-さらに火曜日 大学内 事務所にて-
父「…」カタカタカタカタ…
父「…」カタカタタ…
父「ふぅ…」ギシッ
ポンポン…
父「?」
同僚「」ヤッ
父「あ、どうも」
同僚「遅くまでお疲れさま」
父「いえ…」
同僚「あの事故からもう一周忌、過ぎたんだよね」
同僚「前よりも受け持つ講義増やして、頑張るのも良いけど」
同僚「ちゃんと、家には帰ってるのかい?」
同僚「息子さんだってまだ、小学生で、高学年くらいだったろ?」
同僚「なんだか、息子さんに会いたくないから
仕事に没頭してるって、良くない…非常によろしくない噂がたってるよ」
父「…」
父「仕事に没頭するのは悪いことですか?」
同僚「そうじゃないさ!」
同僚「『仕事がデキる!』大いに結構!!」
同僚「でもねぇ…幾ら何でも息子さんがこれじゃあんまりじゃないか?」
同僚「今まで奥さんが息子さんを見てて、今更さ腹を割って話したりコミュニケーションをとるのは難しいし」
同僚「時間もかかる!わかるけどさぁ~」
同僚「君の子供なんだよ?」
同僚「向き合ってあげても良いはずだよ?余計なお世話?大いに結構!!」
父「…」
父「妻からも同じ事をいわれましたが…」
父「私は」
父「子供なんて欲しくなかったんです」
同僚「…」
父「妻がいれば、彼女がいれば」
父「それだけで良かったんです」
父「…」
同僚「…」
同僚「今夜は早く帰りなさい」
父「仕事が残ってます」
同僚「…」
同僚「 帰 れ 」
…
翔鶴「はぁ…はぁ…」
翔鶴「僕くん…今夜もイッパイ出したね」コポッ
翔鶴「溢れてくるよ…」
僕「」ゼェゼェ
翔鶴「僕くん?起きて?」ペチペチ
翔鶴「休憩おわり…もう一回しましょ♪」
僕(こ、これじゃ、体が持たない…)
僕(は、話しを逸らさないと)
僕「翔鶴お姉ちゃん…?」
僕「最近…ずっと『ゴム』してないよ?」
僕「だ、大丈夫なの?」
翔鶴「…」
翔鶴「ふふ」
僕「?」
翔鶴「大丈夫なわけないですよ?」
僕「…へ?」
翔鶴「僕くん」
僕「?」
翔鶴「ベッドの横…そこに、私のワンピース落ちてます?」
僕「う、うん」
翔鶴「その近くにハンドバッグは?」
僕「あるよ」ゴソゴソ
翔鶴「貸して?」
僕「はい」
翔鶴「」ゴソゴソ
僕「なにしてるの?」
翔鶴「これ」スッ…
僕「…」
僕「なぁに…それ?」
僕(わかんない…わかんないけど、
とっても良くない事はわかる、知っちゃいけない)
僕(きっと、僕が知っちゃ)
翔鶴「今の保健体育でもさすがにコレについては教えてくれませんよね?」
翔鶴「『妊娠検査薬』ですよ?」
僕「…え」
僕(いけない事だったんだ)
…
父「今夜ぐらいは、早く帰れ…か…」トボトボ
父「今更、何を言えば…」
父「…?」
父「子供部屋から明かり?」
父「あの子なら、いつもなら寝てる時間のはず…?」
ガチャッ…
父「ただいま」
…
カチコチ…カチコチ…
時計の音
時間が流れる音
お父さんに呼び出されて
ダイニングのテーブルの前に、お姉ちゃんと一緒に座らされて何分経ったかな…
5分?10分?
数時間にも思える
何回、この音を聞いただろう
いつも通りだったはずなんだ
火曜日の夜は
お父さんは仕事で帰ってくるはずがなかったんだ
なのに…
…
カチコチ…カチコチ…
目の前で放心して、滅多に吸わない煙草を口に添えている
父「…」
僕「…」
翔鶴「…」
父「なにか言うことはないのか?」
どこから話したら良いんだろう…
翔鶴「初めましてお義父さん」
父「…」
僕「…」
翔鶴「僕くんとお付き合いさせて頂いてます翔鶴です」
翔鶴「艦娘です」
父「そうですか…お付き合い…お付き合い…ね…っはん」
父「裸で抱き合って…裸のお付き合いってかぁ…」
父「良く聞いて下さい」
父「この子は…まだ小学生なんです…」
父「…何をしているんですか」
父「艦娘さんが!ここで何を!!しているんですか!」
父「こんな…小さな子供相手に欲情して…性欲をぶつけて…何をしているんですかぁ…」
僕「お、…お父さん…あの」
父「おまえは黙ってなさい…」
翔鶴「お義父さん」
父「お義父さん…ね」
翔鶴「いえ、もうすぐ
お祖父ちゃんですね」クスクス
父「…」
父「…は」
父「はははは…」
父「はぁ~あ…」
僕「?」
父「久しぶりにあったら」
父「久しぶりに腹を割って息子と話そうと思ったら」
父「『お祖父ちゃん』宣告?」
父「なんだこりゃあ…」
…
カチコチ…
翔鶴「奥さんは可愛かったですか?」
父「ああ…」
翔鶴「愛してましたか?」
父「もちろんだとも」
翔鶴「お二人の間に生まれた僕くんのことは愛してますか?」
父「…」
翔鶴「愛してますか?」
父「…」
父「大切な家族だと思っているよ」
翔鶴「愛してないんですね」
父「…」
翔鶴「愛した奥さんの子供だから愛する義務があると考えてるだけなんじゃないですか?」
父「…」
僕(どうして)
僕(どうして違うって言ってくれないの?)
翔鶴「お義父さん、私は妹を愛していました…」
父「…」
翔鶴「でも、妹は提督…私たち艦娘を管理・指揮する立場の男性を愛してました」
翔鶴「妹はこの世に何も残してないんです」
翔鶴「あんまりだと思いませんか?
肉の体を持って再びこの世に生まれたのに何も残せて無いまま死んだんですよ?」
翔鶴「奥さん…いえ、お義母さんには僕くんがいますよね?」
翔鶴「大好きな人と子を成して『自分の残り香』をこの世に残して逝きましたよね?」
翔鶴「『ズルイ』ですよね?」
翔鶴「だったら私が…姉妹である私の…
この子宮を使って、妹がここに生きた証を残してあげたいんです」
父「××××め…!!」
父「どうして…なんで俺の息子なんだ!まだ」
父「まだこいつは小学生なんだぞ!?」
父「人一人の人生を、滅茶苦茶にするような事を」
翔鶴「僕くんは…今の私とそっくりなんです」
翔鶴「提督?話しになりません」
翔鶴「肉親を失った人の心は同じ境遇の人にしかわからないでしょ?」
父「肉親なら…まだ俺が…」
翔鶴「今まで、僕くんと向き合うことを逃げてたクセに?」
父「…」
翔鶴「ほとんどネグレクト(育児放棄)と同じですよね?」
翔鶴「それに―」
ガシッ
僕「ひゃ!?」
翔鶴「すぅ…」クンクン
翔鶴「僕くんは瑞鶴と同じ匂いがするんです」
翔鶴「私は、離しませんよ」
父「」ボソッ
僕「え?」
父「お願い…します」サッ…
父「どうか…もう少し…待っててください…」
僕(お父さんが…土下座?)
翔鶴「…」
父「どうか、息子と話し合う期間をください…」
父「…まだ、小学生なんです」
父「あの子の人生はこれからなんです」
僕「…お、父さん」
翔鶴「…」
翔鶴「…お腹の子は待っててくれません」
父「…っ!」
僕「…」
翔鶴「…でも、時間なら少しあげます…」
翔鶴「どうか、お互いに納得のいく結論を」
父「あ、ありがとうございます…」
…
父「…」
僕「…」
父「…」
僕「…」
父「…翔鶴さんは」
父「子供を産む気だ…」
僕「!」
父「おまえの子供で俺の孫だ」
父「…歪んでる…おぞましい程に…」
僕「…ぅ」
父「泣いて許される事じゃないだろ…?」
父「だが、今は泣いて良い」
僕「お父さ…ん…っ」
父「それに、良い案とまでは行かないが、妥協案なら、なんとか考えつく…」
僕「だきょう?」
父「覚えておきなさい?妥協というのは」
父「大人が『これで良かった』と、自分を納得させるための呪文だよ」