

 改めて実験を真面目に見学しなければならないかもしれない。

 妊娠の過程は自分の身体の成長と同じ方法が取られているのだろう。

 即席の成長。それはけっこう危険な行為のはずだ。

 慎重を重ねているから人に見せないのだろう。

「バレアレ氏も異種交配は見学したんだったか?」

「は、はい。……後、体験もさせられたかと……」

 曖昧な返答だったが、それは精神支配か眠らせられたからかもしれない。

 イビルアイは深くは追求しなかった。

「起きていれば気持ちのよい実験だっただろうな」

「……エンリの怒る顔が浮かんで……」

「良い夫となるんだぞ」

「ありがとうございます」

「私はほら、孕めない身体だから……。実験に付き合えないのだ」

 自身の身体は戦いの影響で子宮が無い、という事にしてもらっていた。

 呪いか何か、という言い訳で。

「イビルアイさんと交配実験はさすがに無いですよね?」

「うむ。あっては困るな。私もエンリに怒られたくはない。浮気は良くないのだが……。こちらはラキュースの目がある。……エロい話題はやめておこう」

「はい」

 同じ階層だが、作業場が少し離れている。

 会話の時はイビルアイの方から近くに寄るようにしていた。

 仕切り壁はあるが会話は禁止されていない。

 魔法開発と言っても基本が存在している魔法がどんなものか知る必要がある。

 強力なものほど代償が必要となってくる。

 ンフィーレアの研究はポーションを除けば空中宝物庫に関連したものばかりで秘密事項は少ない。

 一人で悩むよりもイビルアイと共に話し合うことがある。もちろん設計士とも相談はする。

 一部の魔法は行使できるメイドに頼るのだが、特化した魔法職ばかりなので能力の偏りが凄まじい。

 一番の謎である魔法の習得は今でも不明だ。

 パワーレベリングでは解決できない問題があり、ヤントラの最大の秘密があるのかもしれない。

 ラナーの話しでは玉座に秘密があるとか。

 それが判明すると世界が崩壊するかもしれないとにこやかに言っていた。

「モンスターを倒すだけで強くなったりするのはおかしいよな」

「そうですね。クラスとか言ってましたが原理は分かりません」

 ただの村娘が短期間で恐ろしく強くなるし、未知のスキルを獲得している。

 それは決して日常の暮らしでは得られないはずだ。

「……急に老け込んだりしては困るよな……」

 人の寿命や体調を自在に操るものであれば口外など出来はしない。

 クレマンティーヌの若返りなどからも悪用されては困るから秘密なのだろう。

 本当の悪が居れば今頃世界はもっと歪んでいただろう。

「ところでヤントラさんはご家族と一緒なんでしょうか?」

「家族サービスは大事だからな。あと、冒険者の仕事も。地味な仕事が多いのだが気配りの出来る人間として好評のようだ」

 こんなおぞましい施設を作ったのに、とイビルアイは苦笑する。

 ラキュースのところで料理の勉強をしても上達は芳(かんば)しくないようだ。

「そういえばメイドの呼び出し方があるんだったな。見せてもらえるか?」

「あっ、はい」

 イビルアイは大事な貴重品は地下一階に置いていて大丈夫なのか、と今更ながら気づいた。

 自分も資料を置いていて失念していた。

 地下二階は羊皮紙生産工場になっているし、拷問室の部屋は少し遠い。

 警備の観点から色々と考えておかなければならないだろう。

 魔法での外部からの探知には強いようだけど、不安は残る。

 地下三階を作ってもらうのも悪い。

「おう。私達もけっこう後先考えてねー!」

「? こちらがメイド呼び出しガイドです」

「……バレアレ氏」

「ンフィーレアでいいですよ」

「言いにくい。では、フィア殿。我々も貴重品の管理はちゃんとしよう」

 聞きなれない愛称だが、文句は無かった。

「僕は大半はカルネ村に置いてますけどね。書類関係は確かに保管場所に困りすね」

 この宝物庫自体、他人を入れたりしない秘密の保管庫のはずなのに色々と理由をつけて自由に入れてもらえるようにしてしまった。

 それ以上に我がままを言うのも気が引ける。

「一の宝物庫の部屋を借りるのはいかがでしょう? あそこは我々も自由に使わせてもらえない場所ですし。空きもまだあったはずです」

「出来れば地下二階の方がいいな」

「人があまり来ない時点で結構、保管庫としては優秀な立地なのかもしれませんね」

「都市から離れているし、居座っているのはバレアレ家くらいだからな」

 実験農園の再開に伴い、一部の農家に土地が提供されているが地上の倉庫が荒らされた形跡は無いという。

 イビルアイは渡された書類を眺める。

 メイドの呼び方に退去のさせ方。命令の方法などが記されていた。

 ヤントラは独自の命令方法を与えているらしいが、それは記載されていない。

 例えば魔法をどこに打ち込むか。

 大勢のメイドを一度に操る方法など。

「一番の問題はこれらの命令をどうやって与えたか、だ。言葉や魔法以外にも秘密があるんだろう」

 人形に命令を与えるのは無機物に命を吹き込むようなものだ。

 早速メイドの一人を呼びつける。

 どこからともなく現れるメイドの行動は見ている分には美しいと思うほどだった。

 現れたメイドのスカートを外してみた。

「イビルアイさん!?」

「他人の身体は私も興味があるからな。フィア殿はメイドの生態は調査したのではないのか?」

「ま、まあ、やりましたけど……」

「例えば腹を割いて中身を確認したりは?」

「それはしません。死体の解剖と言うのはあるかもしれませんが……。大量出血が苦手で……」

「うむ。では、複製の製作現場は見た事がないと?」

「たぶん、無かったと思います」

「牛の皮剥ぎもか?」

「……それは見たかな? 見事な手並みで大出血とまではいかなかったかと」

 抵抗しないし、切れ味の良い道具で行(おこな)っているのか、それほど凄惨な現場とは思わなかった。

 使い終わった道具は専用の液体に浸されるという。

「エンリやメイドの女体はもう慣れたかと思っていたのだが……」

「そう簡単に割り切れません。今でもやはり見るのも触るのも恥ずかしいですよ」

「眼球は持ったことはあるか?」

「素手ではありませんが、参考程度には」

「なるほど。色々と体験はしているのだな。普段はメイドを呼び出して裸観賞したりしているのかと……」

「いかがわしいことはしません。強引にさせられることはありますが」

「優しい亭主だな。それはそれで安心したが……、こっそりメイドを食べたりはしていないだろうな?」

「焼いて食べたりしませんよ。聞いた話しでは人間型は人間には良くない影響があるとか。女淫魔(サキュバス)型などだと眷属にさせられるおそれがあるとか」

「ちゃんと危険性は聞いているのだな。安心した。意地悪を言って悪かったな」

 そう言いつつイビルアイはメイドを奥に連れ込んでいった。

 その後、三人ほどのメイドが新たに現れる。

「あまり呼びすぎると退去が大変ですよ」

「うむ。気をつける。リイジーは下には来ないのだな」

「一通りの実験器具はありますし、大掛かりな発明もしませんからね。倉庫は別にありますし」

「……あれは生粋の研究者だな。あの領域に達したらフィア殿も立派な錬金術師(アルケミスト)として勇名(ゆうめい)を馳(は)せることだろう。……三十年後くらいから」

「そうですね。僕はまだ若造です」

「こっそりと応援しているぞ。若き錬金術師(アルケミスト)よ」

「ありがとうございます」

 若い男は吸血衝動を掻きたてられる。

 その対処方法も考えておかなければンフィーレアが危険かもしれない。

 別に血であれば誰でも良さそうなものなのだが、とイビルアイは苦笑する。

 解決方法としてはンフィーレアの複製を使えば良い。血は血だ。

 これは勝手に行(おこな)えないだろう。エンリやヤントラと相談した上でなければ。

 種族の壁というものはこういう時に感じてしまう。

 

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