※この作品はR-18です。

貧乳派団長とリンゴちゃん R   作:やーなん

9 / 9
お待たせしました!! ついにキンギョソウと団長の馴れ初めです!!
今回は前々からやってみたかった某神話要素を多分に含んでおります。

相変わらずストーリー重視でエロはおまけ状態です。凌辱って難しいですね……。
それにしても原作4周年記念に凌辱モノを投稿する作者がいるらしい(目逸らし



ある二人の馴れ初め

 キンギョソウにとって、その男は単なる上司に過ぎなかった。

 その男にとって、キンギョソウと言う花騎士は数ある部下の一人に過ぎなかった。

 

 同じ方向の道を歩む間柄ではあったが、それは前を進む者と後に続く者というだけだった。

 その事件が起こるまでは。

 

 

「団長、ご指図の通り、危機察知能力が高い者や精神力が強い者を選抜しました」

「ご苦労」

 ある日、キンギョソウは幾人かの花騎士と共に団長の元へと呼び出された。

 そこには当時団長の補佐官を務めていたタチバナが険しい表情で待ち受けていた。

 

 キンギョソウは団長の様子を観察する。

 彼もタチバナ同様に険しい表情であり、普段の気取った言い回しをする雰囲気が微塵も無かった。

 

「諸君を招集したのは、ある極めて危険な任務に就いて貰うためだ」

 普段から変人で通っているこの男の言動にその所作は見られず、やはり真剣そのものだった。

 そんな彼の様子に、集められた花騎士たちは息を呑む。

 そしてキンギョソウも自身の感覚が告げていた。――――一目散にこの場から逃げろ、と。

 

「それは、一体どのような任務なのだ?」

 呼び出された花騎士の一人、ハクモクレンが団長に問うた。

 

「その前に諸君らの是非を問う。

 我を含む諸君ら全員の死をある程度前提とするこの作戦に志願するか否かだ。

 この任務から降りるのならば、この場から去れ。

 この任務のことは誰にも口外は許さぬし、責められることも無い」

 団長からの言葉に、しかし誰もこの場から去る者は居なかった。

 彼女らは普段から恐ろしい害虫を相手にしてきた花騎士だ。

 危険な任務だから、と逃げ出すならそもそも花騎士になどなってはいないだろう。

 

「諸君らの献身に我も神に感謝しよう」

「そう言うのは良いからさ、一体どんな任務なのか教えてよ」

 キンギョソウはこの貴族出身の団長を、前々から回りくどいと思っていた。

 司令官として必要な確認事項だとしても、この男がやると何かの演出か何かだと思えてしまうのは仕方がない事だった。

 

「団長さん」

「うむ、では諸君らの戦うべき相手を示そう」

 団長はタチバナに促され、一冊の絵本を取り出した。

 

「我が祖先のことは諸君らも聞いているだろう。

 あのおぞましき害虫の信奉者は忌々しい事に優れた魔法使いだった。

 かの者はその邪智を用いて数多のアーティファクトを作りだし、その悪逆故に火炙りにされたのちにそれらはこのスプリングガーデン中に散逸した。

 我が一族はそのような悪鬼を生み出したその贖罪として、それらアーティファクトの収集と封印または破壊を行ってきた」

 団長の由来はキンギョソウの耳にも入っていたが、そのような陰惨な歴史を持つ血筋であるとは知らず、その場に呼び出された皆も呆気に取られていた。

 

「かの者が得意としたのは召喚魔法。

 無辜なる人々や己を信奉する者を生け贄として捧げ、害虫を齎した者たちの世界から害虫の秘密を我が物にし、己が第二の異世界からの侵略者と成らんと画策したのだ」

 それを聞いて、呼び出された面々は合点がいった。

 貴族が、それも由緒正しい貴族が火炙りで処刑されるなどこの世界の歴史上を見ても類を見ない。

 それだけのことをしでかそうとしたのならば、最悪の処刑方法を用いられるのも無理はないのだろう。

 

「そして先日、ウィンターローズの古本屋にてかの者の研究成果のひとつ、あるアーティファクトが発見された」

「財産の処分をしようとしたさる貴族が売却した古本の中に、それはあったそうです。

 その魔本は古本屋の店主を内部に引きずり込み、駆けつけた衛兵三名を行方不明にした後、退魔師たちによって封じられたそうです」

 団長の言葉をタチバナは引き継ぎ、その恐ろしい出来事を述べた。

 

「その魔本を我が一族の書庫の目録からどのようなものか特定することができた。

 その内部には、かの者が異界より招来した邪悪な寄生型の害虫が封じ込められていることが分かったのだ」

 ただでさえ息を呑んでいた面々に、更なる衝撃の事実が齎された。

 

「寄生型の害虫だって!?」

 その存在に、皆は戦慄した。

 

 その稀少性とおぞましさからこのスプリングガーデンでも目にする者は滅多にいないとされる種類であり、害虫との遭遇から千年経つこの世界でもその研究は進んでおらず、対処法も極めて困難とされている。

 それが封じ込められているという魔本。

 事態が飲み込め始めた面々は、何故に死を前提とした極めて危険な任務なのか知った。

 

「その魔本の無力化の為、行方不明の者たちの救出の為、我は己の責務を果たさねばならない」

 団長の言葉が、執務室に重々しく広がる。

 

「今一度確認する。

 我と共に死地へ赴く覚悟はあるか?」

 再度の団長の問いに、表情を引き締めた面々は静かに頷いた。

 

 

 

 §§§

 

 

 人食い魔本の内部は、白い霧で満たされていた。

 不気味である以上に突入部隊はいつも身近に感じていた力が突如として途切れたことを察していた。

 

「予想はしていましたが、魔本の内部は世界花の加護が届かないようです」

「やはり、か」

 タチバナが口にした事実に、団長も重々しく頷いた。

 

「皆、各々の内在魔力には気を付けろ。

 己の中の世界花の魔力が途絶えた時、死に行くものと心得よ」

 団長の言葉に、全員は頷いた。

 

「ッ!? みんな、そこに何かいるよ!!」

 それにいち早く気付いたのはキンギョソウだった。

 

 彼女の指さす先の白い霧の中に、黒い巨大な影が混じる。

 全員が戦闘態勢に入る中で、その巨大な黒い影が、徐々に姿を見せた。

 

 それは、遠目に見たら木か何かに見えるだろう。

 だがその色は植物に有り得ざる金属の光沢をもつ円筒状で、上部の方に枝分かれした枝葉のようなモノが腕のように蠢いていた。

 そしてその頭頂部には、楕円のような口がぽっかりと開き、鋭さを持った歯並びがあった。

 

「鉄のトレント(エント)……!?」

 まさにそう表現するしかない未知の怪物が、花騎士たちの前に現れた。

 

 普通の人間なら恐怖のままに叫び声をあげて逃げ出してしまうような化け物。

 しかし、ここにいるのは百戦錬磨の花騎士たちだった。

 

 ――――なにより、彼女らには事前知識(・・・・)が有った。

 

「はぁ!!」

 真っ直ぐとその怪物が両手を広げて覆いかぶさるように木の根を思わす複数の足を動かし襲い掛かってくる直前に、ハクモクレンが躍り出る。

 

 がきんッ、と彼女の剣と怪物の腕がぶつかり合い、金属音が響いた。

 

「恐れるな!! こいつ、硬さは鉄のそれだが、害虫よりは鈍重だ!!」

 彼女が味方を鼓舞するようにそう言葉を放ったが、怪物の背後には新たな黒い影がいくつも現れ始めた。

 

「こやつらはただの従僕だッ、元凶の寄生型を倒さねば意味が無い!!」

「では団長さんと――」

 そこで、タチバナとキンギョソウが目が合った。

 ここで彼女と目が合わなければ、キンギョソウの運命はまた違ったものとなっていただろう。

 

「キンギョソウさんは元凶を探してください!!

 私たちは余力を残しつつこの怪物たちを抑えます!!」

 現状で二手に分かれるのは愚策に見えるが、元凶はこの怪物たちをけしかけ明らかに消耗を狙っている。

 馬鹿正直に相手するよりも、罠と分かっていても戦力を分ける方がまだマシだった。

 

「すまない!!」

「わ、わかったよ!!」

 そうして、団長とキンギョソウの二人は元凶の害虫を探して霧の奥深くへと足を踏み入れた。

 

 

 

 §§§

 

 

「鉄のトレント……本当にいるなんて」

「我らは今回の敵を害虫と便宜的に称しているが、我々の世界を蝕む害虫とは根本的に別生物であるからな」

 怪物たちの戦いから離脱した二人は、息を整えてそう口にした。

 

 キンギョソウは魔本に突入する前に、事前知識としてある絵本を読まされた。

 そこには、団長の祖先が害虫を齎した世界の者たちとはまた別の世界から召喚したという害虫について記されていた。

 

 その絵本のタイトルは「シャイな害虫」。

 元は異世界の歌劇だという本を、魔術的要素や邪悪な知識を省いて噛み砕いて、その恐るべき邪悪な害虫について記したものだった。

 内容はこうだ。

 

『むかしむかし、遠くの星空のずっと果てに、シャイな害虫たちが住んでいました。

 優れた叡智を持つ彼らでしたが、災害によって故郷が無くなってしまいました。

 彼らは支配下の種族の元を転々としました。

 奴隷である鉄のトレントが住む星や他の星などを旅しましたが、どこも居心地は良くありません。

 シャイたちはとっても長生きで、食事もしません。だから趣味に生きる種族なのです。

 彼らは拷問が大好きです。他の種族の頭の中に入り込んで、おかしくなる姿を見るのが大好きです。

 やがて、シャイたちは自分たちが崇めるアイドル・アザトイッスのステージと共に辿りつきました。

 ……わたしたち人間が住んでいる、青くて丸いこの星へと』

 

 

 そんな内容が、デフォルメされまくった残虐な描写の挿絵と共に数ページで記されていたのだ。

 最低限の知識以外まるで省かれていたが、そのシャイと記された害虫がいかにおぞましい生き物なのか如実に示されていた。

 

 あの鉄の樹木のような怪物も、その絵本の挿絵の端にちょこんと生えていた。

 

「この調子じゃあ、シャイもあんな可愛らしい見た目じゃないんだろうなぁ」

 キンギョソウはあのデフォルメされたテントウムシ型害虫みたいなシャイの挿絵を思いだし、そう溜息を吐いた。

 

「あの、団長さん。もうちょっと詳しく敵について書かれた物とかなかったの?」

「あの絵本の原本となる異世界の歌劇本はとっくに焚書されている。

 翻訳に携わった人間全てが発狂し、その検閲官が決死の覚悟で書き上げたのがあの絵本なのだ」

「あー、うん、ごめんね」

「我に謝る理由が分からん」

 団長は使い魔と思しきコウモリを空に飛ばし、ダウジングに使うようなペンデュラムを取り出した。

 

「思ったんだけど、本を読むだけで気が狂ったりするって本当にあるんだね」

「『こうしょう』、と言う単語があるな?

 これは最も同音異義語が多いとされる言葉だ。

 この単語一つとっても凄まじい情報量が有るが、そう言った邪悪な魔導書には高次元の存在について記されていることがある。

 それを知ることにより、その莫大な情報が逆流する場合がある。知ることは、知られることであるからな。

 人智では処理できぬ情報を受け取ることにより、人はあっけなく壊れてしまうのだ」

「……怖いね」

「そうだな、そしてそれが我らの敵なのだ。

 これ以上、我々の世界に異世界からの侵略を許してはならない」

 そのような雑談を挟みながら、二人は霧中を進んで行く。

 

 やがて、団長の持つペンデュラムに反応が有った。

 

「あちらか、近づいているようだな」

「私としては、誘い込まれている感がすごいんだけど」

「では、蛮勇を示さねばなるまいな」

「嫌だなぁ、蛮勇を発揮せざる得ない状態ってのは」

 キンギョソウの直観はびんびんと嫌な予感を告げている。

 それでも、二人は行かねばならなかった。

 守るべき世界の為に。

 

 そうして、二人は辿りついた。

 

 

「これは……!!」

「なに、これ……」

 その物体を、二人は詳細に表現する言葉を持たなかった。

 あえて言うならそれは台座であり、何かを中心に据える為の何かしらの装置に見えた。

 

 そしてその人間の理解を超えた物体に供えるように、損傷の激しい人間の遺体が四つ並べられていた。

 

「……もしや、これは祭壇か?

 何かしらの魔術的意図を感じる。そして、彼らは」

「うッ」

 キンギョソウは咄嗟にえずくのを堪えた。

 戦慄している団長は、その異形の祭壇の供物に少しずつ近づき検分し始めた。

 

「芸術的だ……そう表現するしかない拷問技術だ。

 丁寧に皮は剥がされ、四肢は可能な限り苦痛を与え、血を一滴も出させていない。

 そして彼らは今も生きている」

「こ、これで、生きてるの?」

 キンギョソウの問いに、こくり、と団長は頷いた。

 遺体に見えた四人の犠牲者たちは、死体にしか見えない凄惨な有り様だと言うのに生きていると言うのだ。

 

「若干だが息はあるように見える。

 だが、治療を施したとしても最早……」

 団長がそう呟いた、その直後だった。

 

 犠牲者の一人が、魂の奥底から出るかのような絶叫をしたのだ。

 その犠牲者の後頭部から、“それ”は這い出た。

 

 キンギョソウは、それをテントウムシ型害虫に似たようなものに見えた。

 だが、その姿は決定的に違った。

 まず小型でも人間くらいの大きさはある害虫に比べ、それは手のひらに乗せられる程度の大きさだった。

 足は十本あり、口は三つある。半円形の翅を備え、目は大きい。

 テントウムシに似ているが、スプリングガーデンに存在するどの益虫や害虫とも似ても似つかないおぞましい姿だった。

 それがあの絵本に描かれし異世界からの害虫――シャイ*1だった。

 

「危ない、団長さん!!」

 危機を察したキンギョソウがそう叫んだ時にはすでに手遅れだった。

 シャイは翅を広げると、あっという間に団長の顔に取りついた。

 

「が、がああああぁぁぁ!?」

 直後、団長の絶叫が鳴り響く。

 

 キンギョソウは見た。

 シャイが団長の頭部に外傷を与えることなく侵入するのを。

 

 そして、頭を抑え、限界まで見開かれた団長の顔が彼女を向いた。

 

「ワレヲ、ゴロゼェ!!!」

「そ、そんな!!」

 団長は叫んだ、自分を殺せと。

 

「ワレ、ガァ!! ワレデ、アルウチ、ニィイイイ!?!?」

「無理だ、無理だよ……そんなこと……」

 キンギョソウは後ずさり、首を左右に振った。

 それが彼に対していかに残酷なことかと分かっていながら。

 

 恐らくハクモクレンやタチバナなら、躊躇いを覚えつつも彼の犠牲を許容したかもしれない。

 だが、ただ少々変わっていても普通の人間の感性を持つキンギョソウにはできなかった。

 

「ウラム、ゾ……」

「ごめん……なさい……」

 キンギョソウは力なく構えていたハンマーを地面に落とした。

 

「…………」

 団長の両目から涙が滴り落ち、ゆっくりと瞼を閉じた。

 そして、何事も無かったかのように団長はキンギョソウに向き直った。

 

「だんちょう、さん?」

「どうした、なぜそんなに怯える?」

 薄ら笑みを浮かべる団長に、キンギョソウの直観――いや本能が最大の危険を告げていた。

 これはもう、自分の知っている団長ではないのだ、と。

 

「実に、実に素晴らしい気分だ。

 すべてのしがらみから解放されると言うのは実に良い気分だ」

 一歩、彼が踏み出す。キンギョソウは恐怖で動けなかった。

 

「倫理、道徳、立場、理性、良心、自制。なんと下らない価値観か。

 シャイが我に語りかけてくる。我の本性を知り、我のことを気に入ったと」

「団長さん、お願いだから、害虫なんかに負けないで」

 キンギョソウも自分が愚かなことを言った自覚はあった。

 だがそれでも願わずにはいられなかった。涙を流さずにはいられなかった。

 

「勝つだとか負けるだとか、実に短絡的であるな。

 シャイは我らが考えるよりずっと高度な知性体だった。彼らの人間には未到達の領域の哲学が、価値観が!!

 ……我々人類がいかに矮小かと思い知らされる」

「そん、な……」

 キンギョソウは理解した。

 団長はシャイに乗っ取られたのではなく、受け入れてしまったのだと。

 

「分かっている、分かっている!!

 分かっているから喚くな!! まったく情緒が無い」

 そして恐ろしいことに、団長はシャイとの意思疎通をこなしていた。

 ただ、それがほんの少しもキンギョソウにとって救いではないことではあったが。

 

「さて、キンギョソウよ。どうやら彼は花騎士について興味があるそうだ。

 世界花の力は彼にとっても未知らしい。それを調べる為に、数が必要らしい」

「か、数?」

「要するに、増やせと言うことだ」

 それが何を意味するのか、言葉の上では彼女はすぐに理解できなかった。

 だが、団長が彼女に掴みかかり、乱暴に衣服に手を掛け、彼女は全てを察した。

 

「増やすって、まさか」

「面白いだろう? 彼は趣味を行うにはせっかちなくせに長期的な計画を苦にしない。

 所詮、彼にとって人間は実験動物か玩具か奴隷に過ぎないのだろう」

 この後何が行われるのかすべて理解して、キンギョソウは震えあがった。

 抵抗が出来るはずなのに、彼女は恐怖ですくみ上っていた。

 おぞましい怪物からの悪意が、それに踊らされる団長が恐ろしかったのだ。

 

「い、いや、止めて、いやぁ!!」

「抵抗しても良いが、その分痛くなるぞ?

 結果的に母体としての機能さえ残れば、彼はそれで良いようであるし。

 ただ、我としては泣き叫んでくれた方がやりがいがある」

「お願いだから、やめて、団長さん……」

 かちかち、と恐怖で歯が震える音がする。

 怪物の一部と化した団長は怯える彼女を獲物を貪る猛獣のような笑みを浮かべ見ていたのだ。

 

 剥ぎ取られ、衣服としての役割を喪失した布切れが舞う。

 スカートも下着も引き裂かれ、少女は絹を裂いたような叫びをあげる。

 

「ほう、ほう。どうやら彼は人間同士の性交に興味津々らしい。

 生殖に好悪が伴う人間の価値観が面白いようだ」

「そんなの、知らない!! 私はあんな化け物のオモチャじゃない!!」

 ここまで来て、キンギョソウも理解した。

 あの怪物は人間相手に効果的に恐怖と苦痛を与えられる手段として、凌辱と言う手段を観察したがっているのだと。

 

 キンギョソウはあの怪物に良いようにされまいと、押し倒されてなお必死に手足をばたつかせ抵抗しようとした。

 目先に訪れた地獄を少しでも先延ばしにしようと。

 だが。

 

「良いのか?」

 にんまり、と邪悪な笑みを浮かべ団長は彼女の耳元で囁く。

 

「別に我は貴様でなくとも構わないのだぞ?」

「ッ――!?」

 彼女の脳裏に、一緒に突入してきた仲間たちの顔が浮かんだ。

 

「貴様も、あのように恐怖と苦痛を彼らの神に捧げられる生け贄にはなりたくあるまい?」

「こ、のッ、くされ、外道ぉ……」

 祭壇に捧げられた犠牲者たちを悼み、目の前の怪物を憎み、キンギョソウは涙を流しながら呪詛を吐いた。

 

「その腐れ外道を始末するチャンスを棒に振ったのは貴様ではないか」

 そんな哀れな少女を嘲笑いながら、思いのほか着痩せしていた胸部を揉みし抱く。

 

「ほう、思ったよりボリュームがあるではないか。

 いいぞ。細腕の少女を組み敷くのがこれほど背徳的で楽しいとは知らなかった」

「いやぁ、そんなことしないで」

「そうは言うが貴様のここはそうは言っておらんぞ」

 彼女の両胸の先端は、団長の言うように既に硬さを帯びていた。

 

「違う、それは違うもん!!」

 乳首をぐりぐりとこねくり回され、性感を抱いていることを彼女は否定した。

 だがそれは加虐趣味を増長させる結果に終わる。

 

「もしや、貴様は感じているのか? この状況で!!

 命の危機が有るこの最中に、望まぬ相手に組み敷かれていると言うのに!!」

 団長は豊かな胸の感触を味わう。

 十分な張りと柔らかさを備えた乳房を無遠慮に蹂躙していく。

 

「……う、うう、止めてよぉ」

 その暴虐を、キンギョソウは顔を手で覆い隠して耐えていた。

 無理やり引きはがすことはできた。

 だがそうすると現状はさらなる悪化を辿ることは明白だった。

 それに。

 

 ――――ウラム、ゾ……。

 

 あの時、団長が団長でなくなることを止めることができなかった。

 その罪悪感が、彼女がほぼ無抵抗な理由だった。

 

「(私が耐えれば良いんだ、私が……そうしていれば、皆が……)」

 彼女の希望が、仲間の存在だった。

 最低でも、自分が団長の頭の中に怪物が居ることを伝えるまで、死ぬことはできない。

 たとえどのような目に遭おうとも。

 

「くくく、汗ばんでいて実に良い感じだ」

 キンギョソウの肌は汗ばんでいてしっとりと団長の手に馴染んでいく。

 どんな状況で、誰が相手だろうと、彼女の胸はふにゃりと形を変えられていく。

 

「どれ、ではそろそろ」

 団長はゆっくりと片手を胸部から脇腹、ふともも、そして女性器に移した。

 

「きゃッ、そ、そこはダメ!!」

「ここまでされておいて、今更拒否権があると思っているのか?」

 陰部の湿り具合を確認した団長は、おもむろに自身の肉棒を露出させる。

 

「嫌だ!! それだけは嫌ッ!!」

 身を捩って逃げようと試みるキンギョソウを強く押さえつけ、団長は嫌がる彼女の女陰に無理やり肉棒を捻じ込んだ。

 

「あがッ、うえ……」

 最低限の湿り気だけの陰部を貫かれ、キンギョソウの瞳から痛みで生理的な涙が流れた。

 内臓を押しつぶされるような感触から、体内の空気を全部吐き出しながら彼女は花を散らした。

 

「おや、この感触は……」

 彼女が初物だと知った団長は下卑た笑みを浮かべた。

 

「ひぐッ、えぐッ、私、初めてなのに……」

 そして自身の純潔がこんな最低最悪の状況で奪われたことに、キンギョソウは生理的な涙を感情的な涙で押し流した。

 

「まさか貴様処女だったとはな!!

 貴様ぐらいの年頃ならとっくに貞操など捨てているものだと思っていたぞ」

「ばが、にぃ……ずるなぁ……」

 始めては好きになった男性だと心に決めていたのに、怪物の戯れの為に失ってしまった。

 その屈辱と悲しみを即座に反抗心に切り替え、彼女は団長の顔越しにあの怪物を睨んだ。

 

 だが、それも長くは続かない。

 処女を散らしたばかりの膣内を乱暴に突き上げられ、傷口を抉られる痛みに苦悶の声をあげるしかなかった。

 

「(もう、やだ……)」

 精神的に追い詰められ始めたキンギョソウの心は折れ掛けていた。

 そんな時だった。

 

 

 ――――聞こえるか? キンギョソウ。

 

 え、と彼女は自身の頭の中に聞こえる声に困惑した。

 

 ――――これは我がシャイに屈服する寸前に、我が使い魔に複写した精神の一部である。

 

 彼女の視界の端に、霧の中を飛ぶコウモリが見えた。

 

 ――――我との肉体との性的接触により、我が思念を送れるようになった故に、今からわかったことを伝える。

 

 ――――シャイは狡猾だが刹那的快楽主義者だ。一時の悦楽の為に合理性を捨てるかもしれぬ。奴は人間を知ってはいるが理解してはいない。どうにか、その隙を突け。

 

「(そんなこと、言ったってぇ)」

 今のキンギョソウは凌辱の痛みに耐えることしかできない。

 怪物を団長の体内から引きずり出す方法なんて――。

 

 そこで、キンギョソウはあの絵本を思い出した。

 そしてその原本となった歌劇のあらすじを。

 

「おねがいぃ、やさしぐしてぇ」

「はぁ、はぁ、無理だ、無理だな!!

 一方的に女を征服し、屈服する楽しさを!! 女のお前には理解できまい!!」

 団長は容赦なくキンギョソウを犯す。

 自身が快楽を得る為に獣のような激しい律動で責めたてていた。

 

「ひどい、ひどいよ、わたし、私、団長さんの、こと、好きだったのにぃ!!」

「ほぅ……」

 キンギョソウの唐突な告白に、団長の見る目が明らかに変わった。

 

「好き? そうか、そうだったのか!!

 良かったではないか、好きな男に操を捧げられて!!」

 顔色を変えて彼女の膣奥を突き動かす団長。

 だが彼女には、団長の頭の中で嘲笑する怪物の姿が透けて見えるようだった。

 

「好き、好きなの団長さん、もっと別の形で、こうしたかったのに!!」

 キンギョソウは自ら腰を動かし始め、一方的な愛を語っていく。

 苦痛に表情が歪むのが抑えられなかったが、それでも最初よりだいぶマシだった。

 

「んんッ、はぁッ、はぁ、好き、団長、さん」

 拙いながらも喘いでみせるキンギョソウに、団長はより興奮したのか夢中になって彼女を犯す。

 

「出すぞ、出すぞ!! 好きな男の子種で孕め!!」

「ああ、んああぁ!!」

 腰同士を密着させられ、肉棒の先端を子宮口に押し付けられて、どくどくと熱い精液の感触を感じながら、キンギョソウはくたりと力尽きた。

 

「ふぅ、ふぅ……楽しい、楽しい。実に悦ばしい。

 女を犯すのが、こんなに楽しいとは」

 団長は今しがた犯した女をそのままに立ち上がると、次なる欲望を満たすべく行動を開始する。

 

「次だ、次は彼女らだ」

 欲望に目をぎらつかせ、今も戦っているだろうタチバナ達の元へ向かおうとする団長。

 

「待って!!」

 その彼を呼びとめたのは、弱弱しく上半身を起き上がらせたキンギョソウだった。

 

「嫌だ、嫌だよ、団長さんが、私以外とエッチするなんて!!」

 彼女は半狂乱したかのように顔を振り、蹲るように顔を押さえた。

 

「私はこんなにも団長さんを愛してるんだから!!

 ほかの女を抱くなんて許せない、赦せないよ!!」

 彼女の叫びに、団長はニヤニヤと笑って振り返った。

 

「女は一度抱かれた相手に情が移るというのは本当らしいな」

 その言葉は団長のものか、それとも怪物のものだったのか。

 

「くッ、があぁ!?」

 そしてその時、団長が突然片膝を突いた。

 その頭部からは、あのおぞましい異形の虫が這い出ていた。

 

 異界の怪物が羽を広げ、超高速でキンギョソウに飛び掛かった!!

 そのほぼ一瞬、最後のチャンスを彼女は見逃さなかった。

 

「でえぇぇい!!」

 半狂乱になったふりをして、ずっと感覚を研ぎ澄ませていたキンギョソウは脇に転がっていたハンマーを怪物の突進に合わせて振りぬいた。

 

 ぐちゃり、と空中で怪物はハンマーに横殴りにされ、体液をまき散らしながら地面に撃墜された。

 

「今、こいつに団長を殺させたら面白そうって、思っただろ」

 キンギョソウはハンマーを杖に、ゆっくりと立ち上がった。

 

「どうせ団長なんて代わりは幾らでもきくから、今ここで殺して私が苦しむ姿を見れるって、思ったんだろう!!」

 怒気が籠った言葉を吐きながら、キンギョソウは未だ地面でぴくぴくと痙攣している小さな怪物の元へと歩み寄る。

 

「お前は結局、人間の愛を理解しなかった。

 どんなに賢く優れていても、お前はノミと同じだぁああ!!」

 そして渾身の力でハンマーを振りかぶって、憎き敵に向かって振り下ろした。

 

「はぁ、はぁ、シャイよ。お前はひとつ思い違いをしていたぞ。

 たしかに先ほどまでの我は、我の本性の発露だった。我とおまえは同類だったのかもしれない」

 怪物から解放された団長は全身に脂汗を流しながらも笑みを浮かべた。

 

「だが、我が本当に好きなのは、汚辱に塗れ、尊厳を奪われながらも、最後には己の強固な意志で全ての盤面をひっくり返し、勝利を掴みとる“人間”なのだから」

 彼は全てが終わったのを確信すると、意識を手放した。

 

 

 

 §§§

 

 

「はぁ……」

 数日後、怪物たちが封じられていた魔本を無力化し、その内部に居た恐ろしい異形の生物たちの報告を城に送った団長は陰鬱な様子だった。

 

「どうしたの、団長さん」

「どうしたもこうしたもあるまい」

 同じ部屋で書類仕事をしていたキンギョソウに、彼はこう心情を吐露した。

 

「あの化け物に乗っ取られていたとはいえ、お前にはとんでもないことをしてしまったのだ。

 何か償いをしなければなるまい、とずっと考えているのだ」

「まだそのこと言ってるの? もう終わったことじゃない」

「お前は正直割り切りが良すぎないか?」

「もうッ、思い出さないようにしているってのが分からないの!?」

 団長がいつまで経っても女々しい様子なので、キンギョソウもイラッとしてそう言い放った。

 

「しかし、我は己の意思をシャイに消されたくないが為に、奴を受け入れお前に無体を働いたのは事実だ。

 全ては我が祖先、我が弱さが招いたこと。我が補佐に任命するだけでは足るまいし、我のプライドが許さん」

 そこまで言ってから、団長はふと思いついた。

 

「そうだ、傷物にしてしまった女性への責任など一つしかないか」

「傷物って言うなし」

「今すぐとは言わん。いずれ花騎士を引退してからでもよい。

 婚約をしようではないか!! なに、不自由はさせぬよ!!」

「はあぁ!? 責任って、それが責任の取り方なの!?

 貴族ならもうちょっとマシな責任の取り方とかないわけ!?」

「残念ながら、我が家は金銭で保障する余裕はないのだ」

「お金で解決しろなんて一言も言ってないでしょ!!」

「貴様、あれこれ文句を付けおって、一体何が不満なんだ!!」

「全てだよ!!」

 結局二人の言い合いは、騒ぎを聞きつけた部下たちが止めに来るまで続いた。

 

 これがちょっと変わった二人の、ちょっと変わった馴れ初めだった。

 

 

 

 

 

 

 

*1:
クトゥルフ神話より出典、シャッガイからの昆虫。通称・妖虫、或いはシャン。他者の精神に寄生し、拷問や強姦などの退廃的な行動や宿主が徐々に発狂させるのを好む。寄生型害虫が存在するらしい花騎士の世界観に見事合致する怪物である。後の展開は分かるな?




こんな感じで、キンギョソウと団長の馴れ初めでした。

シャイ、もといシャンはクトゥルフ神話では好きなクリーチャーです。勿論、敵としてですが。
今回突然キンギョソウが好きだの愛だの言いだしたのは、作中に出てきた絵本の元ネタの魔導書『ミサ・ジ・レクイエム・ペル・シュジャイ』に登場する一幕に、恋人同士の男女が一方的な愛で片方を殺す場面があるのです。
この歌劇はシャンが取りついた作家に書かせたとされ、シャンが人間の愛を理解していないと解釈できるところなのです。
シャンは見た目が虫で侵略性の宇宙生物なので、花騎士の世界観に敵として登場させるにはぴったりだったと言うわけですね。

本当ならカルセオラリアちゃんに扮したニャルさまが上記の歌劇を演奏させようと画策するとかも考えたのですが、こちらは世界観に会わなかったので没にしました。収集つかないからね!!

今回はこれまでとは異色の内容だったので、戸惑った方もいるかもしれませんがこれ以降はこういう内容は多分ないのでご安心ください。
やっぱり自分はエロ書くのは向いてないのではと感じる今回でした。それではまた次回!!
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