丸まった首を少し持ちあげて
翔鶴お姉ちゃんの濁った眼を見つめる
お姉ちゃんの
月の光に照らされた銀の髪はとっても綺麗
キラキラと光る髪は宝石のように思えたけど
このとき僕と目を合わせた
目の色は真反対に深く沈んだような
光を反射しない、吸いこまれちゃいそうな
暗い色に見えた
半月みたいに…
裂けちゃうんじゃないかなって思うくらいに
釣り上がったお口
怖くて綺麗…
…
窓からお空を見ると
夜の黒がだんだん、朝の白に変わってきた
その境目…グラデーションっていうのかな?
とっても綺麗
でもそれに負けないくらい綺麗なサラサラとした
銀髪に指を絡めてちょっと遊ぶ
すると僕の指から銀髪が持ち上がって逃げた
お姉ちゃんが上半身を上げたんだ
そして僕の額に暖かな手のひらを乗せて
言った
翔鶴「そろそろ帰ります…ね」
僕「…うん」
翔鶴「お父さん…今日は何時頃ですか?」
僕「たぶん…10時くらい…」
翔鶴「そう…じゃあ」ギシッ
お姉ちゃんがベッドから降りて
長い手足と銀髪を揺らした
手でお胸を支えて、
少し汗ばんだ体をタオルで拭き始めた
翔鶴「朝食…作ってから、私帰りますね…」
僕はベッドに横になりながらその光景を眺める
首筋をなぞって
鎖骨、胸の下、官能的な腋
くびれたお腹、おへそ、腰…
恥部、太股、膝裏
全身を拭き終わったタオルは
なんだか湿ってしてクタッとしていた
ふぅ、と一息吐いたお姉ちゃんは
僕の方を見た
翔鶴「僕くんも…体拭きますか?」
僕「…うん」
ヒョイっと僕の方にお姉ちゃんが使ってたタオルが渡される
…お姉ちゃんがつかってた…タオル…
汗が染み込んだ…
手にそれを取り
ジッと見つめていると
視線に気づいた
下着姿の
翔鶴お姉ちゃんがこっちを見て
ニタリとやらしく笑っていた…
おかしく思ってるのかな
さっきまでこれよりもずっとずっと
恥ずかしいことをしていたのに…
もういいや使っちゃえ…
ポフン…
タオルに顔を埋める
そして深呼吸すると
お姉ちゃんの匂いがした
鼻を通って鼻腔をくすぐり
タオル越しの空気が肺一杯に
広がる
翔鶴「あ、そうだ」
?
僕「なぁに?」
翔鶴「裸エプロンになった方が良いですか?」クスクス
指を口元に当てていたずらっぽく笑うお姉ちゃん
僕「い、いいよ…」
…
僕とお姉ちゃんは一緒にまた軽く
一眠りすると
それぞれ身支度を始めた
今日も天気は良いみたい
雲も少ししかないし…
リビングでソファに座って
朝の情報番組をぼーっと眺める僕
相変わらず
民放はアイドルの不倫報道や
会社の汚職事件や、セクハラ事件
しんかいせーかん?の出没情報
艦娘の着任・轟沈情報
各鎮守府の戦闘結果
艦娘が一般の人たちに受け入れられつつあるからなのか
毎月、人気投票まで行われるようになったんだよね
それがこれ
『ミス艦娘!!』
そして今月の第一位
今月は舞鶴の○○鎮守府の
最上型重巡の『すずや』さん
この番組で取り上げる総選挙で
一位になった艦娘さんは
『水着姿』で出演するんだよね…
髪の色とおんなじ
翡翠色のビキニ姿の
鈴谷さん…かわいいな~
ムニュン
…っう!!
フワッと柔らかい匂いが漂ってきたと思ったら
背中に何か二つの弾力のあるなにかが接触した
次いで、右頬に温もり
股間を摩るなにか
そして僕の周りに影が出来て…
驚いて横に視線を向けるとさっきまでキッチンにいたはずの
翔鶴お姉ちゃんがほっぺたをくっつけていた
温かい…
気配を消して後ろから抱きついてきたみたい
翔鶴お姉ちゃんの左手は僕の足の付け根
を執拗に撫でまわしているし…
翔鶴「可愛いですよね…鈴谷ちゃん…」
お姉ちゃんの視線の先はテレビの画面の向こうの
はにかんでいる鈴谷さん
お姉ちゃんの濁った眼が何だか…いつもより
もっと沈んだような
翔鶴「…」
優しく撫でまわした左手がピタリと
僕の太ももの付け根の真ん中で
止まると―
ギュムッ…!!
僕のソレを鷲掴みにするお姉ちゃん
い、痛い痛い…!!
翔鶴「ちょっと『勃って』きましたね…♪」
リポーター『前回の一位の那珂チャンを抑えて…』
リポーター『今回の総選挙一位に輝いた
鈴谷さんにインタビューしてみたいと思います!!』
リポーター『鈴谷さん!何か一言!!』
鈴谷『え、えぇ~///
す、鈴谷こういぅの慣れてないしぃ///』
鈴谷『て、てか…この格好…恥ずかし…///』
翔鶴「水着姿の鈴谷ちゃんを見てなのか…それとも
私の手で撫でられたからなのか…」
翔鶴「『どっち』ですか?」
…え?
瞬間、僕の頬から顔を離して―
ゾワッ
僕の首筋に舌を這わせて、それが段々と上に
上って行って
耳元に―
翔鶴「ねぇ…」
―どっち?
…
翔鶴お姉ちゃんの作るお料理は少し薄味だけど美味しい
お母さんの味に良く似ている
千切りにした大根とニンジン、
小さめに食べやすくカットされた豆腐の入ったお味噌汁
少し甘めの卵焼きと、付け合わせの野菜
テーブルに向かい合わせに座る僕とお姉ちゃん
お姉ちゃんは結局ここに来る時と同じ格好のレトロワンピース
似合ってるから可愛い…あ、大人の女の人に『可愛い』なんて言うのは
あんまり良くないんだよね、うんとっても綺麗
僕とお姉ちゃんはテレビの音をBGMにして
ただ黙々と朝食を口に運ぶ
翔鶴「…」パクパク
僕「…」モヒモヒ
翔鶴「美味しい?」
僕「…うん」
翔鶴「そう…良かった」
お姉ちゃんが使ってるのは
僕のお母さんが使っていた花柄の食器…
『亡くなって』から、ずっと使わずに戸棚の奥にしまってたけど
翔鶴お姉ちゃんが来てくれるようになってから
お姉ちゃんが使うようになった
…
翔鶴「―また来週…来ますね」
僕「…うん…次の出撃も…」
僕「気をつけてね…」
玄関でお姉ちゃんの指を握って
何度も絡める
でも少しして、
パッと離す…
翔鶴「大丈夫です…僕くんの為にも
瑞鶴のためにも死」
僕「」ジッ…
翔鶴「あ、すいません…『沈め』ませんから」
『死ぬ』って言葉にちょっと
敏感になり過ぎてる自分がちょっと嫌だなぁ
…僕は今はお姉ちゃんの胸ほどの
身長しかないけど…
クラスでも背の順で並んだら
前から数えた方が早いほうだけど
これから中学生になって
高校生になって
成長期になればお姉ちゃんよりも
背がおっきくなる…はず
そしたらお姉ちゃんが僕にしてくれるみたいに
僕もお姉ちゃんの頭を撫でられるかな…?
撫でたら僕を頼ってくれるのかな?
僕を頼ってくれたら…もっと僕を見てくれるかな?
玄関にただ一人残された僕は
そんな事をいつしか思うようになっていた
…