※この作品はR-18です。

ゲームオーバーから始めようか   作:モモンガ

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G-7 屠殺場の正しい使い方

 男性体になったせいかクラスの一部が使えないはずだが、どうなっているんだろうか。

 恐いので確かめたくはないな。

 それにしても稼動した複製体達の狂乱は圧巻だ。

 色々と集めた素材もゴミと化している物は処分する事にした。無駄な事をしてきた気がする。

 身体を洗った後は一の宝物庫に移動する。

 各宝物庫に移動する事が多いな、と苦笑する。

 地下一階部分に用意した本来あるべき標本の数々。

 保存液に満たされた寝台型に入る女性達と眼球や性器が入れられた小さな容器が整然と並んでいる。

 森妖精(エルフ)の耳も人狼(ワーウルフ)の長い尻尾も二重の影(ドッペルゲンガー)に首無し騎士(デュラハン)。

 自動人形(オートマトン)に肉片だけの『黒い仔山羊』もあった。

 異形種ならば素晴らしいコレクションと褒めてくれるかもしれない。性格や名前などは既に変更済みなので復活の恐れは無いだろう。

 未設定の者の管理さえしっかりしていれば問題は無いはずだ。

 同じ素体の設定は色々と大変だったが、無事に問題なく動いてくれている。

 屠殺場に置いている者達も控えの部屋として一の宝物庫の地下一階部分の大部屋で眠りについていてもらう。

 服が用意できないのは仕方が無い。雪女郎(フロストヴァージン)も待機しているだけで大丈夫なのか心配ではある。

 それはさておきアンデットの量産を犬(・)頭(・)の(・)メ(・)イ(・)ド(・)達と共に行う。

 服まで複製は出来ないので裸になるのは仕方が無い。

 複製されたアンデット達もすぐに命令を与えておかないと余計な自我が生まれるかもしれないので気をつけるようにしている。

 複数で探知妨害を担当している分、外部からの攻撃に対してはかなり強固な施設となっている。

 出来たアンデット達には素材作成に使い潰れてもらう。

 装備品が無い分、はかどっている。MP消費の心配はしていない。

 優秀な信仰系魔法詠唱者(マジック・キャスター)が側に居るから。

 百体のアンデットによる同時の魔法詠唱は核攻撃を凌駕するかもしれないな。

 身投げしていく様は滑稽だが、これも立派な素材生産工場だ。

 先ほどの大浴場はどうなっているか見に行くと景気良く噴き出し続ける二人の足元には数枚の金貨が落ちている。

 一般メイドは魔法が使えない分、非効率的だった。

 ヤントラが魔法で作業効率を上げると物凄い噴き出し方で金貨がどんどん転がっていく。

 もう一人の方も同じだった。ただ、金貨生産には効率的とはいえないので処分する事にした。

 それだけでもかなりの金貨が生産できるのだが身投げの方が効率的なのだろうか。

 排泄物も時間がかかりすぎるし。

 集めた排泄物から素材が取り出せないかと思ったがきめが細かくて無理そうだった。

 集めた体液もそれぞれメイド達と人間、異形、双方に飲ませてみたが変化はないようだった。

 置いても仕方が無いので処分する事にした。厄介なゴミが無くなった分は負担が軽くなったような気もする。

 ついでに乳房や排泄物も異形に食べさせてみたが特に何も無かった。

 複製体はその後、処分したので事態が悪化する事は回避されたが、改めて増えた金貨を宝物庫に投入しておく。

 一般メイドでは部屋の掃除くらいにしか役に立たないようだ。

 ここは戦闘メイド達に働いてもらう方がいいだろう。

 一日だけで相当量の金貨が溜まった。今も多数の身投げによる金貨生産でジャラジャラと落ちてくる。指輪の節約にもなるし、失敗はよくあることだ。

 この施設は四方に探知と感知妨害担当を配置し、MP回復役をそれぞれ六人担当させている。しかも隠し部屋になっているので部屋の場所を知っている者以外は魔法による捜索は無理だろう。

 トンデモプレイヤーでもない限り。

 一般メイド達は一の宝物庫に一人ずつ向かわせ、性病対策の為に性行為後はそれぞれ綺麗に性器周りを洗うようにした。

 新たに身の回りの世話や荷物運びに複製体のユリ・アルファ、ルプスレギナ・ベータ、ナーベラル・ガンマの三人を集める。

 それぞれ髪の毛や目の色は適当に変えておく。

 性格はナーベラルだけ不機嫌そうな顔にしておいた。服はナーベラルだけ靴と手袋以外は裸という仕様だ。

 あとの二人は一般市民の普通の服を着せて、足元がぬれているところが多いので裸足にしておいた。

 ルプスレギナは二の宝物庫に散らばる金貨以外のアイテムを種類別に棚に入れる仕事を与えた。片付いたら金貨を中央に寄せる。

 ユリは屠殺場の見張り。

 大量に居た複製体は指輪を回収した後は三体を残して処分する。

 効率的な方法を試すと待つ手間が省けたのでメイド達にシーツなどを洗い場に運んだ後は人材は全て処分。

 掃除の終わったメイド達も必要ないので処分する。

 用済みとして消えた者達のデータは簡単に消せるようなので全て消しておく。

 ナーベラルに出(・)来(・)た(・)金(・)貨(・)を運ばせ、周りの掃除も命令しておく。

 アンデット達には転職アイテムや鉱物資源、本、データクリスタルなどを依頼。

 

 また一日しか経っていないのに世界が終わったような気がする。

 もう少し作業効率を上げるため、ルプスレギナを十体ほど用意した。

 アンデットの量産はもう機械的な作業になっていく。

 部屋が塞がらない程度でも数千体は居るだろうか。自分のMPから計算すれば千体は一度に不可能だ。ただ、見た目は千体近くに見える。

 大雑把な数え方はのちのち悪影響が出るかもしれないので、管理方法も考えなければならないだろう。

 出来たものはどんどん作業に当たらせる。

 その間に量産を繰り返す。その繰り返しだ。

 日数的にはどれくらいかかったのか分からないが数日は経っているのではないだろうか。

 金貨の量から一年は経っていないはずだ。

 アンデットを数体だけ待機命令にして、一旦帰宅する。

 

●↑●

 体感的には十年は過ぎたような気がする。

 周りの風景に変化は無く、王都も無事だった。

 外の様子が見えないのが問題かもしれない。

 ハムスケは相変わらず居たのだが、家の中はどうなっているのだろうか。

「あら、お帰りなさい」

 妻のいつもと変わらぬ笑顔が出迎えてくれた。

「何日経ったかな」

「三日じゃないかしら。どうかしたの?」

「日のあたらない場所に居ると数十年も過ぎた気がするよ」

 精神的に疲れているような夫に気付き、ラキュースは自分の部屋に案内した。

「倫理観の無い行いをすると早死にしそうだ。ゆっくり暮らしていこうかな」

「それが良いかもね。結果は上々なのかしら?」

「……凄まじいくらいにね。一ヶ月で宝物庫は満杯になったりしてね」

 見たことは無いが、それはとてつもなく凄いことなのだろう。

 イビルアイ達の話しでは相当な広さがあると聞いていた。それを一ヶ月で満杯にするとなると恐ろしい光景になっているんだろうな。

「天窓……、造っておけば良かったな……。全然、時間の感覚が分からない。あそこはあまり長居してはいけないようだ」

「あなたが言うなら対策は講じたほうが良いわね」

「世界征服なんて可愛いもんだ。あ~、精神的に疲れた……」

 夫の身体をもみながら寝かせることにした。

 本当に疲れていたのか、すぐに寝息を立て始める。

 あの施設で何をしてきたのだろうか。

 

◆ ☯ ☯ ☯ ◆

 丸一日寝ていたようで、二日後に目が覚めるとナーベが食卓に居た。

 モモンは居間で貨幣を数えていた。

 久しぶりに見る彼らは数年来の友人のような気がした。

 変わらぬ姿に少し安心する。

「よし、モモンにはこれをやろう」

 モモンの目の前に一つの塊を置いた。

 それは色鮮やかな光沢を持つ金属の塊だった。

「……なんだこれは?」

 光りの加減からはオリハルコンのように見えた。それもこぶし大の塊。

「……冒険者として先に脱落しそうだ……。こちらは平和に暮らすよ」

「な、何かあったのか?」

「……あと、これな」

 それは日本語で書かれた羊皮紙の一部だった。

 その内容はとても口に出せるようなものではないと判断し、素早くモモンは懐に仕舞いこんだ。

「寿命のある人間として限りある日々を暮らすよ。私は……、竜王国にでも行こうかな」

 そう言いながら自室に消えていくヤントラ。

「夫から何を頂いたのですか?」

「んっ? ……おそらくはオリハルコンの原石かと」

「どこで見つけて……。モモンさんが頂いたのであれば貰ってやってください。変な人ですが、恩には報いる人なので。……まことに勝手ながら……、よき友人になってあげてください」

 ラキュースはモモンに深く頭を下げた。

「いつも誰かに殺されると言い続けてきた人なので精神的におかしくなることがあって……。ナーベさんも……、ご迷惑かと存じますが」

 ナーベは軽く唸るだけだった。

 モモンは少しだけヤントラの向かった部屋に顔を向けた。

 確かに今日のヤントラは変だった。いつもと違った雰囲気なのは分かった。

 気にかけたくは無いのだが、急に居なくなると気になってしまう事に似ているのかもしれない。

 それに渡されたメモは恐るべき内容だった。

 謀反どころではない。世界を手に入れる辺りで真剣に考えなくてはならないことだろう。

 

●↓●

 更に一日置いてヤントラは天窓を造る為に色々な職人から意見を聞いた。

 丈夫なものから不透明なもの。四角いものと丸いものなどを買い集めていく。

 あと、宝物庫がどうなっているのか気になっている。

 材料云々は後回しにして宝物庫に向かった。

 二の宝物庫は既にかなりの金貨に埋め尽くされていた。

 三の宝物庫では妊娠と出産を続けるつがいを止める。設定の修正を施せばすぐに治まるところは凄いと思う。

 それからアンデット達は既に数体を残して消えていた。

 宝物庫で働いていたルプスレギナ達は今の所は無事のようだが、アイテムが溢れかえっていた。

 数日でここまで溜まるとは。

 金貨は百億枚くらいありそうなほどの山になっていた。

 戦闘メイド達を下がらせて一息つく。

 まずは手持ちの箱に金貨を詰め込んで地上に運ぶ。

 素手ですくうより道具が必要だと思った。さっそく丈夫なスコップを買って来ようと思い、ナザリックでか(・)な(・)り(・)強固なスコップの製作を依頼。あと、シモベを借りる。

「凄まじい金貨の数に驚いたよ。三箱分は第二金庫に入れて後はナザリックに納めるよ」

「畏まりました」

「金貨は多ければ良いってわけでもないな」

 持ち込まれた金貨はユリも少し驚くほどの量だった。

「箱を保管しといて良かったよ」

「……脱帽でございます」

「大半の努力が無に帰してしまったが……。日ごろのお世話だ」

 依頼したスコップは後で届けてもらうことにして宝物庫に戻る。

 天窓の位置などを決めたり、金貨の使い道を改めて考えなければならないだろう。

 天窓は自分で設置した方が安心だし、安全だろう。

 光りの収縮で発火とかしないように気をつけなければならない。

 よくよく考えたら天井の上を保管庫で塞いでいるから天窓をつけるのは困難だ。

 ナナメに入れるわけにも行かないし。

 壊すか。

 本来は必要の無い施設だし。

 資材置き場も必要か。

 

 まずは二の宝物庫の上にある施設を撤去する。

 壊すのは簡単だ。

 問題は天窓を作ることだが侵入経路を造るようで気が引けるが時間を確認するためには必要な措置だろう。

 予め印をつけて切れ味の良い武器で切り裂く。

 見事な切り口だが、残骸は細かくしてエクスチェンジ・ボックスに落とす。

 うっかり自分が落ちないようにしなければならない。

 外の明るさが分かる四角くて不透明な天窓をはめ込む。今回は緊急時なので、次はもっとしっかりしたものを用意しなければならないだろう。

 ナリザックで造れないか聞いておこう。

 運ばれたときに壊れている可能性は高そうだ。

 外からはおぼろげにしか見えない。迂闊に飛び込めばエクスチェンジ・ボックスの餌食になるだけだが。

 天窓を設置し終わった後は二の宝物庫の中から確認。

 金貨の山がすっかり消えた後に残るのは膨大な資源の山。

 戦闘メイド達によって整理された様々な資源は圧巻であり、荘厳(そうごん)かもしれない。

 いつもの量産後に資源とデータクリスタルと転職アイテムと本を半数で対応してもらう。保存用を除く残り全て稀少鉱物に費やす。

 設定はいつものようにしておき、ルプスレギナ達の半数は地上一階に資源を持っていってもらう。残りは金貨の管理とアイテムの整理に任せる。

 片づけが終われば部屋で待機。

 

 天窓のお陰で一日経ったことが分かり、少し安心する。

 複製体が自我を持たないように眠らないものは処分しておこう。

 地上にしっかりした大型の倉庫と建築資材など置いておく資材置き場のような施設を用意しようか。

 土地はまだ充分にあるし、天窓周りも整備してもらおう。

 次の日には職人達を招いて大まかな建設計画を伝える。

 地下は作らないので落下だけ気をつければ大丈夫だろう。しっかり足場周りは整えるように依頼する。

 宝物庫の金貨はシーツで隠しているので地上には輝きは届かないが、わりと山になっていた。

 一旦、職人達に任せて帰宅するとしよう。

 やはりハムスケが居る。

 エ・ランテルで活動できないからだろうが、仲間に加わったような気がして複雑な気持ちになる。

 居間にナーベが居るのだが、このところ気の毒に思えて仕方が無い。

 NPC達の本来の性格をメモでもしておけば色々と賑やかになるんだろうな。

 ルプスレギナは色々と問題を起こしそうだが。

「……すっかり我が家の一員だな、ナーベ」

「……ん。確かに世話になっている」

「あっ、お帰りなさい、旦那さん」

 明るいティア達の声を聞くと不思議と安心できた。

 命の尊厳を冒涜していた毎日がウソのようだ。

「みんなの顔を見ていると安心できる」

「そうお?」

「思い通りになる世界よりは精神的に癒されるよ。さすがに屠殺場は……、虚しいものを造ってしまいましたね」

「なんかすごい事になってそうだけど……」

「色々とお手伝いさんが欲しくなるよ」

 疲れきった顔のヤントラは二階の執務室に向かい、一息つく。

 宝物庫の活用法を考えておかないと虚しさで死にたくなる。

 各所に専門職でも置かないと駄目だろうか。

 販路でもあればまた違うのだろうが、今は集めるだけ。

 ソロプレイヤーの業だろう。

 

 昼寝を挟んでいるとラキュース達が帰宅する。

 モモン達は食事をしないのだが、居間で色々と話しているらしい。

 寝室に訪れたラキュースは無反応な複製体とは違い、様々な表情をしてくれる。

 現実とはこういうものだろう。

 無言のまま探知妨害と静寂をかけて、抱き合う。

 服も脱がさず、下だけ軽く下ろす程度で男性器を突き入れる。

 最初だけ声は出たが乱暴なことは無く、夫のしたいようにさせた。

 事が終わったのは数十分後だろうか。

「……もう、いきなりなんだから」

「人間的な反応で安心した」

 ラキュースの身体に変化は無いようで安心した。

 無反応なNPCのような者達に囲まれていると人の見え方がおかしくなりそうだ。

 ずっと居るとヤントラでも気が変になるかもしれない。それは強靭な精神を持つヤントラにとって『変化』より『停滞』がいちばんキツイのかもしれない。

 何も変わらない世界。

 無感動で楽しくない世界。

 それはアインズがやろうとしているのではなく、自分が実現させてしまうような気がする。

 不便でも王都との行き来は続けよう。ラキュースも他の皆も愛そう。

「そろそろ男性とはさよならしておこう。……宝がたくさんあるのだが、どうすればいい?」

「ど、どうすればって……。無計画なのね……」

 ラキュースはクスクスと微笑する。

 本当に活用法に困っているようで可笑しかった。

 相談に乗れる事は聞こうと思った。それと男性をやめるのならとラキュースは良いと言うまで出し続けて、と尻を突き出す。

 もちろん、夫として妻の要望に応える。ただ、すぐにうっかり『いいっ』と嬌声で言ってしまったので苦笑いを浮かべて別の言葉に変更した。

 

 夜半にクレマンティーヌと共に宝物庫に向かう。

 彼女に地上一階の宝を見せてみた。

「なにこれ、すごい! 鉱石……。ミスリルとかだよね」

「宝物庫に相応しいだろう。様々な素材に使えるものばかりだ。あと……、部位とか集めるのはやめようかな。精神的に不健康になってくる」

 一つは飾ってある、ということは伝えた。

「あー、それがいいかもね。たくさんの自分が居るのは私も良い気分はしないよ、さすがに……」

「代わりに屠殺場を試してもらおう。相手はたくさんのモンスターだ。……もちろんクレマンティーヌの大群というわけではないから」

「んんっ。自分で自分の大群を殺すのはちょっと……。それで、どんなモンスター? あの『黒い仔山羊』っていうのは無理だと思うけれど」

「これから用意するが……、赤帽子の小鬼(レッドキャップ)だ。君なら手ごろだろう」

 クレマンティーヌも存在だけは聞いている。

 凶悪なゴブリン。

 その名が示すとおり、真っ赤なトンガリ帽子を被り、鉄の靴を履いた好戦的なモンスターだ。

「……逆に殺されそうだね」

「無抵抗にしておくよ。多少は動いていないと不安だろうから君に向かってくるようにしておこう」

「聞けば聞くほど……、恐ろしいね」

 下準備に時間がかかるのでクレマンティーヌは離れにある職人達が利用している施設で食事や仮眠して待っているようにいわれた。

 現在、地上に大きな倉庫を建てるために職人達が集められていたので賑やかだった。

 モンスターではないのでクレマンティーヌも少しだけ安心する。

 彼女が待っている間に性別は元の性器の無いものに戻した。

 アンデットの量産を行った後、その内の一体に本による儀式召喚で赤帽子の小鬼(レッドキャップ)を呼び出し、無抵抗を命令させた。

 自分でやるより詳しい人材にやってもらうのは楽であり、ありがたいことだった。

 その赤帽子の小鬼(レッドキャップ)を屠殺場に連れて行き、三体ほどに増やした後にオリジナルは始末する。あとは従順な赤帽子の小鬼(レッドキャップ)を増やすだけだ。

 増やしに増やしたら数えるのが困難なほどになった。

 あまりにも赤い。精神的にもキツイかもしれないので他の色の手ごろなモンスターも混ぜておこう。

 拷問の悪魔(トーチャー)の出番が無かったので、これを混ぜておこう。

 仮面を付けた戦闘メイドを風呂場の入り口に置いた椅子で待機してもらう。

 アンデットの量産を続けた後は一気に設定を与えて完了。

 数時間もかかった気がするが、クレマンティーヌを呼びつける。

「随分と時間がかかってたようだけど……」

「予め用意してなかったからね。お待たせした。何体かは分からないが頑張ってくれ」

 屠殺場への入り口付近まで連れて行く。

 何かが居る気配をクレマンティーヌは感じ取った。一体や二体ではない。

「……わーお。なんか過ごそう……」

「まずは服は全て脱いで、ここに入れてくれ」

 返り血で汚れるだろうからと、全裸で戦うことになるとは思っていなかった。

 言う通りにした後、よく切れそうなロングソードを二本渡された。

「メイド以外を倒すんだよ。全部倒したらメイドに風呂場に案内してもらってくれ。後処理はこちらでやるから。お腹がすいたらメイドに食料を貰うように。水の補給も出来るからね」

「うん」

「赤い世界だから気をしっかり持つんだよ。あと、拷問の悪魔(トーチャー)を混ぜておいたから」

 裸で剣を二本持ったクレマンティーヌは扉の中に入る。

 そこには赤一色の悪夢が広がっていた。

 想像絶する光景だ。数万体は居るのではないかというほどだった。

 魔法の光りに照らされているとはいえ、これは早々お目にかかれない絶望の色彩だろう。

「屠殺場とはよく言ったもんだ、ご主人」

 戦う前から失禁してしまった。様々な死の気配がクレマンティーヌを襲う。

 尿が出尽くした時、戦闘が始まる。

 

 クレマンティーヌが戦っている間に二の宝物庫に移動したヤントラは散らばる資源を整理する戦闘メイド達を眺めた。

 壁の棚もいくつかが満杯になってきた。それでも全てを満杯にするにはまだまだかかりそうだ。

 資源は極端に巨大なものは出てこない。希少金属も僅かずつしか出ないので魔法にも限界があるようだ。

 課金アイテムはまだ試していないが、性転換が出来るのだから課金の職業も取れるかもしれない気がする。

 資源と共に金貨が落ちてくる。ただ、アイテムにすると落下したときに壊れてしまうかもしれないので迂闊にポーションなどは頼めない。

 希少金属については大した量は期待できないだろうな。

 数の暴力に頼るしかないだろう。

 クレマンティーヌの戦闘が終わるまでの時間つぶしに量産を続けよう。

 部屋一杯になったところで統一命令を下す。

 ついでにクレマンティーヌのステータスが出てこないか確認しておく。

 蒼薔薇の園では出たはずだが、ここでは項目が現れないようだ。これはまだ色々と調査しなければならないことだが。

 静かな時が流れているし、誰も報告に来ないので続けているのか、終わっているのかが分からない。

 とりあえず、屠殺場に向かう。

 こっそりと扉を開けるとまだ戦っているようだ。疲労を感じているために討伐が遅れているのだろうか。

 膨大な敵を一人でこつこつと倒すのは大変だろう。

 しかも赤帽子の小鬼(レッドキャップ)はクレマンティーヌより強いはずだからしとめるのも用意ではないだろう。いくら無抵抗であったとしても。

 三時間ほどとはいえ数百体は倒しているだろう。やはり肉体的な疲労には勝てないか。

 扉を開けて、助け舟を出そう。クレマンティーヌの動きが変になっていたから。

「うあ……。ううぁ……」

 息切れを起こし、身体はガタガタと震えている。

 寒くは無いだろうが死臭が凄い。

「休憩だ、クレマンティーヌ。こっちにおいで」

「うっ、うう……」

 手に力が入らず、その場で泣いているクレマンティーヌ。

 一人で全滅させるのが出来ない悔しさというよりは自分の弱さを知ってしまった絶望感で満たされたのかもしれない。

 普通の戦闘なら既に死んでいるだろう。それがよく分かってしまった。

 むせび泣くクレマンティーヌの血にまみれた身体に『無限の水差し(ピッチャー・オブ・エンドレス・ウォーター)』を振り掛ける。

 それから武器を取り上げる。手に張り付いたようになっていて固定された骨の音が小さく聞こえてきた。

「結構倒したじゃないか」

 メイドを呼びつけて風呂に入れるよう指示した。

 度重なる戦闘で手の指が固定されているかもしれないので身体はメイドに洗ってもらう事にした。

「綺麗になっている間に掃除してもらうから。渡した武器は結構良い武器なんだよ。それでも手こずったか」

「……ごめんなさい……」

「最初だから仕方ない」

 クレマンティーヌを風呂場に入れた。気分が落ち着くハーブの湯だ。他には果実の湯船も用意できる。

 残るモンスター達は数体を残してヤントラが数分で殲滅した。

 レベル差があるからこそ出来る蹂躙劇だ。

 後始末は別のメイドに任せる。

 体液、肉片は全て大浴場に設置したエクスチェンジ・ボックスに捨てられる。

 残ったモンスターは地下一階で眠るように命令を与えた。

 クレマンティーヌが風呂ですっきりする頃には何事も無かったような綺麗な屠殺場となっている。

 その風景にクレマンティーヌはただただ驚いた。

 おびただしいモンスターがどこにも居ないのだから。

「あまり弱いモンスターでは強く出来ないからね。手はもう大丈夫か?」

 クレマンティーヌは自分の手に顔を向ける。既に握力はだいぶ回復していた。

「……うん」

「今日、泊まっていくなら上の施設を使うと良い」

「……次は……、もっと頑張る……」

 ヤントラは彼女の頭を撫でた後、入り口に置いた服を着せた。それから地上に連れて行き、別れる。

 クレマンティーヌがあの調子では他のメンバーも期待できないだろう。

 モンスターの出現率が少ないことも原因の一つなのだろうか。

 数時間後に復活したクレマンティーヌの為に十分の一ほどの数の赤帽子の小鬼(レッドキャップ)と戦わせた。

 今度は何とか全滅させることが出来たようだが、無抵抗な相手に苦戦する自分が許せないのか、再戦を申し入れてきた。

 経験は積み重ねるためにある。

 食事と休憩を交えて三戦ほどクレマンティーヌは続けた。

 自分でも理解してきたのか、強くなっていると。苦戦していた攻撃も段々と楽になっている。

 待っている間にアンデットの量産も続けられ、レアものに集中させた。

 更に四戦目と続けることになった。

 疲労し切ったク(・)レ(・)マ(・)ン(・)テ(・)ィ(・)ー(・)ヌ(・)を(・)複(・)数(・)に(・)分(・)割(・)。魔法を使わずとも睡眠が優る場合があることも実証されている。斬り方が荒ければ意味は無い。

 今はヤントラ独自の技法となっているだろう。

 地下で暴虐の宴が繰り広げられている間に地上では建設が滞りなく続けられていた。

 

 戦いを終えて自宅に戻るとクレマンティーヌは一気にベッドに向かって眠り始めた。

 最終的に全部で七百体近くは討伐しただろうか。

 ステータス的にはかなり上昇し、二十とまではいかないが十レベル分の経験値は溜まっているだろう。数万体ずつなら数十レベル以上の経験値になっていたかもしれない。

 極端なレベル差があるわけではないので経験値の増え方は大きくないが、よく頑張ったと言っておこう。

 全てのモンスターが倒せば経験値になるわけではない。そこも調査が必要なところだ。

 ヤントラ自身の経験値も結構溜まっていた。素体を殺しすぎたせいもあるだろう。

 他のメンバーもそれぞれ結構な経験値が溜まっていた。特にイビルアイは顕(・)著(・)だろう。

 レベルが高いとは思っていたが一気に八十、下手すればカンストまで行く量だろう。

 必要なことだけ書きとめることにした。

 昼食時にラキュースに性器が無くなった事を伝えた。少し残念だと言っていたが苦笑するだけで終わった。

 モモン達が居ないうちに二階の大広間にメンバーを集める。

「君達はまだまだ強くなれるのだが、どう強くなりたい? 希望の職業(クラス)、ティア達がニンジャ(忍者)という職業だとして。紙に書いてくれるか?」

「ご主人、書くだけで良いのか?」

 イビルアイが不思議そうに尋ねてきた。

「通訳はラキュースに任せるが……。ルリマリスは全然、戦闘をしていないから……。君も屠殺送りかな」

「ひぇー!」

「へへっ、赤帽子の小鬼(レッドキャップ)数千体と戦わされるかもよ」

 クレマンティーヌの言ったモンスターに知っている人間は軽く寒気を覚えた。

「た、戦ったのか、クレマンは」

「千体近くは倒したと思う。無抵抗だから楽なんだけど……。本気だったらすぐ死んでるよ、あれは」

「無抵抗なら楽だろう」

 ガガーランの言葉にクレマンティーヌは首を横に降った。

「甘く見ない方が良い。弱いうちは倒しきれないから握力がどんどん無くなっていくんだよ。もし、攻撃に転じたらって恐怖が襲ってくる。無抵抗でも充分、恐いよ」

「クレマンが言うなら相当な目にあったんだね」

 そうティアが言うとクレマンティーヌは苦笑した。

「泣いちゃったよ。……あれより強いのがまだ居ると思うから今のうちにみんなも経験したら? 戦いが楽になってくるのが分かってくるよ」

「そ、その内にな」

「ああ、あとお宝がいっぱいあったよ。あれは一見の価値があるね」

 それぞれ話し合いつつ、紙にいろいろと書き始める。

「床や壁を壊されると困るから、剣で必殺技とかしないでほしい。魔法も出来るだけやめてほしいな」

「普通の攻撃で倒せって?」

「派手な攻撃がしたい人は地上でね」

「鬼ボスは大剣使いだから楽そうだよね」

 ラキュースは唸る。

 新しい必殺技(超技とか)を試すことが出来ないのはもったいないなと。

 

 全員いっぺんに戦わせられるような広さは無いので一人ずつとなってしまう。

 それはそれだけの大群を倒してもらうためだから仕方が無い。

 クレマティーヌには再戦してもらう事にして要望を集めてラキュースに通訳してもらう。

 使っている文字が違うので多少は不便だ。

 ティアとティナは二人一緒がいいと思うので例外として認めるが息のあったコンビプレーは大事だろう。

 数日かかるので食料の買出しに出かけて最初はティア達が挑戦することになった。

 現場待機は退屈だろうし、来ても良いのだが相当な時間がかかる。

 イビルアイは宝の様子を見るために着いてきた。

 問題はラキュースだ。悪魔系を苦手としているので施設に近づくのも大変かもしれない。

 大罪ワルキューレの装備は必須だろう。

 ルリマリスに戦えそうなモンスターは本当に弱いものになるだろう。罠避け程度しか使ってもらえなかった為に非力だ。他の二人も似たようなものらしい。

 まずは工事現場の視察から。

「また倉庫を作るんだね」

「こちらは輸送用かな。もう一つは……、なんだったかな。建築資材置き場だ。中で色々と……、必要な台とか作るためだ」

 ティア達に休憩場所を伝えた。

 それから四階層の地上一階にある鉱石などを置いている部屋に案内する。

 他には来客用の居間や寝泊りできる部屋もある。

「……おお。お宝が無造作に……」

「盗られないのかな?」

「盗ろうと思えば盗られるだろうね。問題の拷問室は今は稼動していない。部位を飾っている階は通るけれど、見ていくかい?」

「んー……。自分の身体がどうなっているかは見たいな」

 イビルアイは一度はしっかりと見る必要があるだろう。

 予想では全身が保存されているはずだ。

 ティア達が地下へと移動すると静寂が広がる空間が現れた。

 大きな部屋はあるのだが人の気配が希薄だ。

「……嫌な雰囲気が満載だね」

「……何か出ても不思議は無いみたい」

「居る事は居るがモンスター達は待機している。命令があるまでは、いつまでもね。一人で居ると精神の弱い人は耐えられないかもしれないから、離れないようにね」

 そうヤントラか言うと三人は頷いた。

 イビルアイですから寒気を感じる。

 

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