※この作品はR-18です。

ゲームオーバーから始めようか   作:モモンガ

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第十六章 世界を穢す超越者たち
P-01 アルベドと共にエ・ランテルを視察


 

 下水月(四年目の六月)。

 エンリ・バレアレ達の指導の下に麦の刈り入れが始まる。

 今年はこれで終わりではなく上風月(十月)辺りにもう一度麦を植える予定だ。

 土地が肥沃なら二期作が可能だが、管理を怠れば連作障害に陥りやすい。実験的な試みなどで他の作物も育てている。

 食糧生産の無い都市づくりをしても仕方が無い。飲食不要の冒険者が現れるだけだ。

 進化の過程で内臓が退化するかもしれないし、生物であるならば健康的に暮らしてほしいと魔導王アインズ・ウール・ゴウンは思った。

 懸案だったヤントラ・サルヴァスパの復活はびっくりするほどあっさり成功した。

 拍子抜けとはこういうことか、と。

 何が原因かは分からないらしい。メイドの暴走かもしれない。ぼ~っとしていた間の記憶は無いという。

 記憶の改竄を受けたのであれば高レベルのメイドが独断で行動している可能性がある。だが、特定するのは困難だ。いや、そもそもそんな事が可能なのか、と疑問に思うけれど。

 他人の施設ではあるのだが少し気になるので自分のメイドにメモさせた。

 何食わぬ顔で――健忘症など起きていなかったかのように――語学のレッスンが再開し、合間に冒険者の仕事をこなしていく。

 ヤントラは相変わらず地味な作業の繰り返しだが、三割分がどうなったのか、アインズは気にしていた。

 見た目には十割アバターと言われれば、そう見えてしまう。

 

(……考察しても答えは出ないし、当人に聞いても無駄そうだ)

 

 ンフィーレアとイビルアイには少し説明しておいたので、異常があれば連絡を寄越すように頼んだ。

 それとは別に魔導国に落下したという金属の処置も滞りなく済んだ。

 人的被害が無かったのが不思議なほど。

 一〇〇トンの七色鉱は圧巻だったが、国が崩壊するレベルではないかと驚いた。

 それから、エ・アセナルの死闘の跡はマーレに修復するように指示を出した。

 はた目からも国の存亡をかけた激闘の跡ではあるけれど、そのまま放置するわけには行かない。

 マグマ層まで砕けていたら結構な大被害が発生する。のちのち星が壊れるフラグとなっていたら目も当てられない。

 地上での戦闘も考え物だ。盾役の黒い仔山羊(ダーク・ヤング)は現在、守護者達の鍛錬となっているようだが、意外な強敵の出現により良い刺激となってくれたようだ。

 ああいうのがポンポン出てこられても困るけれど。

 

(麦以外の穀物も育ててもいいけれど……。育成には時間がかかるなー)

 

 時間がかかる問題は冒険者にも言える。

 種を植えて刈り入れまで数ヶ月かかる。苦労して育てた後に収穫し、それを好き放題食べるのが人間だ。

 レベル一の冒険者をレベル一〇に育てるのも数ヶ月かかる。

 一年はあっという間だ。――蹂躙は数秒だが。

 その数秒が色んな事を台無しにする。

 

「アルベドよ。今日はエ・ランテルの視察だったか」

「はい。今日はアインズ様と二人で……」

 

 記録係のメイドも連れて行くから三人以上は確実に居る。

 さすがに彼女達を排除することは許さなかった。

 二人っきりで出かけるとしても、どこへ行けばいいのやら。

 夏だから海水浴に行くのも悪くないかもしれない。だが、自分は骸骨だ。絶対に沈む自身がある。

 

(……アバターじゃなければ飛び込みたいところなのに)

 

 泳ぐにしても骨は軽いし、浮くイメージがある。風呂場ではしっかり沈んでいたと思う。

 それより魔導国は草原のど真ん中。

 毒の沼だった頃が良いとは言わないが、色んなところに行くことも大事だ。

 色々と考えなければならないことが山積しているがまずはエ・ランテルに向かう。

 

◆ ● ∞ ● ◆

 

 相変わらず外出着を派手にしようとするメイドに辟易してしまう。

 地味というかカジュアルでいいと言っても聞いてくれない。割りと強情なメイドに驚く。

 

(二つ返事で死ぬんじゃなかったのか、お前ら)

 

 着替えを済ませてアルベド達と共に街を散策。

 さすがにアルベドの格好を黒い全身鎧(フルプレート)姿にはさせなかった。

 お供は今日のアインズ当番のメイドと不可視化した影の悪魔(シャドウ・デーモン)を数体。

 

「人の往来が増えてきたな」

 

 道行く人々を平伏して回るような真似はさせなかった。

 最初は大名行列か、と憤慨したものだ。凱旋でもない限り、人々には自然に振舞うように言っておいた。

 いわゆる『お忍び観光』だ。

 開いている店に入り、品物を観察する。モモンの姿の時も入った事はあるけれど。

 どの店も大して繁盛はしていない。客が少ないからだが。

 あらゆる手を使って繁盛させろ、と無茶を言っても仕方が無い。というか、無理だ。

 

(城砦都市は帝国の進軍が想定されていたからこそ賑やかだったのか)

 

 魔導国の都市となった今は役割を生かせなくなってしまった。つまり魅力が無い状態と言える。

 かといって兵士達を常駐させても意味が無い。もちろん、戦争する準備が必要というのならば、だ。

 ジルクニフに無理を言って兵士を侵攻させるわけにもいかない。

 そもそも同盟国に侵攻する理由が分からない。それがアインズであっても『なんで?』と聞き返す自信がある。

 

「寂れた街になったものだ」

 

 だからこそ、何かトラブルとか起きそうな気がする。

 極端に被害が大きいもの――というよりは新しい出会いとか。冒険者モモンの出現みたいな感じだ。

 謎の流浪の剣士が現れて俺の名を覚えておけ、みたいな臭いセリフを吐く奴が出て来ないとも限らない。というか、自分ならやりそうだ。

 悪の王から街を救う救世主。今なら、そんなイベントが起きても不思議は無い。

 

「アルベド。冒険者組合に行くのだが、その服は汚れても大丈夫か?」

「はい。丁度、メイド達の仕事の足しにもなりますので」

「そうか。次は海にでも行ってみるか? リ・ロベルは海沿いの都市だから」

「アインズ様と一緒ならたとえ溶岩地帯だろうと構いません」

「山小人(ドワーフ)の国があるというアゼルリシア山脈でもか?」

「文句は言いません。……できれば二人っきりがいいです……」

 

 と、可愛く言うアルベド。

 アインズの言葉に対し、少し顔を赤らめたり、色っぽい言い方をしていることは――なんとなく――理解しているが恥ずかしいので指摘しない。

 思えば彼女と何気ない会話を交わす機会が無かったな、と。

 

「記録係りが居ないと困るし……」

「大切な御身ですものね。申し訳ありません」

「余裕が出来れば……、と言いたいが、その時が敵の狙い目でもあるし、私ならそうする。難儀な思いをさせてすまないな」

 

 アインズの言葉にアルベドは胸に手を当てて軽く頭(こうべ)を垂れる。

 彼女の態度を見て自分が国の統治者であることに気付く。今は個人の都合で勝手に行動する事は出来ないし、王族ともなれば行動に様々な制約がかかるものだ。

 

「いえ、私のわがままでございます。こちらこそ、お許し下さいませ」

「うむ。咎めるつもりはない。顔を上げよ、お前の発言を許そう」

「ありがとうございます」

 

 ふと、アインズは女性と二人っきりで雪山登山する風景を思い浮かべた。

 モンスター二匹による雪山散策はデートにしては色気が無い。いや、当人達が納得していればデートとも言えなくは無いけれど。

 

◆ ● ∞ ● ◆

 

 エ・ランテルの建物の一部は増改築などで色々と新しくなったり、更地になったりしていた。

 現在のところ魔導国らしさは出さずに住民の判断に委ねている。

 道路の舗装は既に完了しているので馬車も徒歩も特に問題は無い。

 下水道の整備も既に終えているから綺麗な飲料水を人々は飲める。

 アンデッドが蔓延る埃(ほこり)臭い都市ではない。だが、清潔さはまだ低い。

 元々の世界観は意外と不衛生だ。疫病も人々にとっては身近なものだったらしい。

 人々の治癒を担当する神殿はエ・ランテルにもあり、スレイン法国から信仰系の魔法詠唱者(マジック・キャスター)が常駐している。

 治癒に関してはアインズは関知していない。

 そこは文句を言ってきた時に相手をすればいい。

 アンデッドが警備しているから退散させました、とかいうのは聞かないけれど。

 

(そういえば従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)のことをすっかり忘れていた)

「墓地以外で従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)の発生は確認されておりません」

「そうか。対処が遅れると動死体(ゾンビ)だらけになるからな」

 

 本当に死者の国になってしまう。

 そんなことを話しながら冒険者組合に到着する。

 モモンの活動は休止しているのでハムスケは居ない。特訓はさせている。ナーベラルと共に。主に戦略の練り方だが、意味も無く強いだけでは敵に対処できない。

 扉をくぐって中に入ると数人の冒険者が居た。

 前回は誰も居らず、閑散としていた。

 例え数人でも居てくれて良かった、と思うのは大袈裟か。

 これが仲間達ならもっと嬉しいところだが、そこまでは高望みしない。

 

「こ、これは魔導王陛下……」

 

 受付嬢が駆け寄ってきて平伏しようとした。それを手で制するアインズ。

 このままだとどこへ行っても平伏を止める作業を繰り返してしまう。何とかしたいが――妙案が浮かばない。

 

「よい。堅苦しい挨拶は抜きだ。閑散としているが依頼の方はどんな様子だ?」

「おそれながら……。まだ何ともいえない状態でございます」

「急な変化は期待していない。長い時間がかかるは想定内だ」

 

 冒険者として稼いだ金で冒険者を雇う。

 普通に考えたらバカだよな。

 投資と言えば済むのかもしれないけれど、俺も一応冒険者だぞ、と。言いたい事が言えず、我慢を強(し)いられる。

 魔導国が出している依頼は特訓が多い。

 まだ遠出に派遣する実力には至っていないから仕方が無い。

 自然のパワーレベリングはとても非効率的だ。ヤントラの手法はその中でも効率に特化しているのが今ではよく分かる。

 当たり前だが、多くの経験値を獲るにはレ(・)ベ(・)ル(・)差(・)の(・)あ(・)る(・)強(・)者(・)を多く倒すことだ。その強者の数が圧倒的に少ない。

 赤帽子の小鬼(レッドキャップ)もレアモンスターのようだし。このくらいになると災害レベルだと言われて撤退されてしまう。

 骨の竜(スケリトル・ドラゴン)はカッツェ平野に行かないと出会えないほどレアなアンデッドモンスターらしい。

 序盤の町に期待するのは不毛かもしれない。

 むしろスタート地点に竜王(ドラゴンロード)が溢れている方がおかしい。というか、実際に高レベルモンスターのナザリック勢が居たりするけど。

 近くにダンジョンを作って適当なモンスターを放り込む、という案もあるけれど使えるようになるまで、やはり長い時間がかかる筈だ。

 攻略されたら終わり、というのももったいない。

 元々プレイヤー側のアインズがどうして他の冒険者の面倒を見ているのか。

 

(お前らが弱いから苦労しているんだぞ、と言えたら苦労は無いしな)

 

 だが、さすがは『悪用方法』だと今は思う。

 小鬼(ゴブリン)や人食い大鬼(オーガ)に善戦している冒険者の方が生き生きとしているかもしれない。

 確か『漆黒の剣』という、当時は銀プレートの冒険者達はどうしているだろうか。

 短い付き合いだったが、既に全滅しているのか、昇格して白金級くらいになっているのか。

 見覚えのある顔が殆ど居ないので別の都市に移動したのかもしれない。

 自国の都市から逃げられるというのは少なからず、残念な思いを感じる。

 逃げられた、というよりは嫌われた、ような心が傷つくようなもの。

 住み易さと働き甲斐のある都市作りをしないと駄目だとは思った。

 

◆ ● ∞ ● ◆

 

 いくつか依頼書を眺める。

 国王として部下に色々と募集などをかけさせる事も検討に入れているが、まだ踏み出せていない。

 いくつかはイビルアイのアイデアを採用したものを実験的に頼んでいる。

 それを冒険者モモンとして請け負うのはバカみたいだ。ただ、パンドラズ・アクターがうっかり受けないか心配にはなる。

 

「建物で不便があれば部下を送るが、老朽化などの問題は起きていないか?」

「はい。建物自体に問題は起きておりません。先日の金属落下による下水の逆流などもありませんでした」

「そうか。……あれは私も驚いたがな」

 

 都市全体の調査は行(おこな)わせているが、立てかけていた調度品が壊れる程度で地盤はだいたい無事だった。

 もちろん、どこかは壊れているかもしれない。

 広い都市なので点検に時間がかかるのは仕方が無い。

 視察を終えた魔導王は商店街に向かう。大都市の生命線のひとつだが、こちらは少し賑やかだった。閑散としていては困るけれど。

 

「国産の食料が並ぶのは……、まだ少し先か……」

 

 エンリの協力を仰いでいるとはいえ、一年も経っていない状態で豊富な食料が市場に並ぶ事は無い。

 今、店に並んでいるのは殆どがバハルス帝国とリ・エスティーゼ王国産だ。すべて国産に挿げ替えるのは小さな国土しかない魔導国には無理な話しだ。

 

「品物の質は……、悪くは無いな」

 

 見た感じでは痛んだ作物は見当たらない。

 天候不順やモンスターに荒らされたり、疫病などで作物が酷い状況になる事はある。

 

「今は輸入に頼っておりますが、品質は色んな者に検査させておりますので」

「家畜類の肉はどうなっている?」

「そちらも以前と変わらない様子でございます」

 

 実際に精肉店に行き、店主の話しを聞いておく。

 西洋ファンタジーの食生活はそれ程詳しくないが宗教の戒律などが障害となる事がある。今のところ戒律うんぬんで並べられないのは人間くらいだ。

 亜人と異形を住まわせる上で避けては通れない。

 獣人(ビーストマン)を招いて、我等は人間が大好物だ、と言い張られて混乱しては困る。

 いっそ潰すか、そんな国と思わないでもない。

 科学技術が中途半端なので保存の文化が未熟だった。だから、多くの肉は干し肉加工か生きた家畜を買ったりするのが基本。だが、魔導国では氷を生み出すマジックアイテムなどを実験的に色々と作らせて生肉として販売できるか実験していた。

 香辛料は地元の人間に出させている。他国に無い味を出さないと差別化が図れない。

 次に向かったのはエ・ランテル最大の共同墓地。今はアンデッド討伐の試験場となっている。元々は墓地なので墓参りとかどうしようか、と悩んだものだ。

 墓石さえ無事なら後はどうでもいい、という文化なのか、あまり気にされなかった。

 元は家族でもアンデッド化したら敵だと判断される。意外と割り切る原住民に驚きを禁じえない。

 墓地の守衛に大きな門を開けさせて中に入る。

 中は昼間なのにおどろおどろしい雰囲気が立ち込めている。ここに遺体などを埋葬するのは勇気と充分な能力などが要るのではないのか。

 

「倒しても倒しても骸骨(スケルトン)が出て来るのも不思議だな」

 

 生物(なまもの)系のアンデッドも出て来る。

 明らかに元人間という感じがしない。

 アインズはアンデッドなのですぐには襲われないが、アルベドとアインズ当番のメイドは襲われる可能性がある。

 それほど強いモンスターは居ないはずなのでメイドだけ守るように控えている影の悪魔(シャドウ・デーモン)達に命令しておく。

 非力なメイドなので骸骨(スケルトン)に襲われたらひとたまりもない。

 

「墓場はデート場所としては相応しくないが……、しばし我慢してくれ」

「いえ、お気になさらずに……」

 

 出没するモンスターは今の時間には骸骨(スケルトン)くらいだが、それらは居なかった。

 墓地の中央には大きな霊廟があり、地下には怪しい儀式跡が発見されている。

 伝え聞いた『ズーラーノーン』という邪悪な組織が根城にしていたそうだが、何者かに討伐されてしまった。

 それが『アンリマンユ』という元『蒼の薔薇』のリーダー『ラキュース』にそっくりな生霊だという。そのラキュースは今も生きていて都市運営を行(おこな)っている。

 何者かがラキュースの装備品をまとい、墓地の中を徘徊して秘密組織を壊滅させた。

 目撃例は一度きりだが、アインズはどんな存在か気になっていた。

 時期的にはラキュースがナザリックに保護されていたので、抜け出して墓地で暴れる事はそもそも不可能だ。

 気にしたところで自ら危ない橋を渡る気はない。今以上の詮索をしないことにした。

 

(さすがに墓地に赤い槍使いが現れた、という話しは無かった)

 

 影の国の女王(スカアハ)アレルギーなのかな、と怯える自分に自己嫌悪する。

 イベントボスやレイドボスは気軽に会いたくない存在だ。

 充分な人材が居れば考えるが、いきなり出没して強制的に戦わされるのは困る。特に勝たないと世界が崩壊するとか、正直、そんな条件は聞きたくない。

 

「……どうも気弱になっているようだ。さすがに強敵は出て来ないだろうが……、しばらくは撤退を選ぶぞ」

「畏まりました。アインズ様、我等の犠牲でお心を痛まれるお気持ちは大変ありがたく存じます。充分な体制が整うまでは不用意な戦闘は私も望みません」

「そう言ってくれるとありがたいな、アルベド。骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の大群程度なら問題は無い」

 

 そのモンスターが五〇〇〇体現れてもアルベド一人で駆逐出来る筈だ。

 自分の魔法だと数発で粉砕できる自信もある。第六位階までの魔法を無効化するようだが、アインズには毛ほどの障害となりえはしない。

 

◆ ● ∞ ● ◆

 

 ある程度、歩くと冒険者達の姿が見えてくる。

 周りの被害を考慮して霊廟近くに特訓場を設営している。帰りは護衛のアンデッド兵が送るので、余程の事が無い限り安全に行き来できる。

 彼らが相手にしているアンデッドは自動的に湧き出す低位のアンデッドと少し手ごわい中位アンデッドが数体だ。

 弱いモンスターばかりでは経験値にならない。なるとしても『一』か、小数点以下だ。

 楽をしても技術が身体に追いつかないのはナーベやハムスケが証明している。――多少の努力も必要だ。

 もちろん、一ヶ月程度では見違えるような強さは感じられないはずだが、自信は付く筈だ。少なくとも敵に対して恐怖心を抱く事が少なくなる。

 それは今のアインズも欲しいと思っているもの。

 

「アンデッドばかりでは退屈だろう。獣系も入れようか?」

「確かに。同じ相手ばかりではアンデッドにしか対応できませんね」

 

 骸骨(スケルトン)には慣れて妖巨人(トロール)にあっさり倒されては困る。

 色々なモンスターと戦う方が戦略の幅が広がる。

 この墓地には居なかった悪霊犬(バーゲスト)や地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)も投入しようとメイドにメモさせる。

 非実体系と相対する事も想定し、特別に魔法の武器を貸与する規定を追加する。

 根性でどうにかしろ、とはアインズも言わない。

 特訓している冒険者は今の時間帯では銅(カッパー)級ばかり。銅、鉄、銀の冒険者はとにかく数が多い。

 これは魔導国だけの問題ではなく、バハルス帝国もそうだった。

 帝国は軍隊強化に力を入れているので冒険者の増強はあまり行(おこな)っていない。

 竜王国では敵が強すぎるので冒険者が育たないと聞いた覚えがある。

 冒険者育成は職業訓練のようなものだ。やる気がある者は延ばすが無い者は去れ、というスタンスだ。

 全員を鍛える気は毛頭ない。だが、少なすぎては困る。その匙加減が難しい。

 多少の希望を見せて様子見が今の段階だ。

 魔導国に――アダマンタイト級はモモンを除けば――金級以上は一人も居ない。外部から招く事は可能だが。

 建国して日が浅いので、賑やかになるまでしばらくはかかる。

 昇進に関しては冒険者ギルドの意見を聞いて行(おこな)う事にしている。

 死の騎士(デス・ナイト)を倒して一人前、という規定はさすがに無茶だとアインズは思った。

 

 

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