ゲームオーバーから始めようか 作:モモンガ
初日の仕事を終えたヤントラは冒険者ギルドにマミカと共に向かう。
依頼の報告をするためだ。
報酬は多くはないが、彼女には色々と得るものがあっただろう。
それよりも次の仕事だ。そこらのモンスター如きには遅れは取らないが、いかんせん。文章が読みにくい。いくつかの単語は分かる。ただ、それが銅なのか鉄なのかミスリルなのか。
代読料だけで報酬が無くなるのではと思うくらいだ。
ランクが上がれば報酬も増えるのだろうが、解読方法は欲しいな。
代読料も貴重な財源。そう簡単に便利なアイテムは市場には出回らないだろう。
五十音順に書かれた解読書のような羊皮紙と張り出された依頼書と格闘する姿を受付嬢は不思議そうに眺めた。
冒険者としてヤントラの今の格好は恥ずかしいはずなのに気にした様子を見せていない。
相当な実力を持つのにプライドは無いのかな、と思わなくはない。
それはそれで清々しい人物なのかもしれない。
「……職業に依存しなければモンスター退治でなくてもいいのですが……。すみません」
謝ってばかりではあったが、受付嬢は一つ一つ説明した。
「貧民街の身回りがありますが……、鉄ランクになると外の探索が出来ます。銅は基本的に荷物持ちか見回りが多いです。例外として指名による依頼があります。漆黒のモモンさんはそのタイプで出世されてますね」
「……卑怯な気がしますが……、地味で結構なんで。……ちなみに銅で
「……ああ、
カッツェ平野で四体連続討伐しちゃったけど。
相手国に目を付けられると様々な罰則が発生するかもしれないし、それを口実に貴族側からの圧力もあるかもしれない。
今から考えると銅プレートが無くて良かったのかもしれない。
色んなことに安心出来た。
その後に色々と意見を聞いた結果、街の見回りの仕事を選んだ。
こちらも夜中から朝方までだが、貧民街は何かと治安が悪く、ケンカに殺人が起きる可能性がある。
冒険者と言えどもモンスター以外は殺してはならないのだが、犯罪者は特別な理由が無い限りは殺害も止むを得ない事もありえる。
それは実際に蒼の薔薇が裏の仕事として行っている。
今の時期は兵士に混じって密偵などが入り込むこともある。
この仕事を片付けたら王都に戻って家の様子を見るほかない。
王国と帝国の交渉ごとは刻一刻と進んでいるのだろう。
数件のケンカを仲裁することになったが殺人にまでは至っていない。
大きな街はどこも治安の悪さに頭を痛めているのかもしれない。
夜だけ営業している飲食店で腹ごしらえもする。自分で作れないかの勉強もかかさない。
せっかく来てくれたクレマンティーヌも可愛がってやらなければならない。
エ・ランテルの治安が悪いと言う事はリ・エスティーゼも悪いのだろう。
貴族連中が犯罪者と手を組んでいてもおかしくない。
モンスター退治したいのに何故、政治の話しが出てくるのだろう。
見回りが仕事なので一つ一つの店の内情を調査するわけではない。
カルネ村も実は麻薬を栽培しているところだった、などと言われたら困るな。
自分はまだ世界を知らない。
そういえば睡眠を取ってなかったっけ、と思い出し、仕事が終わったら寝ようと思った。
凶悪なモンスターは居ないが凶悪な顔のおばちゃんが叫んだりはしていた。
規定の通りを巡り、気が付けば朝になっていた。さすがに眠らないといけないだろう。
時間になったところで警備の詰め所に行き、報告して仕事は終了する。
地味ではあるが大変だ。
宿屋で休息を取ると昼過ぎまで熟睡できた。
人間種というのは食事と睡眠は必須。
精神的な疲労も取れるのでありがたいが睡眠を必要としない種族はずっと起きてて平気なのだろうか。
目覚めと同時に口唇蟲の餌やり。それから王都へ帰還する。冒険者ギルドは王都にもあるので問題はない。
一口に帰還といっても距離があるから数日はかかる。
魔法での移動だとしても。
途中で息切れするのも人間種のペナルティのような気がした。
よく考えたら空飛んで移動する貴族って何なんだろう。
馬なども考えなければならないな。飼育代のことを考えるとアンデッドの馬は有用だな。
物凄く目立つだろうけれど。
移動には慣れてきたとはいえ遠いな。
点在する村を眺めつつ、最終的には二日丸々かかった。その調子だと口唇蟲を知らずに餓死させてしまう気がした。出来るだけクセを付ける上で餌やりを自然と出来るように頑張ろうと思った。
馬車ならもっとかかっていただろう。
朝日が昇る頃ではあるが検問所は機能していた。
とりあえず、我が家に帰還。街の用は見えている部分は煙とか立ち昇ってはいなかったが、朝方とはいえ兵士の往来は激しい。
貴族お抱えの兵士達という線もあるが今は無視する。
久しぶり我が家、それは毎回思うことかもしれない。
扉を開けると廃墟だった。手入れをしていない庭は既に植物は生えていない。
それくらいゴミが散乱しているという。掃除が苦手なのかな。
各部屋を確認すると一室だけベッドが膨らんでいた。恐らくはクレマンティーヌだろう。
他のメンバーの姿は無く、彼女一人かもしれない。
彼女に与えた部屋だけ綺麗な気がする。
起こさないように二階の自室に移動する。
まずは、とりあえず疲れたので寝る。
疲労は感じる。食欲もある。
色んなことがあった気がするが今は黙って眠ろう。
次に目覚めたのは昼前だった。
自分で起きる時刻は選べないが、気分的にはすっきりしている。
起きたら掃除だ。これは日課といってもいいだろう。食料庫はまだ余裕があるが、彼女達は何を食べているのだろうか。
各部屋を掃除するのだが、クレマンティーヌはまだ眠っているのか、食堂には居なかった。
お風呂は比較的、綺麗だが血の匂いがかすかにあった。
風呂掃除と一緒に湯を沸かす準備に入る。
女性が使う家ではないな。そもそも血の匂いのする貴族の家って何なんだ。
ある程度、掃除が終わったところで食事にすることにした。
久しぶり手料理。合間に口唇蟲の餌やり。容器の洗浄も必要かもしれない。
人並みの家庭料理くらいは作れる。ちなみにクラスを持っていないと消し炭しか作れないらしい。良かった、取ってて。
二品目が出来る頃にクレマンティーヌが眠そうな顔で食堂に現れた。上半身裸ではあったが、いい身体をしている。
歩くたびに上下に
黒い下着以外は何も身につけていない。
今は片付けているが足の踏み場も無かったところを裸足で歩いていたとすると足裏の皮は厚そうだ。
「いい匂い」
「おはよう。君も食べるかい?」
「いただきます」
眠そうな猫のような顔でテーブルに突っ伏す。
風呂には入っているのか、顔や髪は綺麗だし、背中も綺麗に見える。
蒼の薔薇の面々も普段から裸で待機しているのだろうか。
そんなことを思いつつ、彼女の為に料理を振舞った。
「せっかく来てくれたのに連れまわせなくて悪かったね」
「んー? いやいや、充実してるよー。美味い、まともな食事って感じするー」
「ありがとう」
ヤントラは食卓に着き、彼女の可愛い顔を見据える。
「クレマンティーヌ。本当に君は自由に過ごしてくれ。部屋は使ってくれて構わない」
「んー。そうしてるよー。ご主人さんには感謝してる。私も……、こんな腐った国で幸せで仕方が無いよ」
限界まで目蓋を広げで嬉しそうにクレマンティーヌは言った。
口の端を思いっきり広げた笑い方は狂気そのもの。
「追っ手の心配もあるけど……。それはその時、考えてぶっ殺すよ。クレマンティーヌ様は負けないよ」
クレマンティーヌは腰に手を当てたが何も無かった。
「ご主人、ここに大きなおっぱいがあるのにかぶりつかないんだね」
「そうしてほしいかい? 今は食事中だ。それにしても君は……、食べ方が丁寧だ」
「んふふ。育ちが違うのさ。私は綺麗好きなんだよ。……他のメンバーが汚すぎるけど」
食べ方を誉められたのはいつ以来だろうかとクレマンティーヌは思いつつ食べ続ける。
久しぶりの人間的な食事のような味。決してまずくは無いが高級料理でもない。
それほど嫌な味ではなかった。
「人外、性格破綻者とまで言われたクレマンティーヌ様も落ちるところまで落ちたのかな」
漆黒聖典には自分以上の化け物が控えている。それらに比べたらまだ可愛い方かもしれない。
蒼の薔薇と行動を共にして何人も人を殺してきたけれど、意外と歯ごたえのある連中を相手にしている。
さすがに同時に複数で襲い掛かられると苦戦する。
どこから湧いて出てくるのか敵は多かった。
イビルアイは
戦闘になればアダマンタイト級というのも頷ける。
クレマンティーヌは自分の大きな胸をもてあそびつつも顔は真剣だった。
「よく跳ねる胸だよー。それはまあどうでもいいんだけどね。このままここに居てもいいの? 寝床があるのは嬉しいけど」
「今は誰も居ないし、部屋も多いから。一室は君が使えばいい」
「私が居ると狙われそうだけどねー」
「狂気をはらんだ女戦士らしくていいじゃないか。良い人材は国籍を問わないよ」
「漆黒聖典番外席次。こいつはご主人好みの化け物だと思うから、いつか会ってみたらいいよ」
言いながら食事を済ませ、食器も片付けて洗いもする。
それだけ見たら普通の女性に見える。
戦闘狂は戦い以外は大人しいのかもしれない。
水をゴクゴクと豪快に飲む。
健康的で引き締まった肉体。腕も脚も鍛え上げられたもの。
柔軟な肉体が人を殺す獣と変わる。それがクレマンティーヌ。
隙があれば素手でもヤントラを殺そうとするだろう。
殺気だけちょこちょことぶつけては来るが行動に出ない。
クレマンティーヌは迷っていた。
寝床を提供してくれて食事も与えてくれる存在に。自由すら許してくれた。
薄々は感じていた亡霊『アンリマンユ』の正体。だが、いくつかはっきりしないことがある。
処女のみ身につけられる『
相手は男性、男性なのだろうが、微妙に違う。それから見た目感じでは『体型』が違っている。
あれは完全に女性の身体だった。
魔法による偽装だとしても『背丈』すら変えられるだろうか。
手足の細さは似てはいるが違う気もする。
やはり別人、なのだろうか。
それともラキュース本人だったのだろうか。寝起きだからあまり頭が働かない。
魔法の武具について何か忘れている気がするが、後で思い出すだろう、とクレマンティーヌは思考を変える。
自分は確かに負けた。今更な問題かもしれない。
それに今の暮らしは悪くない。悪党ではあるけれど大好きな殺人が合法的に出来ているのだから。これほど幸せな事はないだろう。
拷問も出来たら最高だが、そこまでは許されていないのが残念だ。
戦士として戦場で死にたいとは思わない。そこまでのプライドはクレマンティーヌには無い。
願わくばもう一度、最高の戦いに身を投じて絶頂を迎えたい。それはただただメスの猛獣としての願いだった。
他のメンバーが帰ってくるまでまだ少し余裕があると思ったクレマンティーヌはヤントラの頭を後ろから抱きしめる。
二つの乳房をぎゅっと潰すように押し付けながら残った下着を脱ぎ捨てる。
股間部分にある髪の毛と同色の陰毛の少し下にある性器から漏れ出た粘液が糸を引いていた。
既に発情し始めていたらしく、クレマンティーヌの頬が少しだけ紅潮する。
「アンリちゃんに負けてからアソコのうずきが中々治まらないんだけどー。ご主人に静めてもらいたいなー。私の勝手なお願いだけど聞いてくれる?」
「君がいいなら……。私の身体はかなり特殊だ」
「んー。だいたい分かるよ。おかしな体型だし。気にしないって」
人体を破壊、または殺すすべを身につけているクレマンティーヌは服の上から相手の肉体構造はだいたい把握できる。だからこそ理解出来る。全身鎧はさすがに分からないが。
「ここじゃあ、汚れそうだからお風呂場でやろっか。擬似交尾」
足元に落ちた下着を拾い上げて指先でクルクルと回しつつ風呂場に向かう。
張り出した尻の筋肉も引き締まっていた。
ヤントラは軽く息を吐いて食事を済ませ、食器を片付ける。
それは日常的に行ってきた当たり前の作業だった。
風呂場は薪で湯を沸かすものが一般的だが、貴族の風呂は基本的にメイド達のような使用人に湧かせる。だが、アインドラ家はほぼ誰も居ない。
自分で湯を沸かさなくてはならない。
数日も寝泊りしているせいか、クレマンティーヌの作業は実に手馴れていた。
綺麗好きであると言っていただけあり、まずは風呂掃除から始まった。一度行われたのは理解しているが、改めて軽くだが掃除した。
ヤントラが気になるのはイビルアイはどうやって風呂に入っているのだろうかと。
普段からボロボロの漆黒のローブを身に付けて寝ているので、まさかあのまま風呂に入っているわけではないだろうな、と首を傾げつつ思った。
風呂場の床は磨きぬかれた大理石のタイルが敷き詰められており、汚れも簡単に落ちる。
掃除は短時間で終わり、今度は石鹸や風呂用の香水でさっと部屋全体を拭いていった。
花の香りなのだろうけれど、嗅いだことの無いものだ。地域独特のものだろうか。
「えへへ。
クレマンティーヌは知らない。
性別不明の人間種に媚薬は効果が薄いことを。性器そのものが無いのだ。性欲の刺激にはなるのだろうけれど、クレマンティーヌが望む効果は得られないだろう。というよりは彼女自身が媚薬効果に悩まされるのではないかと思う。
床を泡だらけにした後、クレマンティーヌは床の上を転がり、身体に泡をつけていく。
髪の毛にも泡がつくがお構いなしだ。
こんな調子では風呂場が毎日、大惨事になるのではないだろうか。
媚薬効果が効いてきたのか身体を捻りながら笑い始めるクレマンティーヌ。胸や股間に媚薬を塗りこめるような動きを取り始める。
本当に媚薬かはヤントラには分からない。
「へいへーい。発情したメスの出来上がりだよー。あと、私は処女じゃないから遠慮なくどうぞ。美味しく召し上がれー」
と言いつつ自分で性器を開き陰核をつまみながら膣の中を見せるようにした。
時折、人指し指を出し入れし、その指を舐めたりする。
「……後で入る人は大変だな」
「いいじゃん。また掃除すれば……。浮気とか考えなくていいよー。私を助けるためだと思ってー。もう辛抱できないのー。えへへー」
行動はメチャクチャだが思考はとても冷静かもしれない。
少しだけ美女の痴態を眺めているとクレマンティーヌは目を見開き、咳き込み始めた。
「げっへ……、えっへ……」
それから頭を抱えて悶え始める。
「あ~、えっふ……。あっ、あ~!」
「……へへ。凄い強力な……えっふ……媚薬だからさ。我慢してると死んじゃう……。拷問用だから自我を保つの……、大変だから……、早く……助け…えっふふ……。ああ……」
言葉の最後には鼻血まで出ている。
ヤントラは美しき猛獣の艶やかな肢体を眺めつつ服を脱ぎ始める。
家全体に防音、感知、探知などを阻害する魔法をかけていく。
彼女を愚かとは言わない。
命をかけて求めている。
全ての衣服を脱いで、きちんと畳む。そして、風呂場に入って扉を閉める。
目の前には血走った猛獣の赤い眼光が光っていた。
「〈能力向上〉……ぎゃあ……」
今の武技で失禁。
「……〈能力……超向上〉あぎゃ! があぁぁ!」
顔全体に太い血管がはっきりと浮かぶ。
先ほどよりも激しくのたうつクレマンティーヌ。
「がああぁぁ!」
可愛らしさのない獰猛な魔獣と化したメスの顔へと変貌する。
自我を捨てた猛獣の如くヤントラに襲い掛かる。
それはもはや殺人的な交尾だった。
相手が性器を持たないとはいえ、一匹の猛獣が自らの性器をかき乱したくて仕方がない。
拷問用の媚薬だろうとヤントラにとっては些細な香水に過ぎない。
精神的な部分では人間という種の概念を超える。毒物は確かに通用するが即死性でもない限りはあらゆるものに耐え切る。
肉体的に死しても精神は耐え切るのだ、ヤントラという化け物は。
クレマンティーヌは口付けしようものなら舌を噛み千切らんばかりに食いついてくる。
両乳房を揉みしだけば激しく自分から股間を擦り付けてくる。
時には相手を下にしてヤントラの胸全体に股間を余すところ無くこすり、金色の陰毛をブラシのように使いつつ、同時に陰核も刺激し何度も絶頂の証しとして潮を吹きかけてくる。その度に猛獣の如き咆哮を上げ続ける。
命を削るような野獣の容貌。そこに笑顔は無い。絶望から抜け出そうと必至に希望を求める一匹のメス。
途中から失禁なのかどうかさえ分からないほど、性器から粘液が垂れ続ける。
どれだけの声を上げたのだろうか、途中から声が
呼吸も苦しくなり、それでも腰だけは動いている。
動きが鈍ってきたところでクレマンティーヌに
媚薬の影響からか、
上になっていたクレマンティーヌを床に寝かせ、彼女の絶頂を続けさせた。
自分で動くよりも激しい快感は頭痛と交互に襲いかかってきて身もだえし続けた。
処女ではない事は性器を広げて確認し、膣の奥に手を滑り込ませる。粘液のせいか、柔軟な肉体の成せる技なのか手首が隠れるほど入り込む。空っぽの子宮の奥まで指が入る。
手の出し入れを何度も繰り返す度にクレマンティーヌの身体は激しく跳ねるように痙攣する。
自然と両足が開かれ始める。彼女の股に顔をうずめ、膣内に舌を入れる。尿道に指を入れると景気よく放尿が始まる。
声無き咆哮。
媚薬の効果が切れるまでメスの発情を
完全に沈黙したクレマンティーヌを確認し、風呂場を再度、洗いなおす。
白目を
ついでにクレマンティーヌの身体もくまなく洗っておいた。あと下着も。
開ききった性器も丹念に洗う。意識はないが呻く声は出ていた。
数日間も開き続けたわけではないので次第に元に戻ろうと性器周りの筋肉は動いていった。尻を持ち上げ、膣内に入り込んだ水気が小便のように内股に垂れいく。
全く動かないが鍛え上げた筋肉とはいえクレマンティーヌの身体は柔らかかった。
全身の筋肉が
媚薬の効果が残っていると他のメンバーにも悪影響なので徹底的に洗浄した。
香水瓶に入った媚薬はアイテムボックスに放り込む。恐らくは複数個持っているのかもしれないが、預かっておく。
自分の身体も洗ってから風呂場を出て、バスタオルでクレマンティーヌを包み、彼女の部屋に寝かしつけた。
一応『
彼女の黒い下着も窓際にハンガーのようなもので吊るしておく。
媚薬効果が切れるまで数時間はかかるかもしれない。それまではゆっくりと眠ってもらおう。
『
まだ少し顔に浮かんだ血管が目立つがじきに治まるだろう。
中毒性があると困るが、その時は『
眠れる狂戦士にも休息は必要だ。
少しだけクレマンティーヌの頭を撫でて寝顔を眺めた。
それから数十分後に蒼の薔薇のメンバーが次々とやってきた。
すっかり拠点と化している。
「旦那さんだ」
「ただいま」
「お帰り。今、お風呂場は入らないほうがいい。あと一時間は……危険かも」
ティア、ティナ、イビルアイ、ガガーラン。四人揃って首を傾げた。
「……ああ……媚薬……」
「分かるのか?」
「クレマンが色々と持っているのを嗅いだことあるから」
「こっそり風呂場に置いてあったりして、ちょっと怖い」
イビルアイは風呂場に向かい、中を確認してきたようだ。
「……おうっ……、これはマズイ」
一秒もかからずにイビルアイは戻ってきた。
「ご主人の言うとおりだ。今は……危険だな。あれは……マズイやつだ」
「それよりも君達はどうやって家の中を汚しているんだい? 女の子なのに」
ガガーランは口笛を吹くように誤魔化す。
「不思議だよね」
「なんでだろう」
微笑みながらティアとティナは言った。
「そのクレマンはどうした?」
「寝かしつけた。しばらくは起こさないように」
クレマンが愛称になったようだ。
ガガーランは与えられた部屋に向かった。
「旦那さん、冒険者になったんだ」
ヤントラの首に銅のプレートがかかっていた事に気付く。
「なったけど、初日に喉を掻き切ることになって大変だったよ」
「……旦那さんは面白いねー」
例えようもない話しに想像が出来なかった。
「……もはや特技だな。次が楽しみだ」
「『国堕とし』の話題が出てたよ」
「んっ!?」
イビルアイは唸った。
「冒険者を殺害したから討伐しようとか言われてた。本人の居ないところでそういう話しをされると可哀相だよね」
ヤントラはイビルアイを見据えて言った。
大体の予想は出来たがイビルアイは唸るだけで何も言えなかった。
ティアとティナはイビルアイの肩を揉みだす。
「もちろん旦那さんは『国堕とし』を倒すんだよね」
「そんなことはしないよ。ヴァンパイアは血の狂乱という特性があるからね。説明が難しかったけれど」
「……ああ、血を浴びると暴走するっていう……」
「ほうほう、なるほど」
ヤントラは双子とイビルアイを部屋の中央に移動させながら話し続ける。
彼女達は荷物を部屋の隅に置きながらそれぞれ椅子などを持ってくる。
「『国堕とし』はまだいい。もう一人のヴァンパイアも討伐するっていうんだ」
「はっ?」
イビルアイが声を発する。
「……ほう。つまり旦那さんは二体のヴァンパイアの存在を知っているということ?」
「どちらも大切な人だからね。……君達の前だから言うけど」
「旦那さんは色々と板ばさみになっていることは分かってるよ」
「異形の友達が居るんだもんね。それは大変でしょう」
話しからも討伐対象の存在を知って守ろうと奮闘したのだろうという予想が出来た。
自分たちも大切な友達、仲間を討伐されるのは困る。
「私からは……、もうどうすれば場が収まるんだろうと……。またクビかな、とか考えたよ」
ただのモンスターなら
二人は無言でヤントラの背中をさする。
「冒険者としては討伐して名声をあげるのはおかしいことではないけれど……。事情を知っている人間からすれば複雑な思いだよ」
「そうだよね~。私達も『国堕とし』は倒せたら倒したいもん」
「国からの報酬が楽しみだもんね」
イビルアイがティア達に顔を向けて唸った。
「冒険者を殺害するようなヴァンパイアは討伐するだろうな」
「理由無く冒険者を襲うとは思えないのだが……。いざとなれば私は戦う。だが、理由は聞きたいし、弁明させたい」
「旦那さんは優しいね、やっぱり」
そんなことを話している内に普段着に着替えたガガーランが戻ってきて食卓に向かった。
双子の片割れもガガーランの下に向かった。
「悩みが尽きない。段々と自分のやりたいことが分からなくなるような気がして、混乱しているよ」
「あっ、でも。旦那さん、それ正直に言っちゃったんだ……」
「そういう性格だからかな。いい訳とかしたくない。なにより後々の混乱が想像できるからね」
ヤントラはバカがつくような正直者だろう。
国家機密すら漏洩しそうな気もする。
それはそれでティア達は嫌いではないが、心配になる事はある。
駆け引きとか苦手そう。
守りたいものの為に奮闘することは悪い事ではないけれど。いや、
「……諜報活動には向いてないよ、旦那さん」
「『国堕とし』を討伐すればアダマンタイトに一気になれるかもよ」
「そんなつもりはないよ。ゆっくりと登る楽しみがなくなる」
先ほどからイビルアイは唸ってばかりだった。
「……異形の知り合いを使えばモンスター討伐の仕事が増えるのではないか?」
イビルアイは言った。
そうすれば効率的にモンスターが倒せるし、昇進も早い。
「それでは冒険者ギルドの意味が無いだろう。存在価値がなくなって国からの補助金が途絶えてしまうかもしれない」
急にまともなことを言われてイビルアイは驚いた。
「冒険者を育成する機関としてなら良い話かもしれないが、国にとっては強大な力を持つ冒険者が増えてしまうと治安対策が難しくなる」
「えっと、なんで?」
「君たちが対応している犯罪者が物凄く強くなるってことさ。力の使い方を悪に使う者ほど危険だ」
「……その通りだ。いや、そこまで考えているのは驚きだ」
全ての冒険者がまともな人間とは言えない。
モンスターから人間へ標的を変えるかも知れない。
力に溺れる者は腐るほどイビルアイは見て来た。だから理解出来る。
「帝国のような軍事国家もあるし、国家防衛の為には必要かもしれない。適度に強いことは生き残る確率が増えていいのだが、仕事としては成り立たなくなる。これがまた難しいところです」
「本当に悩みが尽きないようですね、旦那さん」
ヤントラは苦笑しながら頷いた。
食事は済ませてしまったのでヤントラはガガーラン達に多少の手料理を振舞った。
「さあ、どうぞ。粗末な料理ですが」
「頂きます」
ガガーランは見た目どおり豪快に最初は食べたが、後半は比較的大人しくなった。料理が不味かったわけではない。美味しくて驚いたからだ。
リーダー代行として手本を見せようとしているのかもしれない。
普段着とはいえ、首から下は筋骨隆々な太い身体。引き締まっているのだろうけれど、歴戦の男戦士のような印象を受ける。
「数日間、家を空けるようになって移動手段の確保が問題になっている。君たちには留守番をする義務は無いが、部屋が空いているし、これまで通り使ってくれても構わない。メイドを雇う余裕は今のところないし、借りる事も出来ないけど」
「出来るだけ掃除します」
「……話しは聞いていたけど……、モンスターを貴族連中が悪用しちまったら困るよな」
ガガーランの発言にメンバーが驚いた。
「脳筋が知恵を
「俺だって考える知恵くらいあるぜ」
ガハハと豪快に笑うガガーラン。
「私としては犠牲者が少ないほうがいい。あの子達も外にさえ出てこなければ比較的、大人しい」
「ん~、餌は? ヴァンパイアは血を吸うよね?」
「食堂は完備してあるし、血は……侵入者から取ればいいのでは? 無理して血なんか飲まなくても飢えはしないんだけどね」
「飢えないって!? しかも食堂って……」
「そういうマジックアイテムがあるのだろう」
イビルアイは仮面をずらして器用に食べつつ喋った。
「人を襲う理由は無いってことか……。殺人に快楽を感じていない限り」
「ここ最近になって騒ぎ出したもんね。危険なヴァンパイアなら何年も前から冒険者達が調べているはずだし」
「……うちの身内がご迷惑をお掛けしています」
ヤントラは深く頭を下げた。
旦那さんがとても苦労しているのはメンバーも理解していたが、彼一人では手に負えないのだろう事も理解した。
慰めの言葉は出てこなかったが、彼を責める事は出来ない。
食事を終えたあと、それぞれ荷物の整理などをして自室に向かった。
ガガーランとイビルアイ、クレマンティーヌは個室が与えられ、ティア達は二人で一室を使う事にしていた。
執務室とラキュースが使っていた部屋は手付かず。それでもまだ部屋には余裕があった。