ゲームオーバーから始めようか 作:モモンガ
F-1 イビルアイの査察
村娘の身辺調査という簡単そうな仕事をアダマンタイト級冒険者『蒼の薔薇』が請負い、数日が経過した。
王都から馬車移動なので距離的にも時間がかかる。
飛ばない理由はお供のティアが『
あと、冒険者は『
イビルアイ一人なら『
睡眠不要の身体なので強行軍も平気だが馬は休まなければならないし、ティアも人間だ。余程の危機でもない限り休息は必要になってくる。
荷物の殆どは食料関係。
大部隊と戦うわけではないから武器は最低限のものを携帯。
油断しているわけではないが、ティア一人ならば守りに問題は無いだろう。
休息を交えてカルネ村に到着するのに二日かかった。
普通は片道でも三日以上はかかる。
馬に少し無理をさせてしまったようだから、イビルアイはティアにしっかりと食事と休息を取らせる。
馬用のブラシで馬の毛並みを整えていく。
「ティア。眠くは無いか?」
「しっかり休んだから平気」
馬は馬車から切り離して木に繋ぐ。馬車はそのまま放置という形を取る。
モンスターが現れて馬車ごとどこかに持っていかれるのを極力避けるためだ。
それから二人は目的地のカルネ村に向かう。
高い木の柵で覆われた要塞化したカルネ村。
トブの大森林に近いようだが、樹木は周りに豊富に生えている。
実物を見てイビルアイ達は驚いた。
本当に村か、と。
場所も間違っていないはずだが、凄いなと素直に感想を抱く。
「どこかの野営地ではないよな?」
「地図では、ここで合っているよ」
「……まともな村では無い事は理解した」
周りに生えていたであろう麦は殆どが刈り取られていた。
モンスターが潜伏しているような気配も姿も確認できない。
「……そういえばさ。エンリってどんな娘なんだろうね」
普通の村娘とは聞いていたが人物を直接見ていないので気になった。
「ガガーランみたいな女……、あれは女ではないな……。あいつみたいな感じかもしれないな」
「
妄想しても仕方が無いので入り口を探す。
刈り取られているとはいえ、麦と道の区別はつく。
要塞化している村の周りはとても静かだった。
焼け跡も無く、死体も転がっていない。
兵士の襲撃があったとは到底思えないが、隠蔽していれば仕方が無いだろう。
通常の村であれば柵で囲まれても中が見えないほどではない。だが、カルネ村は一部の空きも見せないほど真っ直ぐな大木を使用しているのか、中はうかがいしれなかった。
村で手に入れられるような木材ではない。
「……つまりはナザリックの者が関係しているな」
王国や帝国なら木材より石材で砦を組むだろう。
「まずは周りから調べる?」
「そうだな。見取り図は必要だろう。……ご主人の気がかりがよく分かったよ」
「……それにしても立派な柵だね」
村人に出来る仕事ではないのは一目で理解できた。
歴戦の冒険者ではあるが中に入るのが怖くなる。
村の入り口は表と裏の二箇所のみ。外周だけで数キロメートル以上はありそうだが、その全てが柵に覆われている。
柵の高さは三メートル以上はあるかもしれない。
少し小高い場所に上れば中の様子は多少はうかがえるが、武装した兵士が居るようには見えなかった。
柵があろうと矢を防ぐようなつくりではない。正面突破に特化しているのだろう。
イビルアイ達は木々の間などを通って目印である馬車を見つけた。
「この木は近くにあるものとは違うようだな」
周りに生えている樹木はどれも自由に育っているために曲がったりしているものが多く、規則正しく真っ直ぐに育っている木はほぼ無かった。
「いよいよ、中の調査だね」
「
中が見える範囲では存在は確認できなかった。
二人は入り口の門にたどり着き、ノックする。その後で開門を大きな声で要求する。
ノックの音に気づいてもらわなければならないが、無反応なら吹き飛ばすしかないだろう。
「……飛んで入れば良いか……」
「物騒な事は無しだよ」
「分かっている!」
数分後に声がかかった。
時間がかかるのは慣れているが、隙間無く塞がれると強行突破したくなる。
「どのような御用でしょうか?」
警戒している為に扉は閉じたままだが、声はちゃんと届いた。
「我々は『蒼の薔薇』という冒険者だ。依頼で身辺調査に参った」
「あ、あおのばらっ!?」
「この村に居る『エンリ・エモット』という村娘は居るか?」
その言葉の後で扉が開かれる。
扉から出てきたのは普通の村娘に見える人物だった。
イビルアイとティアはしばし黙った。それから頭から足元まで眺める。
思っていた人物と違うな、と。
「あっ、初めまして」
イビルアイは急いで会釈する。
「子供?」
と、相手の女性が言った。
「ん……」
と、子供と言われて条件反射で殴りかかる気がしたイビルアイに気づいたティアはすぐに彼女の肩を掴む。
さすがに殴りはしないだろうが、怒鳴りはするかも。
「私はイビルアイ。こちらはティアだ。よろしく」
「初めまして。この村の村長になったばかりのエンリ・エモットです」
「村長っ!?」
見た目にはただの村娘にしか見えない女性が目的の人物であり、しかも村長と聞けばイビルアイも驚いてしまう。
ガガーランのような筋肉質な女モドキだとばかり思っていた。
「わー……、普通の村娘にしか見えない……」
ティアの言葉にカルネ村の村長は苦笑した。
やってきたのが二人だと確認したエンリは改めて頭を下げた。
「申し訳ありません。私は冒険者様の事は詳しくないもので」
「直接来た事が無いから仕方ないだろう」
イビルアイ達は冒険者の印であるアダマンタイトプレートを見せた。
ただ、エンリはアダマンタイトのプレートを見ても首を傾げるのみだった。
漆黒のモモンとは僅かな時間しか会ったことが無く、彼らのプレートもよく見てなかった。
「ほらほら、アインドラのお父さん達が居るじゃん」
「あ、そうか。彼らなら私たちの事が分かるか」
「エンリと呼んでいい?」
「は、はい」
「私達の事をアインドラの人たちに聞いてみて。そうすれば分かると思うから」
「分かりました」
扉は一旦閉められる。
中に不用意に入れないことにイビルアイ達は文句は無い。
王国の使者ではなく一介の冒険者なのだから対応としてはそれほど間違ってはいない。
普通の村なら厳重な対応はしないのだが。
イビルアイは報告用にメモを付けていく。
数分後に扉が開かれ、エンリと共に見知った顔が現れる。
「ご無沙汰しております」
現れたのはラキュースの両親だった。
貴族服ではなく、一農民の衣装になっていたのは少し驚いた。
貴族社会にこだわりは無く、平和に暮らしたい
没落しても貴族の暮らしが忘れられない、という人間のほうが多い中では好感の持てる部類だろう。
「おお、イビルアイ殿に……ティア殿でいいのかな?」
「ティアだよ」
「……あら、髪の毛切ったの?」
髪の毛の事は個人的な事なので小声で伝えた。
「はい。今はそれぞれ別れて仕事をしているよ」
「では、こちらの方々は本物でよろしいのですか?」
「確かにアダマンタイト級の冒険者『蒼の薔薇』の方たちです」
確証がエンリには無いので確認しようが無い。
それでも村人のアインドラが言うのであれば信用してもいいだろう。
「今回の仕事はエンリ・エモットの身辺調査だ。もちろん、
仮面を付ける人間にはあった事があるが、声がノイズがかっているので少し怖かった。
赤黒いローブを頭からかぶっているが
イビルアイ達を中に案内し、村の景色を見せる。
外からも少しは見えていたが要塞化しているわりに村人たちは農業に従事している普通の風景に見えた。
武器を携えて訓練しているような兵士は見当たらない。
「……中は普通の村だな」
ティアはアインドラ夫妻を自宅に送り届けた。
エンリとイビルアイは二人で村を散策する。
「兵士に襲われたと聞いたが……、頻繁に襲われているのか?」
「兵士は最初だけでした。物々しいのはゴウン様のご助力によるもので……」
「ゴウン、というのはアインズ・ウール・ゴウンか?」
「は、はい。そうです」
未だに直接目にした事はないが、柵の作成から見て只者では無い事は分かる。
「ウソを言えば不利になるぞ。質問には正しく答えてほしい」
「はい。ウソ偽りは申しません」
見た印象としてはエンリの瞳にウソは無い、かもしれない。
確証の無い言葉は信用なら無いが、それは自分の目で確かめるしかないだろう。
歩きながら話しても仕方が無いのでエンリの自宅に連れて行ってもらうことにした。
自宅兼村長の邸宅には現在、エンリを含めて三人住んでいる、ことになっていた。
少人数で住むにはかなり広い一階建ての住居だなとイビルアイは思った。
一人は妹の『ネム・エモット』でもう一人は友人でありエ・ランテルでは有名な薬師の孫『ンフィーレア・バレアレ』だった。
ンフィーレアは金髪の前髪で目元を隠していた。
家に入ったイビルアイの姿にネム達は驚いたがエンリの紹介でそれぞれ自己紹介していく。
「本物の『蒼の薔薇』なんですね」
「会ったことのない人間に本物かどうかを伝えるのは難しいな」
ネムは姉の陰に隠れてイビルアイを見つめた。
「こちらの青年と暮らしているとは聞いていなかったが、
「はい。よろしくお願いします」
イビルアイは用意された椅子に座り、必要な情報を書き加えていく。
背の大きい冒険者だと思っていたのでイビルアイの背丈には驚いたがアダマンタイトのプレートはンフィーレアが見る限り本物だと思った。
「仮に普通の村娘でなかった時は捕縛もあると覚悟してくれ」
「……はい」
「まずは簡単に
「はい」
「渡す相手は都市長と我々がお世話になっている貴族の二人だ。悪いようにはならないだろう。それと後で
「分かりました」
「……雇い主は明かせない決まりだが……、あまり意味は無いかもしれないな」
蒼の薔薇を動かせられる人間でエンリに浮かぶ人物は一人しか居ない。
「それとついでにアインズ・ウール・ゴウンとは何者なのか、分かる範囲で教えてくれ。名前はよく聞くのだが実物を見た事がないんだ」
「はい」
エンリは自分の生い立ちから帝国兵士の襲撃、スレイン法国にガゼフという戦士長などなど伝えられる事は正直に伝えた。
イビルアイは『ウソをつくな』、『信じられるか』という決まり文句は言わずに羊皮紙に色々と書き加えていく。
淡々と作業するのでエンリとしても不安は募っている。
ネムはンフィーレアの側で姉の様子を心配していた。
村娘の情報はまとまった。
本当に普通の村娘でしかないのだろう。
帝国の襲撃が事の発端かと思うが、その前のヤントラを馬車で
面白い人生を歩んでいる事は分かっていたが、なかなか期待を裏切らない人だと感心する。
「一つこちらから質問してもよろしいですか?」
エンリは思い切って尋ねた。
「なんだ?」
「その仮面は
自分から
「義務は無い。必要だからかぶるだけだ。かぶっていない
戦士もフルフェイスの兜で隠したりするからな、とイビルアイは胸のうちで呟く。
「……取らないからな」
「すみません」
「
話しには聞いている。けれども会ったことが無い。
何でも教えてくれるご主人もナザリックに
「はい。ゴウン様は凄い魔法使いで高価な……、いえ、マジックアイテムを持つお方です。村の強化に
ルプスレギナの名前を言う段階で言葉が止まった。
言ってはいけない気がしたからだ。だが、ウソ偽りを
エンリは両手に力をこめる。
「あ、あの……。イビルアイさんは……、ヤントラさんのお知り合いでしたか?」
「まあ、そうだ、と言っておく。そこはぼかすぞ。誰が聞いているか分からないからな」
ぼかしになっていない事をイビルアイは言って、軽く
「ゴウン様の……、使いの者たちが村を再建してくれたのです」
「……それで要塞化しているのだな」
「そうなってしまいました」
帝国兵ならばこれぐらいでも突破してくるだろう。
再襲撃を恐れているのであれば仕方がない事だと理解できる。
アインズ・ウール・ゴウンは
「アイテム使い、というわけではないな?」
「はい。私が頂いたのは……、見慣れないポーションだったような。傷がすぐ治るすごいものだったんですよ。それと、これです」
テーブルの上に角笛を乗せる。
「見慣れないアイテムだな」
「二つあったのですが、一つは吹いたら
「召喚アイテムか。なるほど。王都でも悪魔を召喚するアイテムが見つかったが、あれに比べれば可愛いものだ」
実際に悪魔を召喚するらしいアイテムを見た事があるが、角笛ではなく人形の持つ宝石だった。
「……ん……。召喚アイテムが……」
イビルアイは脳裏に何かがつながるようなイメージが走った。
見慣れないアイテム。
アインズ・ウール・ゴウンとヤントラ。
悪魔召喚が繋がる。
繋がってはいけない線が繋がる。それはどういうことになるのだろうか。
「ど、どうかしましたか?」
仮面をかぶっているので表情はうかがい知れないが良くないことのように感じた。
アイテム使いであるヤントラは悪魔召喚のアイテムを知っていた。つまりはアインズという
さっき言っていた見慣れないポーションはきっと赤いものだろう。
王国を騒がせる原因の根源がアインズ・ウール・ゴウン。
そうだとしてもヤントラは騒ぎを起こす人間ではないだろう。それにポーションの存在も金貨の存在も隠している。そうしなければ騒動が起きると理解しているからだろう。
「見慣れないポーションってどんなの?」
ンフィーレアが質問する。
「飲んでしまったから……」
イビルアイは側に居る青年は薬師の孫だという事を思い出し、すぐに彼を引き倒してしまった。
その手並みは素早く青年にはなすすべがない。
「……す、すまない……。失礼した」
イビルアイは自分でも何をしているのか、分からず混乱してしまった。
とはいえ、自分が居ても居なくてもポーションの情報は彼に知られてしまうだろう。
珍しい薬草類やポーションに興味が無いはずがない。
「ポーションについては他言無用で願いたいな」
「えっ!? どうして……」
他言無用にする時点で更に怪しまれてしまったことにイビルアイは失態を犯した気分になった。
言えば言うほど悪い方に流れそうだ。
経済が混乱するから、と聞いてはいた。だが、公開した方が多くの冒険者の命が救われるかもしれない。
それをヤントラはどうして隠そうとしたのか。
売りもしないポーション。貨幣はまだ少し理解できるが。
自分の決断が悪いほうに傾きそうな予感がする。
ヤントラの
「せめて、効能だけでも……」
「……ああ、説明を続けてくれ」
イビルアイは許可を出した。
「兵士に切り落とされた……、腕が再生したの。あと傷跡も無くなったわね」
ネムの様子をうかがいながらだが、しっかりと言った。
「どれくらいで治ったの?」
「すぐ。数分くらいかもしれない」
そう言うとンフィーレアは驚く。
部位まで再生する回復は聞いたことはあるが、短時間でとなると高額なアイテムや高い位階魔法でもなければ無理だ。
特に部位の再生は自分の持つポーションでも結構な時間がかかる。
「それ凄いやつだよ! 短時間で再生する回復ポーションはまだ無理だよ!」
こういう騒ぐ奴が居るから秘密にしていたんだとイビルアイは理解した。
そういえばミスリル程度で大騒ぎする国だった事を今更ながら思い出す。だからこそ秘密にしていたのだろう。
「……ご主人、ごめん……」
騒ぎが大きくなればヤントラの冒険に支障が出る。
それでも困っていればアイテムの使用も辞さない。かつてリーダーが
金銭とか名声のためではなく、
今更ながらヤントラという人物に敬服する。
「……そのポーションを知って、お前はどうする気だ?」
「もちろん薬師として興味がありますよ。研究したいです」
素直な回答にイビルアイは少し驚いた。
そういえば自分はポーションが使えない人間だった事を思い出し、苦笑した。
薬師とは仲良く出来ないかもしれない。
「私の知り合いも凄いポーションは持っているが、作り方までは知らないようだぞ」
「何処で見つけたのか、とか分かれば……」
依頼を出す気か、この男は。と、イビルアイは少し
それよりも冒険に支障が出るのは理解した。けれども伝えない理由はそれだけだろうか。
経済以外にも理由がある気がしてきた。
分かりやすい例えでは何があるだろうか。
「例えばだ。その凄いポーションがあったとしたら、お前はどうする? 研究以外で」
「値段は気になりますが……。更に改良する、とかですかね」
「それだけか?」
普通のポーションでも結構な値段になるのは知っている。
赤いポーションに値段を付けるなら金貨数十枚くらいだろうか。
売るとすれば大儲け出来るかもしれない。
「では、持っている事が不味い場合はどんなことが考えられる?」
「他の冒険者に知られたら奪われるかもしれませんね」
「それだ!」
いきなりピンポイントで疑問が解消されて思わず叫んでしまった。
世間に知られれば大騒ぎする。当然、狙われるだろう。
だが、ヤントラはかなりの実力者。並みの人間を恐れるとは思えない。それにアインズ・ウール・ゴウンも同等のアイテムを持っているのならば彼らは奪い合いはしないだろう。
いや違う。
そんな単純な話ではない、と。
ポーションだけの問題ではない。
彼らは『敵』を恐れている。特にアインズ・ウール・ゴウンは慎重派だと聞いている。
珍しいアイテムの情報を知られれば自分の位置がバレてしまうだろう。
それがアインズならば納得するがヤントラまで恐れる事だろうか。
二人が仲良しならありえない話しではない。とまで考えたがすぐに否定する。これも違う、と。
二人に共通するのは『ナザリック地下大墳墓』だ。
ヤントラはナザリックの者達の為に隠している。
アインズ・ウール・ゴウンはどうなってもいいが、ナザリックの戦闘メイドに代表される者達を大切にしている。
彼らを気にするから冒険がはかどらないんだろう。
ヤントラとアインズは相反する存在なのかもしれない。
「……お前は秘密を守れるのか? というか、こいつは守れそうか?」
イビルアイはンフィーレアとエンリに尋ねた。
「自慢するから無理かもしれません」
「ええっ!?」
あっさりと結論を出すエンリにンフィーレアは叫んだ。
「自力で作ってくれ」
イビルアイの言葉にエンリは苦笑した。
ンフィーレアはがっかりして肩を落とし、そんな彼をネムが慰める。
「話しが脱線したな。改めて聞くぞ」
「はい」
「アインズ・ウール・ゴウンの人となりはどんなものだ?」
「立派な黒いローブをまとっていて仮面をつけていました。あと、物凄い杖を持っていて魔法も凄いんです。どんな魔法かは詳しくは分かりませんが」
大体の印象が自分と大差ない、というのは理解した。
杖だけ違うようだ。
「背丈は?」
「大きな人でした。色んな装飾があった気がしますけど……、色々とあって詳しくは覚えていません」
良かった、小柄な子供じゃなくて、とイビルアイは安心した。
「仮面は私のと同じか?」
「いえ。柄というか色合いが派手でした」
違うのであれば問題は無い。
「声の感じでは男性ですね。あと、お供の方に黒い鎧を来た人が居ました」
「んっ? それはモモン様か?」
「胸があったので女性だと思いますよ。アルベドって呼んでました。あと黒い斧を使ってました」
知らない名前、のはずだ。
黒い鎧の女戦士。それは初耳だった、とイビルアイは思う。
「魔法はどんなものだ?」
「
と、ンフィーレアが答えた。
「第三位階の魔法か。
「ドラゴン……、正確には聞いてはいませんが、凄い雷だった印象はあります」
「ドラゴン・ライトニングってどれくらいの魔法なんですか?」
「第五位階の雷系魔法だ。ちなみに私は使えるぞ」
「……第五位階っ!? アダマンタイト級なら……、それぐらい使えますか……」
「誰でも、ではないだろうがな。世の中にはもっと凄い奴が居る。その第五位階並みの魔法を無効化してくる悪魔と戦ったことがある。あれはケタが違うな」
見た事は無いが超位魔法もあるかもしれない。
「それで、魔法はそれだけか?」
「後は覚えてません。すみません」
「第五位階が本物ならば……」
ヤントラの知り合いならばありえなくはない。
彼の使う『
信仰系魔法のことをある程度は知っているだろうと思って尋ねた。意外と普通に教えてくれた。
スクロールを多用するといっても魔法が使えないわけではない。足りない魔力を補うためだろう。
それに王都に出現した巨大天使。
スクロールだとしても相当な位階でなければ呼び出せない。