別にセックスが書きたかったんじゃなくてドラッグの方が書きたかっただけ。ツールとしてのセックス。
私はドラッグやってませんよ。当たり前です。イリーガルです。
……実用性はないかなぁ?
pixiv向きかも。
「提督さん、ティッシュある?」
俺の寝室にある小さな机に向かっている瑞鶴が一糸纏わぬ姿で俺に訊いてきた時、瑞鶴は慣れた手つきでシャブの溶液を注射器に吸い上げているところだった。
隣に繋がった執務室の机の上から箱ティッシュを持ってきて瑞鶴が向かう机に置いてやる。
「ん、ありがと」
そういった瑞鶴は俺に一瞥もくれずティッシュを二枚取って机の上に置くとそれが半透明になる。
「提督さん、これ締めて」
左の上腕にあるゴムのチューブをこっちに突き出して言う。医務室で静注に使うやつだ。名前は知らない。瑞鶴は本当に医務室からくすねてきたと言っていた。きつく締め上げてやってから瑞鶴が左の拳を握り締める。注射痕がいくつも残った左の前腕に細く血管が浮かび上がる。
瑞鶴がアルコールの匂いがする脱脂綿で肘の内側を撫でる。
「提督さんはやらないの?」
「俺が? 俺はいいよ」
アルコールを塗った腕、その先に繋がった左手の薬指には俺が渡した銀色の指輪が部屋の外の弱い光を反射して輝く。
瑞鶴が注射器の中の空気を抜く。
「大丈夫か?」
瑞鶴の右手が震える。注射針の先は一定の位置に留まることがない。
「大丈夫、外したことないから」
指輪より少しグレーに近い針の先端が血管めがけて瑞鶴の左腕に刺さる。いつ見ても気分が悪い。それなのにいつも目を離すことができなくて、もう注射痕だらけの腕にまた傷がつくのが言いようもなくクセになって、逆流してくる赤黒いモノが瑞鶴の血だと考えると息を呑むような感じがして、どうしても、どうしてもいつも俺は瑞鶴の腕を凝視している。
血と混じり合った注射器の中身が瑞鶴に飲み込まれていく。針が抜ける瞬間滲んだ血も俺を魅了して離さない。注射器を携帯灰皿みたいなハコに放り込んでそのフタを閉める。バイオハザードのマークがついたそのハコはなぜか瑞鶴の迷彩の柄をしていた。空いた右手で左腕を締め付けていたゴムチューブを外してからアルコールで傷痕を拭う。瑞鶴は何回か拳を開いたり閉じたりしながら呼吸を整えてそれから俺に尋ねる。
「やっぱり興味あるんでしょ。やってみないの?」
「いや、瑞鶴が魅力的だから、見てるだけ」
「ふぅん。さ、寝っ転がって。やるよ」
俺が瑞鶴に指輪を渡してから俺と瑞鶴は何回も一緒に寝ている。何回やっても瑞鶴はゴムをつけてのセックスしか許してくれない。でも俺は構わない。二人の仲を確かめるにはただ体を重ねればいいし、ゴムをつければただ快楽のことだけを考えればいいから。
瑞鶴が俺のモノにゴムをつける。仰向けに寝かされて硬くなったモノをいじられてそれから瑞鶴が俺の腰に跨る。いつも瑞鶴が上だ。逆だと怒られる。
「こっちの方が自分の好きに動けるから」
瑞鶴はいつも言う。それともう一言、「提督さんも楽でしょ?」
こう言われると俺は何も反論できない。
亀頭がくすぐったい。瑞鶴が自分の入り口に擦り付けている。先から熱に包まれる感覚があって俺のモノが瑞鶴に入っていく。
「んふぅ。入った」
満足そうに瑞鶴は俺を見下ろす。
「んっ、んっ、んうぅ……」
腰を上下させ始めた瑞鶴がくぐもった声を上げる。
「んあうぅ。あっあっ」
瑞鶴は俺の上で揺れながらいろんな声を出す。そんなに大きくない声が心地いい。
「うっ、んうぅっ、んはぁ、提督さん、気持ち良さそう、あっ」
俺は答えない。瑞鶴は答えを求めてないから。
しばらく動いていれば当然下腹部に熱が集まってきて、腰が勝手に動く。下で俺が動いても瑞鶴は怒らない。
「ふふ、イきそうなんでしょ。ぅあっ、んんぅ、この動き、そうでしょ?」
集まった熱が硬質化して股間に凝縮される。制御できない滾りが背中を擦って、俺は声を上げた。
「瑞鶴っ、やばい、出るっ」
「いいよ、出しちゃえ、んん、ほらほら」
「うっ、ああっ」
腰が震えて瑞鶴の太腿を掴む。尿道を擦る感覚が駆け上がって息が一瞬できなくなって、それから深く息を吐く。瑞鶴の奥まで叩き込んで、でも俺が出した精液は薄いゴムに隔てられて瑞鶴に触れることはない。
「ふふっ、提督さんかわいい」
瑞鶴が腰を止めてくれない。出した後は敏感なのを知っててやっている。
「はあ、ちょっ、ストップ、瑞鶴っ」
「にしし、ごめんね。意地悪しちゃった」
まるでいたずらっ子の笑みで俺を安心させる。瑞鶴の中から少し軟らかくなった俺のモノが引き抜かれて、瑞鶴はさっさとゴムを取ってしまう。そしてその中身の俺の精液を手に出してそれを口に含んで噛み砕いて嚥下する。そうすると俺が喜ぶということを瑞鶴は知っていたし、そうでなくてもシャブをキメた今の瑞鶴なら進んでやるだろう。
「ちょっと休憩させてくれよ。いつもキツいんだよ」
瑞鶴の左腕にうっすらとさっきのゴムチューブの跡が残っている。周りより仄かに赤い輪は永遠に消えない傷になって瑞鶴に噛みついているように見えて、シャブに魅了されたからついたはずのその傷さえも俺には愛おしく感じる。
すっかり小さくなった俺のモノを瑞鶴が指先でつつく。
「提督さん、スタミナないよね。いつもこんなになっちゃう」
「男はみんなそうだよ」
「そういうもんなの? 私まだイってないから早く続きしたいんだけど」
「一人でやっててよ。見ててやるから」
「やだ、恥ずかしいじゃん」
「じゃあちょっと待って」
心地よい気だるさと微かな眠気が脳を包む。何も考えたくない。
股間に感じた生温さが脳にかかった熱を少しだけ晴らす。そっちに目をやると瑞鶴が俺のモノを咥えていた。
「ホントにやるのか? たまには一回でいいだろ」
「私が満足するまでやるんだから。んっんっ」
咥えたまま喋られて瑞鶴の舌が俺を不意に刺激する。
「んむ、動いた。気持ちいいんじゃん」
瑞鶴には敵わないな。
「ん……、ぷぁっ。おっきくなった、いひひ」
「しょうがないなあ」
瑞鶴が新しいゴムをつける。有無を言わせずといった感じだ。手でしごかれる。ちょっとだけ苦痛が混じるけれど絡みつく指が可愛くて息が漏れ出る。竿を握られて俺が瑞鶴の中に浸入する。
緩慢な動きをたしなめるみたいに腰を突き上げてみる。
「んんっ、っあぁ!」
瑞鶴が初めて大きな声を出す。いつもこうだ。突然乱れ始めてそのままイく。
「うああぁっ、んぐうぅ」
この状態の時に瑞鶴の太腿に手を添えるとそれに瑞鶴も手を重ねてくれて余裕がないのに笑いかけてくれる。
「ていとく、さんっ、あんっ、ていとくさん!ああっ!」
瑞鶴は半分叫ぶくらいな声をあげて、左手を俺の太腿に右手を自分の下腹部に当てる。
息が荒くなる。何も言えないでただ喘ぐ。
「ああっ、あっ、あっ、はあっ、うううっ」
「気持ちいいか?」
「うっ、んっ、んっ、あああっ!」
答えているのかな。
瑞鶴の動きも声もどんどん激しくなる。最後のスパートをかけているみたいだ。
瑞鶴が垂らした涎が飛び散ってきて、俺の胸についたそれを親指ですくって瑞鶴の乳首に塗る。触るとその瞬間に瑞鶴の体が跳ねて、声もあげる。
「あ、あ、て、いとく、さん」
瑞鶴のアゴがあがって声が濁る。何とか俺のことを呼んで、そしてすぐ動物みたいに喘ぐだけの瑞鶴に戻る。
瑞鶴が思いっきり仰け反る。
「うああっ!」
一際大きな声を吐き出してからガクンと震えて体を丸める。
瑞鶴は呼吸ができていない。何度も俺の上で跳ねて自分で自分を抱く。
「ぅぐっ、ぅ、んぅ、ぁ」
喉から音が漏れ出す。それから肺の中身を全部出して、荒い息で酸素を求める。シラフでやるより深く長く強いんだろうか。ゼンマイ仕掛けのおもちゃみたいに痙攣を繰り返して、俺のことを小さい声で呼ぶ。
薬の影響なのか瑞鶴は一回イくとしばらく帰ってこない。動いてないから中折れしそうになる。息を整えて少し元気になった瑞鶴が俺のモノを自分から抜いて手でしごいている。いつの間にかゴムが外されていて瑞鶴の指が食い込んで俺を刺激する。いつもならもう一回射精されられてそのまま瑞鶴が俺の上で寝てしまう。
「そうだ、いいこと考えた」
「どうした?」
いつもと違うことを言い放った瑞鶴が一回俺から離れる。一息ついてあくびをする。
瑞鶴を見やると目があって舌舐めずりをされる。瑞鶴は俺を見てにやけている。よだれが口の端から垂れている。
「口開けてよ」
「は?」
図らずも口を開ける形になった。瑞鶴の右手の人差し指が舌を撫でる。混じり気のない苦みが襲う。瑞鶴の指を吐き出して咳き込んだ。唾液が口の中にあふれてくる。
「なんだよこれ」
「お楽しみ、続けよ」
「まだ続けるのか?」
「いいからいいから」
瑞鶴が意気込んで俺のモノを咥え込む。その割にゆったりした刺激にまどろっこしさを感じる。瑞鶴の動きにつられて息をしていると少しずつ体温が高くなってくる感覚がある。
「あー、出る、瑞鶴っ」
「いいよ、飲んであげる」
目の前がちらつく感覚があって息を吐きながら瑞鶴の口に出した。
吐き出した息を大きく吸う。出したばかりの亀頭をまた舐められて体が跳ねる。
もう勘弁してくれ。
そう言おうとした瞬間心臓が跳ねる。
「だーめ」
瑞鶴は嬉しそうに俺を見る。
いたずらっぽく笑ってまた人差し指を俺の口に挿し入れる。
噛みちぎりたくなる。
「目が変わったね」
左下の奥歯を引っ掻かれその指に舌と唾液を絡める。敏感すぎる舌に強すぎる快感が刷り込まれる。
短く空気を吸って長く肺の中身を押し出す。
瑞鶴が指を引き抜く。俺の上唇と瑞鶴の人差し指が唾液の鎖で繋がって、清明になった視界をレーザーで射抜いたみたいにその輝きが焼き付けられる。
子供みたいな笑顔の瑞鶴がひどく扇情的で、俺の肉欲をもう一度刺激する。
俺に馬乗りになった瑞鶴の頬に右手を添わす。瑞鶴は幸せそうに俺の手に左手を重ねてくれる。
いつまでも目が合ったままだ。ゆっくり体を起こして瑞鶴との距離を短くする。
瑞鶴が俺を抱き留めてキスをしてくる。舌を口に突き入れられて上唇の裏を舐められて痛いくらいのむず痒さが飲み下されて瑞鶴の呼吸の音が何倍にも増幅して耳鳴りみたいに頭の奥を殴る。目を開けられない。脇腹を撫でてやると腰を跳ねさせる。
押し倒す。一度顔を離す。
瑞鶴は一瞬不満げな顔をする。でもすぐに俺に微笑みかける。
「積極的だね」
答えない。その必要はない。
クリトリスを撫でるとわざとらしく喘ぐ。
「んっ、提督、さん、ちょっと痛いよ」
抗議の声も脳ミソの中で快感に変換される。
もうだめだ。快楽に包まれてさらなる快楽のことしか考えられない。
瑞鶴の腰を掴んで少し力を込める。指に力を入れないとどうにかなってしまいそうだ。
ゴムの付いてない俺のモノが瑞鶴に埋まる。
「提督さん!」
ガツンと頭を殴られるような感覚。それが首に回って熱を発した後に俺のモノを全て突っ込んだ。
歯を食いしばっている。勝手に体が震える、ムズムズする。目には瑞鶴の胸しか映らない。
知らない。自分の知らない快感が、多幸感が全身を包む。声が出ない。
瑞鶴の細い指が俺の胸を叩く。瑞鶴が何か言っているのも分かるし抵抗してるのも分かる。
瑞鶴の胸に頭をつけて歯を食いしばって目を思いっきり閉じて快感だけを求めて瑞鶴に腰を打ち付ける。声はどうしても出ない。
全身が敏感になって布が擦れるだけでそこがオーガズムみたいになる。
苦痛なほどの快感物質が全身から噴き出してそれが俺を色情狂みたいにさせて快感以外の事を考えず瑞鶴に腰を打ち付ける。
空襲の警報よりうるさい瑞鶴の声と地鳴りみたいな腰がぶつかる音が快感と一緒に全身を揺さぶる。
「ていとくさん」
はっきり聞こえた。瑞鶴が俺の背中に手を回して引きつける。体を重ねる形になって俺が瑞鶴を押しつぶす。
瑞鶴の爪が背中に食い込む。嫌になる程鮮明に背中の皮膚が裂ける感覚がして、一瞬の痛みと俺を伝う液体が皮膚を撫でる快楽が脊髄を締め付けてその刺激で息を吐いてからまた快楽が全身をグルグル回る。
「やあっ、ていとくさん、ていとくぅっ、やあうぅ」
声が湿っている。鼻をすする音も入ってくる。
「ううぅ、んぐっ、あう、ん、んっ」
聴覚が俺の制御を超えてあらゆる音が脳のどこかへ電気信号になって送られている。
「ていとく、さん、こっち見てよ、んんっ」
弱い光しか入ってこないはずなのに異様にコントラストがはっきりした景色が後頭部の頭蓋骨の裏に張り付いて、瑞鶴の虹彩に反射した俺の顔は歪んでいた。
くしゃくしゃになった顔で涙を流す瑞鶴が見える。どうして。
体がバカになっている。頭は泥水みたいになってるのに言うことを聞かずに胴体が動く。
笑顔なのか? 瑞鶴、それは笑顔か?
「ていとくさん、うれしそう」
瑞鶴の中に射精した。
瑞鶴の体の震えが腹に直接響く。
脳と目と耳と皮膚と体の秩序が全部失われたみたいだ。それぞれの場所で得た刺激が全部背中の辺りでドロドロに混ざりあって快楽として全部放出される。でも意識が濁ってるわけじゃなくて自分の脳ミソの形まで正確に分かる気がする。
窓の外から入ってくる白くて弱い光は薄い布を通してさらに弱くなったみたいに感じるのに俺の目は俺の周りのあらゆるものを識別する。
「ずい、かく、あぁ、う」
掠れた音が聞こえる。まだ世界はひっくり返ったままだ。
深く呼吸を繰り返してるうちにじっとしてるのが我慢できなくなってまた瑞鶴に腰を打ちつける。抱きしめあったまま快楽だけを求めて愛も情熱もないセックスをする。ブリキのおもちゃの方がまだ上等な動きをする。
瑞鶴の呼吸とくぐもった声と衣擦れの音と二人がぶつかり合う音と自分の喘ぎがその境界をなくして聞こえる。
制御を失った体と快楽が脳を支配する。もっと気持ちよくなりたい。それ以外の感情が排除される。
「提督さん、どう?」
左の耳に囁かれた次の瞬間に俺は体を震わせてまたイッた。脳の深いところを直接撫でられてそこも性感帯になってるみたいだ。空撃ちだろうが関係ない。気持ちいいところを擦り付けあってオーガズムに達するためだけのセックスにそんなことは関係がない。
音の混ざった空気が口の奥から出てくる。
さっき引き裂かれた背中の皮膚から漏れ出た俺の血液を瑞鶴が指で掬って俺の口の中に塗りつける。生臭い塊に押し出された唾液が赤と混じって口から流れ落ちる。泡立ったその液体が瑞鶴の頬に落ちて瑞鶴がそれを真っ赤な指で弄んで自分の口まで運ぶ。指先の鮮血を全部舐めとって綺麗になった手でまた俺を撫でる。
俺はいつまでも止まれない。またオーガズムに達するため。
「ごめんね、提督さん」
およそ謝る気がない表情で俺に皮肉を飛ばして瑞鶴は目を閉じた。小さく喘ぎ声を出す瑞鶴は時折顔をしかめて体をよじる。その刺激も全部俺の体の中で快楽に変換されて指先の体温が失われる感覚と一緒に血流に乗ってグルグル全身を回る。
「これで一緒だよ、提督さん。分かるでしょ?」
肯定の意思は声に出せず代わりに歯を食いしばって体を震わせてイッた。
止まらない。止まれない。全身が焼けそうだ。でも制御できない。
瑞鶴も体を震わせる。また抱きしめてくる。
「好きだよ、提督さん」
俺もだ、瑞鶴。
溺れるっていうのは本当だ。苦しくなる。
でも、この海から顔を出したくはないかな。
瑞鶴にキスをした。