ゲームオーバーから始めようか 作:モモンガ
晩に別のメイドが訪れる。
それらにもイビルアイは色々と質問したり、身体を触ったりする。
仕事終わりには風呂も一緒に入るのだがメイド達の見事な美しい身体に感心していた。
「風呂場でご主人に身体を見られるのは恥ずかしいか?」
「じーっと見つめられれば恥ずかしいです」
「いかがわしい事は存じておりますが、ナザリックではそういった事は……、秘密でございます」
メイドが秘密と言うのは珍しいのだが、その言葉の意味するところは指摘しない方がいいのだろう。
「人様の事をベラベラと話すのははしたないと思うので……」
「そうだな。これは失礼した」
メイド達は
与えられた命令に忠実だが、見た目に騙されて感情移入していい相手ではない。
あくまで反応を楽しむのが正しい、とヤントラは言う。
割り切るのは難しい相手だが、それを不幸と言ってはいけない。
というよりは自分達の横では培養を終えた献体を洗う姿が近くに見られる。
普通に風呂場として使っても問題ないし、果物や薬草を入れても良いとは言われたが、少し抵抗を感じる。
風呂道具は一通り揃っている。
天井は割りと高いが上から覗く場所はない。
「そういえば、イビルアイ様。……質問よろしいでしょうか?」
「答えたくない質問もあるが、言ってみろ」
「はい、では……。バスパ様はアインズ様の悪口などは頻繁におっしゃられたりしているのでしょうか?」
「悪口?」
と、言うとメイド達は揃って頷いた。
「人様の悪口は聞かないな。悪口を言うどころではないことが多いからかもしれない」
「そうですか」
「まだアインズはそんなことを気にしているのか? ご主人は四六時中、他人の悪口を言ったりしないぞ」
「……申し訳ありません。アインズ様はどうにも気にされておいでのようで……」
「このところナザリックが譲歩していることに驚いているくらいだ。過度な要求をしていないと思うが……、見た目には分からない精神的な疲労がたまっているのかもしれない」
「疲労ですか!?」
「楽しい事が見つからなくて苛々している、ような感じだ。メイド達が来るようになって仕事をどう与えてやればいいか悩んでいるのかもしれない」
「まあ!」
「それほどまでに私達の事を!?」
「裸は置いといて……。来てもらうのだから誠意を見せるのは当然、とか思っているのかもな」
「……私達の為に……」
「お役に立つ為に来ているのに迷惑をかけては本末転倒でございます」
この意見にイビルアイも同意した。
ありがたい話しだが雇い主を楽にするのはメイドの仕事だ。
その主が困ってしまっては意味が無い。
「ご主人は人に任せるのが苦手なのだろう。戦闘メイドのように色々と探りを入れる輩がいるようだし」
「まあ……」
「人様のメイドだ。何かあっては困るだろう。自分の部下なら潰れても気にしないのだろうけれど」
「……なんと慈悲深いお方なのでしょう」
「お心を痛められているとは……」
「裸を所望かは怪しいが……。せめて秘密を暴くようなことは避けてあげてほしい。まだ秘密があるのかは分からないが」
「はい」
「畏まりました。……ですが戦闘メイドの先輩方は一筋縄にはいきますまい」
「ルプスレギナは良いとしてナーベラル……。あれはまだ秘密を嗅ぎまわっているようだが、そろそろただの監督役に徹してほしい」
「……それとなく進言してみます」
「ナーベラル・ガンマ先輩は真面目ですからねー」
「……そういえば、ナザリックでは自害がどうのと話題に出たか?」
「少し前はありましたが……、今は無いですね」
「替えの効く部下が大勢いるなら別にかまわないのだが……。アインズはよく部下を殺すのか?」
そう言った途端にメイド達がいっせいに悲鳴に似た声を上げて顔を青くする。
「慈悲深いアインズ様は部下を簡単に殺めたりなど致しません!」
「うんうん」
力強く否定された。
「強大な力を持つ者はだいたいすぐ殺しそうなものだがな」
「いえいえいえ」
「ここ最近のアインズ様は我々メイドにお声をかけてくださるようになりまして。仕事内容や辛いことは無いか、とかご心配されるほどでございます」
ヤントラがエロいせいもあるのかもしれない、とイビルアイは苦笑する。
部下を大切にする気持ちはエ・ランテルを支配下に置いた後も継続されているようだ。
このところ面通しもするようになってきたし、仕事には真面目だとイビルアイも感心していた。
冒険者モモンとしての活躍は少ないかもしれないが仕事は真面目。
部下に丸投げしないのは冒険者の時くらいしか知らない。
メイド達の仕事の模索と平行して新たなダンジョンの捜索も始めている。
複数のメイド達による周辺地域の地図の製作も
目的や目標としては洞窟の捜索だ。
基本的に建物のダンジョンというのは破壊のおそれがあるから大抵は地下が多いはずだ。
城系の拠点は目立つので南方の浮遊する城以外の情報は得られていない。
守護するモンスターの強さで分かるはずだが、広大な地域は意外と見つからない。
まず偽装されていれば高レベルの探索を用いなければ探せないだろう。
あと、あまりにも遠くだと往復が困難だ。
天井の高さを生かし巨大な一枚地図を作り上げて壁に貼り付ける。
どこを基点とするかが問題だが、足りなければ継ぎ足すだけだ。
縮尺を任せて、得られた情報を記載していく。
正確な仕事は自分では出来ない。
大雑把な都市や城、村に洞窟なども記載する。
襲撃に備えて、様々な情報は別紙にしたためさせている。
さすがに王国と帝国周辺の出来上がりは早かった。
問題は山岳方面だ。
全てのモンスターを調べることは面倒なので
気持ち悪いものは要らない。とはいえ他のモンスターの情報は必要だろうから記載だけはしておく。中には危険なものも居るから。
地図作りを任せた後はアイテム生産だが必要物資は時間がかかるものだなと思う。
合間に傭兵モンスターの書物を並べていくとちょっとした図書館の出来上がりだ。
種類別とはいえ壮観だ。
運ぶのはメイドにやらせてみよう。ナザリックに勝手に運ばれたら全員妊娠で良いな。
殺しやすいように違う種族の方がいいか、などなど。
色々な事を考えつつ行動していくヤントラ。
世界の半分、なのかは不明だが地図もだいぶ出来つつあった。
観測できた種族は多岐に渡るが細かいものも入れればまだまだ増えそうだ。
獣人は他にも存在し、蠍系もちゃんと居るようだ。
基本的に獣人は
トードマンやラビットマンなど。
世界は確かに広いようだ。
集まった情報ではいくつかの
その内の一つ
火や毒、酸などが無ければ多少は苦戦する程度だ。
身もふたも無い転移で現場に向かう。
八欲王との戦いで力のある
地下に引きこもって眠っている者も居るかもしれない。
エンシャント以下は肩慣らし程度なので、解体作業を始める。
一部は培養目的の為に細かく裁断しておく。
殺すことが目的ではないので終われば解放する。
ブラックにブルー。
ゴールドにスカイ。
強敵の一つと目されている
どれもエンシャント級では無かった。
あまりに強い
ついでに獣人系の
細かい系統に別れている場合とそうでない場合があるので混乱する。
統一感が無いのは国による解釈の違いとかだろうか。
持ち帰った献体にンフィーレアは大興奮する。
出会うのが難しいモンスターだと思うのでオリジナルはちゃんと生きて帰した。
「パープルにレインボーはさすがに居ないだろう」
「ブライトネス・ドラゴンロードという名前から、この
虹色というよりは色彩が派手な
今は亡き『
蘇生できたら笑いそうになるので、やめておく。
魔法は時として見も蓋も無い。
若い
天井の高さを生かし、実験を兼ねて施設内に
材料は既に作っていたいくつかの建物を解体処分して得る。
永続化された金属板は解呪すれば再利用しやすくなる。
それらもンフィーレア立会いで行われる。
魔法知識が無くとも技術面では優秀なので。
高い位置に登れるように宙に浮いた階段と手すりを用意する。
用意する場所が七の宝物庫の地下一階。
床の敷き布団が濡れるかもしれないので、排水し易く改造する。
ちょっとした中二階になりそうだ。
一般メイド達にはケガ防止の為に金属製の防具を装備してもらい、
転がすのはヤントラのメイド。こちらも複数で手伝う。
ヤントラとナザリックのメイド同士のやり取りは出来ないが監督役のナーベラルは感心しながら作業を見つめる。
移動は転移。これはやはり便利だ。
大浴場で一体ずつ洗ってもらっている間に着々と『
それらはンフィーレア達に任せて冒険の旅に出る。
次の目標は溶岩地帯。
断熱材作りに欠かせないだろう。
第七階層を利用するという案もあるのだが、それはナーベラルに検討してもらいヤントラは独自に行動する。
珍しいモンスターが居ないかの調査も兼ねているし、ずっと地下にこもるのは精神衛生上良くない事もある。
共を二人付けようかと思ったがせっかくなのでクレマンティーヌ達と共にいこうと思った。
本来の冒険の供として。
専用の武具も用意し、誘ってみるとルリマリスは顔を青くするがクレマンティーヌは二つ返事で了承した。
ラキュースはさすがにもう連れて行けないだろうから、転移用のメイドを一人付ける。
『
まずは観光をしておこうと思った。
検問所で観光を目的としていることを告げる。
ルリマリスはもう顔は隠さなくていいのだが、クレマンティーヌにはイビルアイの仮面に似たものを付けさせた。あと、偽名としてクラレンスと名乗った。
服装は自由。だからといって裸は不味い。
美人の裸は眼福なのだが露出狂は可哀相だ。
美女を
今の真蒼の薔薇において『なんの支障も無い』ことだからだ。
伝えるべき事柄は伝え終わった。あとは細かい事情があったりするが、そこまで言う必要は無い。
何年何月に何があったとか。
意外と不幸な身の上なのだが、こちらの住人の方が過酷な運命をたどっているだろう。
特にクレマンティーヌなどは。
元奴隷のルリマリスも不幸度ではヤントラを上回る。
「じっくり観光する機会って意外と無かったな……。確かマジックアイテムを売っている市場があったような……」
「お金はあるんですよね?」
「交金貨百枚分。高いマジックアイテムを買うわけではないから飲食代くらいかな」
クレマンティーヌの側にはメイドが控えていて、追っ手の対応に当たらせている。あと、転移要員でもある。
まずは色々と小物などを散策していく。
王国には無い風呂用具とか。
飲食を済ませてからマジックアイテムの市場に向かう。
「……冒険者が売るマジックアイテムって少ないんだよねー」
「活気は無いのか?」
「無いねー。びっくりするくらい」
ルリマリスは辺りの様子をうかがう。
帝国につれてこられた経緯はあるけれど、自発的に逃亡したわけではない。
見つかって逮捕されるような悪い事もしていない。けれども、少し罪悪感があった。
奴隷商人に見つかれば連れ戻されるのではないか、と。
耳が長いから奴隷とは気づかれないかもしれないけれど。
「どしたの、リリー?」
「奴隷商人に見つかったらと思うと……。自然と心配になってしまって」
「大丈夫、大丈夫。私が変なやからを殺してあげるよー」
「安易に殺さないで下さい。騒ぎが大きくなります」
「あらー。それもそうだねー」
あはは、とクレマンティーヌは無邪気に笑う。
十歳ほど若返っているとはいえ中身は残酷な殺し屋。
元漆黒聖典第九席次。敵としては恐ろしいが味方であればとても頼もしい。
愛用のスティレットは材質を変えて新調した。
アンデッド対策の武器もいくつか用意し、大抵のモンスターに遅れはとらない自負がある。
新技よりは使い慣れた技を洗練する方が確実だ。
もちろん、新たな武技も扱えるが無駄はそぎ落としたくなる。
レベル90台の
強敵が居た方が張り合いがあるものだ。
「ご主人の世界では良い武器は買うの? 作るとすればどうやっているの?」
「良いものは大抵、特殊な金属を採掘したり、強大な敵を倒して希少なアイテムを得たりする。
「うわー、いいね、その世界」
「当然、強い武器ほど作りにくいよ。私のは売っている程度の武器が中心だったけれど、それなりに強い武器も用意していた」
ガルヴォルンに代表される武器なのだが、人から貰うこともある。
良い武器はここぞ、という時に使うものだ。
「伝説の武器もあるにはあるのだが、奪われたりする世界だから持っているのも大変だよ」
「わかるわかるー。それなりに苦労したんだねー」
「ヤントラ様も苦労する世界なんですか?」
「強敵がゴロゴロ居るからね。私程度は雑魚扱いだよ。今はだいぶ強くなっているとはいえ、上は……千五百人くらい居るんじゃないかな」
「……うそ……」
ルリマリスは絶句する。
タダでさえ化け物じみているヤントラよりも千人以上も強い
どういう世界なのだろうか。
「一対一なら、それくらい。数の暴力って怖いよね」
「怖いねー」
クレマンティーヌはヤントラの言わんとしている事をすぐに察知した。
「最強の存在ってどれだけ居るの?」
「知りうる限りでは九人。過去に一人倒されて新たに一人加わったから全部で十人と言う人も居る」
「頂点に立つ化け物が九人……。そこにアインズ・ウール・ゴウンは入っていないと……」
「世界に認められた強さでは。アインズは実力で頂点というわけじゃないから」
「まとめ役に相応しいだけの人も居るよね」
「そうだね。まさにアインズがそうだけど……」
戦争が終わってから更に活気が無くなったのか、寂しい商品が並んでいる。
店主自身が冒険者という事もあり、ほとんどが中古品。
売るほどアイテムが豊富と言うわけではないから、少ないのだとか。
「……序盤の街かよ……」
情けないにもほどがある。
だが、これが現実ならば受け入れるしかない。
第三位階が人間の最高峰と言うくらいだ。品揃えが貧弱なのは仕方が無いのかもしれない。
「変に情けをかけたらダメだよ、ご主人」
「おっとうっかりアダマンタイト製のメイスを落としちゃった。……ではダメか?」
「ダメ」
何を考えているのか分かったクレマンティーヌは口を尖らせて言った。ただし、仮面なので表情はうかがうない。
品揃えを少し豊富にしたい気持ちは買い物客の立場からは理解できなくは無い。
ただ、クレマンティーヌは相手の鼻っ柱をへし折ることが大好きだ。
それでもやはり無償の施しには抵抗を感じる。
こんな奴らの為に、という意味で。
ルリマリスは気の毒な彼らの商品を買おうか悩んでいたりする。
金の無駄だ、と小声で告げる。
「……良いダンジョンで良い品物が手に入ればいいのに……」
「あいにく、都合のいいダンジョンは無いよ。あればあったで命と金を天秤に乗せなくちゃならない」
店に提供できるほどの武具は持ってきていない。
それにしてもこんな粗末な状態で冒険者は育つのだろうか。
金持ちがアイテムを独占しているのかもしれない。
そう思うと気の毒としかいえない。
しぶしぶ次の場所に移動する。
奴隷商人の居る店。
バハルス帝国では奴隷の人身売買は認められている。
ルリマリスをメイドと共に外で待たせて店の実態を調査する。
奴隷といえば
スレイン法国では
同じ人間種の
奴隷と言っても無理矢理売られたモンスターばかりではなく、自分の人生を売りに出す者が居る。
生きる為には金が必要だ、という理由で。
帝国ではこちらの方が多いようだ。
珍しい亜人などが居ないか調査だけして買う事は控えた。というよりは手持ちの金では足りない。
感想としては
男の
というよりは予約をすれば手に入るところは何だか嫌な気分にさせる。
買いに来た
店の外に出ると気分が少し重くなったような気がした。
とはいえ
「スレイン法国は
「人類の守り手ではないのか?」
「さあね。偉い人の考えることは分からないよ」
バハルス帝国の住民は人間以外にも亜人も生活しているらしく、色々な人種とすれ違う。
極端な異形は居ないようだが平和そうな雰囲気はあった。
亜人は二足歩行で動物的な外観を残している。
ルプスレギナのような変身はせず、
トブの大森林に居るという
獣系は全て
次に向かったのは闘技場。
来たいと思っていて入るのを毎回、忘れていた場所だ。
「参加するの?」
「それが出来たら願ったりだね」
入場料を支払い、四人は観客席に向かう。
参加するには事前に手続きが必要らしい。
「血なまぐさい戦いを見世物にするなんて」
「普通の冒険でも充分、血なまぐさいと思うけど?」
「……暴力的なものが苦手なんです」
「信仰系
それも高位の魔法を扱う。
血まみれくらいで動揺されては仲間を癒せない。
気弱な性格は嫌いではないのだが、普段は戦いを避けた生活をしているという。
踊りや料理。
普通の生活が今のルリマリスの幸せだった。
最初こそ性奴隷と騒いでいたのが嘘のようだ。
「ここから冒険者を援護したら怒られるかな?」
「つまみ出されるよね、確実に」
と、楽しそうにクレマンティーヌは答えた。
ルリマリスの隣りに控えるメイドはずっと無表情だった。
「ずっと大人しいけど、こいつちゃんと役に立つの?」
「命令すればね。性格付けは混乱を生むからしばらくは保留にしている。ちゃんと二人を守ってくれるよ。メイドより強い敵でも現れない限りは」
つまりメイドはクレマンティーヌ達より強いという事になる。
訓練は途中で止めたまま。実力的には最下位争いと言われている。
胸をつついても、揉んでも無反応。
あまり構っていると攻撃に転じるからとクレマンティーヌを制しておく。
このメイドには『
必要な物資はすぐ取り出せるようにしていた。
一つは資金。
高レベルモンスター対策の武具とアイテム。
替えの効くアイテムばかりだが、侮れないものはある。
闘技場の試合は一回戦のみを数回に渡って
勝利数でチャンピオンとの戦闘参加資格を得られるらしい。
無理に殺害する必要は無いし、戦闘不能の判断は戦士たちに委ねられている。当然、命を落とす者も居る。
大抵が冒険者とモンスターの戦いだ。
平和だからこそ血を求める娯楽が必要だという。
皇帝も観覧に来る。
魔法の使用もありで、派手な魔法は人気があるらしい。
最初の試合は銀級冒険者と虎型モンスター数匹。
ただの殺戮ではなく、見世物としての演出も凝らされている。
罪人の処刑場では決してない。
冒険者が腕試しする場でもある。
もちろん勝利者には褒美が与えられる。
「あー、一人やられちゃった……」
「回復役は居ないのか……」
「今、やられた人」
観客からも落胆の声が広がる。
とはいえ、残っている戦士系が血だらけになりながらも勝利を収めた。
助けに行くべきか悩むがクレマンティーヌは否定的だった。
「甘えてしまうよ、ご主人。冒険者は常に死を覚悟しないと……」
「正論だな」
「ご主人も意外と命の大切さは分かっていると思うよ。……我々が甘えることが多いけれど……」
ヤントラは闇雲に人を救わない。
殺す時は殺す人だ。
死んだ人間はそのまま死なせておけばいい。それが本来は正しい摂理だとクレマンティーヌは思うし、ヤントラもそう思っている。
便利な魔法があるから甘えているだけで、それが無ければ悲しみを溜め込むだけで終わる。
事実、クレマンティーヌがこれまで殺した罪人は復活させていない。
誰も彼も生きたいと願うなら救うべきだ、と言うと思っていた。
それをしないということは自然の摂理を覆そうと思っている人間ではないのかもしれない。
いや、本当は助けられるものなら助けたいという気持ちがあるのかもしれない。
優しさと厳しさを天秤にかけて見定めようとしているのだろう。そして、今回は厳しさが勝った、ということだろう。
人体の複製にしても目的があるから
命を大切に思うならそんな非人道的なことは決してしないはずだ。人形と呼ぶが血を流す生物には変わらない。
「……迂闊に治癒とかすると神殿の連中に目を付けられるしね」
「敵を作るのは困るな」
面倒くさいから。
これが王国ならば毎日のように査察が入ることだろう。
定期的にレエブン侯に様子を見せる事にしているが増えていく容器には毎回、驚かれる。
今回は