※この作品はR-18です。

ゲームオーバーから始めようか   作:モモンガ

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F-15 シャルティアシリーズ

 色々と手は回したが落ち着くところにそれぞれ落ち着いた、ということになる。

 敵の数が増えてしまったような気がするが、味方も少数ではあるけれど出来たはずだ。

 第六階層の村がどのような機能を働くのかは分からないけれど。

 長話しにも一区切り付けなければならないだろう。

「……そろそろ刑の執行か……。仕返しはかっこ悪いので私は私情は挟まないよ」

 そう言うとアルベドは何かを察知し、頷いた。

「無抵抗で居るのよ、シャルティア。これは守護者統括の命令による制裁(せいさい)……、じゃなかった。ナザリックの秩序(ちつじょ)のためなんだからね」

「今、制裁っつったか、ゴリラ!」

「ううん、気のせいよ、気のせい。それにあなたがうっかり死ぬと金貨五億枚も消費されてしまうんですもの」

「お、おうぅ……。それだけ消費されるんでありんすか……」

 総重量はおよそ一万トン、と言われている。

「運ぶのだって大変なのよ」

 第十階層に金貨の山が築き上げられる様相は圧巻だった。だが、それよりもまだ多くの金貨が宝物庫に存在している。

「……最低でも十分の一は貢献(こうけん)できたわけか……」

 ヤントラの言葉にアルベドは深く頭を下げた。

 このところのヤントラの出費のお陰で損失の一部は戻りつつある。もちろんヤントラはシャルティアのために散財はしていないのだが、少しは感謝している。

「『勇者の魂(エインヘリヤル)』なんて呼ばないでよ。後、部屋をめちゃくちゃにしないように」

「合図したら自分に『大致死(グレーターリーサル)』をかけるだけの簡単な刑だよ」

 ヤントラの言葉にアルベドは噴き出しそうになるくらい苦笑した。

 それはいかなる刑罰だろう、と。

 『大致死(グレーターリーサル)』はアンデッド系にとっては回復魔法。もちろん、バスパは分かっているはずだ。

 そんな魔法を使う簡単な刑罰をちょっと見てみたいと思った。しかし、見てしまうと彼の手の内が自分を通してバレるおそれがある。

 あえて知らないままの方が言い訳も出来る。

 説明できなければいいのだから。でも、興味はある。

 モモンガの『正妃(せいひ)』になる上で邪魔になる女の末路は特に。

 アルベドは自分自身に『ここは我慢よ、アルベド』と胸のうちで言い続け、欲望を押さえつける。

「なんなんでありんすか、その刑罰は!? 物凄い嫌な予感がするでありんす」

「だから刑罰よ、シャルティア」

 シャルティアのクラス『呪われた騎士(カースドナイト)』のペナルティに低位のアイテムの破壊というものがある。

 普通のブロードソードなら持っているだけで錆びてボロボロになって壊れてしまう。

 その対策として両手首はタオルなどで包んでおく必要がある。

「では、ごゆっくり」

「おぉえぇ!?」

 奇妙な声を上げるシャルティアを無視して部屋の扉を閉めた。

 悲鳴はおそらく消されるだろう。

 個人的には聞きたいところだが、異変を察知されても困るので我慢。

 あと、彼以上の探知妨害を施してあげるのも淑女(しゅくじょ)のたしなみ、と思いつつ鼻歌交じりで人形制作に励む。

 

●↓●

 階層守護者ともなると作業は一筋縄では行かない。

 最初はうるさいので猿轡をする。

 服を脱がしたり、着せたりするのは当然のごとく大変だ。

「二時間斬り続けるわけではないが……、特殊技術(スキル)込みで三十回以内というところだ。拷問じみているが吸血鬼(ヴァンパイア)に睡眠が効けば楽なのだがな。意識がある作業だが耐えてくれ」

「うぁむぅ!?」

 それぞれの手をタオルで包んでから服を脱がしていく。

「服が汚れるといけないからね。終わったらちゃんと着せるよ」

 生者よりも白い肌。赤い瞳。

 小柄な体形の真祖(トゥルーヴァンパイア)の少女。

 至高の四十一人の一人『ペロロンチーノ』が創造したNPC。

 見た目とは裏腹に変態趣味をふんだんに盛り込まれた存在だ。

 途中で逃げ出すおそれはあるがアルベドがすぐに捕まえるだろう。それは気にせず作業を続ける。

「そうそう、私は何人もの女性の裸は観賞済みだ。あまり気にせず楽にしていなさい。あと、胸の大きさには言及(げんきゅう)しないから」

 ヤントラは本来ならシャルティアに自分の胸を見せようかと思ったが特殊技術(スキル)の『魅了の魔眼』を食らうかもしれないので、未だまだ目隠しは取れなかった。

 白い肌なので裸にされる時の頬の紅潮ははっきりと分かるほどだった。

 大量の胸パットが落ちたが左右でちゃんとまとめておく。

 淡々と下の下着も下ろす。

 顔と手、以外が晒された姿となるシャルティア。

 見えないながらも胸と股間を隠そうとする。

 本性に比べれば綺麗で可愛い。

「私の知るとある吸血鬼(ヴァンパイア)はエロい方法でのた打ち回った。それはシャルティアも同様によがるだろうな」

「うぅぅ……」

 まずは特殊技術(スキル)の消費だ。

「時間逆行を使い切ってもらうよ」

 吸血鬼(ヴァンパイア)の肉体でも断ち切るかどうか天召バルディッシュで試す。

 回復役には魔剣キリネイラムを用意する。

 数体の上位天使を召喚し、シャルティアの身体を吊るす。持ち上げる、とも言う。

 室内なので壁役の天使も念のために召喚する。

 部屋に影響が出ないように筋力をあげつつ、斜めにわき腹を裂くような一撃を素早く見舞う。

「!?」

 飛び散る血。それはすぐに時間が巻き戻るように体内へ帰っていく。

 天使達がしっかりと掴んでいるお陰で床や壁に飛ばされずにすんでいる。

 次は肩口から深く。更に反対側のわき腹。

 三回目の回復の後、太ももをザクリと切る。

 通常ならば高速治癒や自己再生の能力で回復するのだが神聖属性の武器のせいか、治りが遅い。

 シャルティアほどの者でも遅いとなると上位の武器か高レベルプレイヤーの攻撃が考えられるだろう。

「特殊技術(スキル)切れか?」

「うっふ」

 そうだ、という合図の後、キリネイラムの放出するエネルギーを太ももに当てる。すると神聖属性で付けた傷がみるみる治っていった。

「ちゃんと傷口が塞がったようだ。……さて、ここからが本番だ」

 まずは外套などでシャルティアの身体を覆う。それから目隠しを外す。

「痛みはあまり無いと思うが傷跡は残らないようにするよ」

 と、言いながら物騒な道具を取り出す。それは拷問器具で見た事のある眼球を抉り出すものに見えた。それを見ただけでシャルティアは全身が更なる冷たさに覆われる。

「これはまだ序の口だ」

「!?」

 驚くシャルティアに構わず眼球を引っこ抜く。すぐにキリネイラムを使う。それを十回ほど繰り返す。

 血の狂乱に気をつけつつ集めていく。

 抉られては治る眼球にシャルティアは驚く。

 ポンポン取られる事などないので。

 高速治癒などでも部位は再生する。治りを早くするには魔法がやはり効果的だ。

 回収が終われば目隠ししておく。

「次が……本当に本題だよ。痛みにもなれただろうから大丈夫だとは思うが……」

 猿轡を外す。そして、天使達に両手を下げた上体で抱きついていてもらい、他は飛び上がらないようにシャルティアの頭部と髪の毛を持っていてもらう。

 魔法は音声を必要とする者が大部分だ。だから、口封じされると無力になりやすい。

「合図したら自分に『大致死(グレーターリーサル)』を唱えてみてくれ」

「お、分かったでありんす……」

「エロいことはしないよ」

 必要な魔法を唱え、キリネイラムの準備を整える。

「最強化でどうぞ」

「〈魔法最強化(マキシマイズマジック)・大致死(グレーターリーサル)〉っ……」

 言い終わった瞬間に天召バルディッシュがシャルティアの首を切断していく。

 身体の方はすぐにキリネイラムのエネルギーを受けて再生が始まる。

 首の方は空気の抜ける音の後で再生が始まっていく。一応、キリネイラムも使って回復を手助けする。

 真祖(トゥルーヴァンパイア)はある程度の再生が済めば自己再生機能が働き始めるようで、後は待っているだけで良かった。

「……かっは……、か、身体が……軽くなったような気がしたでありんす……。な、なんだったんでありんしょう……」

 飛び散った血などを素早くタオルで拭き取る。使った水も毒物のようなものに変化するかもしれないので処分は慎重にしなければならない。

「これを後、九回ほどやってもらうよ」

「うぇへ~」

 その後は単純作業なので楽に進める。

 再生時間を入れれば二時間はあっという間に過ぎてしまう。

 身体が軽くなるとき、一切の自由が無くなる。というよりは身体を喪失しているような気分だっただろう。

 実際は本当に喪失し、ある程度再生しないと身体の感覚は戻らない。

 手はしっかりと包むが皮袋も後で用意した方が安全かもしれない、と思った。

 作業が終わった後は全身のマッサージだが、吸血鬼(ヴァンパイア)に通じているのかは不明。

 服もしっかりと着せて完成する。

 身体が小柄なので二体で一袋の計五袋が転がる。

 

●↑●

 終わった後で開放されたシャルティアは少しフラフラしていた。

「ふ、不思議な体験でありんした……。軽くなったり、重くなったり……」

「特殊技術(スキル)を使い切ったから。今日はもう致命傷の攻撃を受けたら危ないから、ゆっくりお休み」

 アルベドに頷きの合図を送る。

「階層守護者のシャルティアへの罰は終了と致します。以後はアインズ様のため、ナザリック地下大墳墓の栄光と繁栄のために働きなさい」

「か、畏まりんした」

「食堂でいっぱい食べてきなよ」

 空腹のために眼が回り始めているかもしれない。

 シャルティアを外に出して、食堂に置いて、食欲を満たしてもらい、アルベドの部屋に戻る。

 ダメもとで彼女の姉『ニグレド』を要望するとこっそり連れてきてもらえた。

 本来は『氷結牢獄』に居る彼女は会うのに色々と面倒な設定があるが、すっ飛ばしてもらった。というかアルベドがやってくれた。

 昔の恨みを晴らすような感じだが、姉妹は揃っていた方がいいだろう。

 皮膚の無い顔なのだが目隠しされている。

 統括の権限で連れてきたのでニグレドには何も知らせていない。

 こっそり連れてきたのでこっそり戻さなくてはならい。終われば目隠しして元に戻す、とのことだった。

 疑問を抱かれる前に眠らせるのだが、彼女は瞼が無い。眼球に直に布などが当たらないように気をつけてはいるがメガネでも持っていれば良かったな。

 ポン、ポンと小気味よく、感覚だけで素早く作業する。

 大人しいので魔法は効いているのだろう。いや、効いていようがいまいが構わない。

 タオルで頭部を包んでしまえば探知魔法とて簡単にはいかないだろう。

 

 こ(・)ん(・)な(・)こ(・)と(・)をする存在が居るとは想定していないだろうから。

 

 そのままアルベドに引き渡し、何事も無かったようにニグレドを連れて行(い)った。

 立派な共犯者のようで申し訳ない気持ちになった。いずれお礼をしなければならないだろう。

 戻って来たアルベドに感謝の意は伝えた。

「後の男連中はいいよ。ありがとう、アルベド」

「いえいえ」

 続いて戦闘メイドのソリュシャン。

 全身が粘体(スライム)なので髪の毛を手ごろな容器に入れて蓋をする。

 頭を丸々入れよう、という案は浮かんだが却下した。

 本体から離れた粘体(スライム)は自己増殖する事無く、やがて死ぬ。でなければソリュシャンは大群となって行動しているだろう。

 酸の影響を受けない容器にいくつか入れてみる。その間、顔を顰めていたソリュシャンに回復魔法は唱えておいた。あと、彼女には目隠しは通じないし、眠る事も無い。

 毒製作師(ポイズンメーカー)というクラスを持っているのでサンプルがてら頂く事にした。

 お礼としてあげられる部位を提供した。

 プレアデス、今はプレイアデスの最後のエントマだが、蟲が多い。自身を報酬として他の蟲の予備を頂く事にした。育て方は後で聞くことにする。先ずは身体検査ということで眠ってもらう。

 虫系でも回復魔法が効くなら大丈夫だろう。

 作業。もはや事務的な単純作業だった。

 起こした後は蟲達の育て方を書けるだけ書いて、口唇蟲や仮面蟲などの予備を貰う事にした。

 これらは蟲使い(ムシツカイ)のクラスによって呼び出される蟲達である。便利なところは影から湧き出るように現れ、影に帰っていくところだろう。

 あと、金貨を消費して呼び出せるらしいことも教えてもらった。

 協力のお礼をするのだが、部屋が汚れないようにシーツなどを敷き終わってから、エントマのお腹を満たさせた。

 回復魔法を併用していないといつまでも食べ続けるのではと思うほど遠慮が無かった。それだけ空腹を感じていたのだろう。というか仕方が無いのだが。

 ソリュシャン以外は問題は無いだろうが他の液体に混ぜても平気かどうかが気がかりだ。それはじっくりと実験すればいいか、と思う事にした。

、終わった後、アルベドは関知せずの姿勢でヤントラ達とは別れた。そして、様々な物資を運び出した後はコンソールの確認で証拠が消えているか確認する。

 アルベトの行動は全てモ(・)モ(・)ン(・)ガ(・)へ(・)の(・)愛(・)だけだ。

 至高の四十一人への忠誠など毛ほども感じていない。それどころかナザリック全てを敵に回しても構わないという。

 そんなアルベドに対してヤントラは咎(とが)めたり、責めたりはしない。

 それもまた彼女の意思なら尊重する。

 モモンガ至上主義。それが愛ならば応援しよう。ヤントラは女性に甘い。あと可愛い男子にも。

 他人を尊重できれば原理主義だろうが、至上主義だろうが構わない。

 今となってはモモンガの何が嫌いだったのか。

 変に言い訳したり、棚上げにしようとしたり、誤魔化そうとしたりする事だろうか。

 自作自演はもっての他だが、自分でやるはめになるとは。

 二度とやりたくない。

 次はどうせ影武者を使ったりするんだろうな。

 既に使っているかもしれないな。

 色んな事を考えつつラキュースの部屋を訪れる。

「元気だったかい?」

「……あんまり……。戦争の様子を見せてもらったわ」

 疲れきったような顔でため息をつくラキュース。

「とんでもない怪物だったわ。私の想像したとおり、というか、それ以上の化け物だったわね」

 見え方にも寄るが人間の姿が異常に小さく感じられた。それを追い回す黒い巨体のモンスター。

 やたらと長い触手に異常な速度。

 瞬く間に赤い染みを作っていく風景に恐怖した。

「あなたが出てくると思っていたけれど、天使がたくさん現れて兵達を連れ出してくれたのは嬉しかったわ」

「……そうか」

「帝国は一切動いていない。あんなに滑稽な戦争があるかしら」

 ヤントラはラキュースを抱きしめる。

「半数は生き残った。王様も無事だ」

「半分……、それだけ生き延びたのね。……全滅が避けられたのなら何も言わないわ」

「今日は君を連れ出しに来た。家に帰ろう」

「……いいの?」

「ここに戻ってアインズの役に立つかは君が決めると良い。色々と戦後の催しで君を必要とするかもしれない」

「……戦勝記念行事……。そうね、その時は彼らの要望に応えるわ。今までお世話になったのだから……。恩は返さないと……」

 呼ばれれば戻っても良いと思い、身支度を整える。

 持ち帰るほどの物はあまりなく、せいぜいが愛用の排泄用の桶くらいだろうか。

 『アルベド避け』は置いていく事にした。

 メイド達にお礼を良い、ペストーニャにも頭を下げた。

 今は犬の頭でも平気だったが近くで見ると迫力がある。

 連絡手段をユリに任せ、ラキュースは地上に上がった。

 

 ナザリックの周りは血生臭い死臭はなく、穏やかな草原が広がっているだけだ。

 とても世界を滅ぼす化け物が地下に潜伏しているとは思えない。

 衣食住に関しては文句は無いが外界との接点が得られないのが物足りなさを感じる。

 王都に着くまでは仮面を付けてもらうが、正直に言えば帰るのが怖い。

 故郷が廃墟と化しているのではないかと夢に見ることもある。

「人の世に戻っても生活できる自信が無い」

 ナザリックでも身体を鍛えるくらいしか出来なかったが自分に何が出来るのだろうか。

「イビルアイ達が居る。意外と慣れていくものだよ」

 そうかもしれない。

 ラキュースは新鮮な外気を吸い込み、王都へ帰還することを了承した。

 二人は途中でカルネ村に寄ると森に避難していた人達が戻っていて、いつもの日常を取り戻しつつあった。

 唯一つラキュースは不安だった。

 平和な日常はいつまで続くのだろうかと。

 

『第七章 戦乙女の帰還』へ続く

 

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