ゲームオーバーから始めようか 作:モモンガ
ルスプレギナが見学している間に書類をまとめて地上に上がる。
リイジーの様子を見たり、商品の確認をしたり、宿舎の
割りと忙しかった。
カルネ村では薬草の選定や研究もするが距離が離れすぎているのが問題だ。
リイジーは一人で完結しているので冒険者などを使えば帰る理由が無くなる。せいぜいひ孫の様子を見るくらいだ。
店は移転できるのだが施設は移転できない。
カルネ村と転移で往復できるようにした方が良いのか、ヤントラは迷っているようだ。
警備の観点からは難しそうだけど。
空を見上げるといくつかの建物が浮かんでいる風景が見える。
その更に上に
形状は遠くて不鮮明だが
大きな鎌を持って黒いローブを頭から被ったモンスターが居たら逃げるように言われていた。
危険なモンスターは色々と居て、黒い水溜りが見えてたら逃げるように、とも言われた。
強くなったとはいえ低位モンスターなら負けないかもしれないけれど、ヤントラが気をつけろと言うのは高位モンスター。
万全の装備をしていなければ簡単に殺される。
ヤントラの施設は様々な対抗手段を持っているお陰で安全に暮らせるが、外はとても危険である事は変わらない。
加護に甘えず、危機意識を養うことも大事だろう。
高位モンスターは戦闘メイドでも背走を余儀なくされるほど厄介な者が多いらしい。
地上は全くの無警戒と言うわけではなく、姿の見えない
範囲は施設内に限られるが。
モンスターが空を飛んでいること自体は別に悪い事ではないのでメイド達が迎撃に出る事は無い。
点検が終わればカルネ村に帰宅するのだが、転移については少し考えてもらおうかなと思った。
リイジーが店を空けるときは専用のメイドが数日間の監視につく。
強いメイドでも高位モンスターは容易くは撃破できない。
色々と教えてもらっても実際の戦闘を見るまではきっと信じられないだろう。
気になる事はあるが、自分の知らないところで多くの人材に守られているのだなと改めて思った。
ヤントラが施設に戻ると施設内の一斉点検が始まる。
火の手が上がっていなければ大抵は問題なしとなる。
シズから得た書類を軽く読んだ後は王国語に翻訳しておく。今ではかなり文章を書けるようになった。
帝国語。竜王国の言葉も同様に。
スレイン法国は行く機会が無かったが、勉強すれば書けるだろう。
培養液の状態や控えているメイドの様子。
飛ばされた者が居ないかどうか。
それだけで二時間はかかるだろう。
アイテムの整理は早いのだが、ルプスレギナ達は中の様子を見ようと必死のようだ。
本当に忙しい作業になったものだと思う。
部屋の数の多い一の宝物庫の点検。隠し部屋の様子。
ナザリックなら四十一人の一般メイドが
異種交配で何の成果もあげられない者は速やかに処分しておく。
山羊の毛でフェルトが作れるかどうかの実験も始めようと思い、色々と忘れないうちにメモしておく。
シリカの素材はスキルでどうにかなるとも思えない。基本はタイル造りと一緒で専用の職人に任せた方が早いだろう。
それからアイテム製作の人材と執務室の様子を確認しておく。
メイドの一人を呼びつけて玉座の横に控えさせる。
数分後には作業を終える。その後、メイドは転移して消えていった。
毎回、処分する人材が居るのは気の毒だが仕方が無いと言い訳する。
効率は上げられるだけ上げた。
これ以上は無理だろう。
そういえばナザリック用の素材も溜まったはずだと思い、外の大型倉庫の中を確認する。
不可視化の侵入者が居ないか確認した後で箱を確認して行く。
二階はリイジー用だが荷降ろしは大変かもしれない。こちらもかなり溜まっているはずだが店の方に運んでおこうと思った。
細かい素材も何年分溜まったんだろうか。数量が見られないのはもどかしい。
彼女達の店にも重量軽減の板が要るだろう。
それは別のメイドに命令しておく。
一通り終われば午後になっていた。
森に入って
見た目は人間の女性に似て、共生する樹木のそばから離れられない。
移動できないモンスターではあるが木材に精通している。
女体以外のモンスターは斬り捨ててしまう傾向があるから中途半端な収集が多い。
鳥のモンスターに卵を産んでもらうとか。
食肉用の家畜とか、色々と食材に関しても足りない気がする。
魚も欲しいところだ。
飲食不要では健康的な住民は作れない。そのあたりも課題だろう。
月に行って住民を放せば即国家が出来たりはしない。
暮らす環境づくり。大気や
色々とやることは残っている。
その間に献体が死にそうだし、自分の寿命の問題もある。
「そうだ。魚や鳥も捕まえておかないといけないんだった」
家畜だけではダメだ。
身近な動物ばかりに気を取られていた。
あと、虫類。これは農業に必要だ。
淡水魚も必要だろう。
自分に出来ない仕事が多い。
素材確保のメイドを一斉に放してみる。
海に適した者。野山に適した者。水辺に適した者。
シリカ用に砂漠に向かわせたり、ゴムの木の捜索など。
強敵の情報用に数人のチームを作っておく。
巨大モンスターは相手にしないように命令しているので
あくる日、ルプスレギナが休日ということで遊びに来た。
「クモの
「警備は地味に大変だ。あれでエンリと互角だったかな?」
「……なら大丈夫そうっすね。あっ、先日は要望を聞いてくださり感謝します。アインズ様も興味津々でした」
数体の新しい献体、女神や英雄を届けたことだろう。
「交配で生まれた個体は敵対行動を見せる。って教えたか?」
「はいっす。あのままだと敵対は起き難いんすよね?」
「数十年後は分からないけどな。それは私のせいではなくて、種族的な仕様だと思うぞ」
「了解っす。今日はちょっと興味があって……。バスパ様の人体切断武器っすけど、どの程度の力があるっすか?」
通常のモンスターですらガゼフの持つ『
『
『
後者は丈夫さが加わっている。
「私のレベルと相まって余程の強固な敵でなければ切り裂ける。クライム達に持たせたが、技量などにも影響があるらしい。持つ者によっては扱いにくい剣のようだ」
「誰でもスパスパ出来るわけじゃないんすね?」
「戦士職でコキュートス辺りなら切れ味を理解出来ると思うぞ」
「その辺りっすか……。意外とナーちゃんも自在に扱えたりして」
「必要なレシピはあるから複製は可能だ。ただ、これはあんまり多くは存在してほしくないな……」
帝国兵に持たせるとしても帝国最強の四騎士がせいぜいだろう。
「……あからさまに嫌そうな顔にならなくても……。大量に欲しいってわけじゃないっすよ。大型剣を二本というか二種類貸してほしいっす。練習用にしか使わない事を約束するっすよ、コキュートス様が」
「……私が表舞台に出るようなことは無いよな?」
「たぶん、大丈夫っす」
ヤントラは『殲剣ヴァージンカルマ』を二本出した。
それぞれ雷と炎耐性が付与されている程度だ。なんで付与したのかは忘れた。
斬れ味に特化しているとはいえ刃同士の打ち合わせでは刃こぼれしそうな不安はあった。
よく黒い仔山羊相手に耐えられたものだと今は不思議に思う。
レベル60以下の人間が装備していた場合、余程の大技を持っていない限り何のダメージも与えられないだろう。
持ち主のステータスに影響を受け易いところがあるようだ。
コキュートスが持てばもう少し大きなダメージになるだろう。
たっち・みーがスキルを併用して使えば結構な大ダメージを見ることが出来るかもしれない。
「鞘がないが布団に包む……。シーツに包むか……」
布団だと運ぶのに大変だ。
メイドを呼び出し、シーツを何重にも刀身に巻いていく。
「鞘があっても抜き差しが大変だからな。グレートソードのように背負うのも少し怖いところがある」
切れ味の良い武器は扱いも大変だ。
「実際、この武器を持ち帰るのが目的ではないんだろう?」
「おぅわ! なんて鋭い人っすか……」
そう言いながら『
「……そうだな。この武器の弱点を探れ、かな?」
そう言うとルプスレギナは顔から脂汗を流し始める。
秘密裏に探るように言われたのだろう。図星に言葉をなくしていた。
「全ての武器を粉砕しろ、と命令されていたら孕ませてやるところだぞ」
そう言われて自分のお腹を守るルプスレギナ。
「気持ちいいのは好きっすけど、勝手な妊娠は怒られそうっす」
「巻き添えにナーベラルと一緒にな」
確実にナーベラルに殺される、とルプスレギナは同僚の怒り狂う顔が浮かんだ。
「そうそう。気休めだが。このガントレットを装備しておけ」
「あ、ありがとうございます」
アイテムを渡した後、七の宝物庫に行き、一つの容器を持ってきた。
それは黒い何かが沈殿したものだった。
「『ヘロヘロ』さんだよ」
「
ルプスレギナの知るヘロヘロよりも黒かったのですぐに別物だと気付いた。
最強種の
「高位モンスターの出現は素直に驚いた。これも増やすに増やせないモンスターだから気をつけなければならない」
「了解っす」
蓋を開けるが中から飛び出すことは無かった。
「その剣を入れてみろ」
「はいっす」
言われた通り、容器の中に剣を慎重に入れていく。
刀身にまとわりついて襲うことはないと言われていたが気をつけた。
黒い身体に深めに刺して数分、待った。
ボコボコと水泡を出しているので、匂いは嗅がないように言われた。
「さあ、ゆっくり引き抜いてみろ」
言われた通りに剣を引き上げると刺さっていた部分がボロボロに朽ちていた。
「ありゃ!?」
「弱点としては酸に耐性が無い。武器を狙った
「意外としょぼい弱点が……。というか、ヘロヘロ様の酸って結構強力なんすね」
「容器の方がすごいよな。酸に負けないから」
保存液も感心するほど強力だった。
「動かないけど、素手で触るのは危険すね」
「きっとすぐ溶ける。石などは溶けないようだから洞窟をねぐらにしているようだ」
「剣よりヘロヘロ様の凄さに感心したっす」
「本物もこの程度の芸当は出来るぞ。ちなみにソリュシャンを入れると彼女は負ける。上位種だからかもしれない」
「うわっ!? マジっすか!? ああ、レベル的にもこちらが上っすよね、そういえば……」
当たり前の結果かもしれないが
混ざって新種になる、というわけではなく。
「武器の弱点はこのくらいだが……。炎とか出ないぞ」
「ありがとうございます」
「そっちの武器は良く切れる。気をつけろよ。持ち方を教えてやるから」
ルプスレギナはガントレットを装備して安全な持ち方を伝授された。
雑な扱いだと壁を切り裂くし、ナザリックに持って帰れなくなる。
黒い
「おっと、忘れるところだったっす。剣とは関係ない質問っすけど……」
「なんだい?」
「複製はオリジナルと共に成長するから、本物が老衰すると複製は作れないんすよね?」
「そうだ」
「でも、活動を止める魔法を複製に使えば複製の複製は延々と作れそうっすけど……」
「魔法による複製は制限がある。本物が寿命を迎えてしまうと複製も作れない。それは精神を移すために必要だからだ。確かに複製から複製は条件次第では延々と作れるかもしれない。けれども、同じ献体から作り続けると劣化するおそれがある。今はまだ兆候が見えないだけだ」
ルプスレギナの言いたい事は理解している。ただ、それらはまだ研究中だからだ。
話しがやたらと長くなるので武器は七の宝物庫に置いて六の宝物庫の書斎に移動する。
そして、羊皮紙に色々と書いていく。
「寿命がある場合に限るが……。私の方法はただ肉を増やしているだけだ。精神を度外視している。それは想定されていないからどんどん作れるかもしれない、が……。心配事はあるから安心は出来ないけどね。とはいえ、無限ではない気がするが……」
だからこそ、適度に本物から補充する必要がある。と、考えている。
「あくまで『
今は本物すら必要としない効率化が取られている。
肉体に宿るクラスなどが引き継がれているのは不思議なのだが、仕様ならばどうしようもない。
精神はヤントラでさえ複製すべきではないと思っているが、将来的なリスクは恐ろしいと思っている。
戦力は厄介なモンスター相手なら必要かもしれないのだが、国の争いには使いたくない。それはとても面白くないから。
「極論から言えばコレクションとして保存することに落ち着くだろう。使う分にはどんな種族でも構わないのだから」
「ではなぜ、という疑問があるっす」
「クラスの解明だ。枝分かれするクラスを特定すれば後は再現するだけだ。それが結局は敵対行動になってしまうわけだが……。魔法も適度に資料が完成した」
ルプスレギナからすれば折角の方法と戦力を何故、使わない、という疑問があるのかもしれない。
クラスや魔法は全て習得できるものでは無いし、資料として調べたい欲求はある。
闇雲にモンスターを倒すだけが冒険ではない。
世界を知ることも大事なことだ。
「う~む」
「このままだと全ての秘密を聞かれそうだな」
「聞きたいっすね。……一部はアインズ様からも聞いてはダメだと言われているっすけど」
「たとえば?」
「アイテムをどうやって調達しているのか。宝物庫の建設を放って妻と何をしているのか」
「個人的なことまで言わないとダメか?」
「個人的な疑問っす。アインズ様はだいたいご存知のようっすけど……。ああ、後で叱られるっすかね」
「そうだね。それ以上は聞くなと言っただろう、と大激怒かな?」
そう言うと頭を抱えるルプスレギナ。
初期の目的は達成したので、それ以上は孕ませられてしまう、ナーベラルを道連れに。
資源は定期的にナザリックに持ち込まれているし、わがままを言って供給が止まれば怒られる事に変わりがない。
ここは素直に引き下がるべきだろう。
「ラキュースとは子育てとか、家族サービス以上の事は無いよ。
「す、すみません……」
色々と書いた羊皮紙を丸め、ルプスレギナに渡す。
「実験は結果を知る為に
「そうっすか……」
「報酬として一般メイド全員と性行為かな」
「……私の身体が残らないくらい怒られそうっすね……」
「アイテムについてはアインズはもう分かっているだろう。量はどうしても増やせない。ランダム要素もあるから」
そう言いながらルプスレギナを七の宝物庫に案内していく。
「性行為はおいといて、そっちのメイドを半分……、十人程度くらい見回りなどで寄越してもいいぞ。自前のメイドは何も喋らないから、寂しい。それが出来るか尋ねてくれ」
「複製……、じゃあ意味が無いっすね」
「地上に上がらなければいいだろう。急な来客の場合はすぐ撤退できるように。ああ、あと偽物と入れ替えて混乱させたら面白いだろうな」
「うわぁ! それは不味いっすよ」
「やたらと口の汚い屈強なメイドで大混乱」
「……性質悪いっすよ、それは。色んな意味で残念っす」
第九階層が混沌と化すのだが、それは少し見てみたいと思ってしまうので困った。
反抗しようものなら返り討ちに遭いそう。
それは冗談なんだろうけれど、にこやかなメイド達がどんな風に帰ってくるのか期待してしまう。
「危険な事はさすがに無しっすよ。あと、エロい事だと怒られそうっすけど……。仕事を与える分には喜ぶかもしれないっすね」
武器を持ち上げて、慎重にナザリックに運び込んでルプスレギナと別れた。
溶けた武器も餞別として渡しておいた。
後日、一般メイドがゾロゾロやってきた。
ヤントラが居る日をちゃんと分かっているようだ。
「こちらでお仕事が出来るとうかがったのですが……」
「本当に来るとは思わなかった……。さっそくメイド達を処分してこようか」
そう言うと十人のメイドは顔を青ざめさせた。
「そんな酷いことは……」
「罠は無いけど君たちは一日一杯居るつもりだったりするのか?」
「規模にもよりますが……」
「侵入者が居なければ毎日のように点検はしないのだが……」
まずはそれぞれに見取り図を渡す。
「二の宝物庫はアイテム生産の為に立ち入り禁止だ。次の五の宝物庫は金貨の貯蔵庫で入ると危険だ。この二つ以外は歩いてもいいだろう」
「一から順番に番号順に進んだ方がいいですか?」
「そうだね。封印されている部屋がいくつかあるけど、それは開けないように。ここは宝物庫だから寝泊りはほぼしない。清掃も出来るところと出来ないところがある。天井が高いから壁掃除も出来ないだろう」
メイド達は壁から天井へと視線を向ける。
「壁は
まずは一の宝物庫に案内する。
メイド達にマスクを付けさせ、ホウキなどを持たせる。
「いくつか封印されている部屋があるけれど、それ以外は中に入れる。基本的に部屋の中はどれも一緒だ。まず、名札のある部屋の中を軽く掃き掃除。一人三部屋くらい担当することになるのかな」
「こちらの床はどうなさるんですか?」
「作らせた当人が言うのも変だが……。掃除がしにくい欠陥住宅だ。床さえ汚れなければいいということで一定の高さまでしかタイルが貼られてなかったりする。後は
「あらら」
「宿泊施設ならベッドメイキングなども出来るのだが……。それは地上の方だし、人間が使う」
見知らぬ人間と鉢合わせして混乱が生じては困る。
まずは折角きてくれたメイド達にそれぞれ掃除をやってもらうことにした。
一般の人間なら怖がる内臓などが置かれた部屋もナザリックのメイドは恐れ知らずで作業を始める。
雑巾を使わないのは床が滑りやすくなるのと、最終的に天井までやらなければならなくなるためだ。
「ここに入っている素体は活動停止状態だから取り出して洗うことはしなくていい」
「畏まりました」
それぞれ初心者ではないので慣れた手つきで作業を続けていく。
使用している部屋は既に百を超えているけれどメイドは仕事が多く手に入るので物凄く笑顔だった。まともにやれば大半の時間がかかるだろう。
外気に晒す以上は
毎日ではないとしても定期的に掃除するのは精神的にも健康になれる。
一の宝物庫は地下二階部分もあり、こちらの方が掃除しやすい。
掃除は上の階だけで地下は保留にさせた。
二の宝物庫は現在は使用中なので三の宝物庫こと大浴場に向かう。
地下一階部分から先に見せておいた。
そこにはたくさんの容器が並び、数人のメイドが居た。
「ここは出し入れが激しくなっているので掃除は出来そうにない」
「培養の部屋なのですね」
「時間差で完成した献体を取り出している。ここはもう汚れたままでいい。使い終わった培養液は浄化して捨てる。掃除は全ての培養が終わってからだな」
そう言って地下二階に進む。
いくつかの浴槽が並ぶ風呂場。床には培養を終えた献体が置かれていた。
「一人ひとり浴槽に入れて洗浄するように。やり方は見て覚えること」
「はい」
「一人一体で今日は上がる。残りはぬるま湯に水没しないように入れておくだけでいい。ここも掃除する時は最後になってしまう」
それぞれ洗う献体を与えて洗浄させた。
実際は満遍なくそれぞれ掃除が
「本当は洗う必要は無いのだが、頑張ってみてくれ」
与えられた仕事は思っていた以上に多そうで頑張りがいがあった。
口の中の洗浄は水を入れて少し乱暴にするのだが、見よう見まねで
終わればタオルで水気を取って終了だ。
洗浄を体験した後は四の宝物庫である屠殺場に入る。
「今は使用していないが床掃除くらいしか出来ない」
「……わー、広いですね」
「天井が高い」
この部屋はさすがに掃除しきることは不可能ではないかと思わせる。
メイド達に出来るとすれば近くにあるトイレと風呂場くらいだ。
今日は見せるだけに留める。
五の宝物庫は掃除できる状態ではない。
六の宝物庫の地下二階に連れて行く。
羊皮紙生産が真っ盛りで掃除する場所が無いように思われる。
「全ての部屋を掃除できるようにはなっていないわけだ。定期的に出来そうなのはあるんだけどな」
「そのようですね」
六の宝物庫の地下一階部分は第二の執務室のようになっており、テーブルに羊皮紙が散らばっている。
仕切り壁で分けられているけれど、床は比較的、綺麗だった。
「私とンフィーレア君とイビルアイの三人しか使っていないからね。意外と汚れないものだ」
最後に七の宝物庫に向かう。
地下二階の容器保管庫。
「ここは……見張りくらいしか出来ないだろう。掃除できるところと出来ないところがあるわけだ。徹底的という意味で」
「
「住居として家もあるけれど、殆ど使ってないな。一人で寝泊りするの寂しいから」
リイジーは友人を招いたり、ンフィーレアと共に寝たりしているらしい。
若返ったからとていかがわしい事は無く、エンリも寝泊りすることがあるという。
「無駄なスペースがあって大変だろう。君たちを本当に寄越すとは思ってなかったけれど……、ナザリックは色々と妥協してくれているようだね」
「はい。いかがわしい実験はダメだと言われておりますが……」
「なるほど。ちぇっ、残念だ、と言ったら怒るだろうな……」
「解剖実験などはされたりするのでしょうか?」
「そういう予定は無いけれど……。一応、君たちを使った実験はしない」
地下一階に登り、それぞれ点呼を取らせる。
一人も欠けていないことを確認する。
「毎日は無理だがマニュアルを作っておこう。定期的な掃除は厄介なモンスターの発生予防になる。もし、来てくれるなら弁当持参で。あと、浴場も使わせよう。まずは全員に見学させてから色々と決めて行こうか」
メイド達に歓声が上がる。
「時間帯としては四時間以内に終わればいいのかな?」
「風呂付きで食事は無しか……」
「仕方ないじゃない。食堂が無いんだし」
「地上は怖いもんね」
「逃げ道はここしか無いはずだから、移動経路の確保は大事よ」
と、それぞれ話し始めた。
「汚れても良い敷き布団を持っていって洗ってもらおうかな。帰る時に持ち帰って、来る時に違うメンバーが運び入れる、とか」
「……つまりこの上で飲み食いしてもいいと」
「天日干しがいいんだろうけれど」
「あの~、お風呂は他のお客様も使われるんですか?」
「稼動しているメイド達以外は使わないな……。ンフィーレア君とイビルアイは来た時に使うか……」
居たところで問題は無いだろう。ンフィーレア以外は。
「ここの風呂は一般開放しているわけではない。あくまでも献体の洗浄が主だから。……使えないわけではないからイビルアイ達にも普通に使わせたりしている。掃除の時間は君たちの都合でいいよ。
暇そうな、で浮かぶのはシズとルプスレギナ。待機の多いナーベラル。
ユリは定期的に報告書をまとめる仕事があるし、魔導国の地上部分の監督役も勤めていて忙しいようだった。
魔導国の監視にナーベラル達は人間に対して態度が悪いので実際には使えないらしい。
「帰る時は点呼すること」
「はい」
「ところでンフィーレア君と皆は面識はあるのかな?」
「ンフィーレア・バレアレ様はお食事にこられた時に面通しは
四十一人全ては覚えていないだろうし、複製の方だと勘違いするかもしれない。
「この部屋は君たちがくつろげるように色々と考えておこう」
「ええっ!?」
「ずっと入り浸ったら向こうが困るだろうけれど、休息中くらいは過ごし易いようにしておくよ。敷き布団で申し訳ないけれど」
「タイル……でしたね。ですが、我々に気を使われなくても……」
「返事の無い人形相手でお寂しいのですよ、皆さん」
「そうでした」
「寂しいといっても肉体的なことではないがな。好きだけど。物静かな施設だが、賑やかさは必要なんだろう。だから、ついつい欲が出る」
まずはマニュアルを作る必要があるだろう。
四十一人分。
掃除できる内容と範囲も決めておく。
急遽予定変更になり、二度と来られない事態になれば寂しい。
腹いせに全員を手篭めにしてやろうか、とさえ思ってしまうだろう。
「そういえば、
「分かりません」
「第六階層にいらっしゃるみたいですね。何をしているかまでは……」
「そうか……。今後の予定は打ち合わせをして決めて行こうか。いきなり、次の日からでは困るだろう」
メイド達との話し合いは数回ほど続ける事にした。
食事処が無いので一日一杯の仕事は酷だろうからローテーションの組み方が必要だろう。
帰り際に一人ずつ胸を揉んだりはせず、素直に帰した。
自分で設定していないだけで不思議と落ち着くのが困る。
性格付けも考えておいた方が良いだろう。
折角なので敷き布団は持っていってもらった。少しでも彼女達に仕事が与えられるなら、と。
後日、ンフィーレアとイビルアイが来た時にメイド達のことを伝えた。